2016/06/29 サバイバル
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」に鬼灯 怜奈さんが現れました。<補足:赤髪ロングのヤンキー娘>
鬼灯 怜奈 > 「貴様がランク77か! 我々ラングレー兄弟がお相手いたそう!」
「カカカ! 何処まで逃げることができようかな!」
夜の街並みを模したステージに、花火のように撃ちあがる無数のミサイル弾頭。
煌々と燃える爆炎を背に、レッドメタルの無骨な機体が疾駆する。
「あいつらいきなりアタシ狙いかよ……! 有名勢ってヤツか? ええ!?」
インジケーターに映る残機は10。
今宵は全てが敵のバトルロイヤルルールだ。
うち二機がレーダーに捕捉されている。
いや、捕捉されているのは、怜奈の方か。
時折振り返ってライフルで弾幕を張りながら、高速ターンでビル街へと進んでいく。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」に鎖ヶ原アストラさんが現れました。<補足:キュっとしてスリム、三白眼。世界一孤独なギアドライバー>
鎖ヶ原アストラ > 「来たあああああああああああラングレー兄弟だ!!!」
実況解説神足ショーマの甲高い声がコクピット内に響く。
「実績と勝率から導き出された推定ランクは336と338、息のあったコンビネーションが魅力ですよぉー果たしてこれを降して実力を証明できるかザ・ニュー77!!」
「右、左、そうこのタイミングで交叉射撃ーーーーーッ決まったか!」
月例のバトルロイヤル、この店舗での多人数戦にはこのようなサービスも付く。
こんなバトルの経験、自分にはないのだ。だから、熱くなる。
「…」
対面のギアネーム「ドクトル・バンブー」が、多連装エネルギーソードをしならせて迫る。
今この場面は、大画面にはクローズアップされては居ない。が、実況の目にはとまった!
「これは…?っと、一瞬でしたねぇ!!プリズナー360、ドクトルバンブーの胴抜き一閃!立ち回り要注目~ッ」
鎖ヶ原アストラもまた、愛機プリズナー360とともにここにいた。
鬼灯 怜奈 > 神足ショーマの声に導かれるまま、ゲーム内カメラ映像がドクトル・バンブーを追従する。
エネルギーソードの尾がたなびいたその刹那、突如機体が無様に跳ねた。
背面からの弾丸は、容赦なく装甲を食い散らかす。
「邪魔だ邪魔だーッ!!」
怜奈機が後方からの猛攻に機体を揺らしながら、硝煙をあげるライフルを背面にマウントす。
一方で機能停止目前のドクトル・バンブーを、後方の脅威の只中へと蹴り飛ばした。
「チイーッ!」
「おおーっと! ラングレー兄弟たまらず散開! ドクトル・バンブーこれは大丈夫か!?」
「いや、やはり戦闘不能! 最初の脱落者が出たああ!!」
「ランク77の、ええーと……クリムゾンタイド! そのままプリズナー360の脇を通過していく!」
鎖ヶ原アストラ > 交錯する。左腕のガトリングスピアを怜奈に向けなかったのは何故か?
