2020/09/05 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に修世 光奈さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神樹椎苗さんが現れました。
修世 光奈 > 夜の常世渋谷
本来なら、非常に危険な場所ではあるが。
表通りの一部にはお墨付きを押されている場所があり…そこは一般人でも安全と言える一角となっている。
そして、そんな区画の中でもよく待ち合わせに使われるロク公像前が光奈と、とある人物との待ち合わせ場所だ。


「―――♪」

そして、像の前でずっと立っていながらも、小さく微笑みながら体を揺らしている様子から。
今日の待ち合わせが楽しいものであることはよくわかる。
依頼を受け、今日待ち合わせた相手が抱えた事情はとても大きいが。
何度かメールのやり取りをしている感じでは非常に話しやすい相手のように思える。

もちろん、遊ぶためだけではなく依頼にも関係しているからこれは無駄な約束ではない。
その相手と深く話すことが、依頼達成の糸口となるかもしれないのだから。
さて、一応メールで待ち合わせ時間はすり合わせたものの、やはり時間が近くなってくればきょろきょろと、待ち合わせ相手を探し始める。

神樹椎苗 >  
 ロク公像前で待っていると、人並みから押し出されるように小さな影が転がり出る。
 ほんの少し息を切らせてやってくると、左手でグレーのキャスケットを押さえながら待ち合わせ相手を見上げた。

「――ちょっと、待たせちまいましたか。
 娘の夕食を用意してたら、出るのに手間取っちまったのです」

 そう少しばかり申し訳なさそうに。
 黒に白いレースの混ざったロリータ衣装は、以前とは違う余所行き用なのだろうとわかるだろう。

「今日はエスコートを頼むのですよ」

 そう言って、左手を差し出す。
 その様子は、そわそわとしていて、感情の薄い表情からも楽しみにしている様子が滲み出ているのが分かる。

修世 光奈 > 思えばここは、人もそこそこに多いから少し外した場所が良かったかな…と後悔していたところに。
可愛らしい恰好をした待ち合わせ相手が目の前に転がり出てきた。
対する光奈は、夜でも暑いと感じているのか、目立たない装飾が入った白Tシャツに足首までのジーンズだ。

「娘…ああ、沙羅さん…だったっけ。
ううん、全然待ってないよ。しいちゃんこそ、今日はありがとうー!」

会ったことは無いが、相手のデータを見た時に書いてあったことを思い出す。
申し訳なさそうな相手の手を取りながら、笑顔で迎えよう。

「ふっふっふ。お任せあれー。えっと、あっちのビルの4階かな。看板も出てなくて見つけたときはびっくりしたよー。いこいこ!」

別の依頼で、そのお店に関する捜索依頼があったため、偶然見つけられたお店だ。
マイナーキャラクターを前面に押し出している店だから印象に残っていてよかった。
そわそわしているのを見ればくすくす笑いながらゆっくり歩き出そう。どちらにしても、場所は割と近くだ。

光奈の案内に従っていけば、ネコマニャンが飛び交う絵が描かれたガラス扉の前にたどり着く。
中を覗けば、壁紙から何から所々に同じようにネコマニャンが居る店内が見えるだろう。

神樹椎苗 >  
「礼を言うのはしいの方です。
 色々と考えてくれるのはありがてーと思ってますよ」

 そして、はぐれない様に半歩後ろをついていく。
 ビルを見れば、ぱっと見では何かあるようには見えない。
 しかし、扉の前までたどり着けば、椎苗の目はきらりと輝くだろう。

「――ネコマニャン!」

 やや平坦だが、それでもどこか力の篭った声。
 歓声と言うには静かだったが、中をのぞき込もうとすでに身を乗り出しかけている。

「探偵もどき、見るのです、ネコマニャンです。
 よくやったのですよ、こんな店は簡単には見つからねーのです」

 うずうずとした様子で、隣の女子を見上げていた。

修世 光奈 > 「依頼だしね。私のやりたいことだから妥協は…できるだけしたくないし。」

そう言って笑いながら…もちろん、歩調を合わせて。
相手がはぐれないように人の波を進んでいこう。
ビルは綺麗ながらも特に何も表示されておらず…見ただけでは何があるかわからない。
ここを見つけられたのは、幸運とも言えよう。

「店主さんがすごく好きみたいでね。何か他に収入減があって、趣味全開でやってるんだってさ」

相手の出自を考えれば、小さな体躯と精神は一致しないのだけど。
うずうずする様子は見た目相応に可愛らしく思う。

「入ろ入ろ。パフェ食べないとねー」

などと言いながらガラス扉を開けて。
中は壁紙などは明るい色調で、カウンターが何席かと4人掛けのテーブルが2つ。
他のお客さんはカウンターに女性が1人だけだ。相当な穴場らしい。

「せっかくだしテーブルでゆっくりする?いいですかー?」

明るく光奈が聞いてみるとカウンターの内側に立っていた店主がいい笑顔で頷く。
テーブルに着けば、そこにはメニューが置いてあり。
パフェの他にもネコマニャンの焼き印がついたパンなどもあり、更にジュース等のグラスにもネコマニャンの顔がプリントされているようだ。

