この学園に居住する、異世界からの客である「異邦人」たちのために作られた異邦人街には、大通りと商店街が存在する。
異邦人たちの文化を自由に受け入れているため、学生街などとはかなり趣を異にする。
異邦人たちの元の世界の再現し、その心を慰めるのも目的の一つである。
大通りは異邦人街のメインストリートで、学生・教職員居住区にも繋がっている。またそれに併設されるように異邦人のための商店街なども作られている。
異邦人たちの自治に任されているため、常世島でも特に自由なエリアである。
加えて、住宅街も広がっている。
異邦人のために作られた住宅の並ぶ住宅街。
それぞれの文化を尊重して作られているため、様々な種類の家屋が建てられている。
異邦人が必ずこの住宅街に住まなければいけないというわけではない。逆にこの世界出身の住民が異邦人街に住んでも問題はない。
※フリー設定ルームとして設定しています。部屋説明に準拠する形で、異邦人街にある施設や住居などとして部屋を設定することができます。
参加者(0):ROM(1)
Time:05:57:25 更新
ご案内:「異邦人街 公園」からホロウさんが去りました。
■ホロウ > 「成熟した人は働く上で勤労の義務を果たしていると言います。
学びの最中にある者は学業を生業とするとも言いますが、私は当てはまらないでしょう
であれば、私も働くのが道理かと思ったのですが、誤りなのでしょうか」
人としての可能性を追う。
その為に最適な手段は人を模倣することであると考えたのだが、人ではないこの身に人の模倣は困難なのだろうか。
そもそも、可能性を追うという行為で他者の模倣を行う事がそもそもの誤りなのか。
分らない。どれも少女には初めての経験であった。
「もっと具体性を伴って行動すべきですね。
根本的に考え直す必要がありそうです」
求人誌を脇に置き、立ち上がる。
「それに、間もなく"春"がやってきます。新しい営みが始まる季節です
それに便乗できれば…何か掴めるかもしれません」
僅かな期待と大きく漠然とした不安を抱き、足を動かす。
流石に人目がある中で飛び立つ訳にはいかないと、人目がないところまで歩き、飛び立つだろう。
■ホロウ > 「狭い場所での行動はあまり得意ではないですしね……
出来れば広い場所での勤務が望ましいですが……」
ぶつぶつと呟きながら頁を捲っていく。
仕事を選ぶという初めての経験に思考回路が十全に機能しない。
本来そんな表現方法を持たない筈にも関わらず、少女の眼は定まっていない様にも見えた。
「私に働くという行為は難易度が高すぎるのでしょうか
私には私が働く姿を全くイメージできません」
ぱたんと求人誌を閉じ天を仰ぐ。
観測を得意とし、様々な状況を見てきた筈の自身の脳が自分の姿一つ想像できないとは、滑稽な気がした。
鼻で笑ってしまえるような状況に、普段自由に飛んでいる広い空が、自身の唯一の居場所であると感じられ、どこか不自由を感じる。
「おかしいですね。彼方に居た頃はこんな疑問を抱くことは無かったのですが」
自由とは何なのか考えさせられる。
そう思った。
■ホロウ > 異邦人街にひしめく住宅らの間に、ねじ込まれたように設置された公園…と言えるかも少々怪しい、柵で囲まれたベンチと殆ど禿げた芝生。
そのベンチに、三角形の異質な物体を腰に持つ少女が座っていた。
本来なら妙だと注目を引くその物体も、ここではそこまで悪目立ちしていなかった。
お陰でか、昼間の人通りだというのに少女に向けられる視線は瞬き程のものばかりであった。
その少女の視線はというと、手元の一冊の冊子に向けられていた。
「……果たして私に仕事など出来るのでしょうか」
不安げに呟く彼女は『求人』と書かれた表紙の冊子をゆっくりと捲り、1頁ずつ目を通していく。
その視線には不安や心配といった感情が見てとれ、まるで明日を憂うその日暮らしの労働者のようであった。
ご案内:「異邦人街 公園」にホロウさんが現れました。
ご案内:「花屋『合言葉』」から藤白 真夜さんが去りました。
■藤白 真夜 >
背が高くてずらーっと並んだバーベナに、蝶がとまる。
あの花は、よく虫を呼ぶ。蜜が好きな虫が多いとか聞いたけれど、あんまり詳しくはない。
でもこうして、花屋の敷地を守るように並び立っているのを見ると、もしかしたらあれが蝶避けの結界なのかもしれなかった。
(……植物を楔にして、結界……?
