2016/07/30 - 22:31~02:10 のログ
ご案内:「禁書庫」にトゥールビヨンさんが現れました。<補足:外見30歳前後/170cm/シニヨン×サイドテール、鉄の義肢、ネックコルセット、ビスチェ風の装束>
トゥールビヨン > 禁書庫の書架の一部に、手が加えられた跡がある。

「……はん」

数十冊の魔術書が意図的に並べ替えられ、書名の頭文字が呪文の一節を記していた。
司書トゥールビヨンが、片眉を上げて鼻を鳴らす。

「どれだけ訳知り顔でこいつを仕出かしたが知らないが――」

嘲って、はじめの一冊に手を伸ばす。

義肢の上腕と前腕を繋ぐ関節の歯車が音もなく回転し、
筋肉の代替としてのシリンダが収縮する。
五指が生身と寸分違わず滑らかに曲がり、人差し指を本の背に掛けた。

「ナンセンスだ」

今にも発動せんと小さく震える魔術書たちを、事もなげに書架から引き抜き、
ラベルに付された記号の通りに並べ直してゆく。

「誤配架滅すべし」

悪戯者の努力を無碍に踏み躙り、魔術書はたちまち元の通りに揃え直された。

ご案内:「禁書庫」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。右手には仄かに輝く指輪。>
トゥールビヨン > 原著の言語、魔術体系、効果の区分、エトセトラ。
組織の方法はいくらでも細分化出来るし、この図書館と異なる分類も数多く見てきた。

だが、この常世学園の大図書館群においては、図書委員会が管理する分類法が絶対だ。
見た目にもラベルにも分類の通りに揃えられた書物の一群は、機能的にして美しい。

「全く、魔術書で遊ぶなどとは、余程の子どもか無謀者か」

林立する書架の間を、蹄に似て先細りしたシルエットの両脚が踏み締めてゆく。

獅南蒼二 > そんな勤勉な貴女の目に,一般的な書庫としてもありえない光景が目に入る。
それこそ,この禁書庫においてその光景は,見る者が見れば卒倒するレベルだろう。

「……………。」

禁書庫の奥,原初的な呪いや体系化された呪術を扱う魔導書…
…そして呪われた書籍等が納められた棚の前に立つ白衣の男。
彼はこの書庫の中においてもやや扱いに危険を伴う呪われた書籍をあろうことか一見無造作に床に積み上げ,
そしてその中の1冊を無防備にもぺらぺらとめくりながら煙草を吹かしている。

よく見れば魔術的な結界や封印は完璧だし,煙草の匂いは全くしないし,
きっといろいろと対策しているのだろう。

けれど,パッと見は,なんていうか,司書さんへの挑戦状って感じにさえ見える状況である。

トゥールビヨン > 肩口から垂らした髪を揺らし、一度立ち止まる。
黙っていれば形のよい吊り目が、鋭く細められた。

腰に手を当て、しばし相手を無言で睨み付ける。
けれどその体勢から微動だにしないのならば(きっとしないんだろう)、
トゥールビヨンは速足で獅南の下へつかつかと歩み寄った。

「獅南先生」

相手の視界を遮るように、鉄の義肢を突き出す。
指先が、あろうことか煙草を引っ手繰ろうとする。無機の四肢ならではの荒業だ。
灰を下へ落とさんとする配慮も忘れない。

「……先生はここのヘビーユーザーと伺ってますけれど、
 一から十まで申し上げなければなりませんの?」

にっこりと笑う。

獅南蒼二 > 獅南はきっと,いや,間違いなく貴女に気付いていたはずだ。
けれど,そこから動くことも読書を中断することも,
それこそ伸ばされる義手を避けるようなこともしない。

一切の抵抗は無く,煙草は貴女の義手の中へ。
それが義手ではなく生身の手のひらだったとしても,火はおろか,一切の熱を感知することはできないだろう。
無駄な魔力の使い方をしているととらえるか,その緻密な魔術の行使を称賛するかは見る者の自由だ。

「勤勉な司書殿がご着任されたと,噂は聞いているよ。
 ……なに,私も教師の端くれだ,一を聞けば十理解できる自負はある。
 だから,できれば手短にお願いしたいところだな?」

