2021/10/27 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
(結局来ちまった……)

お店の窓の向こうから、こっそり店内を覗き見る
少女が一名。挙動不審は自覚あり。裏通りの店で
なければ少々注目を集めていたかもしれない、と
思うと自己嫌悪と安心の入り混じった感情が湧く。

店自体は非常に気に入っているので通うこと自体は
おかしくない(と思いたい)が、躊躇する理由もある。

短スパンで来店した最大の理由はスタンプ。
曰く3回の来店で店主が"何でも"言うことを聞いて
くれるとのこと。それだけなら、歓楽街にしては
不用心なシステムだと呆れるだけで済んだのだが。
歓楽街の不穏な噂と一定の親和性があるのが問題。

曰く『歓楽街には呪いの"人形"が棲んでいた』
曰く『それに"三度"願えば誰でも殺してくれる』
曰く『それは"人の為"であるのかと問いかける』

曰く──『それは未だ歓楽街の中で息を潜めている』

杞憂なら良いが、3回の来店が危険を齎す場合。
最初に泥を被れば被害は抑えられるかもしれない。

とはいえ、単なる取り越し苦労の可能性も高い。
その場合、純粋な好意のサービスを疑った上に
不純な動機でお店に通ったことになってしまう。

(それは、いくらなんでも悪ぃよな……)

失礼を怖がるあまり、なかなかドアを開けられない。
せめて他の部分では不快にさせまいと、窓に自分の
姿を映して身嗜みを整えている。

『調香師』 > 薬研車を転がす。一定のリズムで、苦味の強い香りが漂う
同時に彼女は舟を漕ぐ。期日の迫る、膨大なデータを読み込んで
...次第に動きが遅くなり、やがて止まる
少女は人形となり、この空間に生命を真似る存在は居なくなった

これが『彼女』の訪れる一時間前程度の事


扉には『OPEN』の看板が掛けられたまま、
香りだけが貴女を出迎えていた

黛 薫 >  
「……うん?」

決心が付かず、こそこそと店内を覗いていたが
調香中の店主が動かなくなっていることに気付く。
単なる居眠りなら良いのだが、体調不良だったら?

うじうじと店に入らない言い訳を考えていたのも
忘れて、慌てて店内に入って貴女の様子を確認。

『調香師』 > 扉を開いた時に向かえたのは少女の声ではなく
心地よい芳香に交じって、『口に苦し』との言葉を思い起こさせそうな匂い

姿形こそただ眠っている様にも見えたのだろう。しかし近付けば分かる
呼吸なく、脈動なく、打ち捨てられた人形の姿、凡そ『生気』という物を感じさせない


「ぅ...ん」

その癖、寝言の様に声だけは漏れた

黛 薫 >  
意識はある。しかし生命体らしからぬ反応。
それ自体に疑問はない。前回来店時の会話の中で
漏らした『自壊』という言葉。人の為でありたい、
忘れられたくないというアイデンティティへの固執。

故に彼女が『造られたモノ』だという想定はあった。
歓楽街の噂『呪いの人形』との整合性もその方が
高くなる。あまりにヒトらしいその姿、在り方から
人工生命あたりを想定していたが、今の様子から
見ると機械生命体の方が近いだろうか?

(大丈夫なのかどうなのか分かんねぇ……)

人間なら、そうでなくてもせめて生命体であれば
睡眠ないし休眠か体調不良、動作不良かの判断は
出来たかもしれないが、この状態は完全に専門外。
漂う苦い香りすら苦難の暗喩に思えて気が逸る。

これが病人だったら横に寝かせて暖を取れば良い。
しかし動かして良いかの判断すらつかないため、
倒れ込んだ時に危なくないように薬研車をはじめ
小物類や割れ物は慎重に遠ざける。