出来るのかな、ドライアドなら……)
魔術的な要素は何も感じなかったけれど、みどりさんならやるかもしれない。
どこか静かな花々の楽園は、蝶を拒絶することで成り立っているのが少し寂しかった。
「……」
……普段は忙しく駆け回ってるせいか、じっとしていると急に眠気が襲ってきた。
普段の忙しさと、みどりさんの所でのバイトの温度差がすごすぎるのが原因なのだ、たぶん。
あげく、期末の課題も目前に迫っている。
鳳先生にもらった宿題も終わっていないし、近々行われる異界呪物探索の準備もいまひとつだ。
手始めに、論文に何を書こうか考えて──……と前向きに悩もうとした気持ちが、花の香にまぎれて薄れていく。
「──……すぅ……」
……今はただ何も考えずに、甘やかな睡魔に身を委ねて。
なんにもしない午睡の時間は、少しの罪悪感も残さずに……安らかに過ぎていった。
■藤白 真夜 >
どこか落ち着かなかった気持ちが、無為に流れる時間に申し訳なく思う罪悪感のようなものが、和らいでいくのを感じる。
人は、忙しくなくてはならないものだと思っていた。
それが、“良いこと”だと思っていた。
此処に居ると、その先入観のようなものが、薄れていく。
強すぎる花の香りのせいか現実離れした光景のせいかは、わからなかったが。
「……あ。ちょうちょ」
ひらひらと目の前をオレンジ色の蝶が飛ぶ。
思わずつられて、こどものような言葉を口走ってしまった。
……この空間、少し危ないかもしれない。のんびりしすぎて。
おびただしい数の花々と裏腹に、虫たちの姿は少ない。
みどりさんが蝶を嫌っているのが原因らしく、なにかの結界のようなものが貼っているのだそう。しかし、たまにこうやってすり抜けた虫たちがやってくる。
(……その割には、土いじりで出てくるミミズとか幼虫とかは平気なんですよね、あのひと)
みどりさんは虫が嫌いというわけでなく、幼虫とか余裕で素手で掴むタイプだ。蝶や飛ぶ類のひらひらした虫が嫌いらしい。
「蝶園にでもできそうなくらいなのに……」
ひらひらと飛ぶ蝶を目で追ううち、花にふれるのはわずかにどこかへ飛び去っていく。
少し勿体ないと思いつつ、目で見送った。
(……まあ、放っておくと奥の雑木林みたいになるんでしょうね……)
結界の届いていない雑木林のほうは、虫たちの楽園になっていた。
ぶんぶんとオオスカシバがクチナシの周りを翔んでいる。
目で見るには少し遠かったけれど、あれはあれでにぎやかで良いと思っていた。
■藤白 真夜 >
「……」
静かに、木のベンチに腰を降ろしたまま、花々を見つめた。
鉢入れに植わっている草花は、明らかに観賞用の派手なものばかり。
ただ、この場所では、花屋から漏れ出た草花達が野生化して好き放題に育っていた。
特に、クチナシと紫陽花がすごい。なんというか、すごい。
花屋の裏には雑木林があるのだが、雑木林を侵食する勢いで猛烈に育っている。
クチナシの真っ白な花と紫陽花の真っ青な花が、まるで陣取り合戦でもするかのように繁茂していた。
「ああいうの、土地の管理とかで怒られたりしないのかな……」
野生の力、と言えなくもなかったけれど、みどりさんは植物を育てるのが異常に上手い。というか、たぶん、なにか特殊な力を働かせている。この店では今は季節的に咲かないはずの花々が大いに咲いてたりする。ドライアドの力を利用した花屋なのだ。
「……うーん」
そんなことを考えようとしても、頭の中に入ってくるのは心地よい風と、甘ったるいクチナシの香りだけ。
すぐに気がぬけた声を出して、ぼーっと何かを考えるのをやめた。
ただただ、そこに居るだけの時間。
……穏やか、というのは少しばかり色鮮やかで、花香が強すぎたけれど。
■藤白 真夜 >
初夏の空は、真っ白な雲と塗りつぶしたような青色で満ちていた。
日差しはあるけれど暑いかといわれると、ほんのり湿った風が吹くせいでそうでもなく。
「……よいしょ」
麦わら帽子にデニムのエプロンという、見るからに土仕事用の格好で鉢植えを運ぶ。
別に暑さには強いのでと断ろうとしたが、こういう格好をしたほうが花屋感が増していいという店長の言いつけだから仕方がない。
