2016/10/07 - 23:10~03:10 のログ
ご案内:「食堂」に化野千尋さんが現れました。<補足:黒いセーラー服の少女。垢抜けていない。 後入り歓迎ですっ>
化野千尋 > 昼時。人の多い食堂には、黒いセーラー服の少女が一人、ぽつんと座っていた。
一緒に昼食を摂る友人が居ないとか、自分から孤独を好む一匹狼なわけではない。
ただ、噛み合いが偶然悪かっただけだ。

今日、化野と仲のいい女子生徒のグループはその日、異能に関しての調査に参加していた。
定期的に行われるという、異能の――身体検査みたいなものだ。
自分の異能が、どれだけのことが出来て、何をもたらすことができるのか。
例えば空間転移の異能を持つ誰かは、どんな重さのものをどれだけの正確さで転移させられるのか、とか。
例えば、炎を操る異能を持つ誰かは、どれだけのエネルギーを扱うことが出来るのか、だとか。

そんな簡単な身体検査の結果、わかりやすく「後日延期」の通達入りのB5の封筒を受け取った彼女だけが、
この食堂でこうして食事にありつくことが出来ているのだ。

「いただきっ、ますっ」

両手を合わせて、目の前のカツ丼(大)と韃靼そばに小さく頭を下げる。

ご案内:「食堂」にシング・ダングルベールさんが現れました。<補足:紋様入り混じった紺のローブ。乱入歓迎。多人数どんとこいさ!>
シング・ダングルベール > 「和だねえ、和。風情というやつだっけ、その組み合わせは。
 俺みたいに別のところから来た奴にはよくわからないが、日本人は日本的なものにはそう言うんでしょう?」

ソーセージまみれになったプレートを担ぐ男。俺だ。
目の前の彼女とはあまり話したことはないが、確か同じ学年だったように思う。
どこの世界も男は男、女は女でまとまり易く、馴染みが浅くなるのはまあ必然というわけだ。
俺もその範疇からは逃れられないようで、訛りの強い女の子というぐらいにしか覚えていない。
だから話しかけてみたってわけだ。

「いいかな、相席。」って。

化野千尋 > 「わ」

どこかで見たような気のする顔に話しかけられる。
どこの繋がりだったかはいまいちよく覚えては居なかったが、きっとどこかですれ違ったりでもしていたのだろう。
いかんせん生徒数の多いこの学園だ。
覚えていなくても(なんとか顔を合わせてさえいなければ)問題ないだろう。

「そうですねえ、和。和です。
 ええと――アメリカンですね、でよろしーのでしょうか。
 ……ソーセージだと、ドイツのほうになるのでしたっけ。」

小首を傾げながら、箸を置いて「どうぞ」とジェスチャーで示す。
昔は、誰かと食事をすることも少なかった化野が、今では相席すらも慣れたものだ。

シング・ダングルベール > 「どうだかね。腸の肉詰めぐらいはどこにでもある気がするけれど。
 うちの国でもよく作ってたっけな、きっと君が名前も聞いたことのないような動物の肉でさ。
 こんなにうま味もなければ張りもなかったな。……まあ、もう食べる機会はないけどね。」

ありがとうと言外に、会釈で返す。
いきなりすぎて、少し困らせたかな。妙な空気。雰囲気。
和気あいあいってわけにはいかないか? ……難しい。
俺が一人で呑まれてるだけか……?

「シングだ。君も確か一年だったよね。確か。
 まだここに来て一か月も経ってないからごめん、曖昧でさ。
 特に女の子とはまだ縁遠いものだから。……ああ、違うそうじゃない。別に口説いているわけではなくて。」

そう、違うんだけど……まずい。今、口のうまさがほしい……。

「その、君が一人でいるものだから。だから声をかけるチャンスかなって。
 ……ってコレだと語弊があるね! まるで男として君を見て声をかけたような……!」

化野千尋 > 「もしかして、ナンパというやつでしょーか。
 ふふ、もしかして携帯の番号もご入用だったりします?」

にやり、と小さく少年めいた笑顔を浮かべる。化野流の、反応に困る冗句シリーズその1だ。
特に困っているわけでもなく、慣れを迎えた状態でもこれだ。
自分から話しかけるのは幾らか苦手だが、こうして話しかけられる分には問題なくコミュニケーションが取れる。
島に来てからの、明確な成長である。