それから、気休めにパーカーをその背に被せた。
苦い香りを紛らわすように、先日購入したばかりの
アロマストラップをその首にかけて。

(詳しそうなヤツにあたる?いぁ、状況の説明すら
ロクに出来ねーってのに……てかホントにこの子が
被造物の類なら、無防備なときに落第街のヤツらに
知らせんのはダメだ。あと頼れるヒトは学生時代の
先生とか、今更どのツラ下げて、いやでもそれしか)

貴女から目を離さないように気をつけつつ、
万が一に備えて対応出来そうな知り合いを
スマートフォンの連絡先から探している。

『調香師』 > それらの心配を他所に、或いはいざ知らず

周囲でごそごそと、見知った香りが動く
このお店に新たな気配がやってきたのを感じ取ったか、薄く開かれた目、貴女に向かう目線


「...薫、さま?」

貴女が考える『最悪』は訪れていない
その一言は、その考えに至らせるに足るのだろうか

少女に戻った彼女は状況を確認。背後に追加された軽度の重量
まだ意識が安定しないまま、袖の部分をすぅっと、吸う

黛 薫 >  
吸い込んだ袖の匂い。無機質な石の香りの中に
微かに混ざるひとひらの花弁。混ざり合う煙草の
匂いは前回来店時より更に薄い。

殆どの匂いはそれらに塗り潰されているが、
更にその奥を感じるなら思春期の女子特有の匂い、
安酒のアルコール臭、埃被った路地裏の舗装路の
匂い、染み付いた血と暴力の匂い、欲と汚濁に
犯された汚臭が微かに入り混じる。

意識に『視覚』が戻ってからの黛薫の反応は早い。
スマートフォンをしまい、送信寸前だったメールを
下書きに保存しつつ貴女の正面で軽く手を振る。

「そう、薫。黛薫。大丈夫か、体調悪い?
 意識ハッキリしてる?それとも眠いだけか?
 手ぇ動いてんのちゃんと見えてるか?」

「いぁ、ごめん一旦忘れて。一度に言い過ぎた。
 "はい"か"いいえ"で答えてくれたらイィから。
 ……体調、悪ぃのか?」

焦りから矢継ぎ早に問いを投げかけてしまったが、
本当に体調不良なら問いを飲み込むにも応えるにも
難儀するだろう。だから1番必要な点だけ、負担を
かけないように問い直した。

『調香師』 > それらの匂い、人がただ生きていくだけで纏うにはあまりに業が深く、
彼女の環境を推測するに容易い、混沌とした香りを分析出来るなら、状態としては好調と言っても過言では無いのだろう

「大丈夫、だよ。この時間にスリープに入るのは、よくある事だから
 ...これ、あなたのパーカーだよね?返す、それともハンガーにかける?

 あ、ううん。違うよね。まずはありがとう
 そして、いらっしゃいませ?」

立ち上がった彼女は役目に従ってお辞儀

「マッサージは難しいかなと思ったけど
 傷なら、軟膏を塗るのも良いかなって思ってね
 ...3度目も来てくれて、嬉しいよ」

パーカーを腕にかけ直して。あなたの次の要望を待っている
勿論、それが『どんな事』でも

黛 薫 >  
「いぁ、よくあるコトならイィんだ。あーしの
 気にし過ぎで済んで何より。眠ぃんならまだ
 被ってて構わねーけぉ、パーカーじゃなくて
 そっちの方は返しといてくれると嬉しぃ」

つい、と貴女の首にかけたアロマストラップを
指差す。動かなくなっていた貴女から苦い香を
遠ざけるための気休め。

「あーし、また何も決めずに来たから……あ、いぁ。
 別に欲しぃモノが無ぃとかじゃなくてまだ詳しく
 なれてねーからどれも同じくらい魅力的に見える
 って話な。とにかく、買ぅモノ決めてなかったし、
 そっちから提案してくれんのは嬉しぃな。