小さく肩をすくめてから,手にしていた本を閉じて…瞬時に防護術式で封印した。
それを,重ねてある本の上に乗せ,貴女のほうへと視線を向けた。

トゥールビヨン > 煙草の火を、指先で揉み消す。
その熱の有無を感じていたかどうか、表情に変化はない。

本の山に新たな一冊が積まれる様子を一瞥して、相手の目を見遣る。

「手短に。良いでしょう。

 館内は禁煙です。貴重な資料を通路に積み上げるなど言語道断です。
 それから一度に手に取られる分量は、他の閲覧者のことをご一考くださるように」

早口で淀みなく言い切って、以上です、と肩を竦める。

「……あたしだってね、獅南先生。口煩いと思われるのは御免ですよ。
 だけど図書館は『平等』が旗印ですんでね。

 そもそも、何だって教師相手に注意しなくちゃならないんです」

堅苦しい注意に続く口調は、些かフランクに緩んだ。
そちらの方が、司書本人の言葉遣いに近いものなのだろう。

「勤勉でいらっしゃるのは、大変に結構ですけれどもね」

獅南蒼二 > 実に明確で分かりやすい。と肩をすくめてから,

「第一に,今アンタがもみ消した煙草は魔力の炎で制御してある。
 本に押し付けても焦げ目すらつかないし,煙草の匂いも無いだろう?

 第二に,積み上げたすべてに防護魔法をかけてある。貴重な資料に傷一つ付けはしない。

 第三に,他に閲覧者が居るのなら配慮しよう…だが,ここにいるのは私とアンタだけだ。そもそも禁書庫に閲覧者が溢れるようでは,世界が滅んでしまうだろう?」

口調を真似たわけではないが,普段よりも幾分か堅苦しい言い方を選んだ。
そこまで言い切ってから,積み重ねた本の最上段のものを,書架に戻しつつ…

「口煩いだなどとは思わんよ……勤勉なのは大変に結構なことだ。
 それに,アンタの義手の魔術制御からも,アンタが優れた魔術師なのだとすぐにわかる。
 だが,生じる困難を解決する力や状況を捨ててまで,全てを型に嵌めることが『平等』というのは暴論ではないかな。」

「私の信じる魔術学というのは,不可能を可能にする学問なのだからな。」
そこまで言ってから,積み上げた本を見て…
「……もっともこれはやり過ぎたな。周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。」
…肩をすくめ,苦笑した。本を1冊ずつ書架に戻していこう。

トゥールビヨン > 呆れたように、後頭部の髪を柔く掻く。

「……あたしはあなたの魔術の腕を信用しますがね、それとこれとは話は別ですよ。
 どんなに有能な魔術師だって、不慮の事故は起こり得るもんです。

 それに、喫煙しながら本を読んだり、床に本を積み上げる姿を、
 第三者に見せる訳にはならないんです。

 『有能でない』利用者に、いつ真似されるともしれないですからね。
 だからあたしたちは、頭でっかちと言われようが平等で居なくちゃならない。

 たとえ相手が常連でも格上でも、ルールは守ってもらわにゃなりません。
 配慮も敬意もない猿真似は、あなただって本意ではないでしょう」

ぱたりと両腕を下ろす。

見ればその四肢は、肩口や足の付け根とは一切接続されていない。
まるで義肢や胴体が、宙に浮かんでいるかのようにも見える。

「それに、すべての書物には、すべての読者が在るもんなんです。
 いつ読者が現われるか、あたしたちにだって予測が付かないんですよ」

笑いながら、獅南が本を書架に戻す様子を見守る。

「それにしたって、呪術ですか。…………。
 休講の間に、鞍替えでもされました?」

尋ねる前に周囲に人気がないことを確認したのは、無論『読書の秘密』を守るためだ。

獅南蒼二 > どうやらこの男は,貴女を試したようだった。
貴女が型に嵌めるだけでない注意の意図を語れば,小さく肩をすくめてから笑みを浮かべる。

「この学校の人事もたまにはいい仕事をする……立派な司書殿だ。」
 まいったよ,アンタが正しい,言う通りにしよう。」

降参とばかり両手を上げてから,分類通りに書架にすべての本を戻す。
いや,分類番号を確認している様子はない。
だがその動作は自然で…どれがどこにあるのか,覚えているかのようでさえあった。

「いや,呪術は広義には魔術額の1系統に過ぎん。
 授業で扱う気にはなれんが…呪いについて魔術学的に分析してみたくなってな。」

貴女が周囲の様子まで確認してから尋ねてきた徹底ぶりも,好感がもてるものだった。
だからこそ,

「…で,私はアンタのことを何も知らんが,その義手のデザインはもう少しどうにかならんのか?
 呪いの本よりも呪いを纏っていそうなフォルムじゃないか。」

ズバズバ言ってしまう。冗談半分,本気半分。

トゥールビヨン > 「……生憎と、あたしは司書しか務められない人種でしてね。
 新入り相手の『洗礼』には、もうすっかり慣れておりますとも。
 売り言葉に買い言葉で、失礼しました」

両手を合わせて笑い返す。
彼が本を戻す様子は、はじめにその手付きを見たきりで注視することはしなかった。
それこそ“ヘビーユーザー”たる相手を信用してのことだろう。

「へえ……呪いを分析。
 先生の授業はとても理論的だそうですが、そんなものまで解き明かす糸口がおありと?

