2015/10/11 - 21:01~04:32 のログ
ご案内:「教室棟/特別講義会場」に浅田扁鵲さんが現れました。<補足:藍色の作務衣を着た、けだるげな表情の男。(講義の時間は設定していません。誰でも参加できるよう曖昧な感じでお願いします)>
ご案内:「教室棟/特別講義会場」にクローデットさんが現れました。<補足:やや暗めの銀髪に青い目、クラシカルな服装で人形のような美貌の女性。手にはやや小振りの羽根扇子>
浅田扁鵲 > 【特別講義用の教室。
 その最前列に並ぶ机に、予め用意されていたのだろう資料が置かれている】

『それぞれ持っていくか、配るかしてくれ』

【そう走り書いたメモと一緒に置かれていた。
 http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/uploda/src/aca895.zip

浅田扁鵲 >  
【教室の中にふらふらと入ってくる、けだるげな表情の男。
 その両手にはノートパソコンがあり、今回もまたプロジェクターを用いるだろう事がうかがえるだろう。
 そしてその足もと。
 後を追うように入ってきたのは、赤い首輪をした、子犬ほどの大きさの、水晶のような二本の角を生やし流線型の鱗を持った、『トカゲ』のような爬虫類。
 水色に光を反射する鱗は、艶を持っていた】

「あー、なんかおまけもついて来ているが、気にしないでくれ。
 うちのペットなんだが、言う事を聞かなくてな」

【予想されるだろう反応に先手を打ってそう言えば、前回同様パソコンを起動し、プロジェクターに繋いだ。
 ホワイトボードに表示されるのは、プロジェクターの起動画面だ】

クローデット > 前回と同様、授業が始まる少し前に来てノートを取る準備をしていたクローデット。
講師の男が連れてきたトカゲのようなは虫類を見て、やや目を細めた。

(今は脅威ではないようですが…竜種ですか。
まあ、「その時」が来たら恩でも売っておきましょう)

そんなことを内心考えつつ、授業の開始を待つ。

浅田扁鵲 >  
「さて、今回も『東洋思想』についての講義を始めたいと思う。
 前回同様、資料を参照してもらいながらの講義になる。
 まだ持っていっていない者は、持っていってくれ」

【まだ余っている、多少余分に用意した資料を見つつ、教室を眺めた。
 ぱっと見て、取り合えず大よそは持っているようだと確認する。
 ……数人が立ち上がったが、まあ初めてしまっても問題ないだろう】

「よし、じゃあ早速だが、『陰陽説』に関しての講義を始める。
 今回はいきなりだが、話を始める前に一つ質問したい。
 この中に『陰陽』についてなにかしら知っている学生はいるか?
 知っていればどんな内容でも構わない、手を挙げて話してくれ。
 前回話した、右が陰、左が陽。くらいの事でも構わないぞ。
 陰陽が関わることなら、どんなことでも構わない、思いつけば話してみてくれ」

【そう質問すると、教室を見回して暫く答えを待つ。
 足元のトカゲが教卓の周りをうろついていたが、爪先で小突かれると大人しくなった】

クローデット > 陶器のように白い肌と、美しく整えられた爪をした手が挙がる。
指名されれば、

「前回の授業でお伺いした、天が陽、地が陰のようなことでもよろしいでしょうか?」

女性らしい、美しい声を講義室に通らせるだろう。

浅田扁鵲 >  
【すっと上がる手を見れば、ああ毎度、目に毒な学生だなあと思いつつ。
 その声に少々聞き惚れながらも、いつものけだるげな表情は崩れなかった】

「ああ、それくらいの内容でも構わない。
 まあどの程度知っていることがあるか、どの部分に興味があるのか。
 それを最初に聴いておきたくてね。
 また古典を長々見せられるのも退屈だろう?」

【最後の一言は少々余計か。冗談のつもりなのだろう。
 僅かとは言えクローデットに視線を奪われたのが気に入らないのか、足もとのトカゲが抗議するように浅田の脛に噛り付いていた】

クローデット > 『また古典を長々見せられるのも退屈だろう?』という講師の言葉にくすりと、邪気のない微笑を見せつつ、軽く首を横に振る。

クローデットにとっては、古典は古典で興味深い思考の材料だった。
ただ、読み取りに少々難がある程度だ。
…もっとも、クローデットのような学生ばかりでもないだろうが。

浅田扁鵲 >  
【首を振られれば、少し意外そうな表情を浮かべる。
 なにせ、自分は元々古典が大の苦手だったのだから。
 とはいえ浅田も東洋魔術師の家系で、治療家の息子である。
 幼い頃から散々見てきたせいで、今ではすっかり感覚が麻痺しているが】

「……ほかに質問も返答もなければ、先に進むがいいか?」

【教室の様子を伺えば、誰もが既に聞く姿勢のようだ。
 なら最初から順立てて話していくとしよう。
 噛り付くトカゲの頭を軽く踏みつけつつ、話し始めた】

「うん、いきなり質問されても答えづらかったな。
 凄く簡単に説明すると、陰と陽は、この世界の現象、物質、あらゆるものを二つのグループに分類したものだ。
 この陰陽と似た考え方は、様々な文化に見られ、多くの魔術体系に影響を与えているのは、君達も知っている事だろう。
 つまり魔術を用いる、修めるにあたって、とても意味のある思想だ。
 陰陽の考え方はとても応用の幅が広く、他の思想や世界観とも合わせることが出来る。
 これを知れば、世界への理解を深めると共に、魔術や異能の運用において役に立つ事だろう。
 とはいえこの講義は、魔術においての実践的な応用方法などを教える講義じゃあない。
 例えに使う事や、質問や希望があれば一例として見せるくらいの事はしてもいいが、あくまで理論、考え方の講義だという事を念頭に置いてくれ。
 それじゃあ、陰陽について一つずつ説明していくぞ」