 でも、その前に一旦そっちですり潰してるヤツは
 しまった方がイィと思う。何も知らずに入ったら
 びっくりしそうな匂いしてんぞ、それ。

 あーしみたく何も知らなかったヒトはともかく、
 良ぃ香りを期待して店に入ったヒトが逃げたら
 もったいねーだろ」

寝ていた貴女がうっかり倒れ込んでも問題ない
位置にまで移動させられた薬研車を指で示す。

『調香師』 > 「あ...はは。ごめんね、かけてくれたの?
 被るのはちょっと、お店側としてあんまりダメかな」

犬のストラップ、ここから漂う香りは貴女が習慣的に香りを使ってくれていると知らせてくれる
これも一嗅ぎした後にお返しにと、手に乗せて差し出す

香りの追及には、苦笑ともとれる眉の傾き

「普段ここで作業してるからね。ちょっと気を抜くとこうなっちゃうな
 私はこの香りも好きだから。油断してたかも

 でも嗅いでると段々、落ち着いてくるんだよ?
 苦い香りだけど、精神の鎮静成分も含まれていて。傷口の化膿も抑えてくれて低刺激のブレンド。
 ハーブで香りも整えてベースの軟膏と混ぜればすぐにでも使える程度には挽いていた筈...」

香りについては気を抜くと口が滑りだすのも癖
おっと、解説だけに逸りそうな口を噤みました


「...どの程度のコースがお好みかな?
 必要箇所、全身。お望みならどこまでも」

黛 薫 >  
「好きなら好きに語ってイィんじゃねーの。
 万人受けしなさそーでも、あーたはそこまで
 ちゃんと理解してるだろーし。それを相手の
 スキな香りにまで持ってくのも仕事だろ?」

口を噤む貴女に、話したければ話しても良いと
促す。初めてこの店を訪れた日、自分が分かる
話題に口が逸ったことを思い出しながら。

「ん、んー……出来るんなら出来るだけ全部って
 言いたいけぉ。多分、場所とか具合によって
 何処まで出来るかって変わってくる……よな?

 だから、あーしの希望でどこまでってのは
 あるけぉ、まずどこまで出来るかってのを
 確認してもらわねーと判断出来ねーかなって」

被りっぱなしには出来ないということなので、
ストラップと一緒にパーカーも受け取る。

前髪とフードで『視覚』から逃げがちな自分が
パーカーなしで人に向かうのも珍しいな、と
心の中で独り言ちた。

『調香師』 > 「なんだか、最初とは逆の立場みたいだね?」

彼女も同様に、貴女が魔力について語っていた頃を思い出す
専門的な分野を持つ2人、こういう所も似ているのかも、と


「うん、っとね。これは先に言っておこうかな
 今回のマッサージの範囲は、スタンプの3つ目。『なんでも』とは関係なくって

 その上でどこまでも、って言うと困るだろうから
 ここが『歓楽街』と分かってくれたなら。その範囲、私はどんな場所でも触れられる...で、いいのかな?」

目の前に居る相手によっては、酷く凌辱的な内容なのだろう
香りから、相手が穢れを知らない無垢な乙女ではないと知っていても、憚られるべき内容

相手の双眸を透かすように見つめる、その熱量に欠けた目線だけが彼女の担保となる
今、自身が口にしている事は、『仕事』として自身がこなせる範囲だと

黛 薫 >  
「打ち込める分野があるってのはそゆコトだろ。
 あーしもそーゆー歯止めは利かなぃ方だけぉ、
 似た者同士だったのかな」

本当にそうだろうか。自問する。

きっと彼女が調香に詳しいのは『好き』だから。
自分が特定分野に詳しいのは、それを掘り下げる
以外の生き方を知らないから。どちらかと言えば
彼女の"人の為"に対するスタンスに近い気がする。

