2016/09/26 - 21:50~02:06 のログ
ご案内:「常世公園」に東雲七生さんが現れました。<補足:赤い髪紅い瞳の少年/身長約160/童顔/後入り・乱入歓迎/4時くらいまで>
東雲七生 > 盛大に壊した訓練施設の壁の修繕作業。
学校から罰則として与えられたそれを済ませた帰り、七生は公園に立ち寄った。
「はひぃ……疲れたぁ~」
戦闘行為そのものより、修繕作業が大変だった。
大半は施設備え付けの修復機能が働いてくれたのだが、中にはその機能ごと壊してしまった部分もあったらしい。
それらを教員の指導の下修復し、その後『大規模な戦闘行為は演習施設で』との旨を小一時間に亘って説教された。
じっとさせられているのが苦手な七生にとって、まさしく地獄の様な一時間であった。
東雲七生 > 自動販売機で果物のフレーバーが付けられた水を買い、
そのペットボトルを持ったままベンチへと這うように向かう。
肉体的な疲れもあったが、それ以上に精神的な疲れが大き過ぎた。
「あんな長い説教受けたのいつ以来だろ……?」
多分、去年の夏休み前に大半の強化で赤を貰った時以来だろう。
そう考えると、自分もだいぶ成長したものだと感じる。
何しろそれ以降赤点の数は減ったし、今年は補習無しで夏休みを過ごしたのだから。
「やればできるんだよなあ、俺もなあ。」
ふふへへ、と締まりのない笑顔を浮かべながらベンチに腰を下ろす。
そしてそのまま流れる様な動作でペットボトルの中身を呷った。
ご案内:「常世公園」に化野千尋さんが現れました。<補足:もみあげが長く>
化野千尋 > 「なにかおもしろいものでもありましたか?」
ベンチに座る少年に、通りがかったセーラー服が声を掛けた。
一人でいるのに笑顔でいる人というのは、あまり多くはない。
大抵、あったとしても携帯端末の画面を見ているときくらいだろう。
「もしよかったら、あだしのにも教えてはもらえませんかっ。」
セーラー服の裾を握りしめる。
実に不審な声掛けであったが、化野千尋にとっては精一杯のコミュニケーションであった。
東雲七生 > 「へぁぃ!?」
ゆるゆると自分の成長を誇っているところに声を掛けられ、上ずった悲鳴のような声が上がる。
疲れていたとはいえ人の接近に気付かなかった程度には、
心底緩んでいたらしいことを自覚して息を吐くと同時に緩んでいた気持ちをちょっと締める。
「び、びっくりした……
え、えっと。大した事じゃないんだけどさ、
1学期、去年より成績良かったから。今学期も頑張ろ、って思った……だけ」
言葉にすれば案外面白みも何も無いな、と反省しつつ。
ベンチに腰掛けたまま、セーラー服の少女に、ぱやっとした笑みを向ける。
化野千尋 > 「ふあいっ!!」
半ば悲鳴のような声に、思わず彼女も声が漏れた。
傍から見れば、実に間抜けな光景である。
続いた言葉には、いくらか落ち着いた調子で「そうだったんですねえ」、と返す。
ふう、と小さく息を吐いて、抜けてしまった気合を入れ直す。
「えへへ、驚かせてしまってすみません。お隣、よろしーでしょうか。
成績……あ、そうですよねえ。そういえばみんなそんな話をしてたような気もします。
えーっと……、」
そうだ、と思い出したように小さく手を打つ。
「あだしのです。化野の、ちひろ、と申します。
秋からの転入生、です。ええと、学年は一年生。えっと……」
じいっ、と、伺うように彼の姿を見る。
「せんぱい、で、だいじょーぶでしょうか。」
東雲七生 > 「いやいや、俺の方が勝手に驚いたわけだし……。」
大声出してごめん、と軽く頭を下げながら。
隣良いかと訊ねられれば、快く頷いて少しだけ横に退く。
「化野の、ちひろ……そっか、転入生かあ。
うん、俺は東雲七生。二年だから先輩で合ってるよ。」
見た目は同い年かそれ以下に見えるかもしれない。
それでも立派に高校二年なのだ。少しだけ自慢げに胸を張る姿もちょっとあどけないが。
化野千尋 > 「しののめさん、ですねえ。
それではおたがいさま、ということにいたしましょう。」
それでは、と軽くベンチを手で払ってから腰を下ろす。
顎に人差し指を当てながら、そうだ、と彼を覗き込むようにして視線を向ける。
「しののめさんは、どんな授業を受けてらっしゃるんでしょーか。
ええと、答えにくかったら全然構いませんので。
先輩方のおすすめの授業とか、教えてもらえたらな、なんて思いまして。」
ごそごそと、小さなメモ帳とペンを引っ張り出す。
答えにくかったら、などと言いつつ、聞く気満々の姿勢であった。
東雲七生 > 「そ、そうだな。お互い様、だなっ」
にへへ、とはにかむ様に笑いながら大きく足を前へと投げ出す。
まだ少し夏の名残を日差しに感じながら目を細めていたが、質問を投げられれば振り返って。
「……ん、俺の受けてる授業?
