2020/08/07 のログ
ご案内:「異邦人街」にヒメさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」に山本 英治さんが現れました。
ヒメ >  
体にボロボロの白い布の欠片……
そして、何処で見つけたのか、大きな葉っぱらしきものを体にぐるぐると巻き付けて皇は歩いていた。

「ふむ……これが、マチ、とかいうものか?」

このサイズの生き物が集まるとこに来るには初めてだ。
とても物珍しい。
まずは観察だ、とあちこち歩き回る。

「ん……?」

ふと、見ると何やら品が布の上に並べてある場所がある。
そして、おそらくそれは食べ物の類、と予測できた。
こんな場は今まで見たことがなかった。

しかしまあ、わざわざ収穫して並べてあるのだ
つまり、これは好きにくらえ、ということだろう。
実に気の利いた話だ、と思った。

まずは手にとっていくつか品定めをする。
うむ、これが良さそうだ。

「あぐ」

むしゃり

おそらく、木の実のたぐいであろうものを口にした。
うむ、旨い。

「よい品じゃな、褒めてやるのじゃ」

上機嫌で皇は言った。

物売り > 「ちょ、お嬢ちゃん! 代金!代金払ってよ!
 ほめてやろう、じゃないよ!!」

ヒメ >  
「……ダイキン?」

皇は首をひねった。
対価を支払って何かを買う。
そういった行為を、皇は知らなかった。

山本 英治 >  
警邏中、そのやり取りを見た。
なんか果物売りの薬師寺さんとこで騒ぎ。
そして……
心臓が跳ねた。忘れもしない、6月25日からずっと探していた姿。

ヒメだ。

どうやら人と果物の代金で揉めているらしい。
いけない、人との社会でやっていけないと判断されたら。
消されるか、封印か……どの道、ロクでもない末路を迎える。

「ハァイ、薬師寺さん久しぶりー!」

笑顔で早歩きに近づいて。

「その子俺の知り合いの異邦人なんだ、ごめんねぇ」
「まだ貨幣ってもんを理解してないみたいなんだ、ここは俺が払っとくよ」

そう言って値札を見た。
ミレスリア・フルーツかよ。
異世界産のお高い果実じゃん!!
引きつった笑顔で代金を支払った。

「……ヒメ、久しぶりっすね」

ガリガリと頭を掻いて、苦笑した。

「山本です、覚えていますか」

薬師寺 > 「おう、英治じゃないか! え、なに? 知り合い?
 しょうがないなあ……ま、払ってくれるならいいよ。
 ちゃんとその嬢ちゃん教育してやってくれよ。通報するところだったぞ、まったく」

薬師寺は溜息をつくも、素直に引き下がって代金を受け取った。

ヒメ >  
「……うん?」

なにやら言ってきた●●●を、どうしたものか、と眺めていたら
呼びかける声がする。

そいつは、目の前の男となにやら会話を交わし……なにかを渡している。
なんじゃ、あれ。
いや、しかし特徴的な帽子……いや、髪、だったか?

「ん、うむ。覚えておるぞ。エイジ、じゃったな!
 ……ん? 死んだのではなかったのか?」

完全に認識が誤っていた。

山本 英治 >  
「すいません薬師寺さぁん、今度からまた贔屓にさせてもらいますってー」
「やれやれ、教育かぁ……荷が重いなぁ」

本当にな。
俺が誰かに何かを教える日が来るなんて、思いもよらなかった。

「はい、英治です……あと、死んでません…」

地味にひでぇ!!

