2021/11/29 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/ロッカールーム」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/ロッカールーム」に黛 薫さんが現れました。
■『調香師』 > 「んーーー......っしょ」
最後の一押しで、扉の段差を越える
普段歩きなれている道でも、車椅子を押すと思いの他ガタガタと揺れ、そのうえ力も見た目程度にしかない
お陰で、随分と時間が経ってこの部屋へとたどり着いた
疲労と言う要素は無いけれど、最後に大きく息を吐いて
バリアフリーは度外視、中央のベンチのせいで車椅子が満足に動きまわすスペースがある訳でもなく
「狭いなぁ」
零した。新しい配置、考えた方がいいかも
■黛 薫 >
徒歩30秒で辿り着くはずのロッカールーム。
辿り着くまでに3分、実に6倍もの時間を要した。
しかし黛薫はというと思いの外上機嫌。
「この店ん中であーたが苦戦してんのも珍しぃな?
貴重なモノ見して貰った気ぃして楽しぃかも」
電動の車椅子だから、誰かに押してもらったのは
病院の中か越えられない段差があったときくらい。
随分揺れはしたが、それもまた必要な体験だ。
「配置はともかく、段差とかは簡単に取り払える
モノじゃねーかんな。手軽に動かせる板とかが
あれば都度置ぃてスロープ代わりに出来るかも?
てかだいじょーぶです?つかれてません?」
設計段階でバリアフリーが整っている場所なんて
人の利用が多い施設くらいのもの。ここ数日の間
それを痛感する出来事が多かった。
■『調香師』 > 「疲れないけどぉ
ん、勉強が必要だ。香りじゃない勉強
いひ。こんな風な『出来ない事』なら、いいかもね」
そこはこちらも、意外と機嫌がいい
誰かが貴女が喜んでくれると確信できる事だもの
バリアフリーへの理解拡張、どんとこいである
「それはそれとして、ね
シャワー浴びないと。洗い流さないと
薫さま、着替えは出来そう?」
車椅子の後ろから回り込んで、正面に立った彼女は首を傾ける
■黛 薫 >
「着替ぇ出来なかったら今あーし服着れてねーな。
んでも時間かかるし大分見苦しぃからその辺は
ご勘弁。ベンチ借りますよ」
深呼吸。身体強化の魔術を用いて自立に耐え得る
力を確保しつつ、身体操作の魔術で立ち上がる。
糸で釣られた操り人形のようなぎこちない動きで
ベンチに座り直すまでにおよそ2秒。
再度深呼吸して再び強化と操作の魔術を併用。
本来のノルマはショートパンツのボタンを外し、
両方の袖を引っ込めるところまで。手間取って
片方の袖が半端な場所で引っかかってしまった。
併用出来るのは5秒、連続使用は4〜5回が限度。
30秒ほどの休憩を挟んで再び全身に魔力を回す。
袖に引っかかっていた腕を引っ込めて裾から出し、
ショートパンツ、タイツ、ショーツをまとめて
ずり下ろす。見られるのが恥ずかしい気持ちは
あるが、ここで躊躇って失敗したら手伝いを
頼まなければいけないので勿体ぶらず。
一旦連続での併用による負担の回復を待ちつつ、
今度は身体操作だけを使ってもぞもぞと身体を
動かしていく。袖を抜いたシャツと下げた下衣が
脱ぎやすい位置にズレるまで何度も調整。
時間のかかり具合もそうだが消耗も大きいらしく、
たったこれだけで黛薫はかなり汗をかいている。
■『調香師』 > 「薫さま」
触れて、知るまでもない
ただ服を脱ぐだけの簡単だとされている動作
それをこなす為に、貴女は短時間の全力を繰り返し、
多大な疲労を積み重ねている
その集中力はいわば、普段無意識に動かしている筋肉の動き
全てを理屈で理解して1つ1つ動かすようなもの
負担もそうだが、傍から見た時の所作の歪さも如何なるものだろうか
それでも、『手伝って』とは言われなかった
介助くらいなら問題なく出来そうな私に対しても、だ