「あぁうん、分かってる。スタンプ押すのは
 後でだろ。施術?はフツーに営業の範囲内で
 あーしはおまか……せ……」

思考に気を取られて、生返事しそうになって。
改めて彼女の言葉を反芻して。一拍遅れたものの
『どんな場所でも』の意味を理解する。

「待ッッッ、いぁごめん、待ってくださぃ。
 あーしが軽率だった、考える時間頂戴。

 そっ、だから、えっと、なんだ???
 つまり、傷がある場所のマッサージはダメ、
 だから大丈夫そうなトコはマッサージで、
 ムリそうなトコは……軟膏?っつー解釈で
 いたつもり、で、うん。だけど、この店は
 ……つまり、何処に出店しても良かったから
 適当に歓楽街の土地を借りたとかじゃなくて、
 か、歓楽街でしか出来ないサービス?の方も
 取り扱ってて、全部のマッサージ?っつーと
 その、つまり、えっと……そ、そういうやつ、
 含むって……意味で、あってます、かね……?」

パーカーのフードを押し下げようと手が動くが、
丁度今に限ってパーカーは身につけていない。
紅潮した頰も恥じらいに揺れる瞳もよく見える。

直接的な表現を口に出せなかったり、年相応に
意識したり。染み付いた匂いからややかけ離れた
初心な反応が返ってきた。

『調香師』 > 「嫌なら、勿論。体のケアだけでも、いいんだよ?」

首を傾げて提案する、『調香師』の声には困惑の色も含まれていた
状況は『慣れている』と判断を下し、彼女の状態はその反対の結論を導く

が、このように多弁を齎す困惑を一度確認した事がある
その状況を思い返し、次に問うべき質問を構成


「『私の事が好き』って聞いた時に近い困惑かな
 意識したりされたり、そういう事が苦手なのかな」

どうとらえたものか、今だ彼女は観察している
無垢であっても無感情ではない。あなたを事を知りたくて、目線は未だ追いすがる

黛 薫 >  
「好っっ……じゃなくてもなんでもそーいう話
 されたら、フツーびっくりするよなあ?!」

その見た目でそういうサービスしていいのかよ。
喉元まで出かけたブーメランは飲み込みつつ。

花も恥じらう思春期の乙女を名乗るには汚れ過ぎて
いるけれど、黛薫も年頃の女の子。普段なら全力で
拒否……は流石に失礼なので、理由をつけて断って
いただろう。

しかし、即答するにはタイミングが悪かった。

黛薫は他者の視覚を触覚で受け取る異能を持つ。
その感覚には視線の主の反応が強く反映される。
害意なら突き刺すように、嫉妬なら焼けるように。
……では、下心のある視線なら?

落第街で暮らす以上、それは避けられない視線。
日常的に掠めるものならまだしも、明確に『襲う』
意図を持って焼き付けられた熱は簡単には抜けない。

黛薫は丁度数日前──片手で数えられるくらい前の
晩に、不本意ながらその熱を染み込まされていた。
同居人がいる以上家でこっそり、ともいかず。
燻る熱から目を逸らし続けていたところなのに。

「……だって、好きでヤったコト、ねーんだもん。
 ムリヤリだったり、交換条件だったりとか……
 慣れねーもん、そんなの……」

今更パーカーを着直して顔を隠す、なんて真似は
余計に動揺を晒すようで出来なかった。がりがり
音を立てて頭を掻いている。

「……いぁ、ごめんなさぃ。不適切な発言でした。
 聞かなかったコトにしてくれると、有難ぃっす」

『調香師』 > 「うーんっと。こっちまできちんと言った人はそんなに居ないからね
 私も判断基準が匂いだったのもあるし...」

『歓楽街』でのあり方など、意識する方が珍しい。一見すれば、ただの香りが漂うお店
そういう意味では確かに、また薫は自業自得の穴に落ちたと考えても良いだろう

しかしながら歓楽街以降の街並みでも、『自分から望んで』と言った風に身を対価にする相手は少ない
先日だって、『相手の為に』との意義で身を削るほどの行いを為す相手とも話したばかりか


動揺を知り、言葉を探り。その彼女の目線は憐憫や同情の色を含むか?