「さ、楽しも―!美味しくて好きなモノ食べた方が色々話しやすいしねー♪」

なーにーにーしよーうかーなーと間延びした声を出しながらメニューを広げて見せよう。

神樹椎苗 >  
 扉を入った店内の様子は、ある意味理想的ともいえる光景。
 店主とは趣味を理解しあえそうだ。
 人が少なく静かなのも、椎苗としてはポイントが高い。

「二人で連れ立ってきて、カウンターもねえでしょう」

 テーブル席を選ぶ女子には素直に同意を示して、向き合うように椅子に掛ける。
 真っ先にメニューを開いて、パフェのページを開いて目を輝かせた。

「なにはともあれパフェです、パフェを食べなくちゃ始まらねーのです。
 他はそれからじっくり制覇してやるのです」

 メニューの中に在るネコマニャン商品を見逃す事なくチェックしていく。
 ドリンクはミルクココアを頼む。
 パンは後で持ち帰れるかどうか聞いてみようか、と考えつつ。

「お前は何にするんですか?
 普通に軽食もあるみてーですし」

 と、メニューを一緒に眺めながら。

修世 光奈 > 「それもそうだねー」

あはは、と軽く笑いながらテーブル席へ。
広げられたメニューはネコマニャン一色だ。
光奈が言っていたパフェは…内容自体はクリームとチョコレートが層になったパフェ。
ただ、頂点のチョコアイスの上に特注の万歳ポーズをしたネコマニャンクッキーが乗っている。

光奈は飲み物にオレンジジュースを選択してから。

「制覇するんだ…ほんとに好きなんだねー。…んーーーー!悩むなあ…ちょ、ちょっと夜だし…こっちの小さいので…」

そう、この時間の甘いものは甘美であるが故に罠である。
ただ、軽食というのも少しこの夜というシチュエーションに合っているのかどうか。

そんな悩みから、増えた体重を嘆くことを少しでも避ける為に小さめのショートケーキを注文する。
これもまた、ネコマニャンの顔のチョコプレートが乗っているものだ。

ゆったりとやってきた店主…おしとやかな女性にそれらを告げれば。
少々時間をいただきます、と言って店主は下がっていく

「ふー…。落ち着いたところで、早速色々お話しよっか。
神木が関係あることでも、ないことでもさ。あ、そうそう。料理作れるんだよね。すごいなあ…
私、簡単に焼いたりとかはできるけど、ちょっと色々覚えたいなって思っててさー」

その後、光奈はにっこりと笑って、まずは当たり障りのないことを話し始める。
会話することによって少しでも真偽の差異がわかるようになればいいのだけど。

神樹椎苗 >  
「制覇するつもりですが――カロリーですか?
 そう言えば気にしたことなかったですね」

 対面の女子が何に悩んでいるのかと考えて、思い当たった。
 そう言えば娘も気にしていたように思う。
 店主への注文を任せて、パフェを楽しみにして無意識に足を揺らしていた。

「ん、料理はまだすごいってほどのもんじゃねーですよ。
 一応師匠になるのですが、白ロリ先輩の料理はすげーです、そこらの店と格がちげーですからね」

 そう言いながら、左手でポシェットから端末を取り出し。
 簡単に操作して、写真を表示する。
 映っているのは非常に美味しそうな、タマゴがつやつやと輝くオムライスだ。

「レシピ通りにやっても、どうにもこうはならねーのです。
 こだわりのすげーので、教えられるのもなかなか大変ですよ」

 などと言いながら、スワイプして何枚かの料理の写真を写す。
 煮物に焼き魚にハンバーグやら等々。

「しいも、娘に食べさせるまでは料理なんてしたことなかったですよ。
 とりあえず、レシピ通りに焦らず作れば大体形にはなります。
 まああとは――誰かに食べさせようと思えば、やる気も違いますよ」

 と、最近料理を初めて思った事を口にする。

修世 光奈 > うらやましい…!とつい口に出てしまったのは仕方ないだろう
太らない女子というのはファンタジーだと思っていたが、やはりというべきか目の前の相手はその類のようだ。

「おー…おいしそー!」

身を乗り出して美味しそうな料理たちの写真を見ていく。
特にオムライスは黄色い宝石のようだった。
確かに、格が違うという相手の言葉もよくわかる。

「理由が大事、ってこと?…そっか。そっかー……
あ、あ、別にあれだよ、誰に食べさせたいってわけじゃなくて、えっと、うん。できないよりは出来た方がいいかなーって!」

もうバレバレではあるが、ごまかしを入れたが

「…………。そのー、やっぱり、男の人ってこういうハンバーグとかの方が喜ぶかな?」

しばらくの無言の後、観念してハンバーグの写真を示す。
明らかに、メールでバレている『彼』の好みを考えている。
女子寮にはキッチンもついているし、練習もできるだろうと。

神樹椎苗 >  
「そもそも理由がなければ料理はしないでしょう。
 その理由次第で――どこまでこだわりたいか変わってくるでしょうけど」

 相手は、恋人に料理を振舞ってあげたいのだろう。
 それはとても、『それらしい』事のように思える。

「そうですね。
 相手にもよるでしょうけど、故郷の味というのは特別な想いがある事が多いようです。
 単純に男女で考えるなら、まあ、それなりにしっかり食べられる物の方が好まれるかもしれませんね」