「あだしのも2ヶ月ほど――そう、確か、入学の時期、近くなかったでしょーか。
 来たのは2ヶ月前くらいですが、あだしのは入学、9月の頭ごろだったんですね。
 同時期の編入生がいる、って、先生方からお聞きしていたような。
 そう、それでなんとなく見たことがあったんですね。納得。

 あだしのは、化野です。化野の、ちひろ。
 ……漢字は必要なさそです? 異邦人の方、でしたよね。」

シング・ダングルベール > 「はあー……ごめん。少し落ち着くよ。
 番号まで欲しかったわけじゃないんだ。
 名の後にダングルベールと続く。時が良ければアドレスブックに追加してもらえると嬉しいね……。」

溜息。比較的重いやつ。
代わりにとパクついた白ソーセージが、普段とは違う味の気もするし、おそらくきっと気のせいだという心情が強くもある。

「名前も知れた。顔も知れた。それで醜態の分はチャラだって思うことにするよ。
 化野に変な異邦人と思われたとしてもね。

 ……話は変わるけど、他の友達は一緒じゃないのかい?」

化野千尋 > 「あはは、変とか思ってませんよう。だいじょーぶですよ。
 アドレスにお友達の名前が増えることはうれしーことですので。
 ……カツ、おひとつお分けしましょうか?」

箸でカツ丼のカツをひとつ指し示すジェスチャ。
重たい溜息から溢れたであろう幸せの対価にしては、幾らか安すぎるが。
問われれば、化野は困ったように眉を下げる。

「今日は偶然一人なんです。普段はいつも、友達と一緒なのですけれど。
 みんな異能の検査でてんてこまいみたいなんですよね。
 あだしのは、こういうことでして。先に食べてようかな、と思ったんです。」

封筒を見せる。茶封筒の表、宛名の部分に「後日延期」の文字。
そうだ、なんて調子でぽん、と小さく手を叩く。 

「シングさんは、異能の検査はお受けになったこと、ありますか?
 あだしの、未だにどういうことをするのかわからなくって。」

シング・ダングルベール > 「俺もない。異邦人だからか理由は知らないけれど、特別生えてきたってものはないしね。
 魔法はあくまで魔法って別口でカウントしてるし、よくわからない。
 しっかし、『後日延期』ねえ……なんでまた。
 ただ調べることに、わざわざタイミングをずらすほどの理由があるとは思えないけれど……。
 ……あ、いただけるならば是非に。カツの代わりと言ってはどうぞこちらも。肉の交換に肉。肉尽くしだなこれ。」

ソーセージの山の一角に、異彩を放つひときれのカツがやってきた。
すぐ口の中に入っていったが、これはなんかこう……ご飯欲しくなるな……。

「……ああ、でも。色々データを取られたことならば。
 身体の内に魔物を飼ってるようなもので、透視写真とか色々ね。
 流石に切り刻まれたりはしなかったけど。……されてたら、ここにはいないか。」

なんて冗談めかす。

「この身由来の力でなければ、異能とは見なされないのか。そもそも異能とはなんだろうね。
 いきなり内側から生えてくる能力、だなんて……。そんなものない方が、人は幸せに生きていけるのに。」

化野千尋 > 「詳しくはあだしのもよくわからないのですが、『もしかして、異能あるんじゃない?
 いや、でもそんな細かく調べてる時間は今はないから、別の日に予定開けてくれる?』
 みたいなお話だったみたいで。今日は、『ある』人のための検査みたいでしたし。
 あ、ありがとうございます。ソーセージ、久々に食べるよな気もしますねえ。」

もっきゅもっきゅとソーセージを頬張る。
化野の、この学園にやってきてよかったランキングのかなり高位に位置しているのが、
学食の取り揃える料理の幅広さと美味しさである。
国と地域、それに世界を飛び越えた学生に合わせるためだという話だが、一般の生徒には
「美味しい! うれしい!」くらいのことしかわからない。化野もそうだ。

