2016/06/16 - 23:19~03:39 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/鋼の首輪、黒半袖Tシャツ(某有名アクションゲームの、ライムイエローのロゴ入り)、グレーのつなぎ、黒ハイヒールブーツ>
ヨキ > かつて2500を超える植物に名を与えた「植物学の父」と称される碩学は、50年余りも植物に恋をしてなお情熱冷めやらぬ人物であったという。
ヨキの脳裏に、スラムで出会ったアルミの言葉が残っていた。「キミは恋してる?」。

美と相対して陶酔することのできるヨキにはしかし、自分が恋の酩酊からはほとんど縁遠い男であるという自覚があった。
完全なるものへの指向性――それが自身を獣たらしめている最後の壁であることを、何度も突き付けられてきたにも拘わらず。

黄色やオレンジや黄緑や白、明るい色の大きな花々を挿した花瓶を、イーゼルの前に腰掛けたヨキが黙々と鉛筆で写し取っていた。
放課後の美術室。廊下に人気はなく、開け放した窓の向こうに、楽器の音色や学生らの声が遠く聞こえてくる。

ご案内:「教室」にヘルトさんが現れました。<補足:188cm/短髪で超重量の鎧を着込んでいる野性味溢れる教師>
ヨキ > 芸術に対する揺るぎない情熱が、果たして恋情かと問われれば疑問だ。
拠りどころなくして唐突に人間の姿と言葉を得、異世界に放り出されたヨキにとっての、唯一無二の生きる術だった。

“論理的なるもの”の下位から出発した、感性的な学問。
人間の生き死ににおよそ関わることがなく、けれども不可分にして、時に倫理と相反し、ときに崇高と結び付くもの……。

地道な創作に立ち戻るごと、ヨキは初心に返ることができた。
鉛筆のみで仕上げるデッサンよりも簡潔な描線が紙の上に現れると、椅子の横に置いていた画材の一式から水彩絵具を準備する。

ヘルト > 遠くからでも聞こえるだろう金属がぶつかり立てる音。
一歩また一歩とその音が美術室へ近づいてゆき、その目の前で一度制止した。

「うーっす、ヨキセンセいるか?」

ぬっとドアから顔を出すいかつい顔の男。
その手にはコンビニの袋がぶら下がっていた。

ヨキ > 振り返る。
その顔を見て、はじめに思い出したのは弧を描いて放られた干し肉だった。

「おや……ヘルト」

着彩に入る前に、筆やパレットの類を小脇の道具箱に置いて立ち上がる。
長いこと座りっぱなしで絵に打ち込んでいたらしく、ううん、と気持ちよさそうに伸びをした。
彼が手にしたコンビニの袋を一瞥して、旧知の友人のように出迎える。

「珍しいな、君が美術室を尋ねてくるとは。何か用かね?」

ヘルトとは二週間前、転移荒野で獣の姿をして遭遇したばかりだった。

ヘルト > 「まあ、芸術にゃ縁が無いな。正直ヨキセンセが居なけりゃ近寄りもしないだろうさ。」

わははと笑いながら中へ入るヘルトは適当な椅子を見繕ってヨキの隣に座った。
ミシミシと音が出たような出なかったような。

「まあ、用という程でも無いんだがな。昨日まで行ってた遠征の土産話でもと思ってよ。」

コンビニの袋からいくつかの酒とつまみといつぞやの干し肉を広げつつ目の前の親友(勝手にそう呼んでいる)に『酒大丈夫だっけか』と確認していた。

ヨキ > 年季の入った木製のスツールは頑丈な造りをしていたが、ヘルトやヨキが腰掛ければ軋みもしよう。
隅に避けられていた作業台を一台動かしてきて、互いの間へテーブル代わりに置く。

「ほう、土産話?それは是非聞かせてもらいたいね。
 ヨキの方も、手を止めるのにキリのいいタイミングだ。ちょうどいい休憩になる」

ヨキがスツールに座り直すと、これまた重たげな音がする。
机上に広げられてゆく酒盛りの一式を見て、にやりと笑う。

「このヨキはザルもザル、水のように飲むクチだとも。
 今日のところは、少しだけ相伴に与るとするかな……あまり校内で飲みすぎては、面目が立たんからな」

ヘルト > 「最近妙に忙しくてたまらん。主に本職がだ。」

そう言いつつも妙に楽しげに話している。その実ヘルトは今の状況を楽しんでいる。
平和、聞こえは良いが彼にとって平和とは次の戦の準備期間である。
戦働きこそ彼の楽しみであればこそ、その平和はどんな剣や矢よりも恐ろしいものであった。

