2020/08/16 のログ
ご案内:「空中水族館「星々の庭」レストラン 個室…の隣」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
なんか、のっぴきならないな。
たまたま入った個室の壁に背を預けたら先輩方の話が聞こえてきた。

目の前には自分の料理の参考にしたくて注文した料理が並んでいる。
でも多分食べても味しねーわ。

これは……盗み聞き、ではないか…?

山本 英治 >  
俺、山本英治は耳が良い。
というか、五感が鋭い。
異能に覚醒してからだろうか。

こういう時、考えものだな……とか思う。
でも気になるな……レイチェル先輩と園刃先輩の話…

全神経を隣の部屋に集中させている。
たまに気が向いた時に目の前の料理に手を付ける。
料理……なに頼んだっけ………こんなの頼んだっけ…?

園刃先輩は、困惑しているようだ。

大事な話してんな……俺、なんでここにいるんだろ…
次からぜってー個室には入らない…個室にはハイランダー。
思考が混乱している。

山本 英治 >  
自分の胸に聞いてみな…とか……
遠慮なく話してみろ…とか…そういう感じの話をしている…

盗み聞きしていい会話じゃないなコレ?
山本英治、死罪だなコレ?

目の前の焙じ茶を口にして喉を潤わせる。
次の料理を運んできた店員さんに、

「……ああ」

と物憂げに空を眺めながら言ってしまった。

これ完全に彼女にすっぽかされた男の憂き顔だな。
ごめんなさい店員さん、僕は盗聴犯です。

山本 英治 >  
園刃先輩の爆弾発言が放たれた。
俺の肺に焙じ茶も放たれた。

「げヴァっ」

可能な限り声を消しながらむせ返る。
何してんだあの人。
でも、商売してんじゃないのは安心か……

そして俺は園刃先輩が肩見せ和装をしている姿を妄想した。
しめやかに自分の顔を殴った。

制裁……制裁…っ!
邪念を持ったアフロ…っ! 制裁…っ!

山本 英治 >  
レイチェル先輩は、向き合っているのが嬉しいと言った。
俺は今、どうしている?
何とも向き合っていない。

あるのは出歯亀根性だけだ。

男らしくない……全く、男らしくない………
なのに、どうして俺は。
聞くことをやめられないのだろう。

山本 英治 >  
壁に背をつけたまま煙草を咥える。
しかし、灰皿がない。
そういえば禁煙だった。ここ。

震える手で煙草を箱に戻す。

園刃先輩、どの有様なわけ!?
クソッ今から覚醒しろ俺!! もちろん透視異能にだ!!
今から万力の力を込めて壁を見たら透けないかな。
瞼の皮を切ったら心眼に目覚めないかな………

ドキドキしながら話を聞いている。

山本 英治 >  
肺に再び飲み物が入って咽る。
これ誤嚥性肺炎になったらどうすんだ。

ああ、多分……レイチェル先輩は園刃先輩が好きなのだな。
うん、間違いない。これは間違いない。

そして女性同士とはいえ、二人はお似合いだ。
きっと幸せになるだろう。
なのに……俺の心には棘が刺さっている。

モヤモヤしている。

ああ、そっか。
この心のモヤモヤの正体がはっきりした。
俺は園刃先輩が好きだったのか。
なるほどな、キッドに未来の死を認識させてもらえてなかったら理解できなかった。

そして理解すると同時にこの恋心とはお別れだ。
俺には不適なる心。
前科のあるアフロのゴリラよりも。
理解してくれる大切なヒトのほうがいいに決まっている。

山本 英治 >  
笑ってやるなよ、園刃先輩。
真剣なんだぜ、絶対に。

そしてメシを食べ始める。
なるほど、美味い。

メシの味がこの期に及んでわかるとは。
どういう心理状況なのだろう。
わからない、わからないけど。
今日は帰りにガード下で飲んで帰ろう。

山本 英治 >  
……この料理は美味い。
この料理もだ。多分、ソースに秘密がある。
普通、失恋したら。
泣いて泣いてモノの味もわからなくなるモンだと思っていた。

