2015/10/20 - 21:32~01:42 のログ
ご案内:「祝祭の日の常世島」に三千歳 泪さんが現れました。<補足:金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。重たそうな巨大モンキーレンチつき。>
ご案内:「祝祭の日の常世島」に桜井雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。>
三千歳 泪 > ――――学園祭。
それはあらゆる生徒に等しく訪れる祝祭の日。
学園都市の四季折々の中でも、最大のイベントと称されるもの。
ほかの行事とは訳が違う。学園祭だけは特別で、別格中の別格なのだ。
だから、気が早い子たちは半年くらい前から準備をはじめる。
もちろんそれは極端な例。気持ちはわかるよ。お祭りだもんね。気合も入るってもんです。
三千歳 泪 > 特別な理由がなければ、普通は二、三ヶ月くらい見ておけば十分なはず。
今度の仕事の話が来たのもちょうど三ヶ月前くらいだったかな。
ここ一週間はずっとそこの手伝いをしていて、三日前にしてようやく完成!
何が?って、研究発表だよ!
B級グルメにライブにミスコン! 異文化体験のワークショップ!!
それもいいけど、日頃の研究成果をお披露目しちゃうハレの舞台がそこにある。
青春のカタチはひとつじゃないのだ。
激動の一週間は、過ぎ去ってみればあっという間の出来事みたいで。
………私の手には、約束された報酬とささやかなお礼の品が残されたのだった。
三千歳 泪 > これは、君と私と彼女の記録。
その第一声は桜井くんのケータイからはじまる。
《 10-33. 10-33. Sir, 緊急出動を要請します。我が主、三千歳泪の身柄が拘束されました 》
《 事態は予断を許しません。危険度はすでに棄却域を超過。一刻も早い救出を望みます 》
声はすれども姿は見えず。桜井くん愛用の端末から澄んだソプラノの合成音声が響く。
それは常世島の電子の海に溶けこんだ軍用AI《ゲレルト》の声。
―――桜井くん、私がピンチだってさ!!
桜井雄二 > ぼんやりとドクタースパイス(ジュースだ)を飲みながら通信端末を開く。
泪からだろうか。ロクに相手も見ないで開く。
「もしもし、桜井雄二です」
そこから聞こえてくる音声は、ゲレルト。
内容が頭の中に入ってくると左手の中の缶ジュースが凍りついた。
「……ゲレルト、状況の説明を頼む」
頭はクールに、心は熱く。
そう心がける。それでも体に渦巻く熱は、焦燥。
「島内だな? 1500秒以内に現地入りする、説明の後はナビゲートを頼む」
三千歳 泪 > 手のひらにのるほどの小さな端末にデータが流れ込み、急速に熱を持ちはじめる。
地図アプリがひとりでに起動し、地図上にひとつの赤いマーカーを落とす。
世紀の発見をした老科学者に引退した国家元首、キングオブポップに世界最高のファンタジスタ。
そんな外界からやってきたVIPたちがこぞって泊まる最高級の外資系ホテル。
マーカーが指し示しているのは、目も眩むような摩天楼の最上階。
三千歳泪はそこにいる。
《 Sir, 拘束者の経歴には―――いえ、犯行グループの指導者の名は「ドゥンヤザード」 》
《 中東某国でもとりわけ有力な鉱区を所管する王族……いわゆる《石油王》の一人娘です 》
《 身辺警護は現役の国家元首とほぼ同等。超法規的措置の危険性を勘案すれば、潜在的な脅威はそれ以上かと 》
地図アプリの画面が掻き消え、ホテル内の監視映像に切り替わる。
そこに映し出されているのは、最上階の開放型プールを貸切にして所在無げにしている褐色の少女の姿。
無数のSPが周囲を固め、あらゆる死角を消す十重二十重の防護が布かれている。
ホテルのロビーに途中階のフロアも同じく。
《 そこで、ドゥンヤザード自身の排除ではなく、まずは三千歳泪の身柄を分断することを具申します 》
《 ――――その前に、三千歳泪の現在の姿を確認された方がよろしいでしょう 》
監視映像がふたたび最上階に戻り、少女のすぐそばにある小さな物体を拡大していく。
遠目には福福しく太った鳥のようなシルエットをもつモノ。
それは『千夜一夜物語』の偽典に伝わる、かの有名な―――魔法のランプみたいな品物だった。
桜井雄二 > 地図アプリを開くと、見覚えのある高層建築物の地点。
なんだってあいつはこんなところに拘束されたんだ?
