2016/02/14 - 22:38~00:33 のログ
ご案内:「ヨキの美術準備室」にヨキさんが現れました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > 「ふう。食った食った」
『2月14日に訪れるとチョコレートが一生食べられなくなる』という、
曰くつきの美術準備室のバレンタインデーが終わった。
今年は日曜日ということもあって、校内を行き交う生徒は少ない。
だからこそ、今年は例年より派手だった。
ケーキにタルト、大きなチョコ小さなチョコ、自前のチョコレートファウンテン。
中身はフルーツにリキュールに生チョコレート、キャラメル、スパイス、ナッツその他。
各店のタブレットを食べ比べ、口直しに駄菓子屋のチョコレートスナックを食べ、ホットチョコレートを飲んだ。
二年生以降は、誘いに乗る者と乗らない者がはっきりと分かれた。
一年生のある者は来年も来ますと鼻息を荒げ、ある者は撃沈して途中で帰った。
片付けが終わって独り部屋に残り、悠々と一息吐いているのがこのヨキである。
帰り際の学生に乞われて換気をしているが、濃厚なチョコ味の空気が滞留している。
ヨキ > ペットボトルの緑茶を飲みながら、書類の整理を始める。
嗅いだだけで鼻血が出そうなほど甘い匂いが漂っているが、仕事に支障はないらしい。
むしろ深く集中できると見えて、タブレット端末にコードレスで繋いだキーボードをぱたぱたと叩く。
開け放された入口から窓まで、一直線に通り抜けてゆく空気は生温い。
日本では気温が上がった場所もあるというから、近海に位置する常世島も間もなく寒さが和らぐんだろう。
バレンタイン限定チョコレートの洒落た箱をリメイクした一輪挿しに、水仙が差さっている。
応接用のローテーブルの上に飾られた黄色が、風にふわふわと揺れていた。
ヨキ > 書類の作成とメールの送信を手早く終えると、息を吐いて椅子に凭れる。
二三深く瞬きして目を擦り、大きく伸びをした。
室内のチョコレートの香りが薄らいできたところで、窓を閉める。
続きの作業は、部屋を変えて行うつもりだった。
机の傍らに畳まれていた、グレーのつなぎを拾い上げる。
厚みのある生地とや鋲で作られたローブからつなぎに着替えて、首を小さく鳴らす。
「………………、」
少し考えて、つなぎの後ろ腰をごそごそと探る。
獣人用に仕立てられたらしい作業着の穴から、肌色の尻尾がぴょこ、と飛び出す。
「日曜だしな。少しは歩きやすかろう」
平日は人目を避ける尻尾。
水平に靡く肌色を見下ろす。
ヨキ > もう一仕事だ、と呟いて、準備室を後にする。
金工室に向かって、ヒールを鳴らして歩いてゆく。
まるでヨキ自身が甘い匂いを纏っているかのように、歩いた後にはチョコレートが微かに香った。
ご案内:「ヨキの美術準備室」からヨキさんが去りました。<補足:人型。黒髪金目、スクエアフレームの黒縁眼鏡。197cm。鋼の首輪、拘束衣めいた白ローブ、ベルト付の白ロンググローブ、白ストッキング、黒ハイヒールブーツ>