2016/05/25 - 22:26~01:35 のログ
ご案内:「職員室」に尋輪海月さんが現れました。<補足:ヒロワ ミツキ/身長:160cm/服装:見慣れない黒のセーラー服姿。髪の毛は黒だが毛先に赤が見え隠れしている。/人間(女性)/状況:かなり焦っている>
尋輪海月 > 「失礼しましたー……。……はぁ。」

【――職員室の扉を開け、扉の向こうへと一礼をしながら出てきた一人の女生徒は、扉が閉まるまでは愛想良さ気な笑顔でいた。扉が閉まり、中からの教師らの表情の見えなくなるまで閉まりきったのを確認して、……盛大な溜息と共に、頬を掻きながら数歩、その場でたたらを踏んだ。】

「……ッあぁー、マズったぁぁ……。何で大切なパスワードを忘れちまってんだあたしの馬鹿ぁー……」

尋輪海月 > 「……あああ、まずい、ひっじょうにまずい。どうすんだよ、これ。ホントどうしろってんだよー……!」

【……見るに、何かを利用する為の――それも、かなり重要な。――パスワードを忘れてしまったようで、職員室で誰かに頼ろうとし、見事に玉砕したようと思われる。しきりに片手で弄る手帳は乾いた音を立てて捲られ、女生徒の失態をぱさぱさに嘲笑っている。そんな手帳には、その忘れたパスワードとやらは、全くメモを取られて居なかったようだ。
ひとしきりに確認をした後、弍び溜息と共に、廊下の壁にどつっ、と額を打ち付けた。】

「……嗚呼、思い出せない……なんで思い出せないんだよぉぉ……!」
【どつっ、どつっ、どんっ、どんっ。リズムの良いおでこドラムの鈍い音が、廊下に只虚しく響いている。誰か傍らを通ろうものなら、その奇異な光景は間違いなく眉間に山を幾つも作らざるを得ない、そんな様。】

尋輪海月 > 「……あっ」

【――はっとしたように、やっと壁での演奏を止めた。着ているセーラー服の肋辺り、ポケットから取り出したスマホ。世の中にはこういう便利なものがあ】

「…………」

【画面には虚しく、空の電池表示が出ていた。
寝る前の充電は怠るべからず。
……ましてや、転校してきたばかりの彼女ならば、何だかんだで非常事態に見舞われる可能性もある。いざという備えを怠った結果だ。 故に、】

「ッー……!!」

【どつんっ。】

ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/鋼の首輪、黒地に白抜きの有名オンラインFPSのロゴ入り半袖Tシャツ、袖を腰元で結んだグレーのつなぎ、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > おでこドラムの最後の一打ちのあと、廊下には規則正しいヒールの音が響いてくる。
片手に油性ペンで「職員室」と書かれたやかんを携えた教員――いやに背が高く、そうして垂れ下がった犬の耳が目立つ――が、
職員室までやってくる靴音だった。

「………………、」

セーラー服の少女が、壁に向かって項垂れている姿と鉢合わせた。

「……こんにちは?」


教師が着ているつなぎは随分と使い込まれて、布地の所々に白や薄茶の粘土がこびり付いた汚れが見える。
彼は語尾を緩く上げて、陰になった相手の顔を覗き込んだ。

「何かお困りのことでも?」

大型犬が笑ったような顔だった。

尋輪海月 > 「……へ……あ、こんにち」

【陽気な声、人の気配。あぁ、そう言えば此処学校だった。いや現を抜かれ過ぎているだろう私。
声を掛けられる今の今迄気付かないでいた非礼の詫び代わり、
せめてにこやかに――出来るならば、出来たらば――笑顔で、壁につけた額を軸に横に振り返】

「……わん」

【視線が顔を緩やかに通りすぎた。その耳を見た。もふそうなそれを見た。いや待て少女よ。格好を見ろ。相手を見ろ。教師だ。だがしかし、セーラー服の少女は空気の底冷えするような言葉の端くれを口から零し、数秒、呆然とした。

見る限り、着ているセーラー服はこの学校の制服……などにセーラー服があったとして、該当するデザインはない。
明らかに少女の風体は、なんというか、つい最近までは別の学校にいた。そう容易く推理の利く姿だ。】

尋輪海月 > 【首を不自然に曲げて、視線が顔が横なままに上側を見る。女性がしてはならないような、筆舌に尽くし難い、ひどい表情である事さえもきっとこの少女、忘れているか、無自覚か。】
ヨキ > こちらを見上げたまま固まった顔を見遣る。
意識があることを確かめるように、相手の眼前で小さくひらひらと手を振ってみせる。
鋭い爪の生えたいやに大きな手には、指が四本しかなかった。