逆だな。

愛しい人がいる世界のために、何かしたいと思える。
お前が伝えたかったのも、きっとこれなんだろう…未来。

これ以上の盗み聞きは、きっと赦されないだろう。
いや盗み聞きした時点で赦されないけどな。

俺の愛した人の愛している人は、俺じゃない。
ただそれだけの話だ。

ポケットに手を突っ込んで、会計に向かった。
廊下にあった鏡で哀愁を帯びた横顔が見えて。
似合わないんだよ、バカ。と笑った。

ご案内:「空中水族館「星々の庭」レストラン 個室…の隣」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「常世学園付属総合病院 VIP個室」にさんが現れました。
神代理央 >  
落第街にて、腹部に一撃を貰った後。
検査入院の筈が何だかんだと医者の説得を受け、療養を兼ねて丸一日入院する羽目になってしまった。
結局退院は週明けという事になり、すっかり慣れてしまった個室にてせっせと事務処理に励んでいた。

「……シフトに穴をあけてしまったのは、申し訳なかったな」

世話になっている過激派の風紀委員――アイツはそろそろ痩せるべきではないだろうか――は『ゆっくり休んで大丈夫だよお』とか何とか言っていたが、それでも自分の代わりに警邏に赴く事になった委員達には申し訳ない。
何より、こんな醜態を晒していては、もう風紀委員会にも居場所が無いのではないか――

鈍る思考を振り払い、端末の画面に視線を向ける。
キーボードを叩く音が、静かな病室に響いていた。

>  
ガラッ。悩める青少年のいる病室の扉が開いた。

「やぁ、調子はどう?理央君」

しれっと入ってきたのはその入院の原因になった女。
一切悪びれるそぶりもなく、片手に下げた袋を少し揺らしながら部屋へと入る。
ちゃんと扉を閉め、当たり前のようにベッドの隣にある椅子へと腰を下ろした。

「こんな時もお仕事?
 初めて会った時の何も変わらないじゃない、いやねぇ。
 本当に実は仕事中毒だったりしたの?」

神代理央 >  
開かれた扉の先。
現れた訪問者を前に、露骨に顔を顰める。
キーボードの上を滑る指先が止まり、溜息交じりに唇を開く。

「何処かの誰かのおかげで余り良い気分ではないかな。
結局、週末は病院に缶詰だ」

ぱたり、と画面を閉じて端末をサイドボードへ片付ける。
一応、迎え入れるつもりはある様子。

「他にする事も無し。まして、別に休暇というわけでもない。
しなければならない事は、済ませておくのは当然だろう?」

>  
「呵々、そんな顔をしないでよ。
 心配してるからちゃんとお見舞いに来たんじゃない。
 "あんな状況"で精一杯の"優しさ"で止めたじゃない」

呆気からんと笑えば適当な棚に袋を置いた。
恨み言を言われようと悪びれる事は無く
致し方ないと言わんばかりに緩く笑んで見せた。

「それとも、君の言うように"殺して"おけばよかったのかな?」

あの時彼は、己にそう懇願した。
それを責めるとも、心配すると言った素振りでも声音でも無い。
話の延長性、全く他愛ない様子で尋ねている。

神代理央 >  
「恨み言の一つくらいは、言いたくもなるし飲み込みたまえよ。
少なくとも私はあの晩、善良な風紀委員で居た筈なんだがな」

と、再び溜息。

「……見舞いの品か?特段気を遣う事もなかろうに」

棚に置かれた袋に視線を向ければ、小さく首を傾げる。
確かに、そういう気遣いが出来そうな女ではあるけれど。

「――さて、何の事やら。
何を言っているのか、分らんな。
私は事を成し遂げる迄、死ぬつもりないど毛頭無いよ」

一瞬、言葉が止まる。
しかして、再び紡がれた言葉は尊大さと傲慢さを纏わせたもの。
何時もの様に、何も変わらない。神代理央としての姿があるのだろうか。

>  
「一応ここ、二人きりなんだけどさ。
 "それ"しなきゃいけない決まりあるの?」

女は笑みを崩す事は無い。
幾ら傲慢に見せようと、尊大さをひけらかしても
初対面で見せた思春期の悩みを
あの焼け野原で見た弱さを知っている。
だからこそ、"指摘"した。その冷たい鉄仮面を。

「別に恨み言位はいいよ。恨まれないで生きてるとは思ってないし?
 私自身、善良な一般生徒とは言い難いしねぇ。武を修める関係で
 君に言えないような事は一杯やってるものねぇ?」

理央を鎮める一瞬見せた、女の側面。
嬉々とした笑顔を浮かべ、"止める"事を選んだとは言え
躊躇なく少年に拳を振るった。
それに対して何を思うわけでもない。
しいて言えば、"然もありなん"。