「ここに並んでいる物は全部、商品です」
「売り物、とも言います。カネという貴重品と交換しないと食べたりしてはいけないものです」

「人間の所有物には、それぞれ持ち主がいて」
「……売り物でないモノもいっぱいありますが…」

「基本的には、お金を手に入れないと人の街で食べ物は口にできません」

遠くを見る。雑踏を。
人の流れが激しくて、様々な種族がいるこの街を。

「少し歩きながら話をしませんか」

ヒメ >  
「ふむ、死んでおらんかったのか。
 であれば、良かったのじゃ!
 いや、エイジが連れていかれた時にな、処されるのじゃろうなと思っておったからな」

そういう認識だったらしい。
むしろ、そういう世界だったのかもしれない。

「ショウヒン、ウリモノ、カネ……?」

初めて聞く概念だ。
要するに、何かと交換する……いや、決まったものと交換するのか。
それであれば、まあ分かる。元の世界でもないわけではない。

しかし……単なる物々交換ではない、とは●●●はやはり、ややこしいな。
別に交換する品を限定せんでもよかろうに。

「うん? 話? 別に良いのじゃ。
 じゃが、此処では駄目なのか?」

別に特に不満はなさそうで。
ただ単なる疑問を持ったようだ。

山本 英治 >  
「いやもう処されるほど悪行してないんで!」
「まぁ……確かに死んでなかったのは良いことですね…」

善性がないわけじゃない。
頭もいい。ただ、純粋であるがゆえに。
この世界から敵視される可能性がある。

「ここは往来で、人の流れを邪魔すると嫌がられますから」
「知らない人に話の腰を折られるのも面倒でしょう?」

別に落ち着いて話せるならどこでも構いませんが。
そう言って歩き出す。どこから話したらいいものか。

「ヒメ、今までどこで何をしていたか聞いてもいいですか」
「興味があります……とても」

風紀として。人間として。漢として。山本英治個人として。
伝えられるものは、伝えたい。そうでしょう、羽月さん。

ヒメ >  
「ふむ……そうなのか?
 シュウの説明では、世のような雌の容姿で身に布をまとっていないような者と
 ともにあった場合、罪に問われる、というような話じゃったが……」

実際、いわゆる全裸状態で共に居たので勘違いされて連行されたのだ。
一緒に居た羽月柊が罪に問われなかったのは運が良かったとも言えるのだろうか。

とはいえ、今も布代わりに何処で拾ったのかわからない巨大な葉っぱを身に巻きつけているだけなので、
一般的には際どいといえば際どいかもしれない。
皇には其の辺の機微は分からなかったが。

「ふむ……確かに、此処はヒトが多いのじゃ。
 よかろう、歩いて話すとするのじゃ。」

素直に歩き出した英治についていく。
歩くたびにしっぽがゆれる。

「うん? 今までか?
 まず、シュウのケンキュウジョ、とやらにいったじゃろう?
 それから……あとは、大地を歩き続けておったのう。
 この姿じゃと進みにくくてかなわぬ。
 此処を見つけたのも、今日じゃな。
 あとは、植物と、たまに動物くらいで後はまるで何もないから驚いたのじゃ」

なにがあったか……と考えながら、まずはざっくりと説明をする。

山本 英治 >  
「さすが羽月さんだ、話が早くて助かるね」
「ありがたくて涙が出ちゃう」

鼻の頭を掻いて。

「罪に問われても極刑にはならない感じですし、そもそも俺がヒメを裸体にしたわけじゃないので…」
「誤解が解けた、という感じでしょうか」

服くらい買うか。
話しながらでも幼女用の服くらいは買えるだろう。

「羽月さんには世話になっちまったなぁ…あ、俺の話です」

懐から馬の写真を取り出して、彼女に渡す。

「その絵の生き物に見覚えはありますか?」

そう言って服屋に入り、店頭でヒメを指して彼女に合うフリーサイズの服を見立ててくれ、と言い。
その隣の店で靴を選び始める。
……なんか思い出すな、ニーナと友達になった日のことを。

俺は彼女と…ヒメと友達になれるだろうか……

ヒメ >  
「ふむ……罪の軽重じゃな。比較的軽いものじゃった、と。
 それに……なるほど、誤解か。
 確かにシュウは捕らえられていなかったのじゃしな。
 であれば、理解できる。」

ふむふむ、と説明に納得する。
逆に見れば決定的に、常識がズレている、ともいえる。

「うん……? これは……絵か? なかなか真に迫っておるのじゃ。
 実に上手の手になるものじゃな。高名な絵師の手によるものか?
 小器用じゃとは思っておったが、得難き才を持つ者がおるのじゃなヒトは。」

差し出された写真を興味深く眺める。
とても面白そうな顔つき。

「うむ、覚えはあるのじゃ。
 そうじゃな……しばらく前に、食らった覚えがある。
 あれは実に美味であった」

思い出したのか、ちろり、と赤い舌で唇をなめる。
紅い、紅い舌で。

山本 英治 >  
「羽月さんまで連行されてたら本当、頭抱えてましたよ…」

服屋の店員から渡されたのは、Tシャツとオールインワン・サロペット。
靴屋から回ってきたのは歩きやすそうな幼女向けなデザインのスニーカーか。
全部買ってもさっきの果物ほど痛手はない。
適度にガーリッシュで好印象なコーデだ。