「……わんわん?」

不思議そうに小首を傾げる。ハウンドの形をした、福耳にも見える無毛の耳朶が揺れた。

落ち着いた様子の言葉掛けは真っ当な教師のそれだが、何しろ身なりが獣人丸出しだった。
つなぎの裾から覗くハイヒールの形も、どうにも変だ。
中身の両足には明らかに踵がないことが察せられて、慣れぬ者には畸形とさえ映るだろう。

「残念ながら、わんわんではないぞ。ヨキはヨキだ。
 見ぬ顔だが、困り事かね。それとも体調が宜しくない?」

にっこりと笑った。

尋輪海月 > 「……へっ?!あ、え、あ、その、ええと……!?」

【目の前を征く四本指の鋭い爪及び手。視線が緩慢に中指の付け根辺りを中心に眼が追った。その後凡そ五秒程の時間を開け、ばっと壁から額を離すと同時に居佇まいを直し、更に一歩か二歩程距離を置いて、……さあ、その後を考えてなかった。いや待てこの人凄い普通に話してるぞでもなんか掌とか凄い爪あるし四本だけだし足もなんかハイヒール履いてる上に踵無いよね?犬?犬なの?待って?狼男?今夜何月?十六夜?そして耳!めっちゃ柔らかそう!

等、最早「削除推奨のキャッシュ」レベルな情報が少女の脳内を一気に埋め尽くしていっているのが、手に取るように判るだろう。要は非常に動揺し、貴方の姿に驚き、そして繕おうと必死のようだった。】

「っいや、カラダはゼッコーチョーで…じゃなくて、だ、大丈夫ですッ……その、いや、すいません、わんわんは忘れて下さい。ちょっとその、忘れてしまいまして……ロッカーの電子鍵の、パスワードを。中に、生徒手帳入れたまんま」

【辛うじて聞き取り、何が言いたいかを汲み取れる位の、この動揺をしているにはよくやった方の語彙力で、貴方の問いかけに答える。一挙一動する度、もし貴方のその耳朶に挙動あらば、視線は即座にそれを追う事だろう。】

尋輪海月 > 【 「はっ。」 】

「……あ、す、すいません、名前教えて下さったのに。ええと、あたし……じゃなくてっ、私は、尋輪海月って言います。つい最近、この学校に転校…というか、編入?転入?してきたばっかで、まだその、色々知らない事ばっかで……」

【しどろ、もどろ。 名前を教えてくれた相手に名乗らず答えるだけ答えて、耳をガン見とは非礼が過ぎたと、視線をやや下気味に、うつむき加減で名乗った。】

ヨキ > きょとんとした金色の瞳が数度ぱちぱちと瞬いたのち、ようやく合点がゆく。

「……ああ!」

気付くのが遅い。
十人十色の老若男女そして魑魅魍魎が跋扈する、長い常世島暮らしの弊害だ。

「やあ失敬、驚かせてしまったかな。
 これでもヨキは異邦人でも人間に近い容姿であるのだが……。

 ……ああいや、そんなことはどうでもよい。
 何だ、ロッカーのパスワードを忘れたと?あはは、そうかそうか」

頷くたび、ぴらぴらと耳が揺れる。ふっくらとした耳たぶだ。

「ヒロワ君か。よしよし、覚えておこう。
 ここで金工を教えているヨキだ。金工の他にも、いろいろやっているよ。
 高いところの物を取ったりとかね」

冗談のつもりらしい。
職員室を覗いたあと、ちょっと待ってて、と廊下を見渡す。

「管理を担当している者に訊けば、マスターキーで開けてもらえるやも知れん。
 この学校、やたらと人が多くてな……ええと、誰だったかな。
 探してくるでな、ここで待っておれ」

鮮やかにウィンクした。軽やかな足取りで、とんかとんかと廊下を歩いてゆく。
擦れ違う生徒らと挨拶を交わす様子からして、良くも悪くも知られてはいるらしい。

尋輪海月 > 「……金工……へ、へぇ……」

【何かその言葉にでも惹かれたのか、その部分を二度繰り返した。何やら合点のいった様子なのに対し、只々困惑のままらしい。
……じい、と凝視する瞳は黒色だが、その縁に、微妙に違和を覚える程度、別の色が見え隠れしているように見える。
そしてその瞳はやはりなんというか、ええ、この人先生なの?嘘?みたいな遺志を隠そうとして隠せずにいる。】

「…よ、ヨキ先生……えぇと、あ、いや、え、え、えっ……?」

【話しかけようとする間に、自分と違ってテンポよく話を転がし足さえ動かし始めるその背中を、言葉が言い切る前にターニングターニング・アンドターニングする。言い切れないまま征く相手を、ただただ呆然と見つめ。】

