2021/12/10 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
常世渋谷駅前、忠犬ロク公像の前。
亡き主人を待ち続けた逸話に託けてか、
待ち合わせの定番スポットと名高い場所。

じゃあ友人との待ち合わせにも丁度良さそう。
そう考えて軽い気持ちで指定した……のだが。

(こんだけ人多いと、逆に合流難しくね?)

定番スポットだけあり、ぞろぞろと待ち合わせの
人が集まってくる。自分も相手も揃って背が低い
(しかも自分は車椅子なのでなおさら目線が低い)
お陰もあり、人混みに埋もれてしまいそうだ。

因みに黛薫が待ち合わせ場所に到達したのは
待ち合わせ指定時刻のきっかり15分前。
几帳面と見るか早すぎると見るかは人による。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > 「わかんないな」

バスケットを持った彼女がその場所に訪れたのは、待ち合わせ丁度の時間
『正確さ』こそ義である。機械的にはそう主張します

...が、その目標も達成できるかどうか。この人ごみの前に首を傾ける
これは想定外。待ち合わせなんてした事なかったから
いつも通りの笑みであっても、やっぱり何処か困り顔も数秒
何かのアタリを付けたように、人込みの中へと踏み込んだ

彼女の記憶は常に香りと共にある
この程度、嗅ぎ分けられなくてなんなのか

目立つ白さの少女が視界に入るまで、そう時間はかかるまい

黛 薫 >  
人混みの中、覚えのある香りが鼻腔を擽った。
尻尾を掴んで辿るように、香りの行き先へと
視線を巡らせる。見知った白い髪が見えた。

「あの、すみませ、ちょっと、通りま、す」

周囲の人に断りを入れる声は雑踏に飲まれて
消えていく。幸か不幸か、動きにくい車椅子は
人波に押し流されずに流れをかき分けるには
都合が良かった。

「良かった、見つかった」

香りの縁が繋がって、互いの顔が見える距離に。
黛薫の鼻の良さは人並みで、だから正直なところ
声より姿より先に香りに気付けてしまったのは
意外でもあり、嬉しくもあった。

纏うのはいつもと同じ香り。宝石から抽出された
無機質ながら明るい天河石の色、ひとひら混ざる
花弁の香り。

『調香師』 > 顔はそちらを向いていた、歩みもそちらに向いていた
間違いなく、お互いはその距離からお互いの事を捕まえていた

車椅子の視認も出来る距離ともなると、小走りになろうとして
目の前を通る人に危うくぶつかりそうになっては停止
なんだか格好のつかないロボットの様な歩みを繰り返し、やっと巡り会えた

「この場所でよかった?」

目の前に相手が居る、聞くまでもない事を天然に尋ねてしまう彼女
薫さまを認識した時に、他の誰もを彼女は意識しなくなる

ようは、再開した事に夢中で自身がこの人ごみにどの程度の影響を与えるのか、
考える様子もなく、のんびりとした会話をしてしまおうとの暢気さなのだった

黛 薫 >  
「ん、ばっちし。場所も時間も」

対する彼女は折角合流出来たというのに気も漫ろ。
重量のある車椅子が人通りを妨げてはいないか、
間断無く流れてくる人波に会えたばかりの貴女が
流されないかと気が気でない。

「ごめん、こんなに人多ぃとは思ってなくて。
 一旦落ち着ぃて話せるトコまで移動しよ」

左手で貴女の手を取り、右手で車椅子を操作して
少し離れた人通りの少ない場所まで移動する。
両手を同時に動かすのは未だ慣れず、ぎこちなく
力加減もやや拙い。

『調香師』 > 「んひ、そうだね?」

重ねた手は、気付かれない筈も無かろうにそっと持ち上げて匂いを嗅ぐ
やはり、周囲を気にするなんて様子もない仕草

貴女と同じ香りを選ぶ。貴女の知っている香りになる
それでも、貴女から漂ってくるなら。それは全く違う華やかさを持つ
そういう場面に出会えた時、やっぱりこの仕事が出来て良かったんだなと

「ところで、何処に行くんだろう」

幸い、歩みに関しては従順だ。どこかに誘われ勝手に動く事も無し
お互いが興味を持つようなお店、どんな物なのだろう

黛 薫 >  
貴女が手を持ち上げている間、黛薫は一旦移動を
止めて待っていた。香りが貴女にとってどれほど
大切なモノかを知っていたから、感じ取る時間を
妨げないように、と。

