2022/03/24 のログ
ご案内:「古書店街「瀛洲」」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」にフィールさんが現れました。
黛 薫 >  
旧世紀の風習に準えるなら、3月は最も教育機関が
閑散とする時期。新生活の準備に忙しい卒業生達は
夏休み冬休みと異なり、学校に遊びに来る暇はない。
進級進学に際してリセットされる事柄も多々存在し、
教育活動はほぼ停止する。

常世学園は旧時代的な形態からは外れているが
非公式の入学式卒業式もあり、古い形式が残る
島外の機関への進学、就職を行う生徒は自然と
この時期に集まって離れていく。

従って利用者の絶えない常世大図書館や研究機関は
他の時期より利用者が目減りするこの時期、一斉に
蔵書整理を行う。それに託けて博物館でも収蔵物の
整理が行われるのだとか。

「ま、そーゆーワケでこの時期はココが賑ぅのな」

古書と言えばこの街、古書店街「瀛州」。
静かな趣の古書店街も『書林祭』と呼ばれる期間は
流れてきた本の山とそれを求める人で賑わっている。

フィール > 「中々、賑わってますね…やっぱり掘り出し物とか求める人とかが多いんですかね?」
まるでお上りさんのようにきょろきょろと、落ち着かない様子で周囲を見渡している。

実のところ祭り程の人混みに紛れるのは初めてで、はぐれないよう薫の手をしっかりと握り込んでいる。

「いろんな書物があるんですねぇ。古書から比較的新しそうな…ライトノベル?というのも…」

黛 薫 >  
「そーとも言ぇるし、そーじゃなぃ人もいるかな?
 蔵書整理に伴ぅ処分品が多ぃから掘り出し物って
 呼べるほど貴重な品は少なめ。んでも研究機関や
 図書館に一時でも置かれてた本って過去の基準で
 高価だったモノが多ぃし、信頼性も高ぃのよな。

 古書として流れてくるくらぃだから、少なくとも
 今は貴重品、掘り出し物と呼べなくなってっけぉ、
 そんでも安く手に入りゃ御の字ってトコ」

普段にも増して深くフードを被る黛薫の様子から、
人混みを快く感じていないのは明らか。それでも
自分から行きたいと言い出した辺り好奇心の方が
優っているのだろう。

「つっても、そーゆー処分品目当ての人はそんなに
 いないっぽぃ。むしろこの機会に挙ってセールが
 始まったり、祭りに託けて店頭に本を並べるって
 建前で虫干しを兼ねて普段並んでなぃよーな本を
 引っ張り出してくる店があったり?そっち狙ぃの
 客のが多ぃ気ぃすっかも。

 フィールを誘ったのはそっちの理由もあってさ。
 こっちに移り住んでから、映画とか見るよーに
 なったろ。小説とか漫画とかも楽しめるかも?
 って思ったから。

 コレとかあーしは詳しくねーけぉ、いつだったか
 人気の小説が映画にって話題になってたはず」

店によっては映画やアニメの原作となった小説の
特設コーナーがあったりもする。期待値を思うと
黛薫が求める品、魔法書の類より当たりが多そう。

フィール > 「成程…確かに安く手に入るのなら有り難いですね。私まだ知らないこと多いですし…これから勉強する上で助けになりそうなのも多そうです」
一つ参考書を手に取り。古いものではあるが基礎的な勉強する分には不足は無いだろう。