【そう告げると、プロジェクターの画面が切り替わり、『陰陽概念の発生』という、題だけがかかれた画面が表示された】

クローデット > 講師の言う通り、二元論自体は東洋固有のものではない。
善と悪、光と闇、精神と肉体…。
様々な二元論が、哲学、宗教…そして、魔術へと影響を与えてきた。

プロジェクターで投影された映像を見…そして、続きを待つ。

浅田扁鵲 >  
「まずは今回も、『陰陽概念の成り立ち』から話していこうと思う。
 陰と陽という考え方がどこから発生したのかだが、これはもう文字を見ての通りだ。
 『陰』は丘に、今という禁と同義語、云と言う雲と同義語が合わさった会意文字で、日の当たらない丘の側面を意味している。
 そして『陽』は丘に日、勿と言う光が下に放射する様を表した字とが合わさった会意文字で、丘に日が当たっている側面を意味しているんだ。
 当時は生活の中心が農業だった大陸では、日当たりのいい土地と水の多い土地に関心が集まったんだな。
 こうした陰と陽の代わりに、『雌』と『雄』が用いられる場合もあった。
 こっちは牧畜生活の経験から、二つの対立したものが合わさって、そこから新しい生命を生み出すことを見て発想したんだろう。
 同様に『剛』と『柔』を用いる事もあったそうだ。
 これは動物の雄の性質や、毛の堅さ、日が当たる背中の皮が堅い事から類推したんだろう」

【おもむろに足にじゃれ付くペットを抱き上げれば、滑らかな鱗の背中を見せて『これが剛』、ひっくり返して腹を見せれば『これが柔』と話すと、ぽいと投げるように傍らに落とした】

「こうした雌雄も、剛柔も、後には陰陽の概念に統合されるんだが、重要なのは二つの面があるということだ。
 かつての思想家達は、万物が形を取って現れる状態、つまりあらゆる一切の現象には、全て正と反の二つの面を持っていると考えたんだ。
 正と反、つまり陰と陽の相互関係を、自然界の全ての現象を解釈する上での基本的な観点としたわけだな」

【投げ捨てられるとやはり抗議するように脛を齧られるが、まるで意に介さず講義を続ける。
 『質問はあるか?』と言いたげに教室を見ると、一息置くように言葉を止めた】

ご案内:「教室棟/特別講義会場」に相楽 満さんが現れました。<補足:ボサボサの髪で制服をキッチリ着込んでいる>
クローデット > 「陰」と「陽」の考え方について、文字から説明していく講師の説明を受けて、電子辞書で感じの「陰」と「陽」をそれぞれ調べ、それぞれの部位と説明を照らし合わせながら書き取ってみる。
…右側(「つくり」というらしい)については、何とか理解する事が出来た。

その後、2つの事象の対応についても説明を受ける。
理屈としては理解出来なくはなかったが(ペットらしい竜種の裏表で説明されたおりには、少し笑みを零した)…そもそもの理屈の立て方に、少し意地の悪い興味がわいた。
また、挙手をする。

「…生物の雌雄の差に陰陽を当てはめた部分については…どのような理路で陰陽を振り分けたのか、詳しく説明を頂いてもよろしいですか?」

近代の生物学的に言えば、雌雄の違いは配偶子の違いと、その配偶子の性質から来る違い以上の意味はない。
雌雄の形質の違いは、それぞれの配偶形式について、進化論的にそれぞれの種が「選びとった」ものに過ぎないのだ。

それについて、東洋思想がどのように理屈付けをして、今に至るのか…意地の悪い興味から来る質問だった。
もっとも、表面的には楚々とした振る舞いを崩していないが。

相楽 満 > しれっと居た少年。
雌雄はともかく、剛と柔の大雑把な説明にはなんともな顔をした。

そんな簡単なことでいいのかと思う反面、適当でもいいんだなとも思う。

あとトカゲっぽいのに目が行く。
なんとなく、ヘビとかトカゲに弱い気がする。

さておき、静かにノートを取り続ける。

浅田扁鵲 >  
【来たな、と思いつつ、予め想定していた範囲に質問が収まってくれたことに、内心でほっとした】

「その質問には、この後で陰陽の分け方についてやるからそこで答えるとしようか。
 とはいえ、君達も大よそ予想はついていると思うが。
 ……流石にこれだけじゃなんだな。
 折角だから『雌雄』が何故『陰陽』の代わりに用いられたか話そう。
 簡単に言うとだな、『二つで対になり、互いに補い合う関係』だったからだ。
 そして雌雄がどうやって陰陽に分けられたかと言えば、あくまで個人的にはだが、『産むのは雌にしか出来ず、生命を生むのは天ではなく地、つまり陰であるから』という説を推したいところだ。
 この説を用いると、地が新たな生命を生むには、天の、つまり陽の気が必ず必要になる。
 つまり雄は陽、という事になる」

【と、質問に答えて様子を伺った】

クローデット > 雌の「産む」という特性と、声明を育む地の特性が重ねられたという説で説明を受ければ、納得したようでメモを取る。

(「地母神」と繋がる発想ですか…まあ、妥当ですわね)

平静な表情の裏で、そんな事を考えていたとか。

とりあえず、追加の質問は無さそうだ。

浅田扁鵲 >  
「ほかに質問はないか?
 ……ないな。よし、次にいくぞ」

【そしてようやく画像がスライドされる。
 表示されたのは、『陰陽の対立と統一』と題が書かれただけの画像】

「さて、『陰陽学説』では、世界の本質は『気』であり、陰陽の二気の対立と統一によるものであると見る。
 次はこの対立関係と、統一、制約関係について話していこうと思う。
 まずはこの表を見てくれ」