「んー、いくつか目星は付けてあるけぉ。
 道中で気になるお店を見つけたら柔軟に?」

しっかりプランを組んで出かけるのも良いが、
折角『遊びに来た』のなら予定よりその場の
楽しみを優先したい。

「あーたと一緒に行くんなら香りに関する店が
 イィかな、と思ってっけぉ。アロマや香水を
 扱ぅ店を選ぶのは何か違ぅよーな気ぃしてさ。
 だって他所行くならあーたの店のがイィし」

スマートフォンを操作して、事前にピックアップ
しておいた候補を見せてみる。コーヒーショップ、
世界の茶葉の専門店、花を中心に取り扱うギフト
ショップ、世界中のスパイスを集めたお店など。

「あとは、どっかで食事でも取ろっかなと。
 いちお確認するけぉ、食事って出来るよな?
 カフェで会ったときブリュレ食べてたし」

『調香師』 > 「食べるよ。私だけじゃあんまり食べないけどね」

それはそもそも、彼女と言う存在が『誰か』と居る事を前提とした言葉
気になるお店と言われても、今の目線は完全に貴女に向けられている

「私の出来る事、香りについてはそうそう負けないけどね
 今の時代の技術っていう物も、案外良い所言ってると思うよ
 うん、だから私ほどじゃないって事なのかも。えへ」

候補のリストをちらりと見ては、視線を表情に戻す

「どれから行くの?どれか行きたい場所はあるの?」

リストされた物、その全てへと向かう物かと彼女は認識した
それだと薫さまの行きたい場所へ行けなさそう?とは思うけれども

黛 薫 >  
「ってコトは、食べられるけぉお腹は空かなぃ?
 じゃあ食事の時間はあーし主導で決めて平気か」

自分に固定された目線は誰かの為に在る、誰かと
共に在る役割故か。それとも今この瞬間に限れば
自分以外に興味がないからか。何となくじぃっと
見つめ返して、すぐに目を逸らしてしまった。

「んー、あーし側の目的……希望?としては
 場所より時間のが大事って言ぇばイィのかな。
 何処に行きたぃってか、あーたと楽しめたら
 場所には拘らなぃ、みたぃな。

 全部回るかは時間と相談だけぉ、もしあーたが
 途中でココを優先したぃとか無ければ基本的に
 近ぃお店から順々に行く予定。

 あ、でも初手はちょっと最短ルートじゃなぃや。
 1番近ぃのがコーヒーショップで、距離優先だと
 その次お茶の専門店で……でも続けて飲み物に
 関する店だと被ってる感じするから、花を扱う
 お店を挟むとイィかなって。どー思ぅ?」

事前に考えておいたプランを話しつつ、貴女の
意見も伺っておく。自分の考えを優先しすぎて
貴女が楽しめないと困るからという趣旨。

『調香師』 > 「そう?じゃあ、そうしよう
 ごはんもいつでも。お腹が空かないって言うか、それは補給じゃないもん」

うん、彼女に従おう。頷いた彼女
周囲の人込みも薄れ、歩みも自分たちのペースを取り戻した時に
思い出したように、彼女は笑う声を漏らした

「なんだか、考えてる?
 言葉がすらすらと出てきたから。さっき思いついた事じゃなさそうだから
 ずばり、言葉から測れるのかな。もしかしたら測れてないのかも」

機微を読み取る機械とはいえ、そこに秘められた思いの丈までは推し量り切れるものか
知りたがるように目線を、合わそうとして既に逃げられていたとか

黛 薫 >  
「んー、つまり食事と別にエネルギー源がある?
 食事を娯楽だって割り切れたら便利そーよな。
 カロリーとか気にしなくて良さそーだし」

年頃の女の子的にはカロリーの取りすぎを気にする
ところかもしれないが、黛薫が気にするのはむしろ
カロリーの不足である。世知辛い。

「まぁな。考えてるってか、考えてたってか。
 友だちと遊ぶってなったら、つぃ楽しみにして
 色々考ぇたりとか。あーしだけじゃなぃよな?」

今まで友だちらしい友だちがいなかったので自信は
あんまりない。でも約束して以来遊ぶのが楽しみで
計画を立てる段階から張り切っていたのは本当。

以前は仕草ばかりが雄弁で言葉の端々に逃げ道を
作っていた彼女だが、だんだんと物言いは素直に
なりつつある。かつ、仕草の雄弁さは相変わらず。
視線を逸らしたのも目を合わせ続けるのに慣れず
恥じらったからだと簡単に分かる。