先進的なものとなると情報の古さから間違いがある可能性があるが。

「あ、これ映画で見たやつですね。これ結構好きなんですよね…」

パラパラ、と流し読みしてみる。
勿論映画化となると省略したりする部分もあるので……

「え、此処こんな展開だったんですか?」

ということも多分にある。

黛 薫 >  
「個人が手ぇ出すには高価過ぎっけぉ、裏ルートに
 出回るほど貴重じゃねーって本、結構あんのよな。
 あーしは書林祭でしかそーゆーの買ぇなくて」

とはいえ、魔法書の類はそもそもの数が少ない。
古今東西の書物が一堂に会すると普通の本の山に
埋もれてしまうから尚更見つかりにくい。

理解している店主が営む店ではちゃんと区別して
陳列されるのだが、よりによってと言うべきか
貴重な本に限って普通の本に混ざっていたりする。

まあ整理された店に貴重な書物があったとしたら
自分なんかより目の利く誰かが早々に掻っ攫って
しまっているはずだから、見つからないのも道理。

「漫画は分かんねーけぉ、小説って密度高ぃよな。
 展開をそのまんま映画に落とし込もうとすっと
 尺が足んなかったりすんのかも?」

黛薫、常世島に移住する前の学校教育で
読書感想文に敗北する程度には娯楽本に疎い。

フィール > 「例えば…こういうのですか?」
分厚い辞書を手に取って。
確かに情報量としてはかなりの価値があるだろう。

しかし量産化により安価となったものだ。おそらくは虫干し目的のものだろう。

「魔導書なんかは…魔力が含有されていればわかりやすいんですけどね。高度な魔術師になると魔力が付着することが多いんで。
でも、私が今欲しいのはそういう魔術の補助になるものじゃなくて魔術の知識になるものが欲しいんですよね…」

フィールは一足飛びで高度な魔術を習得してしまっているため、基礎が脆い。母親譲りの才能で扱えてはいるが、少しでも干渉が入ってしまえば崩れてしまう魔術も多い。

その点で言えば、こういう催しで本を探すのは最適かも知れない。

その書物の量を考えなければ。

「ちょっと買おうかな…ちゃんとしたモノ見てみたいですし」
先程手に取った小説を店番の人に声を掛け購入する。
趣味がまた一つ増えていく。

黛 薫 >  
「辞書に辞典、その手の本も必要とする人が
 多けりゃ安価になんだけぉ……そもそもの
 需要がニッチだったりすると高ぃよなぁ」

需要の少なさとは毛色が異なるが、魔術関連の
知識を広く啓蒙する類の本は思いの外多くない。

神秘の行使に重きを置くタイプの魔術は広める
行為自体がマイナスになるので仕方ないが……
研究を重ねて知識と理論で編み上げるタイプの
魔術は科学と同じで学術的に進歩が可能であり、
普及が需要を生み、需要が進歩を生む。

垣根なく全ての魔術の啓蒙、普及を善しとしない
輩に限ってその区別が出来ていないから困り物。

「何が難しぃって、フィールの扱ぅ魔術の源流が
 フィーナにあるトコよな。此処より進んだ世界で
 魔術に触れて慣れ親しんできたフィーナ基準での
 入口、基礎ってこの世界のモノとは違ぅワケだし。

 あーしが学園で習った『魔術基礎』をなぞっても
 フィールの魔術の成長に繋がるかって言われると
 難しぃ気ぃする。

 つっても、考ぇてたって始まんねーか。
 ひとまず魔法書をちゃんと分けて並べてる店
 行ってみっか。手がかりがあるかもだし」

名画の複製が描けてもいきなり白い紙を渡されて
絵を描けるとは限らないし、一から絵の描き方を
学んだとて複製の技術を活かせるとも限らない。

それこそフィーナに習うのが1番確実なのだが、
間違いなく首を縦に振っては貰えないだろうし。

フィール > 「魔導書もそうですよねぇ…あれは多岐にわたる系統の一つを書いている事が多いので、それを必要とする人はそれほど多くなくて…唯でさえ量産性に欠けるのに需要もあんまりなくて。こういうのは古書でも実績があるんで欲しいところではあるんですが」

そもそも魔導書は手書きのものが多く、印刷されるようなものは学園で扱われる基礎的な知識等に留まっている。一部先進的な書物でも印刷や電子化等が行われているが…需要が足りないのである。

魔術の行使には一定の才能と知識が必要なのだ。それは、隣りにいる薫が証明している。

才がなければ魔力を扱えず、知識がなければ行使が出来ない。
途中で挫折する者も少なくなく…結果として印刷や電子化に掛かる費用との兼ね合いを考えると…どうしても赤字が出てしまったり高くなってしまうのだ。

「一番手っ取り早いのはフィーナに教わることなんですけどね…最近忙しいようでして。この前風紀の方と会ってるのを見ましたよ。伝手でも出来たんですかね?」

フィーナはフィーナで自分の道を歩んでいる。いつまでも頼ってばかりではいられない。

「さて、魔法書魔法書……」

魔法書のコーナーへと向かい、本を見てみる。
ところどころ魔力の漂う書物があるが…今回の目的はそれじゃない。
基礎的な…それこそ入門書が欲しい。しかしフィールはそれを探す能力は皆無に等しかった。