 椎苗の部屋では、娘の要望によりヘルシーで栄養バランスのいい食事を心がけている。
 女子がそう言った食事を好むのなら、単純に考えれば男子は所謂重ための食事の方を好むのだろう。
 実際、学食や購買では、安くて沢山食べられる物が人気らしい。

「ハンバーグは作るだけなら比較的簡単ですよ。
 労力はかかりますが、焼き加減さえ焦がさないようにすれば何とかなります。
 わかりやすいレシピ本、教えましょうか?」

 と、自分が参考にしているレシピ情報を思い返しつつ。

修世 光奈 > 「故郷の味、としっかりしたものかぁ…こっそり今度聞いてみようかなあ
あ、うん!お願い!女子寮にせっかく料理できる環境があるからさ。色々試してみようと思って」

もう知られているのだから隠す理由もない。
素直にアドバイスを受けよう。
ほわほわ、と想像を巡らせていると相手から嬉しい申し出。
二つ返事で頷いたところで、まずはココアとオレンジジュースが運ばれてくる。
微妙にグラスの絵にバリエーションがあるらしく、光奈の方は少しカッコつけているネコマニャンだ
オレンジジュースをちゅー、とストローで飲み

「…んー。…やっぱり、さ。生きる為に死にたいって…その娘さんとか、他の人が関係あるのかな」

不死であるという気持ちはわからないけれど。
相手の気持ちを想像して考えてみた時に光奈の頭にはそういった考えが浮かんだ。
だから、もしかしたら、と問いかけて。

「そうだとしたら。今でも頑張ってるけど、もっと頑張ろう!って思えてさ。
メールの内容をもうちょっと深く考えたんだ。聞いてくれる?」

神樹椎苗 >  
「なら、いくつか見繕っておきますよ。
 料理は経験すればするだけ、理解するだけ上手くなれますからね」

 そう話しているうちに、ココアがやってくる。
 グラスにはだらりと、だらけているネコマニャンの姿。
 再び目が輝き、端末を手にそのグラスの写真を撮る。

「探偵もどき!
 そっちのグラスの写真も撮らせるのです!」

 そんな、外見相応の子供らしい振る舞いが見れるだろう。

「――んえ、理由ですか?
 娘は、まあ無関係でもねーですが。
 どうしてかと言われれば、宗教的なもんですかね」

 深く考えてみた、と言われれば、ふむ、と思案顔をして。
 続きを促すように顔を見る。

修世 光奈 > ありがとー、とまたお礼を言って。
一転、はしゃぐ様子にも笑顔を誘われる。
それにつられてグラスをそのまま差し出し、カッコつけネコマニャンも端末に収めてもらおう。

「宗教?…えっと、例のカルト教団に関わること…なのかな。
まあ、一旦置いといて」

大げさに何か箱状のものを左から右に置くモーションをした後少し声を潜める。

「最初に送ったメールのさ、2番目の案。
しいちゃんと神木を切り離すやつだけど…先に、神木の方にしいちゃん以外を端末にするように―、とかできないのかな
それこそ、木とか…。その後しいちゃんを切り離せば、神木が生むのはその新しい端末――になったり?
でも、もしかしたら端末を変えた時点でしいちゃんが木になったりしちゃうのかな、その場合」

それは、メールの内容をさらに発展した案。
メールと同じく可能不可能を度外視して、アイディアを出しまくる形だ。
そして…一応面と向かって神木の事を聞くから、何か態度に違いはでないだろうかと。
この案が神木にとって都合が悪ければ、神木にとって都合のいい方に誘導する文言が返ってくるのだろう。
返ってこなければ、それはそれで有効ではない案だ、ということだ。
ただ、それを見破れる可能性が低いのが問題ではあるが。

「いや、どうにも頭がパンクしそうで…。これくらいしか浮かばなかったんだけどさ
まだ、他の人に相談とかもできてないから、がっかりだったらごめんね…」

依頼が進まない、というのはもやもやとする。
頭もそれほど良いわけではなく、直感に頼るタイプのため全く的外れな可能性もあり、先に謝っておく。

丁度、話を終えた直後にケーキとパフェが運ばれてきた。
ケーキは小さめサイズ。パフェは中々の大きさだ。
大食い関連で出てくるサイズではないが、がっつり、と言えるサイズ

神樹椎苗 >  
「――さて、出来るか出来ないか、という点だけで言えば、出来なくはないと思います。
 ただ、それにはしい以上に、『神』が好む依り代が必要ですね。
 神木がしいを端末に選んだのには、しいが『神の手足』として具合がよかったからですしね」

 神木の能力、その神性を身に受けても壊れないもの。
 大量に蓄積された情報を押し付けられても、自我を維持できるもの。
 またそれらを扱える『知能』があるもの。

「基本的に知性体じゃねーと無理ですね。
 ただ、もししいが端末として不要になったら――まず、真っ先に学園が財団に始末――良くて捕縛されるでしょうね」

 試験運用とはいえ、データベースのバックアップの扱いだ。
 余計な事まで知っている相手を、自由にさせておくほど寛容ではないだろう。
 今は利用価値があるからこそ、自由が約束されているだけなのだ。