ええと、基本的には異世界の生物を相手にした戦闘術、とかかな。
座学はどーも苦手でさ、生物くらいしか取ってないんだ。」
魔法や魔術の類とはどうにも相性の悪い身体だから、
それらの授業も取って無い事を付け足す。それくらいかなあ、と少し考える様に首を傾げて、
「あんま参考になんねーかな?
見た感じ、化野、あんまり動き回るの得意って感じじゃ無さそうだしさ。」
化野千尋 > 「えへへ、バレバレですねえ。
あだしのは、本島のほうでも体育の成績は2でしたから。
異世界の生物を相手にした戦闘術……ですかあ。」
ふうむ、とひとつ声を落とす。
聞いていいものか、よくないものか。
人との距離感の取り方がこれでいいものかと悩みながらもゆっくりと口を開く。
「しののめさんは、異世界のいきものを相手にした戦闘のご予定があったりするのでしょーか。
すみません。あだしの、あまりここに来て長くないもので。
みんなそういう授業を選んでるのかな、って思ったんです。
それこそ、何か揉め事が起きたときのために、じゃないですけれど。」
そして、続いた言葉にははて、と首を傾げた。
「異能も魔術も相性が悪いのに、この学園にいらっしゃるんですか……?
あ、えっと。そんなに深い意味はないんですが。
てっきりあだしのは、みんな魔術や異能のせいでここにいると思ってましたから。
珍しいな、って、思ったんです。」
失礼なことをすみません、とぶんぶん頭を下げる。
それでも疑問は晴れない。そんな表情を浮かべていた。
東雲七生 > 「ま、実際体育の成績ってアテになんねーけどさ。」
当たってた、と笑ってから肩を竦める。
そしてどうにも躊躇いがちな、言葉を選ぶような様子の少女を見て
ひとまず、応えられるなら出来る限りそうしよう、と身構える。
「ええと、……まあ予定を立ててるって訳じゃねーけどさ。
何が起きるか分かんないから、この学校ってか島さ。
もし万が一の事があって、その時に後悔しないように、ってだけさ。
ああ、もちろん必ず皆受けてるって訳じゃねーよ?」
そもそも、そこまで座席数の多い授業でも無い。
今でこそそれっぽい理由はつけてはいるものの、七生が当初選んだ理由も、
自分を追いつめられるから、という大変にスパルタな理由に過ぎない。
「あいや、異能の所為で此処に来てるよ、俺も。
結構最近まで嫌ってて、出来るだけ無い物として扱おうとしてた。
魔術は本当にからっきしでさー、初歩の初歩すら出来なくて早々に諦めたんだ。」
気にすんな気にすんな、と笑いながら手を振る。
珍しいという自覚はそれなりに持ち合わせているから、彼女の疑問も尤もだと思う。
化野千尋 > ぱち、と瞬きを重ねる。
彼の言葉ひとつひとつを咀嚼するように何度か頭の中で繰り返して、
そうしてようやっと選んだ言葉が溢れる。
「過去形……なんですね。
あだしのには、みんな自分の異能――自分の武器を大事にしているように見えるんです。
けど、しののめさんはそうじゃなかったんですよね。
くるしくは、なかったのでしょーか。
過去形になるまえ。
自分が持って生まれてしまったものを、嫌うのはくるしくはなかったですか?
……あだしのなら、ムリかなあ、って思うので。
これも、参考までに聞かせてもらえたらなって、おもいます。」
やや落ちたトーンに自分で気づけば、なんでもないように顔を上げる。
「興味があるんですっ。あだしのはっ。
ないものとして扱ってたものを、どうしたら大事にできるようになるんだろう、って!」
東雲七生 > 「うん、過去形──でも、ホントのホントに割と最近のことだけど。」
今でも疎む心はある。
もし違うものと換えられるのであれば、少し悩むくらいには。
でも、
「ははっ、授業のことの次は俺個人のこと?