「ドゥンヤザード……シェヘラザードの妹の名前とはな」
「正面突破というわけにはいかないな……プランはあるか、ゲレルト」
ヘルメットを被りながら端末に話しかける。
SPの数はかなりのものだ。
多勢に無勢、真・魔人化したところで勝ち目は薄い。
そして仮に極大消滅波を戦略に組み込んで勝ったところで自分と泪の明日の平穏がなければ意味がない。
「……泪の身柄を?」
「おい、これはただのランプじゃないか。これが泪か?」
「なんともコンパクトな姿になってしまったもんだな……」
曲線が美しいのは変わらないが。
冗談で焦りを誤魔化しながら魔導バイクに跨る。
さほど遠くはない。が、急行する。
自分の大切な人が身柄を拘束されていてのんびりするほど愚鈍ではない。
圧縮した氷でバイクのシルエットを適当に変化させる。
自分のスーツもだ。濃密な氷で覆う。これで万が一どこかに擦っても氷の鎧で守られる。
……ついでにスピード違反も免れたい。
魔導バイクはフルスロットルで発進。
氷を纏った大型バイクは高水圧タッピングされた刃のような威容で街を走り抜ける。
現地へ疾駆る一振りの氷刃。
三千歳 泪 > 《 以前の所有者は《口碑伝承調査会》。シリア北部の都市アレッポの近郊で購入された品物です 》
《 三千歳泪の手元には―――今回の学園祭の支援要請にあたり、超過労働の代償として譲渡されました 》
《 材質は不明。照明器具としての実用性はありません。油を保持する容器が割れていましたから 》
《 ランプはたしかに壊れていたのです。三千歳泪は修復を図りました。その後のことは――― 》
客観的な視点があまりにも頼りなく、つかのま言葉を失うゲレルト。ややあって、言葉をつなぐ。
《 ……何らかの事象の改変が行われた形跡があります 》
《 私の観測が正しければ、ドゥンヤザードはランプの中から現れました。王族などではありえないのです 》
《 ドゥンヤザードは三千歳泪に願望の開示を要請しました。どんな願いでも叶えられると誘って…… 》
《 おとぎ話のとおりであれば、願望には三回の使用制限があるはず。ですが、ランプは元々「中古品」でした 》
《 三千歳泪の願望が開示された直後、彼女はランプの中へ消え、ドゥンヤザードが実体化を果たしました 》
行き交う人々の数は普段にも増して、学園都市は静かにボルテージ≒お祭りムードを高めていく。
フライング気味に手づくり看板を持って歩く生徒たちの一団が強風にあおられ、黄色い抗議の声をあげた。
《 ―――使用制限はたしかに三回。ですが、最後の願いの主は次のランプの魔神(ジン)になる 》
《 霊魂を演算子として駆動する無窮動の願望機。それが《魔法のランプ》なのだと……ドゥンヤザードが言いました 》
《 そして、これは私の仮説ですが……次の二回の願いを叶えたのでしょう。Sir, 結果はあなたも観測している通りです 》
模擬店の立ち並んだスペースを突っ切ると、一気に視界が開けて摩天楼が真正面に聳え立つ。
桜井雄二 > 「アレッポ? 石鹸の?」
それしか彼にとってアレッポという言葉から連想されるものはない。
だが。
「事象の改変……特一級魔術じゃないか」
「……どんな願いでも叶える…」
発想が人よりちょっと変わった泪のことだ。
どんな願いをしたかはわからない。
ただ言えることは、彼女はその願いの代償にランプに閉じ込められたということだ。
「ゲレルト、ここに来るまでの間にプランを11通り考えた」