「……わ、悪い人じゃあないんだよなぁ……多分……??」

【聞こえれば、それはもう、非常に失礼な。】

ヨキ > 相手が困惑するのもお構いなしに、ぽんぽんと言葉を重ねてゆく。
親しみとも馴れ馴れしさとも取れる様子からして、
この教師が生徒からの好き嫌いの分かれるタイプであることは想像に難くない。

後ろ姿まで犬が二本足で歩いているような有様だったが、
よくよく見れば尻尾がなかった。服の下にでも隠しているのかも知れない。
彼女の呟きがヨキに届いてしまったかどうかは、判然としない。

そうして、数分ののち。

「――やあやあ、お待たせ。尋輪君」

ヨキが連れてきたのは、これまた個性的ななりをしたリザードマンの用務員だった。

彼を超えるほど背がでかく、頭のてっぺんが天井すれすれだ。
特注らしい大きな作業服姿は人間と変わらないが、鱗の生えた顔はどう見てもトカゲだった。

「済まんな、生徒手帳を入れたままらしくて」

ヨキの言葉に用務員は、『あいあい』とだみ声で答えた。
電子錠にカギを差し込み、あれこれと操作してゆく。
作業服の後ろ腰から床に垂れた太い尻尾が、ゆらゆらと揺れていた。

がちゃん、と音がすると同時、ロッカーの扉が開く。

『じゃあね、ヒロワさん、気を付けてね』

親しげに海月へ手を振って去ってゆくリザードマンは、指が三本きりだった。
用務員を見送ったのち、ヨキが持っていたやかんを肩に引っ掛けた。

「ほれ、という訳だ。中の荷物を確認するがよい」

尋輪海月 > 「……」

【間もなくして帰ってきた相手と、その相手が連れてきたのは、見上げても恐らく首の仰角の足りぬ――】

「あふ」

【ぽん。 空気か何かを溜め込んでいた容器の栓を抜いたような幻聴でもあったような。
許容量を超える情報量と、目の前のリザードマンの用務員が、なんでか異常な程器用に、結構近代的なデバイスを使って鍵のロックを解除してくれている光景が、彼女の頭の、なんかこう、抜けてはいけなさそうな栓を容易くふっ飛ばしたようだ。】

「……ぁ、あ、はい、ああ、どうも、ありがとうございま……良い一日を……へへぇ……」

【上の空に立ち去っていくリザードマンさん。
なんだ、見かけによらず結構良い人だ。尻尾ゆらゆらしてんの可愛いな。なんだあれ。
現を抜かしきったままに背中を見送って…………漸く、はっと。】

「……っぁあああ、そうだ?!手帳!手帳?!」

【開いたロッカーの中身は、こう、筆舌に尽くし難いごちゃごちゃ具合。貴方の案内の言葉の終わる終わらないのうちに中身をゴソゴソと漁り、】

「ぁあったー!!!」

【掲げるのは薄っぺらい手帳。だけどそれを掲げる様は何かこう鞭と拳銃を持った探検家の、宝物を見つけた時のような輝かしそうな何かを感じさせるもので、】

「あああ……ホント良かった……これ無かったら定期券の購入とか学食利用以前に退学になるところで……っ」

ヨキ > 「彼はシステム周りに大層詳しくてね、ヨキもいろいろ世話になってるんだ。
 両手の指が六本しかないから、人よりキーボードを叩くのに時間が掛かるとは言っていたが」

笑いながら話す語調は、至って日常会話そのものだった。
デジタルでハイテクなガジェットを使う異邦人はそう珍しくないのだろう。

散らかったロッカーには一瞬ぎょっとするも、
慣れっこで漁る様子から本人の荷物に相違ないと判断した。
やがて海月が無事に手帳をサルベージすると、ヨキもまた顔を明るませた。

「おお、あったか!良かった良かった。
 ははは、安心したよ。失くしたままで偽造とかに走られても困るでな」

喩えが極端だ。

「慣れないうちはいろいろ驚くこともあるだろうがな、
 日本とそう変わらんよ。困ったときは、学内の誰も彼もが親切だ」

言ってから、ふと海月を見遣る。

「日本から来た日本人、で合ってるよな?」

尋輪海月 > 「あ、あぁ……そう言えば、さっきのあのなんか、こう、凄い人……指があれだと大変そう……。……あれ」

【自然と応対してしまってから気付いた。非現実的なはずなのに、目の前のこの教師……教師?教授?兎も角、話していると、自然と会話が通ってしまった。驚け。気づけ。なんだおかしいだろう私。】