……ってわけでもない、か。
ないものとして扱ってたものを、どうしたら大事に──ねえ。」
うーん、と顎に手を当て首を傾ぐ。
どう話せば伝わるか、そもそも伝える必要はあるのか。
それらを考えて、考えようとして、上手く考えられなかった。
ただ、あまりにも真剣に求められたので──
「くるしい、と言えばくるしかったかな。
でもそんな苦しさなんて何とも思わないくらいには、嫌になる理由があったんだよ。
話すとしたら、まずはそこからだなー」
格好悪い話になるけど、聞きたい?と苦笑を浮かべて頬を掻く。
化野千尋 > 「あ、ええと、すみません。
その、はい。ちょっと、知りたいなって、思ってしまいまして。」
申し訳なさそうに、顔を真っ赤にして視線を手元に落とす。
喋り始めるのには時間がかかる割に、一度興味を持って喋り始めたら
止まらなくなってしまうのは彼女の明確な悪癖だった。
自覚していたが故に、思わず目を伏せた。
「――……、」
はぐらかされるかおかしな人だ、と思われるに違いない、と思った矢先だった。
返った返答は、心底真剣で、真っ直ぐなものだった。
「きかせてもらえるのでしたら、ぜひ。
どうか、あだしのに教えてもらえますでしょーか。」
僅かに視線を持ち上げる。
伸ばしっぱなしの前髪の間から、赤色の双眸がちらと覗いた。
東雲七生 > 「ははっ、気にしなくていーよ。
ただ、少し恥ずかしいね。自分のこと訊かれるってのは。」
くすくす笑いながら、伸ばしていた膝を折って、ベンチの上で抱える様にして座り直す。
自分と同色の、それでもどこか違う色の瞳を目にしてから、小さく頷くと、
顔は正面に向け、手に持ったペットボトルを見つめる様に。
「──この学校に入りたての頃、かな。
四月の、まだ右も左も分からなかった頃に歓楽街の路地で不良に絡まれてる同級生を見つけてさ。
異能を使って、撃退したんだけど。」
当時を懐かしんでいるというには些か沈痛な面持ちで。
じっと手元のボトルを、どこか遠くの様に見つめ続けたまま。
「俺の異能ってのがさ、俺自身の血液を操ることなんだけど。
条件として、体の外に出た血液しか操れなくてさ。
しかもまだ異能が出てきてそんなに経ってなかった頃だから、不良を追い払えたは良いけど、自分の血でべったべたになっちゃって。」
反撃も何度か受けたから、傷もそこそこ作ったねえ、と。
穏やかで、それでいてちょっと物悲しげに呟くと、小さく溜息を溢した。
化野千尋 > 「…………?」
目を丸くした。
四月の、まだ右も左も分からなかった新入生のとき。
歓楽街の路地で不良に絡まれてる同級生を見つけて、不良を撃退した。
異能を使って、友人を守ることができた。
ただし、血でべたべたになりはした。
これだけを聞けば、化野千尋にとって、その異能を忌み嫌う原因にはならない。
――化野千尋にとって、の話ではあるが。
「それで、しののめさんは自分の異能がお嫌いになったんでしょーか。」
困ったような表情を浮かべながら、申し訳なさそうに言葉は続く。
「それって、悪いことなんですか?」
東雲七生 > 「悪い事かどうか、俺は未だに迷ってんだけどさ──」
ボトルキャップを指先で撫でながら、小さく息を吐く。
少しだけ泣きそうな、困った様な顔で一度空を仰いで。
「──その時の、同級生にさ。
俺はただ、「ありがとう」って言って貰えると思ったんだ。
でも、そうじゃなかった。
血まみれの俺に、そいつは『ごめんなさい』ってさ。
……きっと、怖かったんだろうなぁ。自分の所為で怪我をさせたみたいに思えて、さ。」
俺も怖いと思っちゃうもん、と笑い飛ばそうとするが結局溜息となってしまう。
「その時に、思ったんだ。
俺の異能は、誰かのために使ってもどうしても相手に引け目を感じさせちゃうんだって。
まあ、血だし。何もしなくても勝手に出て来たりはしないしな、使うならどうしても怪我する必要があるから。
だからって訳じゃないけど、俺はその時から自分の異能を嫌い始めた。
異能なんて使わなくとも良い様な、そんな人間になろうと思ったんだ。」
結局、その後もちょくちょく色んな場面で使ったんだけどな。
そう付け加えて悪戯が見つかった子供の様に笑う。