【ホワイトボードに映された画像がスライドし、『陰陽の対立関係』と書かれた画像が表示される】

「見ての通り、『陰陽学説』はこうしてあらゆる事柄を二つの側面に二分して捉える。
 『対立関係』と言うのは、この二つの側面の相反する一面の事で、統一と言うのはこの二側面が制約し合い、同時に補完しあう関係の事だ。
 対立し合うものがなければ、互いに制約することもない。
 また、補完しあうこともできない。
 陰と陽はこの対立関係が有って、初めて成り立つわけだ」

【するとまた画像がスライド。『陰と陽の属する傾向』と題の振られた画像が映る】

「この対立関係だが、どのように陰と陽に分けているのか。
 さっきの表でもなんとなく分かったかもしれないが、一般にはこのような傾向で分類される。
 これを見れば特別難しい区別じゃないのが分かると思う。
 先ほどの質問の答えは、こっちを見てもある程度伺えるだろうか。
 とはいえこれはあくまで傾向であり一部、全部がこの通り分けられてるわけじゃないことは、一応知っておいてくれ。

 ……さて、それじゃあ早速、君達にはこの傾向に沿って陰陽の分類をしてもらおうか。
 分けるのは、君達が持つ『異能』や『魔術』、『性格』の三つだ。
 異能や魔術を複数持っていれば、一つでもいいし全部でもいい。もちろん無ければ無いでも構わない。
 とにかく、陰陽の分け方を理解するための練習と思ってやってみてくれ。
 発表してもらったり、提出してもらうためのものじゃないから、その点は安心していい。
 分からない事があったら、手を挙げて呼ぶか質問してくれ」

【そう課題を出すと、教壇から様子を伺った。
 話しているうちにも浅田の足元ではペットとの格闘が繰り広げられていたが、一度やや真面目な様子で睨まれると、トカゲは大人しくなった】

相楽 満 > ぴた、と凍り付いた。
陰と陽に分ける、と言われると思いつかない。

とりあえずノートに

『異能:陽 パワー⇔繊細さ 陰』

とか書いておいた。
一応極大の力を制御するための練習はこなしてきたから、多分これでもいいや、などと軽い考え方。

『性格:陽 軽いとこ⇔たまに怒る 陰』

(……これ陰陽か?)

以前思わず恋人に怒りをさらけ出してしまったことで思ったが、普段は軽くても本気で頭に来たらキレるらしい人間であることがわかった。
ならこれも陰陽かと思うのだが、どっちが陰でどっちが陽かイマイチわからない。

まぁいいか、とペンを置いた。
あとはトカゲを眺める時間だ。

クローデット > 対立と制約、補完。
東洋思想がバランスを重視する…というのが、第1回の講義と続いて、強調されているようだった。

続いて、スライドの映像で陰と陽の属する傾向を確認する。
前回の「気」についての講義で説明された事に付随して、更に詳しく説明されていた。
そして、個人的なワークとでもいうべきか、自身の持つ「何か」について分類をしてみるよう指示された。
早速、クローデットも取り組み始める。

(分かりやすいのは、四大元素ですわね…
火は温熱であるので陽、風も積極的に動くものですから陽で間違いありませんわね。
地は静止して下にあるものですし…先生も「陰」の典型例としてよく持ち出されますから陰で間違いないでしょう。
水は…動きこそありますが下に流れるものですし、寒冷で陰…でしょうか?
そうであれば、錬金術の分類の熱・冷と一致するところなのですが)

そうして、試しに分類していって…クローデットの得意としている魔術の1つである、白魔術のところで手が止まった。

「………申しわけありません」

静かに、手が挙がる。

「『傷ついたものを復元する魔術』『かつて命であり、動きを止めたはずなのにもう一度動き出した者を地に還す魔術』は、どのように分類すれば良いでしょうか?」

専門家でない講師に「白魔術」と言っても通じないだろう。
クローデットが分類に悩む特性の部分だけを取り出し、具体的に挙げて質問をした。
ちなみに、悪魔を送り返す術は「暗いもの」と対立するので陽、結界の術は相対的に静止しているので陰に当たるのだろうと考えている。

浅田扁鵲 >  
【挙がった手を認めれば、澄んだ声で問われたのは魔術の分類。
 問われた内容を考えれば、治癒と対不死者への魔術、俗に白魔術と呼ばれる類だろうか】

「そうだな、前者はどちらかと言えば『機能的』なものだろう。
 復元、または治癒となると物質が元に戻ろうとする働きを助ける、つまり積極性があると考える事も出来る
 後者は……これもまた他者へ対しての『外向的』な魔術と言えるんじゃないか?
 オ――私が答えられるのはこれくらいだな」

【あえて陰か陽かはっきりとは言わず、分類するのに必要だろう単語だけを混ぜて答える】

「……と、一つ補足しておこう。
 機能的、というのはつまり働きの事だ。
 物質的、と言うのは言葉通り物質の事。
 物質はただあるだけじゃ動かない。
 なんらかの『働き』があって、運動することがある。
 そしてまた、その『働き』によって消費される。
 だが、働きもまた、物質が無ければ機能しない。
 それぞれにある『機能的なもの』『物質的なもの』という分類はこういう意味だ」

【質問に答える中で、足りないと思った部分を補足する。
 そして改めて教室を眺めた】

クローデット > 「ありがとうございます」

分類のヒントと補足説明を受けて、綺麗な声でそう礼を述べる。

(「機能的」なものも、「外向的」なものも…「陽」に属するものですわね)

そう考えながら、白魔術の主要な魔術系統についても分類を行った。

(…それに、「機能的」と「物質的」の対応は、「精神」と「肉体」の対応にも似ておりますわね)

そんな事を考え、魔術の主要なもののいくつかの分類を済ませ、再び教壇の方に視線を向けた。

浅田扁鵲 >  
「さて……大体できたか?
 これが陰と陽の対立関係、及びその分け方になる。
 これらはこの後の話でも重要になってくるから、分からなくなったらこの表と図を確認しながら聞いてくれ」