「その案に関する問題点は。
 しいの『代替品』を用意できるかと、しいやお前の身の安全を確保できる『取引材料』と言った所ですか。
 切り離す方法自体は、やり方はいくらかあるで――」

 と、受け答えしたところにやってきたケーキとパフェ。
 椎苗の言葉は途切れて、夢中で写真を撮り始める。
 その表情は、やけに真剣だ。

「――た、食べるのがもったいねーです」

 ふるふると震えながら、パフェを真顔で見つめていた。

修世 光奈 > 「……代わりの依り代…それに、対価、かぁ。
方法を考えてみると難しいねえ。切り離す方法も…ある、としてもそれから、かそれまでが大変だし…」

あくまで、参考程度。
もしかすると、神木の影響で何処かに欺瞞が混ざっているかもしれない。
ただ、それを離す相手の様子はほとんど変わらず、やはり簡単には嘘とはわからない。
簡単にわかってしまえば、自分以外の誰かがきっともう解決しているだろうから、当然と言えば当然だけれど。

(…うーん、やっぱり難しいなあ。…でも、がんばろ)

ふむー、と唸りながら相手の話を聞き。
けれど…好きなキャラクターの前で真剣にはしゃぐ姿は奮起を促すものだった。

「あはは…綺麗に盛り付けてあるよね。これはちょっと確かに食べにくいかも
でも食べないと、アイスが溶けてネコマニャンがクリームに沈んでいっちゃうかも?」

アイスの上に乗っている…ば、と両手を広げたポーズのネコマニャンは少し凛々しい
しかしアイスは溶けるもの。このままではクリームに沈むか、無様にコケるネコマニャンになってしまう。

「また来ればいいし、制覇するなら食べちゃわないと―。ん♪おいしー」

光奈は…流石に一口目からではないが、ネコマニャンの顔が乗ったケーキを少しずつ食べていく。
甘いものはやはり、食べると幸せになってくる。

「あ、と。後は…宗教的な理由?って詳しく聞いてもだいじょーぶ?」

記録を一言一句覚えているわけではなく。
何か見落としがあったかなと思いながら聞いてみよう。

神樹椎苗 >  
「むむむ、仕方ないのです。
 せめて美味しくいただいてやるとしましょう」

 と、手を合わせてクッキーを少し割ってアイスを載せて食べる。
 見た目だけでなく、味もしっかりとしていて美味だった。

「ん、ん、これはネコマニャンに恥じない出来ですね。
 これなら単純に甘味目的としても満足できそうです」

 そう感心したように言いながら、ぱくぱくとアイスを、クリームを食べていく。
 スプーンの動きにはよどみがなく、みるみるうちにパフェが減っていくだろう。

「――ああ、さっきの話ですね。
 しいはそう、『黒き神』を信仰しているのです。
 黒き神の教えからすれば、死を忘れた存在は、生きているとは言えないのですよ」

 スプーンをくわえながら、少し悩む。
 最初に会ったときも軽く話したが、一般的な宗教観や価値観とはかけ離れたものだ。

「要するに、死神信仰と言えば良いでしょうか。
 死を尊いものとして、畏れ崇める事で、より良い死を迎えるために充実した生を全うする。
 正しく生を全うした魂は、死神により楽園へと導かれ安寧が約束される」

 要するに、死ぬために生きるという価値観だ。
 より多数に浸透している『生』から始まる価値観とは正反対に位置している。

「だからこそ、しいは、自らにも『死』が訪れるものだと確かめたいのです。
 そうでなければ、しいはいつまでも『生きていない』半端な道具でしかいられません。
 『黒き神』に見初められた使徒としても、そんな存在は許せないのです」

 そう、ネコマニャンに向かっていた時と同じように、真剣な様子で話すだろう。
 

修世 光奈 > ケーキもまた、甘すぎないものの甘みをしっかり感じられる塩梅。
ネコマニャンが好きだからこそ、それを題材にした料理にはかなり力を入れているのだろう。
うわ、食べるの、起きるのはや、と言いつつ、思考を巡らせて。

「信仰、信仰かぁ……」

実感がわかない言葉だった。
光奈自身はあまり神様、というのを信じてはいない。
だから信仰する感覚というのがわからず。

ただ、宗教に対する知識や想いが薄いからこそ。
正反対に位置する考え方にも、そういうものか、と納得できる。
それに、相手の経歴も一通り見たからこそ、というのも理由としてある。