「そういえば、異邦人でも異能をお持ちのせんせが――今は、なくなっちゃったみたいですけれど。
 この学園にはいらっしゃいましたよ。色々あるのですねえ。
 だからこそそゆ研究の場にもってこいなのかもしれませんけれど。
 ……身体の内に魔物が、ですか。
 すみません、お食事中の例えにサイアクなのですが、寄生虫、みたいなものでしょーか。」

シングの言葉には、興味津々に食いついた。
異世界で暮らし、異世界で生まれた彼の身体の中には、純粋に興味がある。
化野も、この世界の研究者とよく似た性質をしているらしい。

「わかったらきっと、この学園の役割もなくなっちゃうのでしょうねえ。
 あだしのもそう思いますよ。この島の外では異能者だと、いやーな目で見られたりとかしていましたし。
 『そうなってしまったものは仕方ない』とは言われましたけれど。
 ほら、落第街、わかります? 歓楽街の、奥の方の。
 あだしの、あの辺にあにうえと住んでるんですが、かなり揉めたりするの、見てるんですよね。
 異能犯罪? ……っていう言い方でいいのかはわからないですけれど。」

シング・ダングルベール > 『寄生虫』との言葉に思わずくすりと笑ってしまう。
成程確かに。この胸に胎動しているコイツは無機物で、生きちゃいないが確かに俺を蝕んでいる。
それとも誰もが気づかないだけで、ほんとにしっかりと生きているんだろうか。
もしそうなら……俺はいつまで、俺でいられるんだろう。
……今は、いいか。そんな話。

「あの辺りには頼まれごとでよく行くよ。わかる。流石に住んでる人と話すのは初めてだけど。
 化野が言うように、四六時中イザコザが絶えないけれど……。」

よくそんなところに住んでるな、なんて言えるはずもなく。
言葉を探す猶予が欲しくて、ソーセージを咀嚼する。
普通じゃない。口にするだけなら簡単だ。それを指摘して何になる?
引っ越せばいいと? ……違う。

「……いるんだ? お兄さん。」

違う。

化野千尋 > 「はい、兄が。こんな時代ですが、3人上にいるんですよう。
 で、何年か前に常世学園は退学したのですがまだ島に残っていて。
 まあヤンキー、というものではあるのですが、優しいあにうえですよう。
 あにうえの作る炒飯がぱらぱらで、すっごく美味しいんです。」

ふふ、と緩みきった表情を浮かべる。蕎麦を啜る。
基本的に、家族のことを話すときの化野はいつもこうだ。
故に、シングの胸中など伺うことはできず、こうしてやや逸れた回答しか戻ってこない。

「頼まれごとで行く……んです? 風紀委員さん、だったりするのでしょーか。
 ともあれ、ごくろうさまですよう。
 あ、そういえば言っちゃいけないって言われてたの忘れてました。
 ……ので、聞かなかったことにしてくださいねえ。」

内緒ですよ、と口元に指を宛がう。
カツを口に運ぶ。じわりと滲むソースの味が心地良い。
そうして、思い出したかのようにまた言葉が返る。

「シングさんは、ご兄弟とかいらっしゃるんですかあ。」

シング・ダングルベール > 「ああ、兄が12人。姉が8人。
 母が同じなのは一番上の兄上だけだったけど、みんな優しかった。
 きっとね。

 ほとんど話したことのない、会ったことのない人たちもいただろうけど。
 もう記憶でしか会うことはできないから、きっと美化されてる面もあるんだろうけど……。
 ……良い思い出だよ。身勝手にも、俺はそう思ってる。

 化野はお兄さんのこと、好き?」

化野千尋 > 「わ」

最初に発した言葉と同じ言葉が漏れる。
地球とは――化野の知る範囲の地球とは――全く異なるその血縁数に、思わず声が出る。
どうにも、想像するにはファンタジーのようだ、と化野は思案する。
例えば、第一王子と第幾つだか王子は母親が同じ、とか、第八王子は遠くで暮らしている、とか。