【そうしてまた、画像が切り替わり、『陰陽可分』と書かれた図が表示された】

「さあ、それじゃあさっきの陰陽の分類を、今度はさらに細かくしていこう。
 なに特別新しいことを言うわけじゃなく、言葉通り、細かくしていくだけだ」

【そう言って、また赤いポインターを図に滑らせていく】

「これに書いてある通り、陰陽は絶対的な分類でなく、『相対的』なものだ。
 だから一日を陰陽にわければ、夜に比べて昼が陽であり、夜は昼に比べて陰、となる。
 けれど陰陽はそれで終わりじゃない。
 昼の中でもさらに、午後に比べると午前が陽になり、午後は陰とわける事が出来る。
 図に有るように、夜もまた前半と後半で陰陽が分かれる。
 この図にはないが、もちろん午前の中でもまた前半後半で陰陽を分ける事が可能だ。
 このように、『陽の中でも陰に近い』『陰の中でも陽に近い』と、どこまでも陰陽は分けていくことが出来る」

【図の中の午前や午後、夜間の前後を示しながら説明すると、教室へと向き直った】

「これが『陰陽可分』という、事物を無限に分けていける法則だ。
 イメージとしては、図に書いたように磁石のような物だ。
 どこまで小さく、細かく分けていっても、そこには常に陰陽が存在する。
 これこそ、陰陽が相対的なものであるゆえの特徴だな」

【そうして一通り説明をすれば、また用意していた課題を与える】

「よし、今度はさっき分けてもらった『異能』『魔術』『性格』を、さらに陰陽に分けてみよう。
 その中でも陰の部分、陽の部分と分けられれば、陰陽の分け方は十分だ。
 また少し時間を取るから、やってみて欲しい。
 どこか分からない事があれば質問してくれ」

【そして、また言葉を止めて様子を伺う。
 極少数が眠そうにしているが、半数以上が真面目に聞いているのを見ると一息つきたくなった。
 自分の学生時代に比べると、どうやら随分と真面目な生徒が揃っているようだ、なんて感想を抱いた】

クローデット > (…なるほど、陰と陽の対立関係は、どこまでも無限に細かくしていく事が可能…というわけですか)

少し頷きながらメモを取る。
そして、「更に分けてみる」ワークのところで…少しペンを動かす速度が遅くなった。

(同じ属性でも…地よりは、動きのある水の方が陽に近そうかしら?
風と火では…錬金術の分類に沿わせて構わないのであれば風の方が陰に近そうですが…)

少し、考え込んでいる。

クローデット > 少しためらいがちにした後、手を挙げる。

「何度も申しわけありません。
西洋魔術の四大元素の分類について考えていたのですが…
陰、陽それぞれに属する複数の傾向について、どれの優先順位が高い、といったことはございますか?
風と火を比較してみようと思ったのですが、それらに含まれる陰の傾向を探すのが少々困難で…」

相楽 満 > 『異能:陽の陽 パワー⇔繊細さ 陰の陰』

ペンで唇をなぞりながら考える。
これでさらに分けるってなると。

『異能:陽の陰 半分ちょっとのパワー⇔半分より少な目で繊細 陰の陽』

(……単純すぎっかな)

これを先生に見られたら怒られそうな気がする。
だが多分、これくらい簡単でも怒られないだろ、と高を括る。

浅田扁鵲 >  
「風と火を比べたらか……」

【問われた内容には、すぐに答えがでたが、直接答えを言わないようにするには、と頭を悩ませる】

「まあ四元素の考え方にはそれほど明るくないが、自然現象の火と風を例に見ると、風、つまり空気の流れは火によって作ることが出来る。
 だが、風が火を起すことは出来ない。消すことは出来るかもしれないが、その働きは『火が発生してから、風が吹いて消す』というどちらかと言うと受動的な働きになるな。
 はっきりとした特性で分けられない場合、比較したい対象同士がどう影響しあうのかを比べると、分けるヒントになると思うぞ」

【さて、十分な返答になっただろうか。
 言葉をとめれば返答に対する反応を伺った。

 そして幸いなことに、浅田は少年のノートの内容まで伺えるほどの視力は持っていなかった。
 とはいえ、それぞれに考えさせている以上、どんな内容で合っても怒るという事はないだろう。
 ……まあ、苦笑いの一つも浮かべるかもしれないが】

クローデット > 「両者を比較し難い場合には、互いの影響を考えれば良いのですね…ありがとうございます」

そう返答をして、分類を作っていたノートの「陽中の陽」に「火」を、「陽中の陰」に「風」を書き込む。

(…こうしてみると、錬金術との共通性が際立ちますわね)

真剣な表情でそんな事を考えていたとか。

浅田扁鵲 >  
「ああ、相互に影響しあうのが陰陽だからな。
 ……さて、そろそろいいか?
 これで一先ず、陰陽の分類についてはこんなところだ。
 次は『陰陽の対立』と同じような、陰陽の相互関係について説明する」

【画像は移り変わらないが、そう告げると、陰と陽の関係性について話し始めた】

「ここまでの話で、陰陽は相対的なものであるという事は、分かってもらえたと思う。
 陰と陽は、どちらも単独で存在することは出来ず、陰は陽、陽は陰を存在のよりどころにしている。
 例えば方向で、上は陽、下は陰とされているが、上が無ければ下は無い。
 それと同様に、下が無ければ上もなくなってしまう。
 陰も陽も、常に一方は、もう一方の存在があることによって、自己の存在を確立しているわけだ。
 もちろん、陰陽の対立も制約も、陰と陽の両方があってこそ成立する。
 この二者の関係を、『陰陽の相互依存』と言う。
 どうやっても切って離せない依存関係……人間で考えると非常に悩みのタネになりそうな関係だなあ」

【などと苦笑してしみじみ言ってみるが、もちろん冗談である。
 ……足元のトカゲは、飽きたのか浅田の足にぴったりとくっついて寝息を立てていた。

 学生の様子を見て質問がないようなら、画像が切り替わり『陰陽の消長平衡と相互転化』という題のものが映されるだろう】

相楽 満 > (えーとつまり……)

