「それでは……次にアルスマグナ。覚悟したまえ。
このヨキの前では、みな同じ土俵に立つ者ぞ」
(冗談めかして、金属製の指示棒をひゅん、と振る。
その先端が鋭い乗馬鞭の形に変化して――すぐに戻る)
「なんてな。冗談だ。
――ふむ、要点はよく掴めているようだな。
見たものをその場で写し取るには、要素を手早く分析して紙に落とし込む技術が要る。
現場でのスケッチの経験が生きているということか。
む。自分のスケッチが採用されたことはないと?
なに、大事なのは経験さ。
絵を描くためにペンを取る者と、取らぬ者の間には、大きな壁がある。
それは実のところ、とても薄くて柔らかな壁なのだが……
自分にとっては固く閉ざされている、と思い込んでいる者も少なくない。
その代わり、複数をひとつの空間ないし平面上に置く、
というのが少し弱くなってしまっているかな。
長時間モチーフを眺め、描いてゆく段階で
少し考えすぎてしまったのやも知れん。
いかにも丁々発止が得意な君の、それでいて
研究者肌が見えてくるようではないか?
鉛筆の使い分けはよく出来ている。
あとは使い分けることの効果が、伸びしろのひとつになるだろう。
……いかがだったね、講評は?
ふふ。ヨキとて鬼ではないぞ。
参加してくれてありがとう。
お疲れ様、アルスマグナ」