2016/07/04 - 23:08~00:46 のログ
ご案内:「職員室」にヨキさんが現れました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/拘束衣めいた袖なしの白ローブ、白ロンググローブ、白タイツ、黒ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>
ヨキ > 「………………、」
A5判の雑誌片手に、ヨキが独り静かに打ち震えている。
時刻は正午。昼食や仕事のために人が出払い、空調の利いた職員室は静かである。
ヨキが眺めているのは、発売されたばかりの美術雑誌だ。
巻末にリストアップされた、各地の企画展の情報欄。
そこに、ヨキの名前が載っていた。
島内にある「国立常世新美術館」の展示室をひとつ借りた上での、初めての個展の報せだった。
細い息を、長く長く吐き出す。
グループ展には何度か名を連ねたことはあるものの、個人で部屋を借り切るのは初めてのことだ。
遂にここまで来たとばかり、唇を噛み締めて不敵な笑みを浮かべる。
「絶対に……絶対に本土で個展を開いてやる……」
ヨキ > 単色の文字情報の羅列であるから、興味もなければ読み飛ばしてしまうだろう。
そもそも美術雑誌など、誰も彼もが手に取るものではない。
だが今年の新年号に作家のひとりとして小さくとも取り上げてもらったことや、
こうして個展の情報が本土でも流通している雑誌に載るということは、
そのひとつひとつがヨキにとっては掛け替えのない通過点なのだった。
自ら厳しく調整しているとはいえ、今のヨキは随分とハードワークだった。
獣人の無尽蔵の体力にものを言わせているようなものだ。
疲弊はそれを優に超える充実と興奮とで覆い隠されていた。
ヨキ > 着任当初にはそれこそ過労で倒れたことも少なくなかったが、
重たい自分を他人に運ばせるという諸々の負担から、現在は体調には重々留意していた。
それでも昨今のヨキの東奔西走ぶりは凄まじかった。
特定の、何かひとつきりの切欠がある訳ではない。
種々の要素があちこちからヨキを奮い立たせ、突き動かしているのだ。
雑誌に付箋を挟んで、自席に腰掛けたまま大きく手足を広げて伸びをする。
ううん、という爽快な声が、室内に響いた。
ヨキ > 間もなく昼休みが終わる。
あとは美術室の前に告知の張り紙でもして、あとは学外の知り合いにハガキでも寄越すつもりだ。
多忙ながら、やるべきことは決まっている。
傷付けられ、貶められ、辱められて、幾度となく打ちひしがれた自分に、よもや「何でも出来る」などという
万能感が備わることはないだろう。
それでいて今、ヨキの心を最も強く支配しているのは、どこまでもやれる、という開放感だった。
まるで――何ひとつ、悔いなくやり残すまいとしているかのように。
ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/拘束衣めいた袖なしの白ローブ、白ロンググローブ、白タイツ、黒ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>