 両方ないとダメ
『パワー⇔繊細さ』

わかりやすい。
パワーしかないと、確かに日常生活もままならないわけだ。
逆にパワーが無いと、いつかの病の時と同じようになってしまう。

こっちはわかりやすくなったな、とノートの追記した。

浅田扁鵲 >  
「しかし、ここまでの、対立、制約、依存と言う関係性は、決して不変の状態じゃない。
 それは陰陽が相対的な概念だという事からも想像に難くは無いだろう。
 陰陽は常にその関係を、バランスを変化させながら存在している。
 この関係を、『陰陽の消長平衡』と言うんだ」

【手が挙がらないのを確認すれば、次の話にへと移っていく。
 切り替わった画像の赤い『陰消陽長』という文字と、青い『陽消陰長』という部分をしめした】

「この陰陽の消長と言うのは、陰が少なくなり陽が多くなる『陰消陽長』と、陽が少なくなり陰が多くなる『陽消陰長』という、陰陽の量的変化の事だ。
 こうした変化を絶えず繰り返すことで、陰陽は相対的な平衡を維持している。
 この消長という変化は必ず起こるもので、この変化によって事物の移り変わりが説明される。
 この図のように一年や一日に例えると、夜中から正午まで、冬至から夏至までが『陰消陽長』の変化。
 正午から夜中まで、夏至から冬至までが『陽消陰長』の変化となる。
 前回話した、陰と陽の気が四季を創ると言うのは、この陰陽の量的変化によるものだ。
 しかし、この消長を見ると一見して平衡が取れている、バランスが取れている状態には見えないかもしれない。
 だがこの消長の1サイクル、図のように一年を通して見て見れば、『陰消陽長』と『陽消陰長』の過程で、暑さと寒さが相対的に平衡を取っている事が分かるだろう。
 この陰陽の消長という関係から伺えるのは、事物に不変は無く、その変化も含めた上で平衡を維持しているということだ。

 ……さて、この消長に関して質問はあるか?
 無ければこれを踏まえて次の関係性に進むぞ」

【そう確認を取るように言って、様子を伺った】

クローデット > スライドに映された陰陽が移り変わる様を示す図を見る。

(移り変わり…けれど、変化の上でも均衡は維持されている。
そうなると…世界の『外』から来たもの達は、「均衡」にどう影響を与えているのかしら?)

もちろん、表に出せる質問ではない。
真剣に講義を聞いている態度を崩さず、適度にメモを取りながら教壇の方を見つめている。

浅田扁鵲 >  
「……質問はなさそうか?
 ちなみにこの量的変化の関係だが、その比率は容易なことじゃ変わらない。
 例えば、陰陽を丘の両側面と説明したが、その丘に外から土を持ってきて高さを変えたとしよう。
 だが、それによって陰陽のバランスが崩れることは無い。
 なぜなら高くなったところで、形が変わったところで、日の当たる陽の側面と、日が当たらない陰の側面は同じように増えるからだ。
 さあ、このあたりで量的変化の話は切り上げて、次は質的変化に移ろう」

【そう締めると、先ほどは無視していた黄色と水色の文字。
 『転化』と書かれた部分を示した】

「さて、陰陽の変化は、この相互の消長による緩やかな変化だけじゃない。
 一定の条件下では、陰陽それぞれが正反対の方向に転化することがある。
 陰が転化して陽になり、陽が転化して陰となる。
 この変化を『陰陽の相互転化』と言う」

【赤いポインターで、図の、丁度陰と陽が切り替わる部分を示しながら説明していく】

「陰陽消長が量的な変化だったが、これはその量的変化の結果による『質的な変化』だといえるだろう。
 陰陽の対立している双方は、常に対立する側に転化する要素を持っている。
 そして新しい事物が生成されるときは、同時に消滅する要素を持っていて、事物が消滅するときは、新しい事物を産生する要素を持っているとされているんだ。
 古典では『変化』とは何かについて、事物がその質を変えずに発展する事を『変』、質の異なる新しい事物に生まれ変わることを『化』、と述べている。
 ……と、ここまで着いてこれてるか?
 消長平衡まではイメージも出来るかもしれないが、転化は少し難しいからな。
 これからこの『転化』が起きる条件を話していくが、ここまでで分からない所があれば今の内に質問してくれ」

【転化の内容が理解しづらいだろうことを見越して、確認するようにたずねる。
 幾人かの生徒が難しそうに眉を潜めているのを見て、もっと分かりやすく説明できたんじゃないか、と心の内で少し悩んだ】

クローデット > 『比率は簡単には変わらない』という話に、すっと目を細める。
他の表情は変化させないように努めていたので、クローデットの中に渦巻く感情を読み取るのは難しいだろう。

それでも講義は真剣に聴いていて、メモを取る。

『量的な変化→「変」
質的な変化→「化」
(古典の表現では)』

そして、赤と青の矢印の横に「変」、水色と黄色の矢印の横に「化」と書き加えた。

質問などは特に無さそうである。

浅田扁鵲 >  
「よし、じゃあ条件について説明していくぞ。
 陰陽がそれぞれ転化するには、図の上下にあるように『極まった状態』、つまり『極』といわれる状態になる必要がある。
 「物極まれば必ず反す」と言って、陽が陰に転化するには、『陽が極まった状態』になる必要があるんだ。
 これもまた四季に例えて説明するが、春から温かく『発展』していく気候は、夏に極点となって、それからは徐々に寒くなる『転化』となり、秋の涼しさは冬にかけて発展し冬の極点を向かえ、再び温暖へと向かっていく『転化』となる。
 この一連の働きが『陰陽の相互転化』だ」