「成功率が低いものを除くとこちらから提示できるプランは4つだ」
玄関を指差す。
「プランA、怪異対策室三課の面子をけしかけてその隙に潜入、あとはスニーキング」
裏口を指差す。
「プランB、ホテルの使用人に化けて紛れ込む」
人差し指を軽く振る。
「プランC、正面突破」
次に、振った人差し指を壁に向ける。
「プランD………」
苦笑いを浮かべた。まだ笑う余裕があるのか、俺は。
「……氷を使って高層ビルを上る。落ちれば死ぬが敵の盲点だな」
三千歳 泪 > 《 Sir, yes sir. 中東は物語の宝庫なのです。とりわけ宗教的マイノリティの伝承には稀少な学術的価値があります 》
電子の海に散らばる擬似的ニューロネットワークは奇矯な返答を冗談と介さず、淡々と補足するにとどめて。
《 三千歳泪は毀損された願望機を修復し、殺害された魔神を再生しました 》
《 裏を返せば、二度まで使ってランプを破壊すれば、《囚人のジレンマ・ゲーム》の円環構造は破綻を生じます 》
《 Sir, ドゥンヤザードはかつて人間であったと推測されます。同じ判断をする可能性はどれだけあるでしょうか? 》
生身の桜井雄二と同じ行動をとっている自覚さえもないままに、霊魂なき数理の心は問いかける。
《 Sir, あなたは同意を求めている様に感じられます。この場合の感じる、とは蓋然性の高さを示唆するものに過ぎませんが 》
《 ――――――断然。プランDかと 》
自己増殖・自律進化を遂げる夢のAIは冗談を介する。時にそれは論理回路に高貴典雅な妙味をもたらすのだ。
《 電子戦による側面支援はできなくなりますが、よろしいですか? 》
地図アプリに最上階の戦術地図が上書きされ、警護の頭数と同数のマーカーと脅威度の偏在が表示される。
その中枢、青く輝くたったひとつの光点を灯して。
桜井雄二 > 「中東か……興味深いが、その話は事態が収束してからゆっくり聞かせてもらおう」
首を鳴らして左側の冷気を高める。
メールを一斉送信。
相手は怪異対策室三課の友人、川添孝一と三枝あかりとステーシー・バントライン。
ホテルの前で少し騒いでくれ、事情は後で説明すると書いてある。
のってくれればあとで飯を奢るとしよう。
「ああ、見つかる危険が少なく直通の通路だ。プランDでいく」
「電子戦はやってもらう、ホテル正面で騒ぎが起こると同時にホテルに可能な限り同時に電話をかけてくれ」
「可能ならあちこちで電子機器の不調も起こしてくれ」
壁に手をかけ、左手が氷で張り付く。
「昔、一人で留守番している時に電話をかけられ、同時に窓ガラスに小石をぶつけられ、間髪入れずにドアを揺らされたことがあった」
「単なる兄のイタズラだったが、小さな騒ぎが同時に起きると人間、混乱が生じる」
左足を凍らせ、貼り付ける。
それを足場に左手を伸ばし、左足を溶かして登り、くっつける。
これを繰り返すだけだ。
もちろん、僅かでも異能のコントロールをミスれば落下して死ぬ。
左手と左足だけで男は高層建築物の側面を登っていく。
汗が凍りつき、あるいは蒸発する。
精緻なコントロールができる男ではあるが、こんなことに異能を使うのは初めてだ。
極限状態の頭の中に浮かんだのは、三千歳泪の笑顔だった。
泪の浴衣姿。
泪のウェイトレス姿。
礼装の泪に、そういえば……時間旅行の時に泪は泣いていたんだった。
今、彼女はランプの中でどんな表情をしているのだろう?