 いいですね。あたしも書物をピンからキリまで分類して整理して並べるのが仕事とあっては、
 是非とも応援しなくちゃなりません」

義肢についての指摘には、平然と両手を広げる。
骨格の曲線とシリンダの直線が作るフォルムは、まるで天秤のアームのようでもあった。

「デザインですか?さあ……、あたしはもうすっかりこれに慣れちゃったもので。
 でもこれだけ物々しければ、どんな検閲者にだって立ち向かえそうに見えるでしょう」

一転して、こちらは本気で言っていそうな調子だ。

獅南蒼二 > 「私が魔術学者としてしか生きられないのと変わらんな。
 こちらも試すような真似をしてすまなかった…
 …アンタが来てから,雑然としていた禁書庫の様子もだいぶ変わったよ。」

奇妙な信頼を向けられていることになど気づくはずもない。
そして実際に,この男は概ね,この禁書庫の主だった蔵書とその配置を記憶しているのだった。

「非常につまらない言い方をしてしまえば“対象に遅効性もしくは継続性の影響を与える術式”でしかない。
 恨みや怨念などというマイナスの生体エネルギーを活用する点や,指向性の持たせ方は特殊だが。
 糸口はどこにでもあるさ…この世で,もしくは異世界で行われた呪いの記録がこうしていくらでもあるのだから。

 ……なら,そんな司書殿に聞きたいのだが,“術者が死んだ後に効果を発揮するような呪術”の事例集は,どこかに無いか?」

非常にピンポイントな検索条件。
ヘビーユーザーの脳内にもその書籍はインプットされていないようだ。

「ははは,確かにその通りだな,アンタに立ち向かえるような男はそうそう居ないだろうさ。
 ……非常に精工に作られているし,制御も素晴らしい。私も四肢を失ったら真似したいくらいだ。」

トゥールビヨン > 「図書館は箱モノですが、生モノでもありますんでね。
 手を入れなきゃ枯れちまうのは同じです。

 それに、あたしたち図書館員はチームプレイですから。
 司書も図書委員も、十分な数が居なくっちゃ」

呪術に関する説明に聞き入って、腕を組む。
腕一本で動く分には無音だが、やはり重ね合わせればごつりと重い音がした。

「ははあ、術者が死んだ後に……。そりゃピンポイントですねえ。
 だけど呪術としちゃ、案外珍しくはない話かもしれません。

 お札に、触媒、魔法円。
 術者から発動元をスイッチさせるのは、理屈では不可能じゃあない。
 効果を持続させるには、よほど強いパワーソースが必要になるでしょうが」

つらつらと話しながら、備え付けの梯子で高い書架の上部まで登ってゆく。
呪術に関する書物の中でも、その歴史的な内容を扱った本をいくつか手に取る。

「直截的な理論ではなく、事例をお調べですか?
 お探しの内容と、どれだけ符合するかは判りませんが……」

分厚い本を小脇に抱えて、梯子からとんかとんかと降りてくる。

「『死』を起点とする呪術について、包括的に実例をまとめた本がいくつかありますよ。

 あとは魔術学そのものではなく、民俗学、宗教、あるいはルポルタージュ……
 他の分野の棚もご覧いただくと、参考になる本が見つかる可能性もあります」

抱えた本を両手に持ち直し、丁重に差し出す。

「……それに、本を扱うのって力仕事なんですよ、こんな風に。
 鉄の両手足なら、どれだけ酷使したってへいちゃらです」

くすくすと小首を傾げる。

「あたしは生身の手足が生えていたことがないので、
 先生には末永く五体満足でいらしていただきたいところですね」

獅南蒼二 > 「あぁ…人手が必要なら言うといい。
 うちの魔術学生にはこの部屋にはいれるならどんな仕事でもするような馬鹿も居るからな。」

確かに,魔術を志すものにとってここは,1つの目標となる部屋だろう。
獅南にとってはホームグラウンドになりつつあるのだが。

「解呪されないことが前提になってしまうが,
 対象の生体エネルギーをパワーソースとすればえげつない呪術の出来上がりだ。」

楽しげに笑いつつも,迷いなく書籍を集める貴女を静かに見守る。
その言葉を聞きながら,なるほど民俗学や宗教とは盲点だった。などと頷きながら。

「……確かにこの芸当は,アンタの義手にしかできないな。
 怖がって男が寄り付かないだろうという点を除けば,実に洗練された義肢なのだな。」

そんな冗談を言いつつ,差し出された本を受け取った。
一冊一冊,その表紙を確認し,なるほど,と納得したように頷く。

「ありがとう…お陰でさらに研究を進めることができそうだ。
 ……アンタの過去を抉るような言葉になってしまうかもしれんが,魔術でその腕や足を“生やそう”と思ったことは無いのか?」