「とはいえ、善良な風紀委員が、"焼け野原"作るのは違うと思うけどね」

後で他の風紀委員に聞いたよ、と呆れたように肩を竦めた。
あの場所に居合わせたのは偶然だし、あの時の挑発は出まかせだが
あれは幾らなんでも"やりすぎ"だ。
『鉄火の支配者』の名に相応しいとは思うが


『一介の少年』がやる所業ではない。


「堅苦しいのは無しにしようよ、理央君。
 こうやって、お見舞いには来てるわけだしさ。
 大体、君あの時"八つ当たり"って認めたじゃん。何があったの?」

女は続けざまに尋ねる。
金色の瞳は何時だって、そこにいる個人を見ている。

神代理央 >  
「……あるともさ。私は『風紀委員』だ。今こうして貴様と話す私も、あの晩、殴られた私も。
風紀委員として対峙するなら、私はこうあらねばならない」

指摘されながら、それを改める事も無く。
というよりも、もう他の仮面が使い物にならない。
『公人』としての己が唯一無二ですらあるのなら。
それは最早、仮面では無いのではないだろうか。

「深くは聞かぬ。後ろ暗い事でなければ止めもせぬ。
さりとて、風紀委員会に目を付けられれば、個の武勇などあってなきが如し。
精々、目立たぬ様に振る舞うが良いさ」

風紀委員会の活動区域に現れ、己に一撃を振るったその武。
彼女に悪意があった訳ではないのだから、大事にするつもりもなければ、彼女に害を及ぼすつもりもない。
ただ、派手に暴れてくれるなと肩を竦めるばかり。

「私とて、むやみやたらに瓦礫の山を造る趣味は無いさ。
それが任務の内だからそうするまで。
あの連中の棲家を焼き払い、文字通り"終の棲家"にしてやれと、命じられたのだからな」

振るった火力の量は兎も角。
落第街の一角を焼き払う行為そのものに、少年の意志は最早介在していないと、笑う。
『そう望まれているから、そうしているだけだ』と、穏やかに首を振ってみせるだろうか。


「……そうやって胸襟を開ける様な間柄かね?
八つ当たりだと告げた言葉は、今更撤回せぬよ。認めよう。
しかして、その理由を。私の事を貴様に告げたとして。
――それで貴様に、どんな利があるというのかね」

利害関係。損得勘定。
最早、縋るべき間柄はそれしかなく。それも無しに己を気に掛けて何になるのか、と。
警戒心すら滲ませる様な紅い瞳が、彼女を見据えている。

>  
「ははぁん。成る程、"こうあらねばならない"、と。」

思わず変な声が漏れた。
成る程、此れは重傷だ。
自分が知らない間に何がそんなに彼を思い詰めたさせたのか。
少なくとも、自分との別れ間際の彼の顔は"イイ顔"だった。
それがすっかりどうだ、少年というには余りにも刺々しい空気。
思春期の反抗期にしては、些か可愛げが無い。

「今更胸襟開けといて言うの、ちょっとダサいよ?
 "そんな間柄"相手にね、多分二回くらいかな?」

女は歯に衣着せなかった。
少なくとも、一度目は恋愛相談。
二度目は鉄火場での懇願。
これを胸中の言わずに何と言うべきか。
あれら全部が演技で、今いる神代理央が本性と言うなら
それこそ"あの場"で殺しておくべきだった、と後悔している所だ。