「んじゃ、行こっか」

手は繋いだまま。身体の不自由さを思えば先導は
任せるべきなのかもしれないけれど、手を引いて。
触れて、触れられて、知って、知ってもらって。
きっと互いにそれを望んでいるから離さずに。

『調香師』 > 「もしかして、『管理』して欲しいのかな?」

カロリーの話が出てくると、意地の悪げにそう告げる
実際、不可能ではないのだから尚質が悪い事

一見友と言うには懇意に過ぎるような距離感も、
お互いその言葉の意味する所をここだと考えているのならそれでよし
何より現代でそれにあたる物を持っていなかったのは彼女の方も同じく

歩調を合わせる。それはきっと丁度良すぎる位に
彼女の持つ奇妙なバランスの感覚がそれを為す事だろう
心は浮かれていても、身体にそれは中々表れはしない、コンディションは良好

「お店ってさ、どのあたり?」

気分だけ、確かに急いていたのは垣間見えた少女らしさか
目線を外してまた合わせて。前を見てる時間と半々、危なっかしい

黛 薫 >  
「……あーしって、そーゆーのスキそぅに見える?」

もしそうだったら身の振り方を考えるべきかも、
と思わないでもない。きっぱり否定できるかと
問われれば……少し自信がないが。

「大丈夫だとは思ぅけぉ、前見てねーと転ぶぞ。
 そんなに遠くなぃ、ってか近い場所から順に
 って話してたんだし。ほら、もう見えた」

さて、初めに辿り着いたのはコーヒーショップ。
区分けされたボックスにずらり豆が並んでいる。

珈琲豆は甘くほろ苦く、時にフルーティに香る。
個性豊かなそれらが混ざり合い大人の雰囲気を
醸し出していた。

売っているのは豆だけではなく、珈琲に良く合う
焼き菓子やパン類、果てはそれらの原料──粉類や
ドライフルーツ、ナッツに卵、燻製肉なども。

「試飲とかもやってるんだって、このお店。
 分かる人には違ぃが分かんのかな?」

ショーケースの中を覗きながら呟く。

深煎り浅煎り、色が濃かったり薄かったり、
大粒だったり小粒だったり。見た目で分かる
違いは門外漢には微々たるものでしかなく。

それを見越してか各ボックスには詳細な説明が
添えられていた。名称に産地、味や香りだけで
無く、お勧めの飲み方も書かれている。

『調香師』 > 「あんまり好きじゃなさそうに見えるけどね」

触ってみた側が言うのだ、素直に受け取って貰いたいものだと私は思ったよ

さて、彼女達お店にやってきた。まずは軽ーくこのお店を一周してみる。その匂いを知りながら
その後、彼女はお店の真ん中で一周してみる。スカートを浮かせる事を厭わず
黒いタイツは影から伸びてきたように、香りはこのお店に来た事を遺すように

すとん、と踵を合わせて制止する。彼女の一挙一動は目立つ事を考慮しない
そんな調香師は、ケースを覗く貴女の事をまたじっと見つめてくるのだ

「あなたはコーヒーって飲むの?
 私はよく分からないな。香りは分かるけど、お店には今は必要なさそうかなって
 あなたが飲むなら、別の豆も買ってみようかなって思うけど...」

彼女の興味は基本的に、『お店で使えるかどうか』
香りの事は好きだけれども。それが『趣味』だとは、
実は一言も口にしてはいないのかもしれない...

