2016/07/15 - 00:15~04:07 のログ
ご案内:「廊下」にヨキさんが現れました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/拘束衣めいた袖なしの白ローブ、白ロンググローブ、白タイツ、黒ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>
ヨキ > 大変容後に人間として生きるようになったヨキにとって、スマートフォンに内蔵されたカメラの
シャッター音というものは不可解だ。
それがかつてのフィルムカメラの時代の名残であることは知っていたが、その空き缶を踏み潰すような、
紙を引き裂くような名状しがたい効果音は些か耳障りだった。
あるいは注意を引くための音ならば、聞こえのよい電子音では不似合いなのかもしれない。
兎も角として、写真を撮る行為それ自体はヨキはとても好んでいた。
時刻は放課後である。
美術室沿いの開け放された廊下の窓から、雨上がりの空に向けてスマートフォンを掲げていた。
雲がさっと引いた青空の真ん中に、大きな虹が架かっているのだ。
その景色を、まるで子どものように身を乗り出して写真に収めてゆく。
ヨキの目には虹の色を正しく判別することなどとても出来ないが、
それでも空の一面に現れるスペクタクルは彼の興味を引いて止まなかった。
ヨキ > 背後の掲示板には、貼り出したばかりの個展の案内がある。
虹が出ていることを教えてくれたのは、廊下をきゃあきゃあと歩いていった女子たちの声だ。
それがなければ、きっと準備室で仕事に没頭していたきりだったろう。
窓枠に肘を載せて凭れ掛かり、徐々に薄らいでゆく虹をずっと眺めている。
色濃かったタイミングから何枚も撮った写真は、きっちりとスマートフォンの中に入っていた。
曲線が一端から一端まで途切れることなく繋がった光景は、いつ見ても美しいものだった。
雷が鳴っているときにはとても外に出られたものではない身体のヨキではあるが、
雨が上がれば顔も晴れやかだ。
ご案内:「廊下」にフィアドラさんが現れました。<補足:虹は好き。 メカクレ。つの。しっぽ。てぶくろ。 >
フィアドラ > この世界の虹は私のいた世界の虹と色が違います。
私がいた世界の虹はもっと青くて暗くて色が少ないものでした。
この世界の虹は色々な色があるのでわたしはこっちの世界の虹の方が好きです。
「あっ、ごめんなさい!」
そんな虹を見ながら歩いていると誰か大きな人にぶつかりそうになりました。
見上げると垂れた犬の耳に黒い髪、メガネをかけた先生でした。
その四本指の手にはすまほを持っています。
「あっ!ヨキ先生!お久しぶりです!お元気ですか?」
ヨキ > 「…………、」
元の空が戻りつつある眼下の通路を、学生たちが歩いてゆく。
(……彼奴は見てないだろうな、虹)
今もきっと、あの研究室に籠もっているはずだ。
わざわざ写真を送るようなことはしないが、ヨキ自身にとって感嘆に値するものを見かけるたび、
彼に見せてやりたいと考えることが多くなっていた。
閑話休題。
そうして、不意に近付いた気配に振り返る。
ぶつかりかけた直前で上体を引き起こし、相手の顔を見下ろした。
「おや、フィアドラ君か。元気そうだな。
ヨキの方は相変わらずだ。元気でない日はないくらい」
四本指の手を小さく振ってみせる。
「君も見てたかね、さっきの虹?えらく大きかったな。
ヨキなど何枚も写真に撮ってしまったよ」
フィアドラ > 「はい、私は元気じゃない日もありますけど…今日は元気です!」
そう、昨日嬉しいことがあったから今日は朝からとても元気なのです!
「はい!こっちに来てみた虹の中で一番おっきい虹でした!
写真…『すまほ』って写真も撮れるんですね!」
ますます『すまほ』に対する憧れは強くなります。
もしかして『すまほ』さえあればもっと友達も増えるのではないのでしょうか!?
「『すまほ』でとったらどんな風に虹は見えるんですか?本物と一緒です?」
ヨキ > 「よかった。何かいいことでもあったか?
声が随分と弾んでいるようだから」
にこにことしながら、フィアドラの前にシャンパンゴールドのスマートフォンを差し出す。
画面はフィアドラの方を向いているのに、慣れた人差し指が逆さまの画面を手際よく操作する。
表示されたのは、先ほど虹が架かっていた空を映した写真だ。
本物の空は雨が上がったばかりでいくらかくすんでいたが、画面の中の空は
現実よりもいくらか鮮やかな色味をしている。
それでいて、決して現実の色合いを損ねるような不自然さではない。
「写真だと、こんな感じになる。
実際に見るのとは、なかなか違うやも知らんな。
我々の目は大変によく出来ているから、目で見るほどにいい写真はなかなか撮れないんだ」
フィアドラ > 「聞いてください!実は昨日、新しい友達が出来たんです!これで三人目ですよ!」
その質問を待ってましたと答えます!