「ほんとに、こんな熱心な…えーと、信徒?が居るならその願いを叶えてあげてもいいのにねー。
まあ、またすぐ神木がしいちゃんを作っちゃうから仕方ないけど…」

スプーンの先を咥えて行儀悪く軽く噛んでいる。
甘いものを食べながら、じっくり考えているのだ。

「おっけー。いや、理由が詳しく知りたくて。
私のモチベーションにもつながるからね!」

いくらライフワークとはいえ、長く続けば体力も消費していく。
だからこうして、依頼人と話す時間も光奈にとっては癒しでもあるのだ。

「頑張って探すよ、しいちゃん。
そのままだと、しいちゃんが楽園?に連れていかれないもんね」

真剣な様子にこくりと頷いて。
ケーキもまた食べ進めていこう。
小さいサイズだからか、すぐに食べ終わりそうだ。

「やっぱり直に話すと違うねー…こんないいお店も紹介できたし、満足かな」

メールでのやり取りもいいが、こうして会うとより頭に入ってくる気がする。


「よっし、今日はここの制覇に付き合っちゃおうかな!お皿にもネコマニャンが居ますって書いてあるし」


重い話をしながらも言葉は軽く、明るく。
二人でネコマニャンメニューを堪能していったでしょうか。
まだまだアイディアを考えないとなー、と前向きに考えながら。

神樹椎苗 >  
 意外にも、理解できないと壁を作られることはなかった。
 それに少しばかり、安心を覚えている自分が居て、不思議な気分になった。

「――黒き神には、随分とよくしてもらってますよ。
 ただ、その神もほとんど残骸みてーなもんですから」

 いわば力の残りカス。
 すでに、椎苗の魂を強引に引き離せるほどの力は残っていない。
 ――かつての神器が揃うのなら話は別かもしれないが。

「ん、お前のやる気になったのならかまわねーです。
 別に、しい自信はそれほど隠したい話ってもんもねーですから」

 こうして話をする事そのものが、依頼の達成に近づく可能性すらあるのだから、お互いにいいことづくめだろう。

「そう言ってもらえるのは、ありがてーですね。
 しいの宗教観はどうにも、世間一般とはズレてしまってますから」

 理解を示されるだけでもありがたい。
 相手によっては、楽園へ行きたいだの、安寧がどうだなんて言えば、病人扱いされて終わってしまう。
 こうして受け入れようとしてくれる相手というのは、それだけで貴重な人間だ。

「しいの方こそ、こんないい店を教えもらえて大満足です。
 ――ほう、しいにつきあうと言いましたね。
 なら、明日体重計に乗って後悔するといいのですよ」

 ニヤリ、と悪い笑みを浮かべながら、椎苗は店主を呼ぶ。
 そして。
 メニューを右から左へ、全て頼んでいくのだった。

 その後、二人が――と言うより、付き合わされた方がどうなったかはわからない。
 なお、支払いは付き合わせたからという事で、椎苗が持ったのは言うまでもないだろう。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に鞘師華奈さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に園刃 華霧さんが現れました。
鞘師華奈 > 中央街、最近は私服も多少なり増えたとしても、活動する時は専ら何時ものスーツ姿が多い――今回も同様だ。
流石に街中なので咥え煙草、なんて事はしないが口寂しいのは少々否めない。
それなりに賑わう雑踏をすり抜ける様に歩きつつ、さて…何か面白い事でも無いかと赤い双眸を巡らせる。

(…裏常世渋谷の探索も進めないとだけど、まぁ焦ってやるものでもないしね…)

そちらはじっくり長期戦になるだろう。特にこれといって買いたい物がある訳でもない。
ファッションセンスはサッパリだし、お洒落もまぁ…お察しの通りだ。

「…最近足を運ぶようになったけど、まだまだ知らない場所も多いんだよね、ここも…。」

底下通り、黒街、そういえば風紀の分署もあった。――まぁ、風紀ではなく自分は公安の所属だが。

時々、ショーウィンドウを眺めたりはしてみるが、特に目を引くものは無い。
目的も無い散策は好きだが、こういう場所だと最低限目的が無いとふらふらするしかないなぁ、と思いつつ雑踏を歩く。

園刃 華霧 >  
「ンー……」

久しぶりにきてみたが、どうにもやはり此の街は自分向きではない気がする。
なんというか、うん。
空気感と言うか、そんな?

まあ、食い物屋がそれなりに充実しているところだけはいい。
この間入った、ふるーつぱーらー?とかいうのはなかなかだった。

それ以外は……うん

「どースっかナぁ……」

せめて、なにか面白げな食べ物屋でも見つけないとか……
と思いつつ、しかし結局は当てもなく。
ふらふらと雑踏を歩いていた。

鞘師華奈 > 「…うーん、日用雑貨とかは別に商店街とかで十分だし、どうしたもの――か、な…?」

視線を何気なく向けた先、雑踏の中にとある少女の姿が見えた。一瞬だがパチパチと瞬きをする。
見間違いか?記憶にあるような―――……あ。

「……え、『違反部活荒らし(サークル・クラッシャー)』…?本当に?」

かつて、自身が所属していた武闘派違反部活である『煉獄世紀』…その時に彼の『違反部活荒らし』とは面識がある。
…記憶にある姿よりも成長している気がするが、まぁ数年ぶりに見かけたから当たり前だろう。

(流石に、気楽に声を掛けるのもどうかとは思うし、あっちは覚えて無さそうだしねぇ)

面識あり、といっても軽く言葉を交わしたり多少やりあったくらいだ。
血みどろに戦った訳でも、一晩じっくり語り合った程の仲という訳でもない。
それでも、気付いてしまった以上は気になってしまうのが人間というもの。

「まぁ、折角だし挨拶くらいはしてみようか。」

以前の自分なら気付いてもスルーしていただろうが、傍観者は止めたのだ。
と、言う訳で軽く彼女へと分かり易いようにやや大きめに右手を振って見たりしようか。

園刃 華霧 >  
「ンー……旨そうナもんハ……ダメだ、微妙だナ」

そそるものが無いわけでもないが、どうも気分にあわない。
オムライス専門店、とか……ちょっと勘弁してほしい。

つらつらと、どうでもいいことを考えながら歩いていると。
なんだかスーツの女が手を振っているのが見える。

うん?
誰か知り合いでもいるのか?