黛 薫 >  
「うーん……?そっかぁ」

自分のことなんて自分でもよく分からないし、
自分のことを自分が1番信じていないのかも。

そういう意味では貴女の言葉の方がよっぽど
信頼出来る……なんて考え方は既に『管理』に
紐付いてしまっているのだろうか。

「あーしは嗜好品の類は全然なのよな。
 好き嫌ぃじゃなくて、貧乏なだけなんだけぉ」

貴女の口から出た言葉は興味でも好悪でもなく
『必要性』。好きだからと安易に『香り』と
縁深い店を選んだが、好きなものが別の好きに
繋がっているとは限らなくて。

「あーたってやってみたぃコトとか好きなコトとか
 あんの?お店に必要かどーかとか一旦抜きにして。
 香りのコトは『好き』なんだろなと思ってたから
 こーゆールート選びにしたけぉ、それに拘っちゃ
 いなぃから、あーたが行きたぃ場所とかあったら
 付き合ぅかんな」

知るために、知ってもらうために言葉に出した。

小さな紙コップに淹れてもらった試飲用の珈琲を
一口。苦い、という表情が隠しきれていない。

『調香師』 > 「煙草も、アルコールも。意外と香りが残るんだよね
 嗜好品も、好きな物だと思ってたんだけど
 その言葉じゃ実はあんまりだったのかな。好きとは言い切れない」

隣に戻ってきた彼女は、また別のコップを受け取る
その香りをすぅ、と確かめて。暫く両手で持ったまま

「私が好きな事を口にするとしたら
 ううん、別にここの事も好きなんだよ?
 あなたのいう『好き』とは違うのかな

 その『好き』はどんな好きなんだろう
 私はあなたの好きにして欲しいって思うけど、
 その好きとも違う『好き』なのかな

 うーん。その好きって、私の事とどっちが好きって言える好き?」

黛 薫 >  
「……あんま大きぃ声で言わなぃでくれそれは」

常世渋谷は歓楽街、落第街、異邦人街の交わる
境界に発生した街。学生街ほど治安は良くないが
きちんと校則が息をしている街である。未成年が
酒だの煙草だの話しているとしょっぴかれるかも
しれない。

「そーゆーのは、何だろな。気晴らしになるとか
 気分が良くなるとか、ありがちな誘い文句で
 勧められて……だから、口にしてる間はきっと
 マシになってるはず、って……そー信じたくて
 買ってたのかな。好きでもなぃし気が晴れた
 実感もなかったけぉ、やめられなかっただけ」

煙に巻くつもりはないのだろうけれど、
貴女が丁寧に確かめようとする『好き』を
上手く整理出来なくて、言葉に詰まる。

「……あーしは、結局未だに『好き』が何なのか
 イマイチ分かってなぃのよな。でも……一先ず
 あーたに向けるキモチは……『好き』ってコトに
 した。そー決めた……つもり、うん。

 で、それを踏まえて。あーたに向ける『好き』は
 順位とか優劣?を付けるなら出来るだけ上の方に
 持ってきたぃから……あーたと比べんなら、他の
 『好き』はそれより下になる……はず?

 だから、例えばあーたがやってみたぃ『好き』が
 あるんなら、それに応ぇんのはあーしの『好き』
 にも適ってると思ぅ、んだけぉ」

分からないなりに、誠実でいたいから。慎重に
内心を紐解いて、丁寧に言葉を紡いで、並べて。

「……で、あーたはあーしに好きにして欲しくて。
 だったら、お互いの好きなコト、やりたいコト
 すり合わせていけたら理想的なのかな、って。
 だから、あーしはあーたの希望も聞ぃときたい。

 どーかな、あーし変なコト言ってたりしない?」

『調香師』 > 「私は良いけどね。どんな香りが染み付いても
 私はそれをなりたいあなたに変えるから。そういうお仕事だから」

それは普段の売り文句。思考せずとも出てくる言葉
その裏側では、考えないと生み出せない言葉がある

導き出すには、時間がかかってしまいそうで
両手に熱を感じたまま、口元をもごもごと動かす

「多分、嬉しい。多分、正しい
 それが私に向けられたものじゃなかったら、だけどね

 私の望みを知りたいって言うのなら
 それはあなたの望みだから。あなたのしたい事をお手伝いしたいよね?」

貴女の気持ちは空回り。相手が『者』ではなく『物』なのだから
自分の保身に第一の基準を置いたなら。そこから先は、『所有される立場』の価値観
染められよう、貴女が染めてくれるなら。決して望んでくれはしないけれど