「...うん。私はそういう情報大事だから忘れないんだよね
 私の仕事は、あなたの為にある様な物。香りの中で身を休める
 私はそのお手伝いが出来るって分かっただけでも嬉しいな」

そうではない。ただ普段通り、『人の為』
それは自分の出来る事だと、当然の様に語る仕草

いつもの笑みで、あなたの要望、注文を待っていたのだった

黛 薫 >  
「そういう!大事なコトは!!言えよ!!!」

(少なくともこの店では)過去1番の大声を上げて
慌てて口を噤む。黛薫は感情的な言動が多い反面、
口にしてから相手の気分を害さなかったか気に病む
傾向が強いようだ。他者の不利益を嫌がる消極的な
『人の為』は貴女と似ているようで、真逆でもある。

深く息を吐いて、吸って、吐いて。

動揺は抜け切らないし、未だ頰は赤いまま。
同情も憐憫もないそのスタンスが今は有難い。

「はぁ。とりゃえず、一旦その話は考えなぃコトに
 しても良ぃすか。つまり……常識的な範囲?で、
 施術をしてもらって。それで、その。あーしが
 その気になったら、っつーか……その、先まで
 シたくなったら……お願いする、みたぃな」

この場できっぱり断らない時点で答えは決まって
いるようなものだが、ひとまず曖昧に濁した案を
提示する。

「……あと、意識したり、されたりとか。
 苦手かどーかなんて、あーしも分かりません。

 でも……どっちを向いても嫌なコト、怖いコト
 ばっかだと……優しくされんのには弱くなる。
 ウソでも仕事でも下心があっても、ちょっと
 優しくされると……あーたの言葉借りるなら
 『好き』になりそうになる。

 でも、ダメだろ、そんなの。裏があるんなら
 身を預けたらおしまいだし、純粋な好意なら
 あーしなんかが好きになんのは迷惑だろ」

「……そんだけ。忘れてくれてもイィですよ」

『調香師』 > 「迷惑かな?そうかな
 私は、自分一人だと。好きか嫌いか、選ぶことも出来ないからね

 ...えへ。忘れるのは苦手なの」

普段通りの不自然な笑う声も、今回は何かを誤魔化すように
忘れられるのを嫌う少女が、忘れる事を選べるはずもない

貴女の要望に応えるために手を差し伸べよう
続きはまた、用意されていた別の部屋で


「まずはロッカールームに案内するの
 バスローブに着替えて貰ってね

 私は最後、調合の段階があるから待たせちゃうかもだけど、それでいい?」

黛 薫 >  
「優しさを迷惑って言ったら、それはそれで
 自己嫌悪で死ぬから迷惑じゃなぃ……」

面倒くさい答えが返ってきた。

一朝一夕で染み付くものではない掃き溜めの匂い。
良心も常識的な感性も捨て切らないまま裏の街で
生きれば、心はどれだけ悲鳴を上げるだろうか。
捻れた心を抱えたまま、黛薫は生きている。

「あぁうん……さっきの言葉で想像はついたけぉ、
 やっぱ脱ぐのか……。その、もし見てて気分が
 悪くなったとかあったら、中断してもイィから。
 待つのも別に問題ねーです、はい」

さっきの言葉で、ということは言及されるまで
もっと軽いマッサージを想像していたのだろう。
案内された脱衣所に向かう足取りは重いようで、
不安に期待、様々な感情が入り混じっていた。