今まで魔力感知に頼っていたツケだ。

黛 薫 >  
「それな。一括りに魔術師、魔法使いっつっても
 系統の差は大きぃから、ある一分野の魔術師に
 とっては宝物なのに、他から見るとゴミ同然
 なんて話も珍しくねーし……」

系統が違えば必要とするものも違う。

魔術の世界で誰にでも広く必要とされる書物を
作るのは非現実的。まして黒字を出そうなどと
考えたところで、実現出来ようはずもなく。

「風紀。んん……確かに、フィーナはどこかしらで
 公安や風紀に会ぅ必要はあったんだろな」

同じ容姿の怪異が好き勝手やらかしていたのだから、
信用を得ておかないと色々支障が出たのだろう、と。
流石にフィールの前では言わないが。

さておき、魔法書が並ぶ店にはスムーズに辿り着く。
黛薫が『信用できる店』をきっちり把握していたと
伺えよう。

「コレはー、正に今話してた特定分野特化の本か。
 勉強にゃ向かねーな。こっちは魔術を扱う上での
 思想関連だから違ぅ。こいつは……あ、勉強とは
 全然関係ねーけぉ、個人的に欲しぃ」

対照的に、つい先日まで魔力感知すら出来なくて
知識と執念だけを積み上げてきた黛薫は本の精査に
慣れている。

黛 薫 >  
「……ん、コレは……使ぇるかも」

そんな彼女が見出したのは、かつて有名だったが
今はあまり注目されていない分野の魔法書だった。

魔術における対人戦、相手の魔術の妨害や制御権
奪取を目的とした魔法書だが、過程で必須となる
魔力の流れや扱いの感覚的理解、術式を解析して
紐解くために必要な技術が懇切丁寧に記してある。

此方より技量で勝る相手には通用せず、格下には
妨害より強みを押し付けた方が早いということで
廃れた分野だが、魔力と術式の理解には良い教材。
この本の内容を理解した暁には、フィーナの扱う
魔術がどれほど高度なものだったか実感できる筈。

フィール > 「お、どれどれ……」

薫が手に取った魔法書を見る。
それは、フィーナが用いていた魔導書にもあった――お世辞にも丁寧とは言えないモノではあったが――魔術に干渉する分野のものだ。

フィールが習得出来なかった魔術の一つだ。

「……これ、相当難しいですよね………」

学ぼうとしたことがあるから知っている。これは相手の魔術を『理解』する必要があり、そのための知識は膨大。様々な分野を基礎だけでも理解しなければこの魔術は扱えないだろう。

魔力感知というアドバンテージがあっても、それを行う難しさはフィールはよく知っている。

黛 薫 >  
「難しぃし、その割に実戦で有効活用するには
 極めねーと効果薄ぃし、そもそも互いの扱ぅ
 術式が確認出来るよーな真正面からの戦闘は
 魔術師なら避けるのが定石。

 そーゆーワケで当初流行んなかったんだけぉ、
 この著者の没後に一時期かなり注目されてた。
 つってもこの人の弟子が軒並み優秀なもんで
 そのついでみたぃな扱ぃだったか」

欠点を連ねると割とどうしようもなく聞こえるが、
最終目標はともかく過程が学習に向いている。

その時期は学問的な魔術より神秘としての魔術が
主流であり、術式の解析に加えて習得に至るまでの
道筋を丁寧に理論化した彼の教えは嫌われていた。

膨大な分野の理解、どこから手を付けるべきかすら
分からないそれらを『学べるもの』に落とし込んだ
功罪は賛否あるが、教材としての優秀さについては
論を待たない。教え子の高名さがその証明。

フィール > 「…いや、でも…………これ、習得出来ればかなり使えそうですね。魔力感知も強化出来れば…………真正面からでなくても干渉は出来る…?」

実際問題として、フィーナはそれをやってのけている。
フィーナ程の感知能力はないが…あるのなら、有用に使えるのではないのだろうか。

魔力の流れから術式を読み取り、干渉する。目に見えている必要はなくて、その魔力の流れを感知すれば。

「買いましょう。これ、使えると思います」

基礎的な学習に向く教材でもあるし、自分に向いた術式でもあるように思える。
買わないという選択肢はなかった。

黛 薫 >  
「その本、分厚ぃけぉ1冊で内容が概ね完結してて
 最後まで理解すればきちんと扱ぇるって話だから
 教科書としてもイィって噂。

 んでも、その本自体を理解する基礎知識があれば
 尚更スムーズに行くはずだし。参考になりそーな
 魔法書もいくつか見繕ってこ」

手にした魔法書が教科書なら黛薫が追加で探した
魔法書は参考書といった趣。恐らく未学習のまま
読んだら数ページと保たず理解が及ばなくなるが、
学習が進むにつれて読めるようになるだろう。