だから、難しい。ここで生み出す物は、別の言葉でないといけない
遠回りでも先に進まないと。今日がきっと『好き』じゃなくなってしまう

「...コーヒー。苦いよね、酸味も感じて、喉の奥から香りが昇ってくるけれど
 やっぱり、苦いよね。私も沢山は、飲まないかな。時々淹れるけど。香りを求めて

 甘い物の方が、薫さまは好き?」

婉曲。別の物を求めてくれるなら、私は歩きだせる

黛 薫 >  
「答える/応えるのが難しかったらスルーでも
 保留でもイィ。あーしはあーたを悩ませたくて
 話してるワケでもねーかんな。

 店の外で会って、友だちとして話そーとしても
 あーたはときどき『店員』として対応すっから、
 あーしがあーたの求めてるモノを与えられては
 ねーのかな、と思ったりはすっけぉ」

一度水で舌をリセットして、別の豆で淹れた珈琲を
口にする。やっぱり苦くて、でも今度はほんのりと
酸っぱくて。どちらが好きかはよく分からないけど
違いがあるとだけは理解した。

「外で待ち合わせして、一緒に遊んで。
 『友だちみたいなコトしよう』って誘ったときは
 分かりやすく嬉しそーにしてたけぉ、今はなんか
 ……うーん、少なくとも心の底から楽しんでる
 って雰囲気ではなぃよーな気ぃしてる。

 もしかして、あーたのしたぃコトを聞かれるのが
 あんまし得意じゃなかったりする?もっと素直に
 あーしがあーしの為にしてた方があーたも楽しい?」

考えを巡らせながら、また水を貰って珈琲の味を
洗い流す。別の味、別の香りを分かりやすくする為。

「甘ぃのはキライじゃなぃ。子供っぽぃかな。
 んでも、何だろな。別に砂糖は好きじゃなぃ。
 カロリー取れればイィって考えで砂糖ばっか
 摂ってたりもしたし。

 そーじゃなくて、お菓子とか、飲み物とか。
 『必要』じゃなぃ甘さはイィなって思ぅかも。
 『余裕』を実感できるからかな?」

『調香師』 > 「好きな事を考えるのが得意なら。私って『どんなことも』なんてしないんじゃないかな?」

唇が尖る。これは駄々の様な物だ
自分の考え足らずな所、受動的な所
貴女は十分知っているだろうに
そうして『何か』を待ち続けて、
二人はこうして隣に居る

「それに、もう一回言うけれど
 私って楽しんでない訳じゃないから

 ただ、匂いを感じるのってすぐに済んじゃうから
 横から見れば、つまんないように見えるのかなぁ
 そういう『余裕』を傍から見せられる事、
 それが好きの表現に繋がるのなら。それってやっぱり難しいかも」

考えてみれば。人の為に造られた以上、自分自身も『嗜好品』な訳で
それを楽しんで欲しいと。常に提供する側なのだから

「こういうお話は、歩きながらでも出来るかな
 だったら次は、何か食べよっか

 だからちょっと待ってて」

そうして彼女はレジに駆ける。最後に『仕入れ』をしておきたいから

黛 薫 >  
「んー……そー言われたら否定出来ねーけぉ。
 『どんなことも』を引き合ぃに出されると
 『好き』だけじゃなく『嫌ぃ』を考えるのも
 得意じゃなくなりそーで、でも『嫌ぃ』が
 無ぃワケじゃねーからあーしも考えなきゃで」

貴女が受動的である以上、先に進むためには
自分がアクションを起こさねばならない。
しかし貴女にも『心』があるからと及び腰に
なってしまっている自覚もまたあるのだ。

「楽しんでるのは嘘じゃねーんだろーけぉ、
 あーた、何かすごぃ考ぇてる感じすんのよな。
 いぁ、あーしも人のコトは言ぇねーのかな。

 お互ぃにしたぃコトか言いたぃコトか……
 何かがあるのに上手に辿り着けなぃみたぃ」

レジに向かう貴女の後ろについて行きながら、
最後にもう一杯試飲の珈琲をもらって飲んだ。
苦味も酸味も今までより薄く、コクと香りに
重点を置いたブレンドだと教えてもらった。

「じゃ、次は軽食も取れる喫茶店とかかな?
 がっつり食べれる店もあるけぉ……うーん。
 あーし的には食事よりお話メインがイィかな」

ひとまず、自分の希望を前面に出してみる。