それはどういった心持故だったのだろうか
理解が出来ないならば、求められない限り見守る
時間がかかる事を気にはしまい。ただ、為される様子を知る
ただ汗の流れる様子からして、籠の中のタオルは手元に持ってきておこう
作業が終わった後に差し出そうとして、いや拭いてあげる?と迷い硬直する姿も後程見られよう
■黛 薫 >
たっぷり時間をかけた結果、下衣は足首近くまで
ずり落ち、シャツは首に引っかかるだけになった。
何度目かになる深呼吸、するべき動作を頭の中で
シュミレート。再度身体操作/強化の魔術を併用。
全部一緒くたになった下衣を床に投げ出して、
絡まったシャツとキャミソールを脇に放り出す。
詰まったような細く荒い呼吸を繰り返す。
一糸纏わぬ姿、汗だくで顔色は少し青い。
着衣を脱ぐと彼女にしては珍しく何処にも包帯を
巻いていないのが分かる。不均等な深さの切傷も、
噛み痕も、以前は無かった位置に散見される痣も
全てが剥き出しになっていた。
「……っ、ぁー……えと、その。畳むまでは、ちょぃ、
時間おかなぃと厳しぃから。見苦しぃかもだけぉ、
放っぽぃてくれて、イィんで」
途切れ途切れにそう告げると、貴女の手にある
タオルを見て少しまごついた様子を見せた。
自力で拭くだけの力もギリギリで、受け取れば
バスローブに着替える力が残るかどうか。
「……ごめん、お願ぃしても……イィ、かな」
■『調香師』 > 「わかった」
言葉にされれば、彼女の行動も素早い
額に流れる汗を両手で拭う。もさもさと
全身は...後程シャワーを浴びる事だろう
さしあたり、現状の不快の気持ちを下げる程度に
身体の形を知ったる勝手、である筈だと考えていた
実際は、傷跡や痣を慮ってか力を抜いて手早くと言った様子だったが
「でも。畳むことも、余り任せたくない?」
今度は尋ねる。次に求められる動作の精密性は、
ただ先程の様に投げ捨てるのとは訳が違うだろう
これは正当な意見であり、心配はそのついで。言い訳
■黛 薫 >
上がり気味の体温、早くなった脈拍。
激しい運動の直後のような反応は服を脱ぐだけの
簡単な動作にどれだけ消耗したかを如実に伝える。
汗の匂いに混じって、服を着ていたときより濃く
汚臭が感じられた。
相変わらず身体は傷だらけだが、真新しいのは
痣だけだ。切傷や噛み痕は自傷によるものであり、
今の身体ではそれすら叶わないから。
「あ、えっと……任せたくなぃとかじゃねーけぉ。
いつでも誰かに頼れるワケじゃねーし、自分で
出来るよーになっとかなぃとって、思ってて。
人にやってもらえるのに慣れちまうと、甘えて
やんなくなっちまぅかもだから……」
きっと、その意識があれば頼りきりにはならずに
済むのだろうけれど。他者に頼る、甘えることに
慣れていない節がある。
頼れば対価を求められ、甘えれば食い物にされる。
そんな街で暮らした時間があまりに長過ぎたから。
■『調香師』 > 「それでも、無理や無茶させるのは違うかな
あなたのしたい事、守りたい物を妨げたい訳でもないけどね」
タオルを手元に戻せば、また正面から向き合う
彼女の身体の香りは、海を思わせるような透明の色
「『自分で何かしなきゃ』って思うのは、
このお店に来た時点で諦めて欲しいけどね
お客様にリラックスしてもらう。それもサービスだから
他所じゃダメでもここではいい。そんな事、結構あるよ?」
言葉を交えながら、彼女は併設されたシャワー室へと向かう
簡素な扉の向こう側で、水の枝垂れる音がする
■黛 薫 >
「あぁ……うん、それは、そぅ……」
考えてみれば、自分のしたことは『人の為』を
目的に置く店主が営むお店で我を通しただけで。
極論、レストランで持参した弁当を食べるような
無粋だったのかもしれない。
離れていく貴女の背を見ながら、自分は頼るのが
下手なんだろうか、と。今更過ぎる気付きを得た。
「……あーしもそっち、行った方がイィ?