「……と、あーしはコレも買わねーとなんだった」

追加で購入を決めたのはプログラミングの本と
高等数学の本。足りない素質を別分野との融和で
補うスタイルは黛薫向きだが、魔術以外の知識は
まっさらだったので、そちらはゼロからお勉強。

フィール > 「薫は何買ったんです?」
見繕ってもらった魔法書を購入し、薫が手に取っている本を見る。

フィールは基本的に魔術以外の勉強をしたことがないので何が書いてあるのかわからない。

黛 薫 >  
「あーしはプログラミング……んーと、機械を
 動かす命令?関係の本と、その前提に必要な
 数学の教科書とか。魔術ベースのシステムに
 スマホの機能移植したぃって試み、前々から
 話してっけぉ、機能再現より理解で詰まってて」

因みに分厚い魔法書1冊くらいになりそう、などと
軽い見込みで話していた彼女は今2冊目の魔法書の
記述に取り掛かっている。機能再現が出来た頃には
スマホどころかデスクトップPCを持ち運ぶよりも
発動媒体が大きくなるのではなかろうか。

「あと、最近使ぇる魔力が増ぇたお陰で横着して
 出力で物事を解決しちまぃそーになってっから、
 リハビリと訓練のために簡易な魔力制限の術式が
 書かれてる魔法書も買う予定かな。

 それと、物を動かす魔術……テレキネシス系?
 って言やイィのかな。その扱ぃの参考に出来る
 魔法書も探してる。身体が上手く動かなぃなら
 補助的な手段はいくらあっても困んなぃし」

フィール > 「……ええと、つまり……動かすための知識と、その基礎に当たる知識の本…っていう理解でOK?」
改めて薫が高度なことをしているというのはわかった。その内容にかんしてはちんぷんかんぷんだが。

フィールの数学知識は四則計算が出来るかどうかも怪しい。

「あー、私もその魔力制限の術式ほしいですね。容量こそ多いですけど発露が少ないので…出来る限り制限したいんですよね」

フィールは自らの魔力を結晶へと変換することで魔力容量を担保している。

しかし自身の魔力量はお世辞にも多いとは言えず、フィールの習得している魔術…例えば小さな星を扱おうとするなら1週間分溜め込んだ魔力を放出しなければならないのだ。

フィールの魔力操作の経験の浅さも理由の一つだ。そもそもこんな高出力を扱う必要も無い。

黛 薫 >  
「そそ、その理解であってる」

厳密な定義を言い出すと恐らくキリがないが、
黛薫もまだビギナーなのでふわっとしている。

「ん、それじゃ目当ての魔法書が見つかったら
 自分用だけじゃなくてフィール用の術式も
 組んどく。スクロール……は、常用するにゃ
 消費が多くなるか。継続して使ぇる媒体に
 込めとくよ」

最初から発動媒体として使える魔導書を探すという
手もあるにはあるのだが、絶対数が少ないし値段も
高くつく。自前で組むのは勉強、訓練にもなるので
出来るだけ自作に寄せる方針。

「ま、そーゆー目的がちゃんとあって探してる時に
 限って、全然関係ねーのに興味を惹かれる奴とか
 見つけちまって出費嵩んだりすんだけぉ」

遠い目。特定の住居を持てなかった落第街時代、
魔法書を買っては内容を頭に入れて手放してを
繰り返していたあの頃は偶然出会った興味深い
書物に何度悩まされたか。

フィール > 「それは助かります。しかし、ホント目移りしますね…魔法書だけでもたくさんありますし。」

実際フィールは目的外の小説も買ってしまっている。量産品の小説なのでそこまで高くはついてはいないが…余計な出費であることは否めない。

「…そろそろ節制しないといけないですかね……」

一応、資金にはまだ余裕はある。
しかし収入が安定しているとは言い難いので、そろそろ考えなくてはならない。

フィール > ――――中断――――
ご案内:「古書店街「瀛洲」」からフィールさんが去りました。
ご案内:「古書店街「瀛洲」」から黛 薫さんが去りました。