「あだしのは、思い出は美しくあるべきだと思っておりますので。
 たいへんによろしーのではないかと思いますよう。美化でも、火のない所になんとやらですし。
 身勝手でもなんでもなく、とーおい記憶でも覚えていてくれるの、
 喜んでくれているのではないでしょーか。わかりませんけれども、ね。
 もう少し科学が進めば、また会えるかもしれないですし、はい。」

微妙に間違った使い方の諺を添えた。
化野は、基本的に何かを失っているかもしれない人のことを考えるのは下手だ。
自分の恵まれた、まだ祖父も祖母も健在の環境が現在の化野の中の『当たり前』だ。
触れてはいけない/踏み込んではいけないラインというのが見えていないのだ。
だから、シングの言葉にも無責任に言えてしまうことがあまりに多い。

常世学園には、異能によって何らかの事故で親を亡くしたり、
転移の影響で親と離れ離れになったような生徒も少なくない。
だが、化野はそうではない。あまりに恵まれすぎていた。当たり前が、人と違う。
だから、人の気持ちを考えずに家族の話なんてものに踏み込むことが出来てしまう。

「あだしのは、勿論あにうえのことは大好きですよう。
 もーすこし、女癖は直したほうがよろしーですよと何度か言ってはいるのですけれど。
 それさえ直れば、あだしのは文句なしなのですけれど。」

シング・ダングルベール > 「化野の価値観は、あたたかいモノだな。陽だまりか、春風か。そういった類の優しさだ。
 少しそのお兄さんがうらやましいよ。少しじゃないな。とてもうらやましい。
 家族って、いいよなあ。ああ。そう思う。本当に。」

いつぶりだろう。こんな話をするのって。
ただの何気ないやりとりなのに、永劫を経たみたいだ。
刃で穿ち抉られるよりも、内から焼かれるだけあって郷愁って感情は、どうしてこんな。

こんなに。

……俺は、目頭を押さえた。

「ホームシックだなあ、これは。」

嘘だ。
化野の言うように、もし世界を超えることが可能になったら?
元の世界に滞りなく移動することができたら?

何にもならない。
そこには誰もいないし、何もない。
レンガ造りの街並みも、優しくしてくれた人たちも。
父も母も、兄弟だって。
知ってるよ。わかってる。





焼いたのは、俺だ。

化野千尋 > ゲホゲホと、蕎麦を啜っている中で急に褒められれば咽る。
傍らの緑茶のペットボトルに手を伸ばして、ゴクゴクと喉を鳴らす。
彼の胸中なんて、化野は知り得ない。緩く微笑んで、「はい」と、何度か相槌を打つ。
化野には、異能で親を殺してしまった誰かの気持ちも、超常で親を失った誰かの気持ちも、
何かしらの理由で――故意であろうとなかろうと、家族を失ったシングの気持ちは、わからない。

「あだしのは、幸せなのがいちばん好きですからね。
 だから、ここで一人で暮らしてるひとたちはすごいなあ、って毎日思ってるんです。
 洗濯はあだしのの担当ですけど、掃除もご飯も、基本的にあにうえがしてくださるんです。
 だから、あだしのはシングさんもすごいなあ、って思いますよ。
 ひとり、知らない世界に来て頑張ってるんですから。えらいですよ、とっても。」

あだしのが言うことでもないですね、と苦笑する。
シングが目頭を押さえれば、そっとリュックの中からポケットティッシュを取り出す。
数枚取り出して渡すか、それとも普通に渡すかを僅かに悩んで、袋ごと差し出した。

「電話とか――は、異世界、なんですよねっ。
 ううん、他になにか方法があればよろしーのですけれども。
 うまく解決方法、あだしのは思いつきませんけれど。

 いま、たくさんがんばって、会える日を待つ、ですとか。」

化野千尋は、シングの過ごした時間がどんなものだったのかわからない。
シングが覆い隠した優しい嘘のおかげで。
化野千尋は、シングが何を失ったのかもわからない。
シングを疑うという行為を知らないせいで。

