2015/07/30 - 17:33~19:15 のログ
ご案内:「美術室」にビアトリクスさんが現れました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 シャツ スカート>
ビアトリクス > 夏休み初日。
ヨキ教諭主催の、夏季のデッサン講習会。
ビアトリクスはそこに足を運んでいた。手には自前の画板がある。
今は、他の参加者と雁首を揃えて、今回行うデッサンの説明を受けていた。

絵を志すビアトリクスではあるが、美術の授業は取っていなかった。
それにいくつか理由はあるが、ここでの詳しい説明は省く。
次学期からは、改めて履修してもいいかな、ぐらいには思っているが。
今回講習会に訪れたのは、そう言った微妙な心境の変化も理由に含まれていた。

ビアトリクス > 説明が終わる。
各々が複数台並んだ、モチーフの置かれた机へと向かう。
デッサンの最初、まずは観察し描く位置、そして構図を決めなければならない。

複数人数でやるデッサン会故に、ウロウロ必要以上に歩きまわって
位置取りを決めたり、モチーフの並びをいじることはできない。
用意されている椅子に座って向き合えば、どのような位置で
デッサンを始めても問題はない。
しかし、利き手、身長といった個人の資質によって
『一番うまくデッサンが描ける場所』というのは微妙に変わってくる。
場所取りの段階、そこからデッサンは始まっているのだ。
[1d10+2→10+(+2)=12]
ビアトリクス > モチーフの置かれた机に対し、その正面よりは少し右。
幸運にも先客はいなかった。そこに場所取りを決め、用紙の挟まれた画板を立て、椅子に座る。
自前のデスケル(格子の走った透明なプラスチック板)をかざし、
片目で覗き込んで位置関係を確認する。

鉛筆を走らせ、3つのモチーフについて大まかなあたりを取る。
雄や陽子の前で見せたスケッチでは、まったくあたりを取らずに
描写を進めたが、あれは大道芸的なパフォーマンスでしかない。
こう言った場では忠実に基本を守る。

ケトル、ブロック、林檎。
デッサンの題材としてはそれぞれ初歩的だが、三つ並ぶとそれなりに難易度が高い。
角度によってどのモチーフがメインになるかも変わってくる。
ビアトリクスの位置からだと、ケトルがメインとなるだろう。

輪郭をなぞる。時折用紙をひっくり返したり、ブロックの輪郭にはかり棒を合わせて
狂いがないか、を確認する。

「よし」

ブロックとケトルの並びが空間表現をするにも問題なく、画面への収まりもいい。
構図選びは一発で申し分のないものになった。

【構図:10】

ビアトリクス > 制作が進む。

先程は構図決めの段階ということで、机の上で存在を主張する
三つの静物に注目していた。
しかし、そればかりに気を取られてはいけない。
机に敷かれている、襞の寄ったストライプ柄の布。こいつが曲者だ。
これをしくじれば、まさに絵が根本から崩壊しかねない……
[1d10+2→9+(+2)=11]
ビアトリクス > 早くも集中を乱し始めた周囲から私語が飛びはじめる。
ビアトリクスは精神統一を保つ。

鉛筆を寝かせ、色を乗せていく。まずは一番濃く塗るであろう、林檎から。
林檎の赤は、明るい印象があるが、明度に換算すると実は黒い。
光の方向を考慮しながら、パースの入った模様を入れていく……。

この机に敷かれている布は、そう柔らかい素材ではないようだ。
たわみの空気感を、やわらかすぎず、硬すぎないよう、鉛筆を替えながら描いていく。
影になる部分には薄い鉛筆でタッチを入れて。
よってねじれた模様も、丁寧に。

おそらく一番面倒なのが金属ケトルだ。
布、他のモチーフ、室内の様子などが写り込んでいる。
これを『見たまま』に描写しなければいけない。
もちろんそればかりに注力しても、絵が歪む。
[1d10+2→3+(+2)=5]
ビアトリクス > 「……ふう」

脳が汗を流しすぎた。少し休憩するべく、席を外し、廊下に立つ。
美術室で鉛筆が紙を叩く音、がたがたと椅子の鳴らされる音、参加者間の雑談。
そう言った喧騒から遠ざかる。
開け放たれた窓からそよぐ、生ぬるい午後の風。
ん、と一度両腕を伸ばす。

ビアトリクス > 「…………紙面に没入しすぎたかな」
休憩から戻って、改めて画板を眺めると、どうにも全体――奥行きが冴えない。
構図の段階では申し分なかっただけに、絵の眠たさが際立って見えてしまう。
いや、けして悪いわけではない。悪いわけではないが、良くもない。
近視的になりすぎたのだろうか。
目元を揉む。眼精疲労であった。

(あんま寝られてないんだよこっちは……)
寝付きのいいほうではないがそれにしても昨夜は大変だった。
もちろんそんなことはなんの言い訳にもならない。

気を取り直して、デッサンを進める。
時折椅子から立ち上がって、角度を変えながら観察する。
一方向からの観察では、奥行きを捉えにくい。

奥行きは可もなく不可もなくといった出来栄えに収まったが、
質感に関しては真に迫る、瑕疵の見当たらない表現となった。
それぞれの素材がくっきりと描き分けられ、しっかりと存在感を主張している。

【質感:10】
【奥行き:5】
[1d10+2→3+(+2)=5]
ビアトリクス > フレーバーティーのペットボトルに口をつけ、喉を潤す。

デッサンは最後の段階に入る。
すなわち仕上げだ。
練り消しを当てて光沢を入れたり、全体の濃度バランスの調整を行う。
モチーフ周囲の余計な汚れを消す。
鉛筆を立てて、描き込み切れていない細部に手を入れる。
用紙を擦って黒鉛で汚さないように、小指を支えにしながら。
ほとんど完成といって差支えはないが、まだまだ直す余地がある。

(まあ、こんなものかな)
鉛筆を画板から離し、一息ついたその瞬間、
デッサン終了の合図がなされる。
あっという間の三時間だった。

周囲を見れば、描ききれていない者もチラホラと目に入る。
このモチーフの多さでは、習熟していないと時間内に済ませることすらかなり難しいだろう。
ビアトリクスはさすがに慣れており、ペース配分に問題はなかった。
(奥行きに時間を取られてなければ、もう少し細部を直す時間はあったかな)
とはいえ、余計に手を加えすぎるのも良し悪しだ。
このデッサンは、とりあえずこれで完成と満足するべきだろう。

【時間:5】

ビアトリクス > ハンドタオルで汗を拭う。
完成したデッサンの用紙の提出を済ませる。
構図と質感表現が会心の出来だった分、
奥行き表現が凡庸なものになってしまったのが、
竜頭蛇尾と言うほどでもないだろうが、少々残念だった。

「……しかし、いちいち落ち込んでもしょうがないな」

ふあ、とあくびを一つ。心地よい疲労感。
日々の写生は欠かしてはいないが、こういった学術的なデッサンはかえって新鮮だった。
落ちかけた陽で橙に染まった美術室。
ヨキ教諭を取り囲む談笑の輪を尻目に、
散らばって廊下の外へと消えていく参加者たちに混じり、ビアトリクスも美術室を後にする。

【構図:10】【質感:10】【奥行き:5】【時間:5】

ご案内:「美術室」からビアトリクスさんが去りました。<補足:褪せた金髪 青い瞳 シャツ スカート [乱入可]>