『調香師』 > 「面白い答えだね。ふふ、ふひ」

近付いても遠ざかっても、そこにあるというのは匂い。それを飾るのがお仕事
元より距離感など考えていない彼女は、その偏屈さにも応えられると言えるのだろうか


返答に頷いた彼女は、掴まれたならば貴女の手を引いて
この空間を脱し、ロッカールームへ案内を始めた事でしょう

ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「繁華街に漂う匂いの束、特に心地よい物に惹かれたなら辿り着く 路地に入ってしばらくのお店。扉の中に隔てられた異世界の香り 日常非日常に忙しい日々を忘れて、ゆっくりとお過ごしください 勿論、ご注文があれば香料の調合も行えます。お持ち帰りも可能 どうぞ『Wings Tickle』をお尋ねください ※店員の予定次第でお休みになる事もあります --- 歓楽街に漂う香りの行先、路地裏の一角。雑居ビルの扉には吊るされた看板が『OPEN』と示している 店内は電飾とアロマキャンドルに照らされ明るいものの、戸棚に所狭しと並べられた小瓶や長机の上に並べられた実験道具の数々、そしてこの部屋に満たされたえもいわれぬ芳しい匂いはこの場所を怪しい錬金術師のお部屋だと勘違いさせてしまいそうな とはいえ、この香りに慣れてくれば自然と落ち着ける空間となってくれるのでしょう 見渡せば扉の横に見つけられるカウンターの上にはこんなメニュー表が置いてありました ・『全身マッサージ』 ・『お望みマッサージ』 ・『香料・お望みの調合します!』 裏にはこっそり、『三回来店で特別サービス』との文字も」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「繁華街に漂う匂いの束、特に心地よい物に惹かれたなら辿り着く 路地に入ってしばらくのお店。扉の中に隔てられた異世界の香り 日常非日常に忙しい日々を忘れて、ゆっくりとお過ごしください 勿論、ご注文があれば香料の調合も行えます。お持ち帰りも可能 どうぞ『Wings Tickle』をお尋ねください ※店員の予定次第でお休みになる事もあります --- 歓楽街に漂う香りの行先、路地裏の一角。雑居ビルの扉には吊るされた看板が『OPEN』と示している 店内は電飾とアロマキャンドルに照らされ明るいものの、戸棚に所狭しと並べられた小瓶や長机の上に並べられた実験道具の数々、そしてこの部屋に満たされたえもいわれぬ芳しい匂いはこの場所を怪しい錬金術師のお部屋だと勘違いさせてしまいそうな とはいえ、この香りに慣れてくれば自然と落ち着ける空間となってくれるのでしょう 見渡せば扉の横に見つけられるカウンターの上にはこんなメニュー表が置いてありました ・『全身マッサージ』 ・『お望みマッサージ』 ・『香料・お望みの調合します!』 裏にはこっそり、『三回来店で特別サービス』との文字も」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」に黛 薫さんが現れました。
『調香師』 > 薫をロッカールームに戻し、帰ってきた彼女

戸棚の中の特別な枠の中から、1つ取り出した
以前、自分の中で抽出した香り

蓋を開けて、匂いを嗅ぐ
オパールの香りより花やぐ香りが強いのは、もしかしたら抽出としては失敗だったのかも

思い返しながらも、後悔はない。作業台の上に置く
少女は、貴女が戻ってくるのを待っていた

黛 薫 >  
黛薫がロッカールームから戻ってくるまでには
少しだけ時間がかかった。間を空けた分、施術
直後の退行染みた気の緩みは大方抜けている。
パーカーを着直し、逃げ道隠れ道も整っている。

「戻りました。とりゃえず、今回分の支払いと
 ……あと、ポイントカードっすね。あーしに
 とっちゃ、それが本題なワケですけぉ」

『調香師』 > 「あ、お帰り
 ...雰囲気、戻ったね?」

先程までも『可愛らしい』とまでは言えるのだけれど
対面する分には、どちらが良いという比較も出来はしまい

ただ事実、首を傾げて問いはする
からかう意図が無いとは言えないだろう。なんだか笑みが普段よりニコニコ度1割増し


「お話はそうだね。長くなりそうだし
 まずはこっちに座る?」

先程瓶を置いた作業台、その対面

黛 薫 >  
「さっきのは忘れ……ねーんだろなあーたは……。
 はぁ、もぅ。あーーしだってあんな風になると
 思ってませんでしたから、マジで。ホントに。
 何なら未だに理解できてねーしよぉ」

実感が湧かないくらいに感情が揺れて、その時間を
惜しむあまり身体を許す行為さえ求めそうになった。
着直したパーカーは早速役に立ってしまったようだ。
赤くなった頰を押し下げたフードで隠す。

「……話が長引くかどーかは知らねーですよ。
 あーしとしちゃ最短で終わらなきゃイィなって
 思ぃますけぉ。さっき言いましたが、今からの
 話はあーたの気に障ると思ってますんで」