「きっとご家族も、いつか会える日を待ってらっしゃいますよ。」

シング・ダングルベール > 「……ああ、そうだね。そうかもしれない。だから俺は……この島で、まだ生きているのかな。」

公安に二つ返事で協力したことも、バカ正直な人助けも、結局禊のようなもの。
いくら手を洗ったって、罪悪感って名前の汚れは酷くこびり付いたまま。
ふやけて傷つきやすくなってなければいいけど、そのあたりはちょっと自信がない。
けど。だから、俺は……俺が生きている間だけは、誰かの力になりたいと改めて思う。
例え世界が違ったとしても。こんな俺の残った命に、意味が出る。
だから名乗ったんだよな。

「ありがとう。でも、俺の家族はもう……いないんだ。誰も。
 ありがとう。その気遣いは、とてもうれしかった。元に戻れたら、本当に素敵だと思う。
 ありがとう。少し、スッキリした。」

ティッシュで目元をふき取るころには、心に重さが消えていた。

「さて、ごちそうさまでした。お先に教室へ戻るよ。



 ……ああ、ごめん。ひとつ頼みが残ってた。
 アドレスブックに付ける際、『魔法使い』の、と加えてほしい。
 困った時には力になるよ。願いを叶えるようにね。」

化野千尋 > 「――え、」

シングの心に掛かっていた暗雲は、化野の上へと緩やかに移動した。
『家族はいない』。『もう、誰も。』『元に戻れたら、本当に素敵だと。』
この段階にきて、ようやく化野はシングの境遇を、やっと知ることになる。
今まで、自分はどういう前提で話をしていただろうか。考える。巡らせる。

【シング・ダングルベールは家族のいないこの世界に来てしまった】
【シング・ダングルベールはホームシックを感じている】
【シング・ダングルベールは家族というものをいいものだと思っている】

ここで、この前提は覆った。
シングの口から出た言葉を何度も、何度も頭の中で繰り返す。

【シング・ダングルベールは既に家族を一人残らず失っている】
【シング・ダングルベールは元に戻れたら素敵だと思っている】
 >>>>【シング・ダングルベールの家族は、元に戻らない】

ひどい話をする人もいるものだ、と、化野は一人、机の下でスカートを握りしめた。
帰ってくるはずのない家族が喜ぶことはできるのだろうか?
帰ってくるはずのない家族にまた会うことはできるのだろうか?

「あの、すみません、っほ、ほんとうに、すみませんっ」

腰を折って、これでもかと頭を下げる。
ガシャンと鳴った椅子が転がる音に、周りの生徒もなんだなんだと視線を向け始める。
顔を上げることはない。絶対に上げてはいけないと思った。上げる権利はないと思った。

「なにもっ、しらなくってっ。
 失礼なことをたくさんたくさんっ、言ってしまってっ。」

天秤のように、シングの心の重さが消えれば、化野の心にずしんと重い何かが乗る。
家族が好きだからこそ、ひどいことをしてしまったと。
あまりにひどい仕打ちであったと、この段階で、ようやく化野は学ぶ。
死んだ人は、生きている人を待ってなどいない。
正確には、生きている人を待つことなど出来ない。出来ても、その境目はあまりに深く、広い。
生きているものと死んでいるものは、それこそ《門》より大きなもので隔てられている。

「すみませんっ、でしたっ……。
 あの、ええ、と。わかりました。『魔法使い』、ですね。……すみませんっ。」

そうして、シングを見送って。
暫く呆然と立ち尽くして、力が抜けたかのようにストンと座る。
残った2口分のカツ丼に手をつけることすらできやしない。

「……この気持ち、どうすればいいんでしょーか。
 あだしのの困った気持ちに、力になってもらえたりなんて――……」

小さく、「都合がいいですよね」、と力なく呟いた。

ご案内:「食堂」から化野千尋さんが去りました。<補足:黒いセーラー服の少女。垢抜けていない。 後入り歓迎ですっ>
ご案内:「食堂」からシング・ダングルベールさんが去りました。<補足:紋様入り混じった紺のローブ。乱入歓迎。多人数どんとこいさ!>