2016/08/05 - 22:03~23:06 のログ
ご案内:「国立常世新美術館」にヨキさんが現れました。<補足:【リミット0時ごろ】人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目、黒縁眼鏡、目尻に紅、手足爪に黒ネイル/白カットソー、黒タンクトップ、黒サルエルパンツ、黒ハイヒールサンダル、異能製のシルバーリング・ネックレス・バングル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>
ヨキ > 晴れた午後。
美術館らしい、整った明るさと空調の中で、目をまん丸くしたヨキが死にかけの金魚のように口をパクパクさせていた。
“生花(お祝い)1ヶ”。
品名欄のカッコの中に、辛うじて意図を読み取れるだけの、大層味気のない届け物だ。
ヨキが手にしているのは、シンプルなフラワーアレンジメントである。
瑞々しいカラーの花を中心に、白や緑のさわやかな色合いでまとめられている。
贈り主の印象から離れて小洒落たセンスが、ヨキにとてつもない混乱を巻き起こしているのだ。
何か爆弾とか、爆発する魔術でも仕掛けられているのではないかとでも訝しげに、上下左右から花を見分する。
残念ながら、仕込まれているのは治癒と再生の術式であったのだが。
最小限の効果を、最大の効率で発揮する魔術の腕前が、贈り主を密やかに示している。
魔術の知識がある者ならば、花に施された魔力に気付くことも出来よう。
夏のあいだ、その花がちっとも萎れる様子がないことにヨキが気付くのは、
しばらく経ってからのこと――また別の話だ。
ヨキ > 花をじっと見つめたのち、長い長い息を吐く。
肩を落とした顔は、緩く笑っていた。
「……飲み屋で知り合った女にでも、代わりに選ばせたかな?」
軽口とは裏腹に、はにかんだ顔は嬉しげだった。
会場に入ってすぐの、芳名帳が置かれた受付の机の上に、花をこれ見よがしに飾ってみせる。
取り出したスマートフォンで、花を飾った様子を写真に撮る。
ご丁寧に、画面の端に四本指のピースサインが見切れた構図だ。
手早くメールを打って、送信する。
「…………。
今のヨキは、奥野君が見たら、また揶揄い甲斐のある顔をしているのだろうなあ」
くすくすと笑いながら、肩の鞄にスマートフォンを仕舞い込む。
夏休み中とはいえ、平日の午後とあって、館内を行き交う人は少ない。
ヨキ > 今日は予告していた在廊日には含まれておらず、たまたま足を伸ばしただけだ。
それで、お届け物ですよ、と件の花を受け取った次第だった。
芳名帳のページを捲って、多くも少なくもない人数にほっとした様子を見せる。
暑さが和らぐまでのんびりする心積もりで、展示室のすぐ前に置かれた長椅子へ移動する。
明るい通路は大きなガラス張りで、海沿いの景色が一望できるのが好きだった。
腰を下ろしてペットボトルの茶を呷り、ひと息つく。
ヨキ > 身体が涼しさに慣れて落ち着いたところで、長椅子から立ち上がる。
先生、と自分を呼ぶ声に気付いて振り返ると、卒業して久しい教え子の姿があった。
小さな子どもの手を引く姿に、おお、と明るい声を上げる。
何か良いことでもあったんですか、と問われて、まあね、と答える。
「ひとつは、君が観に来てくれたことさ」
もうひとつは――
無論のこと、
ご案内:「国立常世新美術館」からヨキさんが去りました。<補足:【リミット0時ごろ】人型/外見20代半ば/197cm/黒髪金目、黒縁眼鏡、目尻に紅、手足爪に黒ネイル/白カットソー、黒タンクトップ、黒サルエルパンツ、黒ハイヒールサンダル、異能製のシルバーリング・ネックレス・バングル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング/【恒常的な餓え+首輪なし】>