「イイね…キミ…とてもイイね…」近距離通信がか細くクリムゾン・タイドのコクピットに入る。
つまりは共同戦線の申し入れ。
急加速に電波塔を蹴るステップ。重量機の機動力ディスアドバンテージを小刻みな入力キャンセルで可能な限り減らす「ろくろ」と呼ばれる高等テクニック。
爆散したドクトルバンブーが煙幕代わり。
散開したところをやはり各個に狙われたラングレー兄が、トライ般若の強化カメラアイを斬り飛ばしたところに突入する。
「プリズナー360,これは…?っと、バズーカチャージ!二体もろとも攻撃範囲、出しざまに潰されて普通は出ないよく合わせたッ」
鬼灯 怜奈 > 「へっ! 何処のどいつだか知らねェーけど……楽でいいぜ!」
急減速でのターンに運動エネルギーはゼロにはできず、背部を機体ごとビルへとぶつけるクリムゾンタイド。
だが目標の品定めをするには、十分すぎるほどの時間を得た。
再びライフルの銃口が焔を噴けば、ラングレー兄弟の機体が夜空に躍った。
鎖ヶ原が撃ち込んだひと際大きな爆炎を経て、計4機のスクラップが路上に注ぐ。
「順当に残ると思われたラングレー兄弟、そしてトライ般若のジョン・力丸・ジュニアが続いて戦闘不能ーっ!」
「これで残るはあと6機! はたして勝ち残るのは誰だーっっ!」
「そっちから二機! 頭上からだ! ……っだクソ、こっちにもかよ!」
次々に現れる敵性反応に声を荒げる怜奈。
もたれ掛かっていたビルから急速で離脱した瞬間、先ほどまで陣取っていたその位置が、砂細工のように瞬く間に爆ぜた。
「はアッ!?」
軍艦めいた巨大なシルエット。プリズナー360を上回るまでの重装甲。
幻夢的な夜景のイルミネーションに不釣り合いな、ガンメタルカラーのシルエットが姿を現す。
「で、で、で、出たー! 今夜のランカーは一人だけじゃあない!」
「ランク50! アンジェラのホーリーブルだああ!!」
鎖ヶ原アストラ > そして、アンジェラ以外の全ての機体に警告音。
「伝家の宝刀Lv8ミサイルパーティーナイッ!!まさに自分以外は全て敵~~~が実践するのはなかなか居ないッ」
囲まれたのがよっぽど気に食わなかったのだろう。
完全に質量を無視したゲームならではの量の追尾ミサイルが。白煙を尾に引き、背景オブジェクトをなぎ倒し、高度飛行での逃げ切りを狙っていた鐙沢宙舞のゴールド・デンジャーをガラクタに変えた。
ジェイソン花山のメタルカリブーンが放つ推進相殺ナックルを持ってしても、飽和攻撃が無敵時間を超えて容赦なく機体を穿っていく。
「またもや星を増やした、誰かあいつを止めてくれーッ!!!」
加熱する実況とは裏腹に、装甲に任せて進むプリズナー360。
エンジン出力も装甲強度もレッドゾーンに近い。
「クリムゾン。この雨が止んだら、キミ、ちょっと、あれ。あの顔のところに一撃食らわしてくれる?」
ミサイルの雨の中、それでもなお向かってくるステルススウィーツのインビジブルナイフを盾で受け止めつつ言う。
鬼灯 怜奈 > 「雨が止んだら……ッてテメエ! ちょっと待ッ! いや止まねッて!」
「ああもッ……クソッ!」
次々と飛来する弾頭に、ステージそのものが急速に焦土へと変えられていく。
対象一切喝采に容赦なく、ミサイルの弾幕を被弾を繰り返しながらも掻い潜るクリムゾンタイドに対してはさらなる追撃が繰り広げられている。
グレネードランチャーによる砲撃はその退路を悉く粉砕し、直撃はないものの、怜奈の心中に激しい圧力をかけるには十分すぎるほどの威力を見せつけている。
舌打ちしながら見やる残弾数は0。弾倉もない。
背部に装備したミサイルは12発。しかしロックオンをする猶予など与えてくれる状況じゃないことは明白だ。
万事休すと言ったところか。観客の誰もがホーリーブルの勝利を確信したことだろう。
「我の手を煩わせることは何人たりとも許さぬ。」
「さあ、首(こうべ)を垂れよ。時間が惜しいでな。」
「敗北を宣言すると良い。」
過剰な砲撃に赤熱していたホーリーブルの機体から、白煙が吹き上がる。
ミサイルの雨もグレネードの砲撃も、全ての攻撃が止まった。
「ここに来て緊急冷却システムの作動だあーっ!」
「しかしアンジェラ物動じせず! まさに強者の貫禄!!」
「このあと猫ちゃんにカリカリを買ってあげねばな。」
「タイムセールまで時間がないのだ。」
ドッと沸く観客の声。すぐにそれをかき消す怒声が轟く!