誰かに言いたくてたまらなかったのですが、誰にも言えなかったのです!
「あ、ほんとだ空の色がパァーってかんじですね。」
なんだか、実際の空よりも『すまほ』の中の空のほうが綺麗に見えます。
でも、虹の色は実際に見た色の方が色々な色が見えて綺麗だと思います。
それでも、この写真はとても綺麗だなと思いました。
「なるほど…。じゃあ『すまほ』でこんないい写真がとれるヨキ先生ってやっぱり凄いんですか?」
あの凄い手さばきといい伝説の『すまほ』マスターなのかもしれません…。
ヨキ > 「三人目?ほう、君ならもっとたくさん友だちが出来ていそうなものだと思ったが……。
だが友だちは友だちだ、頑張っているな。
ヨキにもその『友だち』のこと、聞かせてくれるかね?」
身を乗り出さんばかりのフィアドラの勢いにつられて笑った。
その手元でスマートフォンの画面を操作していると、写真がぺらぺらと捲られる。
空の写真のあとには、手料理と思しき食事の写真や、ヨキとは似ても似つかない近所の子どもや、
異邦人街の風変わりな看板などが続いている。
まるで、その時々であちこちへ飛ぶヨキの好奇心を、そのまま写し取っているかのようだった。
「あはは。そんなに凄いか?ありがとう。
街の風景を撮って日記にしたり、掲示板を撮ってメモの代わりにしたり……
学生のみんなこそ、いろんな使い方を思いつくものだと感心してしまうよ。
フィアドラ君は、スマートフォンとか携帯電話、持っていないのかね?」
フィアドラ > 「3人ってやっぱり少ないですよね…。」
2か月に1人くらい友達が増えているのでこの調子なら200ヶ月あれば友達が100人出来ると思うのです。
えーと…一年が12ヶ月だから200割る12で…16あまり8…つまり16年と8か月です!
「えーと!雫はですね!髪が白くてー人間でーあとはそう!保健課で!私が体調、悪い時に助けてくれたんです!
昨日は一緒にブランコで遊んだんですよ!雫に押してもらってぐるって一回転したんです!」
友達の事を話すのがこんなにも楽しいなんて知りませんでした!
ヨキ先生にすこしでも友達の事を知ってほしくて考えますがこれくらいしかまだ出てきません。
私ももっと友達のことを知らなくちゃです!
「はい、凄いカッコいいです!なんか指の動かし方とか凄いと思います!
えっヨキ先生より凄い使い方をする人がいるんですか!?」
ヨキ先生より上手く『すまほ』を使うイメージが出来ません…。
それほどヨキ先生のスマホ使いはカッコいいのです!
「私はあの…『すまほ』を押しても動かないんです。
鱗があるせいだと思うって言われました…。鱗があっても動く『すまほ』とかってないですか!?」
ヨキ > 「だけど友だちが少ないということは、それだけ一人一人を大切に出来るということだよ。
それだけじっくりと作った友だちならば、その分いつまでも末永くフィアドラ君の友だちで居てくれるはずさ。
何も悪いことではない」
言いながら、“雫”の話にほうほうと相槌を打つ。
“保健課の雫”と言えば、何となく思い当たる顔はあった。
「自分のことを話すのは楽しいが、人にしてもらったことや一緒に過ごしたことを話すのはもっと楽しいだろう?
もっとその“雫君”や他の友だちのことが知れたら、たくさんヨキに教えてくれよ。
もしかしたら君の友だちが、ヨキの友だちでもあるかも知れない。
考えただけで、ちょっとドキドキするだろ?」
フィアドラが“すまほ”に感心する様子に、少し考えてから言葉を続ける。
「鱗があっても動くスマホか……。それでは、こんなのはどうかな」
言って、懐を探る。取り出したのは、いわゆるタッチペンだ。
ヨキが指でペン先に触れてみせると、まるで生身の指のようにふにゃりとした。
「ゲームとか、書き物をするときに使っているペンだよ。
これがあれば、君でも人間の指と同じように操作出来るのではないかな……。
スマートフォンだけではなくて、他に画面を触る端末も、みんな。
試してみるか?」
スマートフォンでブラウザの画面を開き、ペンと併せてフィアドラに差し出す。
常世学園の生徒に馴染みの深い、ポータルサイトのトップページが表示されている。
フィアドラ > 「そうなんですか?じゃあ急いでいっぱい友達を作らなくてもいいんですね!」
そう聞くと少し気持ちが楽になりました。
そう、100人友達がいたとしても一緒に出来る遊びが思いつきません。
とてもじゃないですがブランコは難しいです…みんなで順番にやっていたら夜になってしまいます。
私はこっちに来るまではずっとお父さんと二人で殆んど一人だったのであまり楽しい話はないですけど…
こっちに来てからの友達との話をするときは確かに凄く楽しいのです。
「私の友達がヨキ先生の友達…!
