ご案内:「スラム」に
ハルシャッハさんが現れました。<補足:革のブーツ、レザーアーマー、鋼のガントレット、白梟のローブ、バックラー、ブロードソード、救急キット。 スワッシュバックラー。>
ハルシャッハ
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――スラムに住む者達は様々な事情を抱えている。
一般の社会からすればはみ出した者であったり、
表で暮らすにマナーが守れぬものであったり、
あるいは食い詰めて暮らしが成り立たなくなったものであったり。
大体はそんな穏やかな者達も多い。
しかし、そこに豊かさがあれば文化の一つも成り立つのだろうが、
貧困そのものが悪因を引き連れてパレードを起こす。
全く、ままならないものだと思う。
そんな中、スラムの暮らしを眺める男は、
いつもの服装に救急キットを横につけただけの装備である地域を見回りに来ていた。
――男が救急キットを付ける場所。
それは、相応の危険を孕むところであることを意味する。
視線の先に有るのは、ある建物だ。
遠くから眺めるにとどめ、脱出できる距離からある程度の規模感を図る。
近々、風紀や治安の人間を手引する予定の場所だ。
(――だいたいこの辺りか。 搬入口からすれば中型から大型。
規模感的には相応にデカイブツを運び込んだか。
――『番犬』の可能性がデカそうだな。
ケルベロスかミノタウロスとか、そのあたりが多いが。)
――『番犬』。 転移荒野からは魔獣がよく運ばれてくる。
大体は、違法組織の守り神として飼いならすのが目的である。
ハルシャッハ
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魔獣の類が増えれば地域は荒れる。
スライムの類であれば液体タンクの中に詰める形で搬入することが多く、
獣であればチョークリードを付け、魔術的に拘束した状態で搬入することが多い。
他に一般的な手法としては石化した状態で搬入する手法も使われている。
必要な時に解除さえできれば、石化の手法は極めて便利だ。
餌を必要とせず、必要なときにだけ『解凍』すればいい。
違法組織からすればコレ以上に便利な代物はないとも言える。
そんな連中を相手にするのだから、風紀や治安という組織は大変だ。
影に潜む男からすれば、正面からの戦闘など御免被るが。
(――痕跡は……。)
離脱するように距離を離しながら、車の痕跡を追って魔獣の種類の手がかりを探す。
情報は金になる。 下手すれば当座の活動資金を充足できる程度に。
男はそれを知っていた。 金になるなら探さない理由はない。
(――流石に落ちてねぇか。 しかし、泥とタイヤの跡が見えるところからすれば、
やはり転移荒野の辺りから来てるのは確定だな。)
これだけでも人身売買の線が薄くなる。
いくつかの外部情報から推察できるものは沢山あるのだ。利用しない手はない。
ハルシャッハ
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他に警戒するべきは、意外にも幽体系の魔物をもってくるパターンが有る。
封印用の鏡やクローゼットを利用し、魔術的に抑え込んだものをそのまま搬入するのだ。
使わなければそれで良し、使うときは開放して暴れさせるだけでも十分。
――全く、ヒトという生き物は面倒なものである。
悪知恵ばかりがよく回ってくるのが本当に面倒だ。
(良し、情報としては十分――。
乞食たちにいくつか後で更に情報をもらうか。)
外部情報を固め、ある程度スラムでも表寄りの地域へと移動する。
この地域は、ヒトもあまり寄り付かない。
札付きの悪がほとんどだからだ。
少し表寄りの場所へと移動すれば、乞食たちの数も少しづつ増えてくる。
――いつもの通り、通貨と缶詰等の食料を弾めば、
口からは情報がたくさん出てくるのが常だ。
「――いつも悪いな。本当に助かるぜ。」
1kgの米の袋でさえ、こちらでは高級品だ。
それだけでも情報に対する寸志としては、大きな分類だった。
風紀やその他の人種も、この辺りならうろついている事が多いが――どうなるか。
ハルシャッハ
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――最も、何事もないのが一番では有るが。
影に潜み、静かに目的のみ果たせれば盗賊としての本懐は成る。
表立って騒がしく(ラウドに)やる手も有るが、
男はそんな手法は好きではなかった。
いくつかの情報が手に入り、
そして必要であれば出せる情報になっていればそれでいい。
乞食の話でさえ、話を聞く時にメモを取る癖のない男は、
そのようなことを長くは覚えていない。
しかし、後でなにかしらの書き捨ての紙にざっくりと断片はまとめるだろう。
そのくらいのことは男はやる時はやっていた。
「――さて、そろそろ一旦戻るかね。」
宵闇に白のローブが朧気に消えるのは、そう遅い話では、ない。
ご案内:「スラム」から
ハルシャッハさんが去りました。<補足:革のブーツ、レザーアーマー、鋼のガントレット、白梟のローブ、バックラー、ブロードソード、救急キット。 スワッシュバックラー。>