トゥールビヨン > 「有難いことです。
 図書館員が『ゆっくり本が読める穏やかな仕事』だというイメージは、
 積極的に打ち壊しに行かなくちゃなりませんので。
 学生さんには、どしどしお越しになっていただきたいもんですねえ」

冗句交じりに笑う。

「生体エネルギーを供給源に、ですか……成程。
 それなら相手が朽ち果てかねない限りは、文字どおりの永久機関という訳だ。

 解呪を困難にする、という芸当ならば、呪う行為そのものとは違った手管が要求されるでしょうし……。
 いやだ、獅南先生ったら、随分と辛辣なことをお調べでいらっしゃいますね」

どう致しまして、と応えながら、本の中身を見分する相手の顔をそれとなく見遣る。
表情のわずかな変化が、提供した回答の精度を示していた。

「ふふ。あたしは自分のこんな妙ちきりんな見た目だって、ものともしない殿方が好みでしてね」

銀色の唇を、にいと吊り上げる。

「そりゃあ、生やしてみようとは何遍も試みました。
 だけど産まれつき『生えている感覚』を知らないせいか、ろくすっぽ定着しないんですよ。

 あれこれ試しているうちに、機能だけを見るなら、この義肢がいちばん具合が良いと気付いちまった次第です」

獅南蒼二 > 「アンタがそのナリで宣伝すれば容易いだろうな。
 どこからどう見ても,穏やかな仕事には見えん。」

冗句には冗句で返す。尤も真理でもあるだろうけれど。

「安心してくれ給え,私の喫煙を邪魔する司書殿を呪い殺そうというわけではない。
 呪術師を相手にするときのためにも,呪術の全てを知っておきたいと思ってね。」

動機は非常に漠然としていて…ここまでして調べ上げるほどの切実な動機ではなかった。
弱点という最短の解を調べるのではなく,理論からすべてを明らかにする。それこそが,この獅南という男なのだろう。

「ははは,なるほど,そりゃ随分と大胆な好みだ。」

大げさに笑って見せ,それから“義肢”の理由には静かに頷いた。

「なるほど,不可能を可能にはしたが……それが最善ではなかった,ということか。
 非常に有意義な事例として記憶させてもらおう。
 ……ついでにその義肢の素敵なデザインのお陰で,アンタのことは二度と忘れられそうにないな。」

などと言いつつ,両手が本でふさがったまま,魔術でペンを浮かせて借用書を書く。借用書はふわふわと貴女の手元へ飛んでいくだろう。

「明日中には返却しに来る……またその時に。」

そうとだけ貴女に声をかけて,獅南は研究室へと向かっていった。
……どう見ても1日で読み切れる量ではないのだが,返しに来るというのだから,返しに来るのだろう。

トゥールビヨン > 「だからといって、志望者が減ってしまっても困りものですが。
 宣伝に本腰を入れるときには、若い女の子たちを矢面に立たせましょう」

どれだけの声量であれば相手に届くかを熟知した者の、落ち着いた声。

「魔術師と、呪術師の対決ですか。実現したら、さぞ見物でしょうねえ。

 それに、ご安心くださいな、あたしだって煙草くらい嗜みます。
 厳しいのは、この館内だけの話ですとも」

獅南の言葉に、ゆったりと目を細める。

「この姿かたちで心が引っ込み思案だったなら、むしろ驚いてくだすったかしら?

 どうぞあたしのことを、お気に召してやってくださいな。
 それにこの図書館は、あたしが居なくともどんな質問にだってお応え出来る、精鋭揃いですから」

書類を受け取って、たしかに頂戴いたしました、と丁重に手中へ収める。

「はい。またお待ちしておりますわ、獅南先生。
 お渡しした本に不足があれば、また何なりと」

去ってゆく獅南を見送る。
その後には再び梯子を昇って、隙間が空いた分の書架を黙々と整理するのだった。

ご案内:「禁書庫」からトゥールビヨンさんが去りました。<補足:外見30歳前後/170cm/シニヨン×サイドテール、鉄の義肢、ネックコルセット、ビスチェ風の装束>
ご案内:「禁書庫」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。右手には仄かに輝く指輪。>