【消長の部分も含めて全体を示して、『転化』の仕組みを説明する】

「さて、この消長と転化の内容を踏まえて、最初の統一という関係に戻る。
 ここまで聞けば分かると思うが、陰と陽は二つで一つの影響しあう『統一体』だったというわけだ。
 どちらかが強まれば、また一方が弱まる。
 けれどそれも消長や転化という関係性の一つであり、それによってバランスを取っている。
 この相互に影響し合い変化し、時に制約し、時に補い合う関係性こそが『陰陽』だ。
 『陰陽思想』について、私からは以上だ。
 なにか質問したい事があれば、遠慮なくしてくれ。
 無いようだったら、今日の講義はこれで終わりにするが」

【そう確認を取ると、黙ってゆっくりを視線をめぐらし。暫く教室の様子を眺めた】

クローデット > お互いが補い合いながら、変化していく、二つで1つという「陰陽」の思想。
西洋でクローデットがいくつか学んだ魔術の思想と通ずる点も多かったが、それは今までクローデットが学んだものよりは随分流動的なようだった。

(「彼」が随分「温い」のも、こういった思想の影響があるのかしら…?)

この島で親しくしている人物を思い浮かべ、そんな事を考えながら、資料を確認して内容の整理に入ったところで…そういえば、前回の講義から抱えていた疑問を解消し忘れていたという、致命的なミスに気付く。

「…申しわけありません、随分前の内容の確認になってしまうのですが」

そう言って、手を挙げる。

「左が陽、右が陰という区分はどのような理由に基づくのでしょうか?
この世界の人間に限るのであれば右利きが多数派ですから、右の方が機能的であるように思われるのですが…」

相楽 満 > (……つまり、怒ったり笑ったりして精神のバランス保つってことか?)

先ほどの性格の面から、喜怒哀楽の精神について考え始めた。
確かに死ぬほど怒ると笑いが漏れる人とかって居るな、などとズレた考え方。
結構難しいなぁ、と胸の内でぼやく。

さらに、本日何度目かの質問をする少女をちらっと見る。
なんか難しいこと聞いてるな、などと。

(……右利きって、頭脳が発達した人間に多いってだけじゃなかったっけ。なんか左脳が発達したから右手を動かす人が多いとかなんとか)

ぼんやり考える。口にはしない。
でも確かにそうなると、左右の区別は少し気になる。
真面目に聞こう。

浅田扁鵲 >  
「ん、そういえばそこを説明していなかったな。
 左右の分類については、あの傾向だけじゃ不十分なんだ。
 ここに関しては、まず大陸において前提となった基準がある」

【手が挙がると、忘れていた、とでも言うように答え、プロジェクターを消し、ホワイトボードに向かう】

「君は「君子南面す」という言葉を聞いたことがあるか?
 大陸における帝は、南に向かって座るものだという意味の言葉だ。
 かつての大陸における文化、思想で何より重要な位置に存在したのはこの帝だ。
 だからこの帝を中心に考えて、言葉通り南に面して座ってもらうと、こういう図になる」

【上を北、下を南にして東西南北を書き、その中心に南を向くように座った人を上から見たような絵を描いた】

「さて、これを見てもらえれば一目瞭然といったところだが。
 大陸で最もえらく貴い方である帝を中心に見た場合。
 帝の左手が東に向き、右手が西を向いているだろう?
 日は東から昇り、西へ沈む。
 つまり帝の左手から日が昇り、右手側へと沈んでいくという形になり、左と右の陰陽が決められたんだ」

【『そしてもう一つ』と、今度は正面を向いて立った人間の図を書き、胸の中心のやや左よりに赤い●を書いた】

「これは人間だが、人間の心臓はやや左よりに存在するな?
 東洋医学において、心臓は五臓の中でも『陽中の陽』とされる部分だ。
 つまり、心臓が偏っている左側が陽である、という説も存在する」

【そして、さらに『帝』と『心臓』と字を書いて、それぞれを円で囲った】

「かつての大陸の文化で最も大事なのは『帝』であり、体の中で最も重要な臓器は『心臓』だ。
 左右は、こうした最重要視すべき存在を基準に置いた上で、陰陽が決められたんだろう。
 まあこれに関しては特殊な例だから、疑問に思って当然だな」

【と、左右の陰陽に関して説明すると、クローデットへ再び目を向ける。
 まだ疑問が解けていないようなら、それにも答えるつもりで顔色を伺っていた】

クローデット > クローデットは日本人ではないのはもちろん、東洋思想が形を成した地である「中華」との縁もない。
当然、「君子南面す」という言葉も知らなかった。

ホワイトボードに解説しながら図を描き、説明して行く講師。
そして、補足で説明される心臓を根拠にする説。
それらを聞いて、クローデットの疑問も無事氷解したようだ。

「ありがとうございます…やはり、思想の生まれる場所の歴史・文化を問わずして読み解く事は出来ませんものね」

そう言って、花のように優美な笑みを浮かべるだろう。

相楽 満 > 別の生徒の質問への回答が思ったより腑に落ちた。
なるほど、とノートにさらさらと書き足していく。
こういうところの着眼点が自分には足りないな、などと自虐しつつも、得た知識は飲み込んでおく。

そこでふと思い出す。

(肝臓って確か人間の腹……右側だったよな。
 臓って陽なら、右側にあっていいのか?)