「俺が異能を嫌った理由、大体わかった?」
化野千尋 > 「っ…………。」
息を飲んだ。想像もしていなかった。
彼の顔をろくに見ることすら叶わなかった。
ただ、そこにあったのは紛れもない罪悪感だけだった。
「その、」
もとより自分を傷つけないと行使することすら出来ない異能。
それに、ただ助けただけの友人にお礼さえ言ってもらえなかった。
異能を選べるわけじゃない。
それでも、できる範囲内で彼は自分の手の届く範囲の同級生を助けようとした。
それでも、『ごめんなさい』と。その言葉の責任は誰にある訳でもなく。
どうしようもなく否応ないものだった。
それは、第三者の化野がなにを言う権利もない理由で。
「――ッ、あの、すいませんでしたっ!」
立ち上がって、深く頭を下げる。
踏み込んでいいものではなかったのかもしれない。
興味本位で知りたがっていいものではなかったのかもしれない。
「本当に、でも、……」
目に涙を溜めて。
「しののめさんは、なにも悪くなかったと思います。
だから、代わりに。そのひとを助けてくれて、ありがとうございました。
……あああ、すいませんっ。あのっ、訳わからなくなっちゃってっ。」
東雲七生 > 「ははっ、もう一年以上前のことだし、俺も流石に割り切ってるって。」
涙を浮かべてまで居る姿に、真剣に話を聞いていてくれた事に少しだけ驚きつつ、
やっぱり過去の失敗談にもならない何かを聞かれていたという事は恥ずかしいのか頬を染める。
「まあまあ、過ぎた事だから。
とりあえず座って座って、今度はほら、どうして嫌うのを止めたか、だ。
どっちかと言えば訊きたいのはそっち、だろ?」
なんなら飲んで落ち着く?とペットボトルを差し出してみる。
同時に小さく、擦れて消える様な声量で「ありがとう」と呟いて。
化野千尋 > 「――……」
でも、と言いかけてやめた。
大人な彼に、すみませんともう一度だけ頭を下げて。
ゆっくりと、深呼吸と一緒に腰を下ろした。
「あ、えっ……と。そうでした。
ありがとうございます。いただきます、ね。」
本題を忘れていたことを恥じながら、やや視線を上げる。
座って、今度は安心したように笑う。
傾けたペットボトルを口につけ、コクコクと小さく喉を鳴らす。
消え入りそうな言葉に、またじんわりと目元が潤んだ。
「はい、あだしのに、おしえてくださいな。」
東雲七生 > 「ん。」
乞われれば、乞われるままに。
小さく頷いてから、今度は足を伸ばす。
「ま、さっきも言った通り使わないでいたい、嫌いだと思っていながら──それでも、たびたび異能は使ってたんだ。
結局、どこまで嫌っても自分の一部。
自分の目の色が気に入らないからって目を瞑り続けては生きられなかったんだろーな。」
使わない事を自分に課していたのが、いつの間にか奥の手として温存する形になっていた。
そんな事を告白しつつ、秋空を見上げて目を眇める。
「そんなある日、俺は間違いに気づかされた。
隠してれば知られる事もない、それが『良いこと』なんかじゃないってさ。
俺が異能を隠してた事で、俺が怪我を負った事を『ピンチ』だと思ったダチが戦闘に突っ込んでさ。」
まだ真新しいその記憶。痕にすらなっていない傷をなぞるように言葉を紡ぐ。
「大怪我を、負っちゃったんだ。
……馬鹿だよなあ、俺はちょっとやそっと怪我してもピンチどころか寧ろ出来る事が増えるってのにさ。
──俺が、そいつに教えてなかったからなんだ。
怪我をした時こそが、むしろ俺の本領だって。いや、むしろ最初から異能を使ってればって、すっげー後悔した。
全部、俺が変なプライドで、我儘で、自分の異能を嫌っておきながら、
それでも心のどこかで切り離せないで、むしろ頼ってた所為だったんだ。」
語る表情が悔しさと不甲斐無さに歪む。
強く噛んだ下唇に、赤色が滲む。
化野千尋 > 「切っても切れない、ご縁だったのですかねえ。
異能と自分。お互いに、選べない、ですから。」
手元のペットボトルをべこべこと凹ませながら、また耳を傾ける。
間違いのはなし。
それが間違いかどうか、化野千尋にはわからなかった。