「さて、こんなもんか……まずはおっかけにビールといきますか。」

そう言って小瓶のビールを差し出した。
勿論気に入らなければ希望の酒を出すだろう、余程凝ったものでなければ用意しているはずだ。

ヨキ > 「ふふ。多忙も望むところ、といった面持ちをしておるな。
 わざわざヨキを訪ねてくるほどだ、よい成果があったのだろう?」

笑いながら、ビール瓶を受け取る。
根が魔物であるヨキの爪は栓抜きにも勝る強度を誇っていたが、欠かさずケアをしている爪を使うような無体はしない。
人差し指に黒光りする金属の指輪を嵌めた右手を軽く握ると、音もなく同じ色をした栓抜きが現れる。便利な異能だ。

てきぱきと二人分の栓を開ける様子からするに、何だかんだ言って早く飲みたいらしい。
左手で瓶を軽く掲げるのと入れ違いに、右手の栓抜きは消えていた。

「ふふふ。では馳走になるぞ、ヘルト。乾杯しよう」

ヘルト > 「へへっ、おう! 乾杯!」

栓抜きの事なぞ全く意にも介さず、瓶を掲げ乾杯する。
コップ?何それ?と直接口につけてビールを喉に流し込んだ。
程よく冷えたそれが喉を刺激する感覚にヘルトは生きていて良かった!などと思いつつ干し肉にかじりつく。

「まあ、今回の遠征は親父殿も一緒だったからな。大分派手に立ち回ったぞ。」

もっしゃもっしゃと肉を食み、ビールで押し流しながら遠征の土産話を始めるのだ。

ヨキ > 軽い調子で乾杯する。イエイイエイ。
ヘルトの対面で同じくぐびぐびとラッパ飲みして、派手な息を吐き出す。

こっちも頂きます、と干し肉をもらって大きな口で齧る。美味い。
生肉などと贅沢を言わず、“あのとき”大人しく食べておけばよかったな、などと考えたのは秘密だ。

「君の父親の評判も聞いているぞ。
 君らも地球に迷い込んだとは言え、このまま島に身を置いてくれれば安泰であろうにな。

 遠征というと、どの辺りまで出向いたのだね。
 よほど大物の怪異でも仕留めたか?」

割いて咥えた肉が煙草のように口からはみ出して、咀嚼に合わせて揺れている。
完全に餌付けされた犬の顔だ。普段は人格者ぶった顔をしているくせ、酒と食い物には一溜まりもない。

ヘルト > 「いいねいいね! いいよ~、その飲みっぷり!」

満面の笑みでサムズアップ。グッ! 空いた手では二本目の瓶を開けようとしている。
ポンっと気味の良い音を立てつつ栓を開けて再び口を開く。

「親父殿はそんなに評判かい? ただの気難しいジジイって評判じゃねえの?

まあそれはさて置きだな、遺跡群の先にさ。離島あるじゃないの? そこまで行ってたんだけどよ。
いやあ久々に滾ったねェ~……海からよ、ざばあっと蛇が顔を出してきてよ!
もう船とかオモチャじゃねえのってくらい長かった。」

デカイでは無く長かった。
だが語るヘルトの目はまるで少年の様にキラキラと輝いていた。

ヨキ > 瓶に口を付けたまま、親指を立て返す。うまいぞ、という感想の代わり。
水のように飲むというのも、誇張ではないらしい。が、ペースを保つのはヨキなりの理性の表れだ。
早くも二本目の瓶を手に取るヘルトに、やりおるのう、と笑いながら唸った。

「共々大した腕だと聞いているよ。
 それに、たびたび説教を食らっている、ともなあ?ふふ、愉快なものだ。

 ほう、海に大蛇?異世界から迷い込んで、海底に潜みでもしておったか……。
 人を襲わぬうちであるだけ幸いだったな。
 して、それほど長い蛇に対して……もしや二人きりではあるまい?配下も居ったのだろう?」

まさかとは思うが、という顔。乾き物をぱりぽりと齧りながらも、前のめりの姿勢は興味津々だ。

ヘルト > 「えー! いやいやいや、アレは親父殿を守らなければならない俺の使命にしたがっただけでだな!
全ては親父殿が悪い!