「そうカッカしないでよ。別に、風紀委員には"なるべく"世話にならないつもり。
 ……で、絶賛反抗期な神代理央君。君の"それ"は、誰に望まれてなっているのかな?」

神代理央 >  
「誰に望まれて、だと?」

リクライニングしているベッドへ背中を預け、彼女に視線を向ける。
点滴に繋がれ、病的なまでに白い己の躰は、健康であっても病人の様だ。

「私を取り巻く全てさ。両親。育った環境。見も知らぬ衆愚の目」

『理想』という型から始まった教育。
『その教育を受けた子供』へ接する大人達。
『大人達からの噂』を聞く、見知らぬ人々。

「風紀委員会。違反組織。護るべき者達」

『違反組織へ容赦しない』組織の一員であれと。
『違反組織へ容赦しない』敵なのだと。
『違反組織へ容赦しない』風紀委員なのだと。

「そして何より――私自身が、そう望む」

力を振るう事そのものを、肯定する己自身。

それら全てが、傲慢で高慢で、荒れ狂う暴風の様な『神代理央』である事を、望んでいるのだと小さく笑う。


それを自覚し、気付かせてくれた人が居たからこそ、今迄はそれを少しずつ治そうとしてきたのだ。
『他者を傷付けずに済む己』を、少しずつ形作ろうとしてきたのだ。
だがそれは――余りに性急過ぎた。
是迄少年が歩んできた人生の根幹を翻すには、短すぎる時間だった。
それ故の歪み。それ故の苦悶。それ故の煩悶。
『正しい姿であることを望まれた』から『今迄望まれた己』を否定する事は、自我への矜持を誇りとする少年にとって、余りにも。余りにも――

> 「…………」
> 「ふ、ふふふ……」
> 「はははは………」
>  
 
    「はははははははははは!!」
 
 

>  
大爆笑。
天井を仰ぎ、大口開けて笑い声が漏れた。
パン、パン、とわざとらしく手を叩き首を振る。
揺れる肩で呼吸を整えながら、金色の瞳が紅蓮の炎が宿る瞳を除く。
その炎はまさに、鉄火の支配者故に燃える彼の正しさか。
だが、女はと言えば……。

「ないない、それはない。理央君、ちょっと自意識過剰じゃない?」

なんとも軽い感じで一蹴してやった。
右手も軽く振ってやだなぁー、と笑い過ぎて滲んだ涙を左手で拭った。

神代理央 >  
大笑いする彼女を見つめて、小さく笑う。
苦笑いというには正の面が強いが、温和な笑みというには負の色が滲む。
そんな中途半端な笑み。

「まあ、此の島に来てからの事については、多少私の誇大妄想が含まれている事を否定はせぬよ」

「たかが2年…いや、厳密には1年と5か月程度か。
その期間で、それだけの『望み』を得られる程の人材ではないと、理解はしているさ」

ベッドに身を預けた儘、笑う彼女から天井へと視線を向ける。

「それでも。いや、そんな短い期間でしかないのに。
私は変化を求められた。是迄私を形作って来たものを、根底から覆す様な変化を望まれた」

「それに、人は必ず、個人個人の在り方を望まれるものだろう?
時と場所を弁えた姿でいろ、というのは社会人に良くあるマナーだ。
拡大解釈すれば、人は他者と過ごす時は常に『誰かに望まれている姿』を演じている筈だ。大なり小なりな」


そして、再び視線は彼女へと向き直り。

「自意識過剰なのは否定せぬよ。しかし、そう思わずにはいられぬ程の事があった。それだけの事だ」

そう締め括ると、再び視線は病室にしては高く、遠い天井へと。

>  
「違う違う。気を悪くしたんなら謝るけどさ。
 私は君の事情を知らない。その『望み』とやらも割とどうでもいいし
 そんなねぇ、期間何て語るほど私らの人生は一合目も良い所さ」

そう、何も知らない。
龍は彼の何も知らない。
勿論理央も自分を知らない。
そんな相手に対しても彼は助けを求めた。
即ち、それだけ追い詰められていた。
周囲の声に、周りに応えようとした。

「本当に健気で真面目だねぇ、理央君」

そんな感想しか出てこない位に"馬鹿"だと思う。
はにかんだ笑顔は、苦いもの。

「身もふたもない事言えば、『嫌ならやめれば』よかったのにさ。
 君がそこまでしなきゃいけない理由って何?君自身の理由、何かあるの?」

何も知らないからこそ言ってのけるストレートな質問だ。

神代理央 >  
健気で真面目。
そう言葉を投げかけられれば、僅かに身動ぎする。
そんな評価を求めている訳じゃ無い。そんな風に、思われたい訳じゃ無い。
――そんな風に、声をかけてくれた者等――

「……それは、私の自我の喪失だ。応える事が、何より私の誇りだった。
『嫌ならやめれば』だと?それは両親が許さぬ。周囲が許さぬ。そして何より、私自身がそれを許さぬ」

『カッコつけ』だと。
そう評する言葉が最も俗世的で、己に相応しいだろうか。
『神代理央』はこうあるべきだ、という視線に『応えられる』事。
その矜持が、己を支え続けていたのだから。
それを止めてしまえば、最早己を支える心の柱は無い。
期待や願いに応えられないなら、そも存在する意味等――