と思うが、どうも自分のように見える。
あんな知り合いは居なかったと思うけど……

思わずじっとみる。

んん?

「ェ……まっさカ……え、マジで?」

記憶に間違いがなければ、多分アレはアタシが風紀になる前。
落第街で暴れてた頃の……いや、知り合いって言うよりケンカ相手な気がするが。

思わず困惑する。

鞘師華奈 > お、気付いてくれたようだ。まぁ、あちらにこっちの記憶が無いと完全に不審者というか、人違いと思われそうだけれど。
こちらをじっと見返してくる相手の反応に、あぁ、どうやらあちらも記憶の片隅くらいにはあったらしい、と何故だかほっとした。

人間、やっぱり忘れられるよりは覚えておいて貰いたいものなのかもしれない。
とはいえ、当時を考えるとあちらと自分の関連性は…凄くプラスに考えても『喧嘩相手』といった感じかもしれない。

ともあれ、あちらが気付いてくれればそのままのんびりとした足取りで近寄っていき。

「や、その反応だともしかして覚えて貰ってるかなって。
―-3,4年ぶりかな?『違反部活荒らし』さん』

と、小さく笑ってそう挨拶を。思えば彼女の通り名は知っているがお互い名前は知らなかった気がする。
まぁ、こちらもこちらで当時は今よりもっと荒れてたから相手の名前とかどうでもよかったかもしれないが。

「いや、急に声を掛けたのは悪いと思ってるんだけどさ。偶然ぶらついてたら、何か見覚えのある顔を見掛けたもので挨拶くらいは、ってね」

と、そう声を掛けた理由も一応は補足して置こうかと。

(そういえば、あの当時は私も変な異名で呼ばれてたな…確か『崩解』だっけ)

多分、能力とかに関連付けられた異名なのだけど自分でもよくわからない。

園刃 華霧 >  
「ァー……ま、そンなモん……か。
 『崩解』……だっケ?」

まさか挨拶されると思わなかった。
考えてみれば、当時のアタシは喋るには喋ったけれど大体恫喝か、
さもなきゃ獣の唸り声、みたいなもんが中心だったし。

……待て。
そもそも、コイツが此処にいるのも謎だな。
ああいや、でも此処は落第街と学生街、どっちからでもいけるっちゃいけるか……

と、なんか真面目に考えるようになったのはいいことなのか悪いことなのか。
昔はそんなこと気にもしなかっただろうに。


「アイサツ……アイサツ、ね。
 あンま、アタシらそウいう感じデもナかったヨね。
 ……ツっても、此処でなんかスる気もシないけど。」

そもそもコッチに来てから、あの頃の癖はだいぶ封印している。
相手がやる気なら仕方ないが……

「わざわざ声、かケてきタってコトは……
 別に、喧嘩ってワケでも……なイよな?
 ってカ。アンタも学生にナったクチなンかな?」

鞘師華奈 > 「……そういえば私もそんな変な通り名付いてたっけ…」

自分でも思いだした異名を、別の誰かから口にされると実感する。…いや、本当に何でそう呼ばれるようになったか分からない。
当時も違反部活の仲間から冷やかされたものだ……まぁ、いい。昔は昔だ。

「いや、流石に昔と違って火花を散らす気はないよ。今はむしろ喧嘩とかそういうのはなるべく避けてるし。
そりゃ、降りかかる火の粉を払うくらいはするけどさ――…と、いう訳でそういう懸念はいらないよ」

苦笑気味に「やらないやらない」、といった感じで右手を左右に振ってみせる。
3,4年の間にまぁ、怠惰な時間が大半であったが、出会いや変化が色々あったのだ。

「あと、そうそう3年前くらいから正規の学生になってるよ。今は2年生…あー留年1年してるから本来は3年生だけど。
ついでに、最近は公安に入って今では公安委員の端くれだよ…新人だけどね」