「……ぎっ、偽造なんてしたら一発でお縄じゃあないですか…!しませんよッ!」

【ぎょおっと驚いて、慌てて弁明。 ……やろうと思えば出来てしまうんだな。成る程。などとは欠片も思ってない。思ってないと顔に出ている。】

「な、慣れても驚かされそうな要素をちらほら見てるんですけど、え、ええと、はい、あ、ありがとうございます……っ」

【小さく頭を下げ、照れたような笑み。……が、次の問いかけに、一瞬凍りついた。】

「……に、日本人……ですよ、そら。どっからどー見ても……っ」

【……さり気なく、そちらと正対していた姿勢をやや横にして、視線を逸らしながら。】

「……あ、あぁ!そうだ!定期券買う為の通学証明証!あれも作らないと行けないんだった……!そ、そろそろ私はここらで失礼しますね……!?」

ヨキ > 言い切ってから不意に困惑する海月に、くすくすと小さく笑う。

「そう。これが常世島。見かけは最初驚くやも知れんが、案外『フツー』だよ」

偽造しないとの弁明には、よろしい、とばかり笑みを深めた。

「うむうむ、真っ当な学生生活を過ごすが賢明よ。
 悪さをすれば、鬼の公安風紀が黙っておらんでなあ」

脅すような言葉だが、顔は平然として笑っていた。
日本人、という言葉と共に目を逸らされると、一度瞬きして、だがそれ以上は詮索しなかった。

「いや、それは失敬した。
 ここは本当に人種の坩堝というやつで……日本人に見えてそうでない者も、少なくなくて。

 何か困ったことがあれば、このヨキをいつでも頼るがよい。
 ヨキはいつでも君ら生徒の味方なのでな」

辞去の言葉に頷き、微笑んで海月を見送る。
照明の光を受けた金色の瞳が、金箔でも散りばめたようにちらちらと輝いた。

尋輪海月 > 「……フツー、か。これが……」

【一瞬、素だったのかもしれなかった。がしり、と、髪を片手で少し掻き上げる動き。
横顔が、微かに救われたような笑顔でいたかもしれなかった、が、……はっとして。】

「あ、いや、す、すいません何でもないです!いや、あの、分かってます、そりゃあもう!ルール破っちゃ駄目ですよね、此処追い出されますもんねぇ!?」

【慌てて手を降ろしながらそうですそうですそのとおりですとややしつこい程の肯定を重ねて告げてくる。
何となく落ち着きのなさの目立つ少女だったが、最終的なその言葉に、一瞬、本当に一瞬だけ、心から驚いた、というような顔と、】

「……ぉ、う」

【……バレかねない、女性らしさの欠けるようで、微妙な口調の……】

「……有難う御座います。ヨキさん。……あの、今度、先生?…の講義か授業がある時、……見に行って、みますんで。……本当に、有難う御座います。」
【相手が果たしてそれをどう受け取るかは分からないけれども、自分なりに取り敢えずまずは、してもらったお礼をしたいのだった。 ぺこりと頭を下げてから、ゆっくり歩き出していく。 ……見えなくなる間際、もう一度だけ振り返り、今度は深々と頭を下げた後、……今度こそ、廊下を歩み、立ち去っていくのであった。】

ご案内:「職員室」から尋輪海月さんが去りました。<補足:ヒロワ ミツキ/身長:160cm/服装:見慣れない黒のセーラー服姿。髪の毛は黒だが毛先に赤が見え隠れしている。/人間(女性)/状況:かなり焦っている>
ヨキ > 「良いことをすればみな君を認めてくれるし、悪いことをすれば咎められる。
 この島の懐の広さは大したものさ。慣れればきっと、居心地もよくなる」

奇異にも映る様相のヨキが、日本人と大差ない身振りで答える。
海月に見え隠れする粗野さの片鱗にも、然して気にした風はない。

「どう致しまして。
 ……何、ヨキの授業を?ふふ、嬉しいな。

 ヨキがやっているのは、金工の実習と……あとは座学の講義もいくつか。
 比較的ウケがいいのは、『芸術文化論』かな。
 絵画でも映画でも漫画でもゲームでも、何でも引っ張り込んで勉強する科目さ。
 履修してなきゃ単位はやれんが、覗きに来てくれるのはいつでも歓迎するよ」

会釈を返して、海月を見送る。
遠目にヨキを見直せば、改めて背の高いことが判るだろう。
人波の中でも、それなりに目立つに違いない。
どことなく老けた言葉の選びに反して、職員室へ入ってゆく足取りは年相応に若かった。

ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/鋼の首輪、黒地に白抜きの有名オンラインFPSのロゴ入り半袖Tシャツ、袖を腰元で結んだグレーのつなぎ、黒ハイヒールブーツ>