もし彼女が孤独をひと欠片でも感じているなら。
上る手に力が入る。
「必ず助けるからな、泪」
その声は強風にかき消されて消える。
しばらくして、男はビルの最上階に辿り着く。
SPがいないか周囲を見渡しながら慎重に動く。
気を抜くのは、全てが終わってからでいい。
三千歳 泪 > 《 Sir, yes sir. モーニングコールと称するには少々遅いかもしれませんが 》
頭上には遮るもののない完全なる天空。
そして眼前には今世紀初頭にはすでに実戦投入されていたと噂される軍用義体が二個小隊程度。
俗界から遠くはなれた天上楽土には強力無比なサイバネティクスの見本市が広がっていた。
はじめに奇妙な動きを見せたのは警護隊長の男だった。
豊富な実戦経験に裏打ちされた実力、そしてささやかな過信がいつしかバックドアに変わっていたのだ。
戦術連携システムの汚染は瞬く間に広がり、黒服の男たちが次々と自分自身のこめかみに銃口を突きつける。
《人形遣い》の存在を感じながら声を上げることさえできず、一人また一人と静かに姿を消していく。
桜井雄二の行く手を小柄な影が遮る。
《 Sir, 近接支援はいかがです? 》
全身義体の女性警護官が血の気の失せた顔で笑い、軽く敬礼してツーマンセルのカバーに入る。
残る兵隊は完全なスタンドアロンに置かれていた雇われの外様組だけだ。
《 目標を目視。ドゥンヤザードの腕の中に 》
《 足を止めるのはお手のものでしょう, sir. 警護人員は残り六名。プールサイドからは遮蔽物もありませんが――― 》
自律(中略)夢のAIは皮肉も介するのだ。
桜井雄二 > 現れた義体の女性に身構える。
が、彼女は敬礼をしてこちらのカバーに入った。
「まさか……ゲレルトか? 助かる」
ここまで完璧に仕事をされると、成功させるしかなくなる。
『おい、予約取れてねーってどういうことだオラァ!』
『ここで友達と待ち合わせしているんです、待たせてもらっていいですか?』
『……わ、私もこのホテルの予約をしたのだけれど』
フロントでも騒ぎが起きているようだ。
頼もしい友人たちに感謝をしながら、駆け出していく。
「足止め一筋十年だからな、任せろ」
あまりセンスのない返しをして、左の冷気を全開にする。
プールサイドである。
つまり、水が大量にある。
水を拝借して、氷の槍を作り出す。
氷雪系の最強攻撃、アイススピア。
「右手側の二体を任せたぞ!!」
走りながら左手側の兵隊に向かって極低温の氷槍を放つ。
三千歳 泪 > 小柄な警護官が無言でうなずき、一時的に機体のリミットを外して地を駆ける。
その残像を射線に捕えた銃器の認証にロックをかけ、三倍速の近接格闘で二人の巨漢をプールサイドに沈める。
サプレッサー付きのハンドガンで牽制射撃を送りつつ、さらに一体、狙撃手らしい兵隊のホールドアップをやってのけた。
《 ………Sir, 目標の確保を! 》
想像をあっさりと越える事態に、褐色の少女がランプを抱いたままビーチチェアから転がり落ちる。
『お前……どこから…? く、来るなっ! こいつを奪いにきたのか!?』
その物音にさえ誰ひとりとして反応せず、ようやく周囲の事態を思い知ったらしい。
『おいっ!!……お前たち、まさか全員こっ――――こ……こ…!』
殺したのか、と言いたかったらしい。
恐怖に竦みあがったまま舌がもつれて、ランプを抱きしめた拍子にその表面がすこしこすれた。
「…………おっはーーーーーーーーー!!! 二代目! ランプの魔人です!!」
アラビア~ンで露出過多な衣装の魔神(新人)がほっそい先端からどろりと現れる。私だ。
胸は斜めに横切っただけ、お尻も半分以上こぼれてるデザインがちょっと攻めすぎてる気がしないでもなく。
「で、なにごとかなご主人ちゃん。どうかしたの?」
『……た………っ…………助け……てっ…!!』
震える指の先には天上楽土を屍々累々の地獄絵図に変えた悪鬼が二人。
桜井雄二 > 「……全員殺したと言ったらどうするんだ?」
「お前も俺を殺すのか?」
威圧する。こいつが泪を。
こいつが……俺の大切な人を。
激情にかられないよう必死に心臓を押さえつける。
次の瞬間、ランプから煙が。そして出てきたのは。
「る、泪!?」
