お願いを聞いてくれそうな濡羽色のポニーテールに、 頼りがいの有りそうな黒地に銀糸が縫い込まれたロンググローブ。 なんとなく言うことを聞かせたくなるような、赤スカーフのセーラー服。 少女はとかく頼られがちであった。
テスト期間となれば自分の履修外の科目を他人に教えていたり、 所属しても居ない部活や委員会の活動を手伝ったり。 入学理由は、自分の能力を高めるため。そうすればできる事が増えて、引き受けられることが増えるから。
【異能サーヴァントオブクライム】 他人の欲求を、短文と極短い映像とで把握することが出来る。 欲求は対象の周囲に浮かぶシャボン玉のように見え、欲求が強いものほど大きく見える。 そしてシャボン玉の中には、欲求の解決のために動く睦美自身の姿が見える。 スーパーで買物をしているおばあさんの、「棚の醤油をとってほしい」という思いと、その後ろの棚のいつも使っている醤油を取る睦美が映るシャボン玉が浮かんでいたり。 路地裏のジャンキーの「とにかく死んでほしい」という思いは、袖口のナイフの分、ポケットの拳銃の分、足元のレンガの分、と言った感じで三つ浮かんだり。
【音を立てて啜る手】 また異能サーヴァントオブクライムとは別に、 母方から受け継いだ種族の能力として、かつ訓練した技術として、 そして以前吸い尽くした"精神を啜るもの"から得た力として、 睦美は魂魄に触れることが出来る。 魂とは精神の気、魄とは肉体の気。 奪えば死ぬし、与えれば癒やすことも出来る。 体から離れた魂を連れ戻すことが出来れば、死体だって動き出す。 その魂が傷ついていなければ、だが。
2つの異能を組み合わせることで、欲求を解決した時に感謝されれば、その"気持ち"、"感情"を吸い上げることが出来る。 特に誰を害するでもなく睦美の魂魄が満たされ、食事や睡眠も不要になる。
【それでどんな人なの?】 『ありがとう』だけで食っていける生命。 第一異能によって常に把握しているために他人の欲求がわからないことはないが、 自分自身の欲求といえば感謝されたいこと以外はあまりわからない、とことん利己的な利他行動者。 大規模に社会情勢が変化し、感謝の気持ちを人々が忘れてしまうこと以外はそんなにタブーがない。
寝る必要が無いために二学期からは夜間の講義にも出ており、 昼間の講義の復習として同じ講義を幾つも取っている為に、・mートはますます手が込んで需要が高まっている。 勿論片方の講義の時間を空ける事もできるため、感謝を求めて島を東へ西へ。
「たのみ事なら……おまかせくださいっ」 「新商品を入れたら、それしか注文されない。 そんな自販機さんの気持ちが今ならわかる気がします。 ……言われたとおりに蘇生してるんですけど、 感謝されないことも多いですし」 「私が命令されて動くと思ってるなら、それって大間違いってことですよ」 |
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