まー、縄張り意識だけはいっちょまえだったな。好き好んで人を食らうような奴ではなかった。
あー……えー……なんだ。親父殿がだな、親父殿がだな……。」

バツが悪そうな顔でどもっている。こいつ……もしや。

ヨキ > 笑いながら話を聞いていたのが、ぱちぱちと瞬きする。
三分の一ほど残った瓶の手を止めて、窺うようにヘルトを見た。

「……親父殿が?父君が何か拙いことでも?」

眉を顰め、話の続きを促す。

ヘルト > 「おう……親父殿が逸ってさ、突っ込んじまったのよ。単騎で。だから俺もそれについて行っただけさ。うん。」

視線を逸らし、ぽりぽりと頬をかく。そしてポツリポツリとだがその後の展開を語る。

大蛇と遭遇したヘルト一団。その長、親父殿が大興奮して単騎で突撃してしまう。
ヘルトはヘルトでやっぱりその邂逅に喜び勇んで突っ込み、二人仲良く蛇退治をしましたとさ!

その後、副官からしっぽりと叱られたのは言うまでも無い。

「ま、まあそんなつまらない話は良いじゃねえの!」

ぐびぐびと残りのビールを飲み干し、次の酒に手を出す。
お次はウイスキーか。

ヨキ > 顛末は思った以上に痛快だ。だが言うまでもなく無謀だ。
ヨキが騎士団の一員であったなら、恐らく叱る側に回っていたことだろう。
副官の苦労を思って目を細める。上がこの二人では大変だぞこれは、という、見も知らぬ人物への労いの顔。

「いやいやつまらなくなどないぞ。
 船がオモチャと思えるほどの大物を仕留めたのだから大したものだ。
 学園に掛け合えば、多少なりとも報奨が出そうなものだが。

 今のヘルトも随分と楽しそうな顔をしているが、戦いの場ではまた違った輝き方をするのだろうな?
 全く、敵に回したくない相手だよ、君は」

ヘルトに合わせてビールを飲み干し、自分もウイスキーのボトルへ手を伸ばす。
流れるような開栓からの一口、そしてつまみ。

ヘルト > 「んー、まあ暇つぶしみたいなもんだしなあ。
それに金に頓着している訳でも無いし……あー、そういや同じことアイツ(副官)に話したら何かすげー顔してた。

いやいや、俺程度なんかまだまだだって。親父殿の方がアレだしホラ、人外っていうの? アレ。
にしたって、こんな美男をつかまえてよく言うぜ。そりゃきゃーきゃー言われるだろうけどさ!」

人外。ヘルトをしてそこまで言わせる親父殿の謎が深まる。
そしてワハハと豪快に笑いつつぐいっとウイスキーを流し込み、つまみをばりばりと咀嚼する。

「まあ遠征自体は実は大して何も無かったんだよな。楽しかったのはその帰りさ。」

ヨキ > 「人外?」

人の身にして圧倒的な膂力を振るうヘルトもヘルトだが、父親はどうやらよほどの人物らしい。

「はは、そのうち君の父君とも酌み交わしてみたいものだな。
 酒まで君より豪快であったなら、酒樽がどれほどあっても足りなさそうだ」

笑いながら、ウイスキーをゆっくりと口にする。
ビールよりも穏やかなペース。

「……遠征の帰り?
 何だ。そんな巨大な獲物を相手に楽しんだよりも、ずっと楽しかったと?」

ヘルト > 「えっ!? い、いやあ……さすがのヨキセンセでもそりゃあお奨めしないぞ……。
いや、あのな。マジであのジジイ、酒樽で呑むから。呑むから。」

親父殿の酒を呑む場面を思い出しているのだろうか、顔が青くなっている。
そして悪いことは言わないからやめておけ、とも言われるだろう。
ぐっとウイスキーを呷って、心底楽しそうな。悪鬼とも修羅とも思えるような顔で続ける。

「ああ、楽しかった。血湧き肉踊るとは言うが、アレはそんなもんじゃない。
魂すら震えた。」

怪異の類を退治したヘルト一行は帰路に着いた。
その道中、遺跡群のある場所で突如奇襲を受けたのだ。
見慣れぬ装備の軍勢で、かなりの手練だったとの事である。
その中でも頭とその副将が滅法強かったと彼は語った。

ヨキ > 「……よもや酒乱ではあるまい?そうしたらヨキも大人しく止しておくが。
 その調子だと、君の父君はえらく心胆寒からしめる人物であるらしい」

ヘルトの顔に満ちた愉悦を、真っ直ぐに眺める。どこか羨ましげな眼差し。

「ふ……君の魂までも、か。
 物言わぬけだものを討ち取るよりも、知恵ある手練れを相手取った方が君は奮い立つ性質のようだな。
 生きて戻ってくれて何よりだ。

 その集団については、何も手掛かりはないのか?」

ヘルト > 「酒乱っつーか……ええとな、アレだ。穴の開いた瓶。穴が開いてるからずーっと器が満ちることは無いみたいな。
要は付き合ってたら肝臓ぶっ壊れるぞっと……。」

「どうにもアレで収まってくれるようなタチじゃねえんだよな。
きっとヨキセンセだって相対する時が来るんじゃねえか?