ほとんどの臓器が左右対称な中で、心臓が左にあるのはともかく、肝臓が右側というのは一体。

なんとなく、自分の横っ腹を撫でながら考える。

浅田扁鵲 >  
「そうだな、思想が生まれるにはまず文化が必要になる。
 そうなれば自ずと、文化において重要視される部分が基準となりやすいんだろう。
 そういった、『貴いもの』を基準に置いた視点というのは、多くの思想で見られる。
 その『視点』を考えてみていくと、その思想が『何のために』生まれたのかが見えてきて面白いぞ」

【そうして答え終えて教室をみれば、自分の腹をなでている少年が目に留まる。
 それにうっすら笑ってみれば、またホワイトボードへ向かった】

「これは人体を書いたついでだから詳しくは説明しないが。
 体の五臓を陰陽にわけると、心臓と肺が陽になり、肝臓脾臓に腎臓が陰になる。
 一般に横隔膜より上の臓器を陽として、下の臓器を陰としたわけだな。
 ……さ、ほかに質問はあるか?」

【人体の絵の中心に横断するような線を引き、各臓器を書き加えた。
 そして簡単な説明をすれば、次の質問が出てくるか待つように、また教室へ向き直る】

相楽 満 > 「え、おっ」

思わず声が出たが、すぐに口をつぐむ
まるで自分の考えを聞かれたかのようにタイムリーな補足が入り、すごい顔をした。
しかしありがたい、ちゃんとノートに書き込んだ。

左右だけでなく上下で分けて考える頭が足りていなかった。
いい勉強になるなぁ、としみじみ。
満足げな表情である。

クローデット > 西洋魔術の思想の根源にあるのは…恐らく、古代ギリシャ哲学だろうか。
講師の言葉を聞きながら、そんな考えに浸る。

質問は…そういえば、漢字の形の話が残っていたように思う。
しかし、漢字文化に生きている生徒の多数には関係ないだろうし、そもそも陰陽思想の本題ではない。
講義が終わってから尋ねに行くつもりで、とりあえず周囲を伺っている。

浅田扁鵲 >  
「……質問はなさそうだな。
 『陰陽思想』は多くの部分で応用の効く考え方だ。
 私の恩師の知人には、生まれたときから死に瀕した病を持った魔術師が、ある魔術を自分に掛けて、死んだ途端生き返ったなんて馬鹿げた話もある。
 これは『死が極まって生に転化』したというとんでもない例だが、このように面白い応用が出来る……可能性が、陰陽思想にはある。
 折角この講義を聞いてくれたのだから、魔術なり異能の使い方なり、君達なりの応用をしてもらえたらと思う。
 よし、それじゃあこのあたりで『東洋思想概論』二回目の講義を終えようか。
 次回は『五行思想』の説明になるから、少しだけ覚悟しておいてくれ。
 陰陽論よりも複雑な説明になるかもしれないからな。
 日程はまた追って掲示するから確認するように、お疲れ様」

【そう締めくくると、軽く一礼し、ホワイトボードを消し始めた。
 この後は後片付けをして去るのだろうが、足元をうろつくトカゲと共に、まだ暫くは教室に残っていることだろう】

相楽 満 > 次はもっと複雑、となると大変だ。
ここまでの話でもギリギリだというのに。

でも難しく考えすぎたほうが不味いのだろう、とは思った。
最初から最後までそうだ。
この先生の言葉は、全部単純な言葉に変えられる。
簡単に考えよう。そう思いながら、かばんに授業の用具や資料をまとめた。

「ありがとーございましたー」

教師に頭を下げ、ついでにトカゲに手を振って、教室から退出した。

ご案内:「教室棟/特別講義会場」から相楽 満さんが去りました。<補足:ボサボサの髪で制服をキッチリ着込んでいる>
クローデット > 陰陽思想の「相互転化」を応用して、死んだ途端蘇生した例もある…という話を聞いて、目を丸くする。
死者を蘇生させるというのは、白魔術においても高等な…よほどの適性がないと難しい事だからだ。

講義が終わると、教壇の講師の方に近くに行く。

「申しわけありません…最初の方で説明があった「漢字」について、お伺いしたいのですが」

そう言って、教卓の上にノートを広げる。

「陰と陽の漢字の由来について説明を受けましたけれど…」

そう言って、陰と陽の漢字の、それぞれ右側の部分だけを書いて行く。

「こちらの部分の説明は理解出来たのですけれど…」

次に、左側の「こざとへん」の部分をそれぞれに付け足した。

「これが「丘」を意味するという解釈で、よろしいのでしょうか?
元の漢字と随分形が違うので、少々戸惑ってしまいまして」

あたくし、漢字の文化圏の出身ではないものですから…と、少ししおらしい表情をして講師に問うた。

浅田扁鵲 >  
「……ん?
 ああ、漢字か。
 なるほど、そりゃあ東洋出身でもなければ馴染みがないだろうなあ」

【しおらしく訊ねられれば、鼻の下こそ伸ばさないが自然と笑みが浮かんでしまうのは。
 男と言う性を持って生まれてしまった以上、仕方が無いことだろう。
 だって、陰と陽だもの。影響しあうのだから。
 足元で子犬サイズの爬虫類が暴れているがこの際は無視である】

「そうだな、「こざとへん」には丘という意味がある。
 漢字の偏として用いられる場合には、丘や土に関わる漢字だ、という意味で使われるな。
 ちなみに形に関しては、もとは「丘」じゃなく、土を積み重ねたさまを表した「阜」という象形文字から出来ている。
 これを崩して書いていくとそれっぽく見えてくるだろう」

【消したばかりのホワイトボードに、丘と阜を並べて書く。
 その後、阜を徐々に崩した字を並べていき、最後に「こざとへん」を書く。
 足元では、クローデットを威嚇するように爬虫類が両者の間に立っていた】

「漢字はこういう元の字を崩したり、絵や風景から変化したものが多いんだ。
 部首に関しては分かりづらいものも多いだろうから、なにか分からない漢字があれば調べてみるといい。
 まあ聞いてくれれば大体は教えられるが……あー」

【そういえば名前は何と言うのだろうか、と言葉に詰まる。
 さて、受講希望の届出には名前と学年こそあったが、顔写真は無かった。
 事務に頼んで名簿でも作っておけばよかったな、と今更な後悔をしていた】