「……逆を言えば、それだけだ。
そんな下らない理由だ。子供の我儘の様な理由だ。
けれど、それを自分自身で笑って手放すには、染み込み過ぎている。それだけだ」

>  
「理央君」

トントン、と軽く床を叩き、天井を指差した。

「ここ、何処だと思う?」

神代理央 >  
不可思議な質問に、怪訝そうな瞳。

「……病室、だろう。私の」

何を言っているんだと言わんばかりの声色と視線で、首を傾げてみせる。

>  
「やーい、真面目ばーか」

くつくつと喉を鳴らして笑った。

「正解は常世島でした。私の言いたい事、わかる?」

神代理央 >  
「……理解しかねる。確かに此処は常世島だが、それと今迄の話に一体何の関係があるというのかね」

真面目馬鹿とは。
喉を鳴らして笑う彼女に少しムッとした様な瞳を向けつつも。
その真意を理解し得ぬまま、頭の上に浮かぶ疑問符は増えるばかり。

>  
「此処は所謂、世界の最先端。
 <大変容>が起きて多くの人が、物が、技術が集まった場所。
 常世って物騒な名前だけどさ、ある意味隔絶された場所だよね、ここ。」

つまりここはあの世。
外の世界とは別の区切りをもった幽世の地。
浄土か地獄かはさておき、女は腕を組み、理央を見やる。
金色の瞳を楽しげに細めた。

「私は君の事を知らない。事細かにも何も、だから
 今から言う事は大雑把に無責任だ。けど、無責任なりに
 私なりに言わせて頂こうか、悩める青少年。単なる世話焼きと言えば、そうかな?」

「まぁ、半分くらい屁理屈入るけど、いいよね?」

と、ひと呼吸おいて女は語る。

「要するに、君はどんな『望み』を親に向けられたか知らないけどさ
 どーせ、事細かに両親が何言おうと此の学園に直に何か言える訳じゃない。
 学園は、君が此処に居る限り、保護してくれるだろうねぇ。"両親が何を言おうと知った事じゃない"」

「まぁ、勿論君が『真っ当な生徒』であるのが条件だけどね?」

「それに周囲の声って何?他人?友達?喧嘩した恋人?呵々…」

いやいや、と軽く右手を振った。

「『誰も君の事なんて見ちゃいないよ』」

「……ああ、これは別に、君個人の事を『見ていない』って意味じゃないよ?
 要するに『無責任な期待』って奴かな。君に押し付ける『偶像』
 ……此の場合、"今"私が見てる理央君の姿、かな?君自身がそう言ったからいいよね」

「で、君は本当に"人が良い"。それに応えなきゃ、"自分が許せない"って言う」

「本当に、"真面目馬鹿"」

困ったはにかみ笑顔を浮かべた。
軽く背もたれに持たれ、足を組んで見せた。

「要するに、さ」

> 「『もういいんじゃない、別に』」


「君はよくやったよ…って、慰めっぽく聞こえるから言い切りはしないけどさ。
 それは"子どもの我儘"じゃなくて、ただの"強がり"。
 君の本当の我儘は、もっと別にあるんじゃないかな?もういいんだよ」

「『嫌な事に嫌』って言うのは、間違いじゃない。
 君自身、"友人を贅沢"と言ったけど、そんな強がってたら
 君は何時か、本当に『得体の知れない物の怪』になりかねないよ?」

「確かに、この学園は特殊だ。それ以前に、私たちが『学生』さ。
 そりゃ、普通の学生とは違うけど、学生には学生の
 子どもには子どもなりに色々あるんじゃない?」

「いいんだよ、理央君。確かにストレートに4年で卒業が普通だけど
 確か望んだり学園の都合で、そのまま籍を置く人だっているし
 卒業したって、島を出る義務はないんだよ?ねぇ、理央君」

「私は、君の事を良く知らない。だからさ、これから教えてくれないか?
 急ぐ必要は無いよ。私達はまだ"子ども"なんだ。時間は有限だけど、たっぷりある。
 ゆっくりでいい、君自身もゆっくりとさ、もっと本当に"我儘"を言ってさ」

>  
 
      「ちゃんと、『友達』になろうよ」
 
 

>  
女は柔く微笑んだ。
明るく、優しい笑顔。
それこそ友人に向けるような気兼ねない顔だ。

「──────私の言ってる事が間違ってるなら、遠慮なく否定してもいいんだよ?」