んー、あいつらなー。殺っても、砂に還るんだよな。何だろな、俺の知らない魔術かね?
だから手がかりは無いけどよ、ミナモト?がどうたらこうたら。」

『後はアレ、アレよ。』と身振り手振りで見た目を説明している。
説明しようとしているが、いまいち伝わりづらいかもしれない。
ただ頑張って解読しようとするとそれは平安時代の武者が装備する大鎧だと分かるだろう。

ヨキ > 小さく肩を揺らして笑う。

「どうやら底なしの点は似た者同士らしい。このヨキもまた、臓腑は特別製であるからな」

続くヘルトの説明に、眉間に浅い皺を寄せる。

「……砂に返る、か。
 アレ……というと。日本古来の、いわゆる武者のような出で立ちということか?
 ほれ、こういう……」

スマートフォンを取り出して、検索した鎧武者の画像をヘルトに見せる。
催しの扮装として、具足を纏った人間の写真だ。

「源ねえ。何か亡霊の類かな」

ヘルト > 「ハ、ハハッ……親父殿に泡を吹かせてやってくれ。」

こう、色々と考えるのを放棄したような諦めたような表情を浮かべるヘルト。

「おお! それそれ! そんな連中がよ、矢でチクチクしてくるんだよな!
んで、追いかけっこの始まりって奴よ。おかげで交流会だったか? 間に合わなくてさ、残念だぜ。」

の割にはニコニコと上機嫌で。

「亡霊ねえ、どちらにせよこれで終わりではない気がするぜ。」

ヨキ > 「このヨキもまた、口で食べたり飲んだりしている最中に下で腹を鳴らすようなタイプだからな」

機会があればいいが、と笑う。
鎧武者の亡霊、のようなもの、の話を聞きながら、頬杖を突いて考える。

「遺跡の中で済むだけならいいが……万が一にも、人里まで現れるようなことがあれば重大だな」

スマートフォンの画面を操作しながら、ああ、呟く。

「すっかり話し込んでしまったが、もう斯様な時刻であったか。
 退勤する前に、ヨキはもう一作業終えてゆくこととしようかな……。
 何ならヘルト、君も少し見てゆくかね?程よい酒で、筆も乗りそうだ」

ナッツを一粒口へ放り込んでから、ウイスキーのボトル片手に傍らのイーゼルへ向き直る。
着彩に入る前の、大輪の花々の鉛筆画だ。

ヘルト > 「は、はは……そりゃすげえや。」

もはやこう、何かこう色々と凄いとか何とか思いつつ。

「ありゃあ、人の意思を持った奴らだ。それは間違いない。何か名乗り上げてたし。

っと……もうそんな時間か。
俺にはそういう芸術を見る目とやらは無いが、良いかい?」

へへっと笑顔を浮かべてヨキの後ろから作業を黙って見ていることだろう。

ヨキ > ヘルトの反応に、にっこりと肩を竦めてみせる。

「自発的に人を襲っているのか……あるいは何者かに操られているのか。
 いくら平穏が退屈とはいえ、何も起こらぬことを願うばかりだ。
 ヨキや君のように、血の気の多い資質ならばよいが……島の大多数の者たちは、
 平穏の中でこそ暮らしてゆけるのだからな」

ウイスキーを一口舐めるようにしてから、傍らに置いておく。

「なあに、見る目の有無など構うものか。
 それに独りで黙々と描き続けているばかりでは、それこそ時間を忘れてしまうでな」

笑って、背後に控えるヘルトを歓迎する。
淡い水彩絵具が塗り重ねられて、真っ白な紙を見る間に染め上げてゆく。
見たままの視覚と、色彩が見えぬ代わりの知識と経験で。

イーゼルに向かうヨキの顔はひどく真剣で、先ほどまでの多弁が嘘のようだった。
唇を引き結んで集中し、設定したアラームが鳴り響くや否や、すぐに元の人懐こい顔に戻るのだ。

次は君の剣術の腕前を拝んでみたいね、と笑いながら、退勤前の暫し朗らかな時間を過ごす。

ご案内:「教室」からヨキさんが去りました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/鋼の首輪、黒半袖Tシャツ(某有名アクションゲームの、ライムイエローのロゴ入り)、グレーのつなぎ、黒ハイヒールブーツ>
ご案内:「教室」からヘルトさんが去りました。<補足:188cm/短髪で超重量の鎧を着込んでいる野性味溢れる教師>