でも、ただ事実としてあるのは、彼は間違いだったと定義したこと。
ならば、それは間違いだったのだろう。
「それで、しののめさんは。」
嫌うのをやめて、自分のものだと思えたんですね、と。
自分には未だわからない領域の話で。
何かを失ったこともない、何かを傷つけたこともない。
ただ、それを経験した彼は掴んだ何かがある。それだけは、わかる。
「……ありがとうございます、しののめさん。
なんだか、……強いんですね、しののめさんは。
正直うらやましいし、正直、妬ましいです。……なんて。
この学園にいれば、あだしのも同じよに、強くなれますかねえ。」
どこか茫洋とした双眸で。
宙を眺めながら、ぽつんと言葉を落とした。
東雲七生 > 「だなー、選べないからな。
ただ、今でも俺の異能が火とかぶわーって出せるのだったらな、って思う時はあるよ。」
冗談めかして笑いながら、おどけて肩を竦めて見せる。
間違いだった、と断言してしまったけれど実際のところは七生には分からない。
ただ、友達が傷ついても貫くだけの価値を見出せなかったという話。
誰しもに共通するような事では無論、ない。
「うん、思えたというか、今でもちょっと苦手だけど。
……それでも、向き合う事はしなきゃかな、って。」
まだ一歩を踏み出したばかりだけどね、と。
「別に礼を言われる事も、謝られる事もなーんも無いさ。
俺の方こそ、長々と話し込んじゃって悪かったなー。
ははっ、俺なんてまだまだヒヨッコみたいなもんさ。
この島には、俺なんかよりもっと強くて、大人な人がいっぱい居る。
だから、いっぱい色んな奴に会って、色んな事を経験すれば。」
自信は無いけど、と別段自分が強くなった気はしない少年は笑う。
「化野が何をもって強い、としてるのかは分からねーけどさ。
……少なくとも弱くは、なれねーと思うよ。」
本当に色んな人が居て、色んな事が起こるからさ。
そんな風に軽くウインクなんて飛ばしながら、先輩風を吹かせてみせた。
化野千尋 > 「……、」
きょとん、と目を丸くした。
弱くはなれねーと思う、という言葉にも。
色んな人が居て、色んな事が起こる、という言葉にも。
「ふ、」
最後にひとつ、彼のウインクにも。
「ふふふっ。
……ありがとうございますねえ、せんぱい。
なんだか、ちょっと弱気になっていたかもしれません。
ホームシック、ってやつなのでしょーか。」
胸にペットボトルを抱いて立ち上がる。
秋風がふわりと、髪とスカートの裾を揺らす。
「あだしの、とっても、とっても!
なんだかがんばれるような気がしてきちゃいましたっ!」
指先で、整っていない前髪をしっかりと梳いて。
満面の咲くような笑みを浮かべて。
「このご恩は、また学園で返せるようにがんばりますねっ。
――もし、何かあれば。せんぱいがピンチで、つらいときがあったら。
あだしの、きっとどこにでもいますから。
今度はあだしのが、つらいときのせんぱいを助けてあげますねっ。」
それではっ、と一言だけ置きざりに。
嬉しそうに、楽しげに赤髪の彼に背を向けて。
トントン、と跳ねるように公園を後にしたのだった。
ご案内:「常世公園」から化野千尋さんが去りました。<補足:もみあげが長く、後ろ髪が短い。セーラー服。>
東雲七生 > 「強くなれる、なんて無責任な事言えねーし、それは化野の努力次第っしょ。
でも、弱くはなれない。それだけは保証出来るよ。」
けらり、子供の様な笑みを浮かべる。
七生自身、強くなった気はしないけど、間違いなく弱くはなっていない自覚はあった。
色んな人に会って、色んな事に遭って、それらを糧に成長はしている……と思う。
「おう、がんばれよっ!でも無理はすんな?
それじゃあ何かあったら、助けて貰うかんな!
だから、俺が迷わず助けを乞えるくらいにはなれよな!」
ちょっと今は想像もできねーけど、と内心微笑ましく思う。
去っていく少女を、じゃーな、と笑顔で見送って。
一つ、新たな糧を得た七生はベンチに座ったままぽつりと呟いた。
「──もう、助けられたさ。」
ご案内:「常世公園」から東雲七生さんが去りました。<補足:赤い髪紅い瞳の少年/身長約160/童顔/後入り・乱入歓迎/4時くらいまで>