炎天下というほどではないものの、蒸し暑さに見舞われる中での肉体労働にさして堪えたふうでもなかった。
「これで全部かな……? うーん、綺麗に並べるとすっきりっ」
ずらりと鉢植えを並べて、運び終える。鉢植えにはこれでもかと種々様々な草花が植えられていて、私の知識じゃほとんどおっつかない。
サルビアにデルフィニウムあたりはかろうじてわかるけれど、色鮮やかを通り越し極彩色に至るまでぎっしりと詰め込まれた花々の色彩を前に、私の頭は花の名を当てるのを諦めていた。
「みどりさーん。終わりましたよ~?」
この花屋の名は、『合言葉』という。店の周りにすら花が溢れてはいるけれどぱっと見ではどう見ても何かの店舗とは思えない有様から、合言葉を要求するタイプの密売店と勘違いされたことから意趣返しに名付けたとか聞いたけれど、真偽はみどりさんしか知らない。
ひょんなことから店長のみどりさんと知り合ってから、力仕事を手伝いにバイトに来ているのであった。
しかしそのみどりさんの経営スタイルは……かなり、だいぶ、自由だ。こんなふうに、返事も無く割り振られた仕事を終えても次の仕事まで数十分開くのも珍しくない。彼女がドライアドという樹々の精霊の種族であるから、時間にゆったりとした認識を持っているのかもしれない。
(……ちょっと休憩かな)
そして、私もそんな暇をしがちなバイトを悪く思ってはいなかった。
花屋の脇にある小さな空間。
そこにはおそらく店主が個人的に花を楽しむためだけに拵えられたであろう、どっしりした木のテーブルとベンチがある。
その場所でのんびり座りながら、ただ時間を待つためだけに過ごすのが好きだった。
無駄だけれど、必要な時間。
それは、私にはひどく得難いものであるように思うのだった。
ご案内:「花屋『合言葉』」に藤白 真夜さんが現れました。
ご案内:「異邦人街・漂着横丁」から深見 透悟さんが去りました。
■深見 透悟 > そうこうしているうちに――ポツ、ポツと緩やかな髪を雨垂れが叩き始める
「うわ、やっべ……どっかで雨宿りしなきゃだ。
ついでに傘買おう、そうしよう」
テディベアを腕に抱いたまま、再び雑踏の中へと躍り出て
本降りになる前にと、最寄りの雑貨屋を探して足早に歩を進めるのだった。
■深見 透悟 > 「んー、真っ当なルートで仕入れをしてるわけじゃないし、仕入れる量もバラバラで当然値段もバラバラ
こういう混沌極まった市場なら掘り出し物も見つかるかと思ったけど、なかなかどうして上手く行かないもんだ」
数件の店を冷やかした末に、店と店の間の裏路地の入口で足を止める
行き交う人々の流れにもまれて若干人酔いの気を覚えて小休止のために壁に寄り掛かれば、空はいよいよもって暗くなり重い気分に拍車をかける
「せめてリリィは置いて来れば良かったかなあ……防水カバーとかあればそれ買って帰ろ」
自分は濡れても良いけど大事な相棒は死守したい。壁に寄り掛かる際に背から下ろしたテディベアを抱え、小さくため息を溢す
こうして雑踏から抜け出したのも雨の気配に足早になる人々がぶつかるのを避ける為もあった
小さく後悔を口にしながら、きゅぅ、とテディベアを抱き締める姿は均整の取れた顔立ちも相俟って少女にも見えなくもない
■深見 透悟 > 空はどんよりと雲が立ち込め、今にも降り出しそうな様相を呈している
――それでも此処、異邦人街の漂着横丁と呼ばれる商店街は活気に満ちていた
立ち並ぶのは各々の故郷の様式を模した商店、行き交うのは多様な種族の人々
その中にテディベアを背負った少年の姿もあった
「はー……梅雨時はホント気が滅入る……土塊ボディにゃ雨は大敵だってのに
ついでにリリィも濡れちまうし、まさに百害あって一利なし!」
時折空模様を気にしながら、すれ違う人々にぶつからないように注意しつつ
異国情緒どころか異世界情緒あふれる通りを、軽い足取りで進んでいく
「さっさと目当てのモノ見つけて帰ろっと」
こんな天気じゃ口数も減ってしまう、と唇を尖らせ独り言ち
いやだいやだと愚痴りながら、目当てのモノ――魔術媒介を探してきょろきょろと視線を巡らせる