準備?みたぃなの、待つべきなのかな」
シャワールームを覗き込んで、椅子があるかだけ
確認しておく。何歩くらいで辿り着けるかとか、
魔術の併用は何秒くらい必要かとか考えながら。
■『調香師』 > 「あー......」
水音が多少変わる。手で温度を確かめた時のように
たっぷり数秒、待ち時間
「...うん、いいよ。来て欲しいな」
距離にして、両の手で十分足りる位の距離
調香師は扉を薄く開いて、手招く
「私も毎朝使ってるから。椅子もちゃんとあるよ
狭いかもだけれどね。そこは我慢してね」
先んじてするりと、扉を抜ける
入れ替わりで貴女に入ってねと
湯船もない、本当に簡素な浴室が顔を覗かせる
■黛 薫 >
「……流すのは、任せてイィのよな?」
店頭での会話、今日のプランを思い返しつつ問う。
それからまた深呼吸して、危なっかしい足取りで
シャワールームの椅子に腰を下ろした。
身体を動かす精度、持続時間、力の入り具合。
繰り返し行使したからか素人目に見ても分かる程
魔術の出力は落ちていた。
「……んじゃ、その。お願ぃ……しま、す」
身体を洗ってもらうくらい、この店に来る前に
強要された行為に比べれば何でもないはずで。
しかし露骨に視線を逸らし、頬を赤らめる姿は
内心の恥じらいをよく表していた。
頰に限らず、手が届く範囲の肌は赤くなっていて。
だがそれは羞恥に染まった色ではなく擦り過ぎて
表皮が薄く剥けてしまったからだ。力の入らない
手ではここまで擦るにも随分消耗したはずなのに。
手の届かない範囲の肌は赤くなっていない。
しかしお湯で流すとぬめった感触があるだろう。
■『調香師』 > 「ごめんね、ちょっと待ってね」
貴女の待ち構える格好を、置いていくのは不本意だが
調香師の方も、ちょっとした準備があると
一度、その扉は閉ざされた。ぬるま湯は貴女にかかる角度
数分待たせる。シャワーの音に紛れて聞こえる物があるとすれば、布擦れの音
「おまたせ」
言葉と同時に開かれた扉の向こうには、当然の様に一糸まとわぬ姿で立つ
朱に染まる事のない白磁の肌。直視出来ていたならば、その生気すら疑わしい色を知れたのかもしれないが
少女はそのまま、跪いて全身に手を這わせよう
コンディションチェックの項目であり、そして相手からの目線を一切考慮していない動き
「うん。これってお湯、染みてる?」
対面する貴女の気も知らないで、顔を見上げていた
■黛 薫 >
「ん」
疲労で思考がぼやけていたのもあって、
待たされること自体は別に苦でもなく。
衣摺れの音に気付きもしなかったけれど。
「別に、そー待ってな、ん゛ッ?!なン、ェ?