「ヒメ、お召し物を買いました。捧呈致します、さー両手を上げてー?」

突然、子供にするような喋り方に変わるのは変か。変だな。
まぁ相手が従ってくれるなら服を着せよう。

「それが絵画であれば確かに凄いのですが」
「それは機械……カメラという道具で紙に焼き付けたものです」
「スイッチひとつで景色を写し取れるものなんですよ」

そして、食らったと言われれば。

「そうですか……その馬、食べたら人間に怒られませんでした?」
「例えば、鉄の筒から金属の弾を撃たれたとか」

ヒメ >  
「うむ? うむ」

なんだかよくわからないが……そういえば、布はつけておいたほうが良いのだった。
またエイジが捕まっても……まあ関係ないが、見どころのある者をみすみす攫わせるのも面白くないのは確かだ。
素直に言われた通りにする。

ということで、しばらく後にはちゃんとした格好の少女が完成していた。

「機械、か……魔術以外の、ヒトの作り出した技術じゃったか。
 うむむ、てれぴん、とやらといい、この世界のヒトの技術は侮れぬようじゃな?」

思わず唸る。
これだけの技術……実に面白いものだ。
是非に欲しい。

「うむ? ああ、確かに。
 世が食らった後に、ヒトが来てな。なにやら言うて、うむ。
 そうじゃ。シュウは確か"銃"、と言っておったな。
 それを使われたな、確かに。
 なに、あの程度の下位金属で世を傷つけることなど敵わぬ。
 安心するが良い」

からからと、問いかけの意味もわからずに呵々大笑する。

山本 英治 >  
「よくお似合いで」

Tシャツ、オールインワン・サロペット、スニーカー。
まぁ、こんなところだろう。
あとは髪か尻尾の装飾だろうか。嫌がるかな…羽月さんに相談しないと。

「そうなんです、ヒトの技術はすごいんです」

でしょー?と人差し指を立てて。
俺が考案した技術でもないのに言ってみる。

そして、ヒメはやはり罪を自覚してはいない。
あと……恐らくだが、罪を理解するまで長い時を必要とするだろう。
俺にできるのは、スタートラインに立ってもらうこと。

それも困難な道だ。

「実はそれ、マイナスポイントです」
「人の社会で人と共に生きる生き物を食べました」
「大きな大きなマイナスがヒメに貯まりました」

立てていた指を下ろして、アフロを弄る。

「マイナスポイントが貯まりすぎると、ヒメは『世界』の仕組みに殺されたり封印されたりします」
「さっき言った人間のすごい技術がなんかこう…人の怒りを一身に受けてどかーんです」

「困りました……人間が蔓延る世界で人間の怒りを買うと、後が怖い…」

ヒメ >  
「似合いか。ヒトの装飾は世ではよくわからぬので、それなら良い。
 今はヒトの姿であるとはいえ、皇に相応しい出で立ちであらねばならぬのじゃ」

間違いなく、皇に相応しい姿ではない。
どちらかといえば、可愛い姿であった。

「む……シュウも言っておったな。
 ヒトの『法』の話じゃな?
 マイナスポイント、とな。」

英治の話を聞いて考える。
シュウのやつもヒトの"相棒"、といっておったか。
ヒトは『法』をやたらと作っているようで、ややこしい。

「よい。ヒトの理屈は分かったのじゃ。
 それが弱小なる者たちが世界を纏める術であることも、
 シュウと話してわかっておる。
 じゃが、だからこそ聞いておくのじゃ」

では、突き合わせるとしよう。

「そもそも、世はヤツ……"UMA"じゃったか? に問いかけをしたのじゃ。
 『何者か! 名を名乗れ!』とな。
 結果、ヤツは転げ、地に伏し、息絶えたのじゃ。
 ヤツは世の威光に伏して、死を選んだといえよう。
 ゆえに、世は、ヤツの死を憐れみ腹に収めた。」

皇は、独自の理屈を口にした。
それは荒唐無稽、というべきか。
それとも、絶対者ゆえの強者の理屈か。

「これは、いかなる罪なのじゃ?」

山本 英治 >  
「そりゃー良かった」

なんというか、ズレている。
それでもズレたまま生きる上で折り合いはつけなければならない。
折り合い。折れるのか、俺は………

「はい、マイナスポイントが貯まると良くないことになります」

羽月さんはある程度の話をしていてくれたようだ。
今度、菓子折りでも持っていこう。
勿論……この話が穏当に終わること前提だが。

「この世界の生き物には、ヒメの御力は強すぎた」
「それで生き物が死んだ……となると」
「食べた者の相棒は憤るでしょう」

「ヒメ、失礼ながらご家族はおられますか?」
「あるいは、ヒメに傅いた者に家族はいましたか?」

どこから説明して。
どこまで説明して。
この物語は……

ヒメ >  
「なるほど? つまり、ポイントは貯まるわけじゃな?
 して、消えることはあるのか?」

よくないこと、はシュウにも散々言われている。
そこについては、今は不問にしておく。
まずは仕組みを理解しないことには始まらない。

「うむ……世とて、別に虚無より出でしモノではないのじゃ。
 そう誇れたら、また気持ちもよいのじゃろうが……流石に、それはない。
 エイジが言いたいのは、相棒、さもなければ知己を失う憤り、じゃな?」