ヨキ先生は友達が多そうな気がするのでもしかしたらいるかもしれません!」
私の友達がヨキ先生とも友達だったりすることを考えたら…。
確かにドキドキします!
…?
「良いんですか!?」
私はそのタッチペンと『すまほ』を借りると。
『すまほ』にそのタッチペンで触れました!
「動いてます!動いてますよ!」
画面が上にいったり下にいったりします!
そう!上にいったり下にいったりするのです!
「この鉛筆みたいなのと『すまほ』って一緒になって売ってますか?」
ヨキ > 「そうだよ。たくさん友だちが居てもみんな大事に出来る人ももちろん居るけれど、
仲良くするのは自分のペースで構わないんだ。
あまり慌てて友だちを増やしてゆくと、うっかり最初の友だちのことを忘れてしまったりするやも知れん。
そう急がずとも、思い返すとこんなにたくさん友だちが出来ていた、って気付く方が楽しかったりして」
目を細めて笑う。
夕立に冷やされた夏の風が吹き込んで、廊下に心地よい空気が流れる。
「だろ?きっとお互いに友だちの話をするのは楽しいよ。
ヨキだけでなく、他の人とも仲の良い人のことをいっぱい話すといい。
もちろん、誰かに話されたらイヤだなあ、ってことを喋ってはいかんがね」
優しく言い添えながら、“すまほ”の操作に声を上げるフィアドラにくすくすと笑い出す。
「……はは!目論見どおりだ。
そうしたら、“すまほ”のお店の人に、タッチペンも買いたいです、って一緒にお願いしてごらん。
タッチするためのペンだから、タッチペン。
便利なものは、なるべく多くの人が便利に使えるように、ちゃあんと考えて作られているのさ」
フィアドラを見る目は、まるで過去の自分を見るように優しい。
「ああ、気がつけば話し込んでしまった。
日が高くなって、いつの間にか時間が遅くなるのにも気づかなんだ。
ヨキはそろそろ、仕事へ戻るとしようかな」
フィアドラ > 「そんな事ないです!最初の友達の事は絶対忘れません!
増やしすぎたら…忘れちゃうんでしょうか?」
購買部でのパンの買い方や自販機の使い方を教えてくれた私の生まれて初めての友達。
いろんなことを知っててあんこが好きな女の子。
忘れるはずがありません。それでも、もし忘れるのなら友達はゆっくり増やすべきなのでしょう。
「はい、今度は他の人とも友達の話をいっぱいします!」
きっとヨキ先生も友達の話を色々な人としたりするのでしょう。
だって、あんなにも楽しいのです。
「『たっちぺん』ですね!覚えました!
これで私も友達と電話番号を交換したりできるんですね!」
さすがはヨキ先生です!
やっぱりわたしが思ったとおりの『すまほ』マスターです!
「仕事に戻るんですか?今日もありがとうございました!
『すまほ』で困ったことがあったらまた教えてください!」
頭を下げてお礼をいいます。
でも、頭の中はじつは『すまほ』と友達連絡先の事でいっぱいです!
「それじゃあヨキ先生!さようなら!」
そう言って手を振ると廊下をまたまっすぐに進みます。
見えなくなる曲がり角でもう一回手をふってわたしはわたしの教室にむかいました。
ご案内:「廊下」からフィアドラさんが去りました。<補足:虹は好き。 メカクレ。つの。しっぽ。てぶくろ。 >
ヨキ > 「ふふ。君は友だちのことがさぞ大事であるようだからな。
いつまでも大事にしたいという気持ちがあれば、きっと忘れるまい」
フィアドラを安心させるように微笑む。
スマートフォンやペンを仕舞いながら、鷹揚に頷いてみせた。
「他にも知りたいことがあったら、お店の人に訊いてみるといい。
それから、君の友だちにも。
きっといろんなアイディアで君を助けてくれるだろうからね。
ヨキのことだって、どんどん頼ってくれて構わない」
お礼の言葉に会釈を返す。
やりたいこと、欲しいもので胸をいっぱいにしているらしい様子は、
ヨキにとってもいたく共感できるところであった。
「さようなら、フィアドラ君。
“すまほ”、楽しく使えるようになるといいな。
また今度、話を聞かせてくれよ」
笑ってフィアドラを見送り、その姿が見えなくなると、
自分もまた美術準備室の中へと戻っていった。
ご案内:「廊下」からヨキさんが去りました。<補足:人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目/拘束衣めいた袖なしの白ローブ、白ロンググローブ、白タイツ、黒ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>