スーツ姿は…まぁ、ファッションに疎いのと女物の服装を避けてるからこうなった。
とはいえ、当時も男物の服装しかしてなかったから、ある意味で変わっては居ない部分だ。

園刃 華霧 >  
「正直、アタシのソレもだいぶ妙だカんな。
 あンときは大シて気にシなかッタけど……今聞くとモのっそい、こう……
 なンだろ、頭痛い?」

お互い、変な通り名をつけられてしまったもんだ、となんとも言えない笑いを浮かべる。
ま、他人が付けた名前なんてそんなもんだろう。


「ひひ、そりゃ……お互い変わったモんだ。
 アタシも今は喧嘩なンざ願い下げってほーデね?」

けたけたと笑う。
本当に、変わったものだと思う。
あの頃は、しょっちゅう、というわけでもないけれど。
顔を合わせればまあ、戦闘してたわけだし。

「へー、公安。
 そンなトコまでお互い様ってーカ。
 アタシは、見ての通り風紀だシさ。」

本当に変わったものだ。
過去が追いかけてくる、なんていうのはあまりいいことが多くないと思ったが。
こういうのなら、多分悪くはない。

「……ナー。
 お互い、アホみたいな通り名で呼び合うの、嫌じゃナい?」

だから、とりあえず提案してみた。

鞘師華奈 > 「…うん、頭が痛いというか…こう、何だろうね。…そうそう、黒歴史…ってやつなのかな」

勿論、過去の全部がそうとは思わない。過去があって現在に続いているのだから。
けれど、通り名だけは正直、こう…黒歴史じゃないかなって。

「そりゃ良かった。まぁ、お互い丸くなったというか、色々あったというか…成長したのかねぇ」

こちらも楽しげに笑う。ああ、何だ。自分も彼女もこうやって笑い合えるのだ。
ならば、偶然の再会ではあるが感謝したい。昔馴染みは大抵が何をやってるか分からない。
そもそも生きているかどうかも分からない。それを考えたら昔ドンパチもしたとはいえ。

「――君が元気そうで良かったよ。昔馴染みは殆どもうどうなってるか知らないし」

だから、これは本心だ。再会したばっかりでこう言うのも変な奴と思われそうだけど。

「うん、制服でもしかしてとは思ってたんだけど…いやぁ、落第街の問題児達が今では風紀や公安っていうのも、こう…年月の経過を感じるね」

年を取った、というにはまだまだ自分たちは子供ではあるのだけれど、そう思わずにはいられない。
だから、そう。お互いそろそろ”ちゃんと”自己紹介をして行こうか。彼女の提案に頷いて。

「―2年の鞘師華奈…カナでいいよ。…改めてよろしく。君の名前を聞かせて欲しい」

そう、だから喧嘩相手はもう”卒業”だ。ここからは再会を期して新たな友人として接したい。

園刃 華霧 >  
「アあ、ソレそレ。黒歴史。ウン、そレ。
 ほンと……いい出しタやつ、沈めタいよマジで……」

まあ自分の場合は、過去の自業自得ではある。
けれど、まあそれはそれとして。微妙な気分になるのは確かである。

「成長……成長ってイうんカね。
 まアでも、ソーかモな。色々あったシ、ね」

特に、最近は本当に色々あった。
まあその辺のアレコレを話すつもりもないけれど。
してみると、目の前のこの相手も何やら色々あったのだろう。

「……ま、アッチじゃ気づいたらドーかナってルなんて当たり前だったシね。」

そもそも、昔なじみ、と言えるような存在自体そこまで多くはない。
友好的な関係の相手なんて、更に少なかったから気にもしては居なかった。

……その割に、先日受け入れてもらえたのは少しうれしくもあったが。


「ン。アタシは園刃華霧。呼び方は、マー任せるよ。」

そうであれば。
こんな、喧嘩しかした覚えのない相手と友好を結ぶのも悪くはないのだろう。

鞘師華奈 > 「まぁ、君の噂は当時は知る人は結構知ってたしねぇ。私が居た違反部活もこう、割と周囲に喧嘩売ってるスタイルだったから、まぁアレだったけど」

武闘派、というやつだ。まぁ、所属人数は大して多くなかったが…まぁ、今はもう完全に壊滅して何も無い。
3年前に自分は一度”死んだ”のだ。…比喩ではなく。だけど今、こうして過ごせているのは――…。

「少なくとも、昔に比べて色々積み重ねてるのは間違いないんじゃないかな?」

成長、ではないとしても変化しているのはきっと勘違いでも思い込みでもない筈だ。
彼女がここ数年や最近何があったかは知らないが…ああ、色々あったのだろうなぁ、くらいは分かる。

「…そうだね。生きていれば儲け者、みたいなものだったし」

むしろ、正規学生として真っ当な身分と人並みの生活が出来ている時点で昔とは全然違う。
彼女の名前を聞けば、覚えるように口の中で反復する…少し響きが独特、というか。

(そのば・かぎり……その場限り?…いや、そんな言葉遊びじゃあるまいし)

「じゃあ、カギリと呼ばせて貰うさ。それで、君はここで何を?今日は非番なのかい?」

と、彼女の制服を軽く示しつつ。もしかしてプライベートも常に制服姿なんだろうか?
…いや、最近少し改善されたとはいえ、年中スーツ姿に近い自分がどうこう言えないが。

園刃 華霧 >  
「ァー……マぁ…… あの時は色々喧嘩売りマくってタから……ねェ。
 ってモ、別に喧嘩好きダったカらってワケじゃナかったンだよネ。」

あくまで生きるため。
そのために、違反部活に喧嘩を売って食を得て、金を得て。
最後は、今の正規学生の身分を手に入れた。
その意味では、もう喧嘩の必要はないわけだ。


「ン、そーダね。
 アッチもアッチで刺激がナかったワケじゃナいけど。
 コッチの方が色ンな刺激が多いヨ、ほんと。ヤっぱ、そっチも?」

積み重ね……確かに、そうかもしれない。
未だに積み重ねるものはとても多い。
いや、むしろ予想外なものがどんどん積み重なっている。
それが楽しいといえば楽しい。

いつか崩壊しないか、という気がしないでもないが。

「ァー……まあ、ソだね。
 非番。暇すギたから、この辺、漁ッテみよーカって来たンだけど……」

なにしろ、色々と浮いている気がする。
ちょっと途方に暮れていたところはある。

鞘師華奈 > 「うん、何かそういう感じはしなかったかな…こう、”生きる為”にやってるというか。君とは何度か激突したけど、好戦的とかバトルジャンキー、とは思わなかったし」