ちょっと心外である。
いや、無より出ずる者、という絶対存在にはそれはそれで興味はあるし、
そう思われたのならそれはそれで気持ちいいが。
流石に自分だってそこまで絶対的ではない。

「いや、エイジ。世を冷たき為政者と思うておるのか?
 世の世界とて、失う憤りくらい当然にあるものじゃ。
 絶対なる龍種とはいえ、それぐらいは持ち合わせておるわ。」

失われたものへの怒り、それは勿論当然の感情だ。
それはすべてのものが持って良い感情だろう。
そもそも、自分自身、失われたUMAの命を憐れんだのだ。

「世としては、じゃ。
 ヒトの『法』を見定める。それがしたいだけじゃ」

山本 英治 >  
「それは謝罪と償いで消えます」
「許されるかどうかは、わかりませんが……」
「謝らなければ、少なくとも相手からは絶対に許されません」

続く言葉に、自分を責めた。
心のどこかで龍を超然とした存在と思っていた。
一つの個として完成された生き物だと。
だから……心の中に言い訳だって出てしまう。

「申し訳ありませんでした、非礼を詫びます」

頭を下げた。
髪が揺れて、周囲の通りすがる人からの視線を集める。

「仮に死んで、その命を憐れんだとしても」
「馬の相棒はそうは思っていません……あなたに殺されたと思っている」
「その誤解が解けなければ」

「あの馬の飼い主は、死ぬまで心に冷たいものを抱えるでしょう」

「法律としては器物損壊罪……人の持ち物を勝手に壊した以上のものはありません、今は」
「しかし、人の負の感情は……」
「時に法を超える過去からの銃弾として御身を穿ちましょう」

ヒメ >  
「謝罪と償い……なるほど?
 『法』に反した否を謝る。
 反した分を償う……まあ、道理じゃな。」

理屈としては合点がいく。
過ちは謝して償わせる。
それは為政者として当然の習わしだ。

問題は、過ちと認識できるかどうか、ではあるが。

「よい。龍種はヒトには計りづらいのは理解できるのじゃ。
 そも、其の程度の不見識など取るに足らぬものじゃ。」

頭を下げる大男に、少女は呵呵と笑って答える。
外から見れば異様な光景であろう。

「ふむ……では、此度の一件は『法』の問題であり、
 しかし『法』の問題ではない、と……そういうことじゃな?」

大筋は、おそらく理解した。
なるほど、感情と法を切り分けられぬとはヒトは面倒なものじゃな。

「で、あれば。
 『法』としては、世は何を償うべきじゃと?
 世の世界であれば、同等のものを返す、もしくは失わせることになるのじゃが。
 生憎と、"馬"とやらも、相棒も、持ち合わせなどないのじゃが。」

目には目を、歯に歯を。
そんな法がかつてあった。
これは、其の体現か。

「そして、感情。感情か。難問じゃな?
 ヒトの感情なぞ、世には分からぬ。」

はて、と首をひねる。

山本 英治 >  
「ご理解いただきまして……」

俺は何をしている?
異分子に異文化を教えるのは本当に正しいのか?
ヒメに“教える”ほど大層な人間なのか?

そもそも俺は………罪人だろう…

首を左右に振って考えを振り払う。
自己憐憫を自分で処理できない人間は風紀にいてはならない。

「はは……ありがとうございます、ヒメ」

ヒメの寛大な言葉が、逆に心を抉る。

「そういうことです……」
「俺個人としては、ヒメには馬の飼い主に謝るのが一番だと思います」
「謝罪……するんです。俺も同席します、風紀委員といって、罪と罰を司る者の末席なので」

どこから言っていいのか、わからないけど。
言わなきゃいけないんだ。

「ヒメが家族を殺されたら、怒りますよね?」
「相手はそれくらい怒っていると仮定して……謝るんです」
「困難で、険しい道行きとなるでしょう」

「ヒメに人の感情がわからなくても、人は感情を勝手に持つ生き物ですからね…」
「難儀で、厄介なんです。俺らは」