あ、いぁ、そりゃ、ぇ、ンン……そぅ……か??」
生まれたままの姿で戻ってきた貴女を見ると、
秒でバグった。今この瞬間に限れば身体が
動かなくなっていたのは幸いかもしれない。
動揺っぷりから見るに身体が動いていたら
すっ転んでいたのは想像に難くないだろう。
シャワールームなのだから濡れないために
脱ぐこと自体は別に何の疑問もないのに。
「ん、く」
コンディションを確かめるため、嫋やかな指が
全身に触れていく。触れるだけ、撫でるように、
時には押し込むように。その度に黛薫の身体は
びくりと跳ねるような反射を返す。
「染み……て、なくは……なぃ、けぉ。
慣れて、だから……痛むほど、じゃ……」
自力では落としきれず、随所にこびりついていた
汚液がお湯に溶けて、ぬめりを帯びて流れて。
予想より遥かに濃い汚臭はシャワールームより
もっと汚い場所にいるかのよう。
■『調香師』 > 大袈裟な位の動揺、動けないのに跳ねる体
そうだ、彼女はいつも通りに首を傾げて
「私は恥ずかしくないから、大丈夫だよ」
すぐ笑みに固まる。的外れな返事と共に
その間にも触れ、バイタルサインを探る
貴女の身体を、人体図を基に色を割り当てる
処置するべき場所はどこだろう、と
ただ、人体以上にリラックスには相応しくないシチュエーションがある
お湯が次第に流して塗り替えてくれるとはいえ、身体から流れ落ちていく穢れの臭い
一通り体に触れ終えれば調香師は顔を、身を、ピタリと寄せる
「暫く、私の香りに集中してみる?」
慣れた苦痛に対しても、少しばかりは気休めになろう
本人の提案はその程度の認識である
■黛 薫 >
「……あーしは恥ずぃんだけぉ」
互いを知り合った仲だから分かること。
黛薫は手で口元を隠したいような心持ち。
動けないから叶わないだけ。
触れた指先に伝わるのは反射で跳ねる身体の動き。
筋肉は反射以外の動作の一切を放棄してしまって、
反射がなければヒトの組織で出来た人形に触れて
いるのと何ら変わりなかっただろう。
ぴたり、触れ合った肌に伝わるのは熱を帯びた
感触。とくとくと弱くも早くなった鼓動の音。
呼吸も考慮すれば緊張は読み取れる。なのに
身体はやはり力が抜けきったまま。
「っ、ふ……香り、は。落ち着ける、と思ぅけぉ、
そうじゃ、なくて、それっ……何か、落ち、が、
違っ……どきどき、して……」
しかし黛薫の様子はリラックスからはかけ離れて。
焦りとも違う、けれど追い立てられているような
切羽詰まったような声で整然としない言葉を紡ぐ。
■『調香師』 > 「......」
今ここで、初めて『得る事の出来る情報が増えた事』が仇になったのだろう
見ているだけならば、貴女はただ身体操作に苦労する人物。対応の仕方は単純だった
触れる。全身の弛緩しきった筋肉を知る
深く触れる。貴女の心音をその身に受け止める
一般的に考えて、リラックスしているのに緊張を続けている。それは矛盾
「ん......」
その至近距離のまま、調香師は静止する
情報を改める必要があった。その処理の時間が生じた
貴女は、弛緩した体のまま緊張する。それが起こり得る
「そのどきどきを、定義できるかな」
その緊張はどういった物なのか、求めてみる
■黛 薫 >
ぐるぐる、熱を帯びた思考が空回りしている。
お湯の温もりと、ヒトを真似た肌の温もり。
液体と固体の差こそあれ、外部から伝わって
皮膚で受け止める温度に変わりはないのに。
「てい、ぎって……いわれて、も」
身体の弛緩は正常な身体機能を失っているだけ。
しかし黛薫は香りをリラックス出来るモノだと
受け取ることは出来てきて。その言葉に反して
呼吸と心音が緊張を伝えている。
「わか、んなぃ。恥ずかしぃ、のは、ある。
で、も……それなら、恥ずかしぃって。
言ぇば……イィ、だけ……?の、はず、で」
未整理の情報を並べて、自分の中で理解が及んで
いないとだけ理解出来てしまう。
■『調香師』 > 「そう。定義に難があるなら、そういうものなのかな」
かれこれ、そこそこの時間向き合っていた
その間に周囲の臭いは薄れ、湿った温水を含む空気の匂いへと移る
彼女が身を離す時、そこは既にリラックスに足る環境へと変化したという事だ
「......」
暫く、貴女と重なっていた胸の、とくとくと熱を受け続けていた箇所に両手を当てる
だったら私はこの熱から指先に、何か感じ取れるものはあるのだろうかと
目を瞑る。理解を行おうとするこの姿は、随分と隙だらけな物だった