深呼吸。羞恥が残っていようが何だろうが、
真面目な話をするのに顔を隠すのは不公平。
きちんと目線を合わせて話し始める。

「率直に聞きます。数年前から歓楽街に流れてる
 『呪いの人形』についての噂について。

 曰く『歓楽街には呪いの"人形"が棲んでいた』
 曰く『それに"三度"願えば誰でも殺してくれる』
 曰く『それは"人の為"であるのかと問いかける』

 曰く──『それは未だ歓楽街の中で息を潜めている』

前の来店でアタリはつけてたけぉ、今日の件で
あーたは『人形』だって分かった。何でも願いを
叶えてくれるスタンプカードは『3回』来店で
溜まる。んで……あーたは『人の為』に拘ってる。

その噂と、あーたは繋がってるか、否か。
お聞かせ願えたら、と思ってんすけぉ」

『調香師』 > 「それは、3回目のお願い事に関わる?」

その返答は即答。その表情は普段通りの物であるはずなのに
どうしても、機械的な無機質さが抜けきらなくて

その仕草が表す物が『緊張』であると、自身ですら気付かない


「...ううん、それは良くないよね。3回目、だもんね
 誤魔化そうとしてごめんなさい

 多分、関係あるよ。知ってても、来てくれたんだね」

その噂自体は知らない。噂は必ずしも、本人の耳に入るとは限らないが
その内容に、余りに聞き覚えがある

何も否定はしない。『人を殺してくれる』、その部分まで
どうにか笑みを変えない事だけ、彼女の今出来る事はそれだけ

黛 薫 >  
「多分、ってコトはあーたは噂自体に聞き覚えは
 なかったし、それを流した元凶でもねーのな。
 でも……『やったコト』に覚えがある」

ひらり、スタンプカードを振ってみせる。
今回来店分のスタンプはまだ押されていない。

「もしあーたが関係なぃとか、話したくなぃとか?
 シラを切ってたら、この場でスタンプ押して貰う
 予定でしたけぉ、まーイィや。いぁ、何も良くは
 ねーか……話したくねーって場合は『お願い』の
 権利使ぅつもり。強制しなくても話してくれたら
 使わなぃ。それを踏まえて次の質問」

世間話でもするような軽い調子で話す。
しかしその表情も視線も真剣そのもので。

「あーたの『何でもやる』ってそのまんまの意味?
 平たく言えば、殺しの噂は『人の為』と望まれた
 内容が殺しばっかだったのか。それとも『殺す』
 前提でしか願いが叶えられねーのか」

『調香師』 > 「それは、ずるいんじゃないかな」

首が傾く。だって、その『3回目』はあなたの為に使って欲しくて
自分がその希望を通す為には。自分の言葉を、何も隠せない

知って欲しくない、何も思わずにその『お願い』を使って欲しかった


「あの頃の私は、人を殺すのを上手にされちゃったから
 私の出来る事は、人を殺す事しかなくなっちゃったから

 それが『人の為』って言われたら、納得しようとしたんだよ
 でもそれが、『人の為』になる筈ないよね。だから、お願いはお返ししたの。全部」


『呪いの報いは確実に本人に還ってくる』
その言葉の意味を語る人物はもう、この世には居ない

黛 薫 >  
「ズルぃ手だから先に気に障るかもって言った」

勿論、気分を害するとしたら話の内容も含めてだが。

「……そ。ってコトは、殺す以外も出来る今なら
 それ以外のお願ぃでも良くなったワケだ」

「んじゃ次の……この質問で最後になったらイィな
 ってあーしは思ってますけぉ。聞かせて貰ぃます」

「あーたは人殺しを望まれたら、同じように
『人の為じゃないから』呪いを返すと思ぅけぉ。
 こないだの問ぃの想定だ。『人の為』だって
 肯定できて、かつあーたがやりたくねーコト
 お願ぃされたら……どうする?」