「ナメんじゃ……ねェェェェッ!!!!」
左腕欠損。頭部半壊。機能停止寸前のクリムゾンタイドが、一直線に突っ込んできた!
「なんとクリムゾンタイド、まだ生きている! 動いている!」
「反撃する武装も残ってないにも関わらず! いや、違う!」
「殴った! 残った右腕で思い切り殴り付けたああああっっ!」
「質量vs質量! これにはホーリーブルもたまらないか!?」
ひと時だが衝撃に大きく体勢を崩すホーリーブル。
起死回生の一手に実況は更にそれを盛り立てる。
だが無常にも、ホーリーブルは終えていた。
グレネードランチャーの弾倉交換を終えていた。
「手間を取らせるな。」
「クリムゾンタイド機能停止いいいい!!」
「やはりTGにおいてランクは絶対なのかあああ!!!!!!」
鎖ヶ原アストラ > クリムゾン・タイドがホーリーブルのカメラアイにダメージを与え、作られた死角。
その隙間が脚の遅いプリズナー360には必要だった。
「残り機体は3,しかしもうこれは決まったようなっと来たきた来た…?えっ、これは…プリズナー360強制搭載!強制搭載です!血迷ったか」
ステルススウィーツは軽量機だ。爆散しない程度に手足をもげば、重量級のフルボディであれば積載量が足りる。
本来はミッションモードや、トロフィー争奪マッチなどに使われる搭載コマンド。
オブジェクト扱いの無力化TGを載せることは、強制搭載と呼ばれる。
アストラは呟く。この千載一遇のチャンスに。
「77、キミの犠牲は無駄にはしない…ドっせい!!」
弾薬が無ければ質量攻撃。
装甲を貫通しなければ質量攻撃。
今有効なのは、まさに質量攻撃。ぶんなげられたステルススウィーツがホーリーブルの後頭部にぶち当たり、
そして追い打ちのガトリングランスが機体を爆散させる。
「我慢比べだ…!!」
あまりの非道に実況が一瞬呆気にとられる。だが、それでも彼はプロだった。
「激突!装甲値VS装甲値~~~~~~~~!ステルスウィーツをぶち当てて、今や二機の耐久ゲージは互角!」
「こちらが減ればあちらも減るぞ!殴った!蹴った!鉄と鉄のぶつかり合い、究極のインファイトだ!」
見る間に真っ赤になっていくゲージ。大いに沸く観客たち。
そして―――
「…ver.5.66では、絶対いけたんだよ」
ゲーム終了後、初対面の怜奈に興奮気味に言うのは、黒髪ロングにフリルシャツのデカい女。
TG部部長を名乗り、そして今さっき削り負けたプリズナー360のギアドライバー。
鬼灯 怜奈 > 「いーや、勝ったのはアタシらだぜ。」
鎖ヶ原の前にずいと携帯端末の画面を押し付ける。
そこには彼女の友人と思わしき人物から送られてきた一枚の画像が表示されていた。
"好評につき本日のタイムセールは終了致しました。"
そんな文言が、ペット用品コーナーのがらあきの棚に張り出してある。
「上位ランカーサマが、アツくなっちゃあイケねェーなァ。」
怜奈らを残し急ぎ会場を抜けたアンジェラは、未だこの事実を知らない。
「ヘッヘッヘ、ざまァー。」
その背を横目にげらげらと笑う怜奈。
彼女の勝利宣言とは裏腹に、馴れ初めは両者共々敗北からのスタートだった。
この出会いの後、意気投合した二人は鎖ヶ原の希望により、正式にTG部を設立することとなる。
現在の部員は未だ2名。部員集めに奔走する話は、また次回以降にて。
つづく。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」から鬼灯 怜奈さんが去りました。<補足:赤髪ロングのヤンキー娘>
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」から鎖ヶ原アストラさんが去りました。<補足:キュっとしてスリム、三白眼。世界一孤独なギアドライバー>