むしろ、そういう傾向があったのは自分の部活仲間の方だった気がする。
彼女がただ戦うのが好きだったからそうしていた訳ではない、というのは薄々感づいてはいた。
――こうして久々に再会して、言葉を交わして…ああ、やっぱりそうだったんだな、と。

「そうだね…私は、でも正規学生になってからは怠惰な生活ばかりだったよ。
傍観者っていうのかな?こう、外から眺めてるだけ、というか―ーけどさ」

一度目を閉じて思い出すように。そうして少し苦笑じみた表情で口を開く。

「――今はもう届かない場所に居る友達に指摘されてね。”そのままだと大事なものを取りこぼす”って。
…だから、今はもう少し前向きに色々関わっていこうと思ってる。
――トゥルーバイツのリーダーだった子なんだけどね……風紀なら多分カギリの方が詳しいと思うけどその辺りは」

公安として自分も情報は仕入れているが、核心の部分は当事者達しか分からないだろう。
それに、自分は”待つ”事を選択した。だから――彼の真理を巡る経緯は”殆ど知らない”。

「…あーー成程。なら私も今日は非番だし一緒に適当にぶらついたりしてみるかい?
まぁ、私も最近はこの辺りを散策してるんだけど、正直流行とかそういうの疎くてさ」

だから、退屈凌ぎになる保証はできないが一人でお互いぶらつくよりは話し相手が居るだけいいかなって。

園刃 華霧 >  
「そンな感じシた?
 ま、別にナんでも喧嘩シてたワけデもないし、分かルもんダったカね。
 そウいうソっちも、別に殺し大好きー!ッテ感じデもなかッタね」

違反部活荒らし……荒らし、なのだ。
壊滅を目的とするより、荒らし回るのが本筋。
生きるために、獲物を狙う獣。

それが、あのときの自分。


「怠惰……カー。マ、アタシも似たヨうなモン、ダな。
 風紀やっテも、さボり多いシ。
 なンだろネ。落ち着いテ、熱、ってモンがなくナったンかな?」

似たような経緯を過ごした相手が似たような境遇にあった。
燃え尽き症候群、とでもいうのだろうか。
でも確かに……昔は妙な熱に浮かされていた時があった気がする。

それがいいのか悪いのかは、わからない。


「……! トゥルーバイツって……
 あかねちん、か……? あかねちんの、友だち……?」

一瞬、目の色が変わる。
剣呑、というより…… 驚き


「…… ァあ。
 ま、アタシも見テの通り、流行トか疎いシな。
 こりゃ、失敗カ?」

けた、と笑う。
なにしろ、制服着たきりスズメとスーツ女。
明らかに流行とは程遠い組み合わせだ。

鞘師華奈 > 「何となく、だけどね。――ああ、私は別に殺しが好きって訳じゃないよ」

少なくとも殺人に快楽を見出した事はないし、必要以上に殺しに走った事は無い。
勿論、”生きる為”に止むを得ない場面はあったし、そうしなければいけない事もあったけれど。

彼女が当時、獣だったのなら――自分はさて、何だっただろう?

「熱、というか…当時は何が何でも生き残る、とかそういうがむしゃらな気持ちもあったんじゃないかな。
あと、やっぱり環境が環境だからね。こっちは普通に暮らしてれば衣食住は何とかなるし」

生きる為に何がなんでも勝ち取る、奪う。そういう熱もあったから、あの頃は自分も彼女も駆け抜けるように生きていたのだろうな、と。
そうでないとしても、今はもうあの頃のような熱は無い。無いけれど…今は別の”熱”が少しずつ目覚め始めている。

―――いいや、再燃というやつか。

「うん?ああ、あかねは私の最高の友達さ。あかねが私が住んでる寮に引っ越してきたのが出会いだったかな。
それからは、まぁちょくちょく話したり世話を焼いたりしてたよ。…ああ見えてプライベートが結構ずぼらだったからね、彼女」

最高の友達、という所は笑顔で迷いなく言い切る。少なくとも女はそう信じているし疑いもしない。
…が、ついでにプライベートは普段の雰囲気とは違って割とズボラだったことは申しておこう。
彼女の反応から、カギリはきっとあかねの身近に居たのだろうな、と思う。

――トゥルーバイツ構成員については、この女は殆ど知らないのだ。意図的に調べていない、というのもあるが。

「あーー私もカギリも今時の若者、というには少しズレてるっぽいからね。
…あ、でも食べ物ならあそこがお奨めかな。底下通りって所に飲み屋とか立ち並んでるんだけどさ?
勿論、学生も入れる食べ物の屋台も結構あるし、割と美味しい所もあるよ」

こういう場所のお店は、こうちょっとお洒落が過ぎて自分には合わないなぁ、とか思っていたりする女だ。
もうちょっと庶民的、というか敷居が低いほうが好みなのである。