なんて刺激的な格好を。って、そんなことを言っている場合ではない。
「三千歳泪…………さん?」
なんかテンション高い。明らかに寂しさなんて感じてそうもない。
「……それで、どうするんだ? 俺としては泪が帰ってくればどうでもいいが」
「その女は助けて、と言っているぞ」
右手の人差し指に閃熱を集中させる。
三千歳 泪 > 「――――桜井くん!!」
お留守番をしてたわんこみたいな勢いで桜井くんに飛びついてぐるんぐるん回る回る回る。
「桜井くんと話すのすんっっっごい久しぶりな気がするよ!!! わー生桜井くんだ!」
桜井くんの胸に飛び込んだまま頭をぐりぐりして。ふとお願いごとを思い出す。
「あ。お願いごとね。魔神的にはさー叶えてあげないとっていうさー。わかるかな桜井くん」
「そういうわけで。そっちの人は桜井くんのお知り合い?」
《 ―――…は、いえ。Negative. あの…… 》
おおむね問題なし。ご主人ちゃんの方を振り向いてサムズアップする。
「ん。安心していいよ。君をどうにかしにきたわけじゃないから」
「……そんなに悪い子じゃないから平気平気。これで三つ目のお願い叶っちゃったかな」
つま先から先が煙みたいになっていたのが急に元どおりになって、その分の体重が桜井くんに乗っかっていく。
「あれ。衣装……戻って…ない……?」
『………なっ……やだ、嫌だ!! まだ…私は……っ! 助けて!! たすけ―――――』
先代ランプの魔神が古ぼけたランプに吸い込まれていく。泣き顔をくしゃくしゃにして。
水と氷と黒服たちの空中庭園はまた水を打ったような静けさに包まれてしまう。
「………んっと。桜井くん。最後にひとつだけお願いごとしときたいんだけど、いい?」
桜井雄二 > 「あ、ああ………」
戸惑いながらも彼女を優しく抱きしめた。
ここまで来た苦労も吹き飛ぶ。
自分にとって、泪の笑顔以上に優先されるものなんてない。
「三つ目の願い事……? もう、二つの願いを叶えてあったのか」
急に重さを感じる。泪はもうランプの魔神じゃなくなった……?
「……その衣装、ちょっと刺激が強いな……」
正直者の桜井くん。
ランプの魔神がランプに吸い込まれていく姿を見る。
彼女も自由になりたかっただけなのかも知れない。
それも泪を巻き込んだ、それだけの点で分かり合えないが。
「……なんだ? お前の願い事なら聞くよ、なんでもな」
三千歳 泪 > ランプをこすれば魔神が出てくる。ここまではおとぎ話と変わらない。
『………ぅ……ッう…仕返しの……つもりか…?』
「最後のお願いはひとつだけ。君を自由にしたいんだ」
『……ぇ―――――――うわっ…わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
元ご主人ちゃんことドゥンちゃんさんがさっきの私みたいに重力に引かれて落ちる。
お尻から落ちたせいで涙眼で悶えてたりして。
「これでやっと普通のランプになったんだ。インテリアに使えるね桜井くん!!」
《 我が主、ひとつだけ疑問が。最初の願いというのは何だったのです? 》
「……んっんー、ちゃんと叶ってるから大丈夫。魔神のパゥワーは本物だったってことでさ」
「ヘンなのじゃないよ。全然ふつーだから!! ところで君は誰だい…?」
最初の願いは―――桜井くんの前で言うのも変だしここは。
言っとく?
「桜井くんとずーーーーーーーーーーーーーーっと一緒にいられますようにってお願いしただけだよ」
「ん。えへへへ。それはそれとしてグッジョブ! 今日もキレッキレだったね桜井くん!……とゲレゲレっぽい人!!」
眼下の学園都市がざわざわと沸き立って、お祭り好きの三千歳の血が騒ぎはじめる。
祝祭の開幕を告げる鐘の音が、天高くはるかに鳴り響いて――――。
ご案内:「祝祭の日の常世島」から桜井雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。>
ご案内:「祝祭の日の常世島」から三千歳 泪さんが去りました。<補足:金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。重たそうな巨大モンキーレンチつき。>