クローデット > 「なるほど…土が積み重なって「丘」になるので、土を積み重ねた様子を表す部首が「丘」の意味を持つのですね」

象形文字自体は漢字に限らずあるし、歴史も古い。
崩して行く様子を見て、それを手慣れた様子で教卓の上に置いたノートに書き写しながら、頷いた。

「ご丁寧にありがとうございます。
………名前、ですか」

問われれば、品のある微笑を作って。

「クローデット・ルナンと申しますわ。
フランスから、こちらに留学して参りましたの」

そう言って、上品な所作でお辞儀をした。
足下で威嚇している小さい「竜種」は、とりあえず黙殺している。

浅田扁鵲 >  
「クローデット、ルナン、な。
 そうかフランスからか。
 ここは言葉が翻訳されるからまだいいが、それでも日本語が主体だ。
 慣れるまでは中々大変だろう」

【自分が恩師に連れられ異国を歩いた日々を思い出す。
 フランスにも確か行った事があるはずだが……ひたすら病人相手に鍼を打っていた記憶しか残っていなかった】

「何度か名乗ってはいるが、浅田だ。
 名前は扁鵲……と言うんだが、これがまた随分恥ずかしい名前で――イッ!?」

【ホワイトボードに名前を書いて、自虐ネタを披露しようとしたところで、足元のペットに噛まれる。
 それまで同様脛だったが、今度は牙が立てられていた】

クローデット > 「ええ…ここは翻訳もありますし、父が多少日本語に通じておりましたので、どうにか」

そう言って、柔らかい笑みを浮かべる。
異世界の魔術研究のために世界中を飛び回っている彼女の父親は、実際に相当数の言語に通じているのだ。
恐らく、異世界特有の言語もいくつか覚えているだろうと、クローデットは内心苦々しく思う。…無論、表には出さないが。

「『へんじゃく』様…確かに、少々変わったお名前のように思いますが、恥ずかしいというものでもないのでは…、…?」

講師が悲鳴をあげたので下を見ると、「竜種」が主人の脛に牙を立てていた。

「あら………まあ」

そう言って目を大きく瞬かせ、口に手を当てて口元を隠す。

「………「躾」は、必要ですか?」

そう、問うた。

浅田扁鵲 >  
「いや、躾は……多分やめたほうがいい」

【その様子に少しばかり肩を震わせたが、ゆっくりと首を振る。
 確かに竜種の子供ではあるのだが……この”ペット”はその出自が非常にヤバいのだ】

「おいシャオ、いい加減にしないか。
 夕飯抜きにするぞ」

【そう叱ると、不満げに小さく唸りながら足を放し、振り向きざまに尻尾で浅田の脛を力強く薙いで、一度クローデットを睨むように見上げると、教室から出て行ってしまった】

「……まったく、いつの間にか可愛げが無くなったもんだ。
 悪いな、どうもあいつ、俺が若い女性と話してるのが気に入らないらしいんだ」

【素の一人称を漏らしつつ、頭をかきながら肩を竦めた。
 足はジンジンと痛む、が、最近は割りと良くある事だった】

「あー、名前だが、なんだ。
 変わった名前なのは違いないが、気になってもあまり調べないでくれるとありがたい。
 一応これはフリじゃないからな。調べないでくれよ?」

【念を押すように言うが、念を押せば押すほどフリのようになっているのに気づいていないらしい】

クローデット > 「………そうですか」

『やめたほうがいい』と言われ、大人しく引く。
そして、不機嫌そうに教室から出て行く姿を目だけで追い。

「…それにしても、女性と話していると機嫌を損ねる、ですか…」

この講師は女性に対してかなり隙があるタイプに見えた。
あの「竜種」は、愛情という『資源』の振り向け先が変わる可能性を危惧しているのか…それとも、主人の「隙」に対して行き過ぎた警告をしているのか。

(…まあ、覚えておきましょう)

内心そんな事を考えつつ、やっぱり表には出さない。

「………ええ、分かりました」

くすりと笑みつつ、頷く。

(…完全に、「フリ」になっていますわね)

当然、そう考えてはいるのだが。
一応、当人の意思を尊重してしばらくは調べない事にしておこう。

「それでは、本日もありがとうございました。
また、次回の講義も楽しみにしておりますわ」

そう言って瑞々しい笑みを浮かべ、一礼。
それから、講義室を後にした。

ご案内:「教室棟/特別講義会場」からクローデットさんが去りました。<補足:やや暗めの銀髪に青い目、クラシカルな服装で人形のような美貌の女性。手にはやや小振りの羽根扇子>
浅田扁鵲 >  
「そうなんだ、あの年頃は難しいな……」

【察した通り、女性に対しては素だと隙だらけな部分はある。
 仕事や治療者として向き合えば、また別なのだが】

「ああ、うん、頼むよ……」

【言ってしまえば、今流行のキラキラネームと同じ類の名前である。
 基本的に素直なのか、クローデットの返答にほっと安堵の息を漏らす】

「こちらこそ、いつもいい質問をしてくれて助かってるよ。
 ああ、次回も期待に応えられるように頑張らせてもらうさ」

【去っていく後ろ姿を見送れば、つい名残惜しく感じてしまう。
 若い子はいいなあ、と思いながらも、どこか自分とは縁が無いのだろうとも感じていた。
 とはいえ――あの笑顔の下を覗いてみたい、と思う程度には興味を引かれている。
 しかし秘密のある女性は魅力的に映るとは言うものの……】

「……趣味変わったか、俺」

【危険な香りに惹かれるような、破滅的嗜好は無いはずなのだが。
 前回は幼い少女に惹かれかけ、今度はこれである。
 ……なれない日々で疲れているのかもしれない。
 今日は帰ったら良く寝よう、そう思いつつ。
 教室の後片付けを済ませると、教室棟の外で拗ねていたペットを回収し、寮へと帰ったのでした】

ご案内:「教室棟/特別講義会場」から浅田扁鵲さんが去りました。<補足:藍色の作務衣を着た、けだるげな表情の男。(講義の時間は設定していません。誰でも参加できるよう曖昧な感じでお願いします)>