2016/10/07 - 22:37~00:14 のログ
ご案内:「歓楽街」にヨキさんが現れました。<補足:【リミット1時】27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒ボートネック七分袖カットソー、濃灰デニムジーンズ、黒革ショートブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 夜。歓楽街の大通り沿いにある、とあるゲームセンター。
島内トップクラスの難度を誇る、異能者向け弾幕シューティングゲーム「紅蜻蛉」の筐体の前で、
真っ白に燃え尽きてしまったかのように座り込んでいるヨキが居た。

ディスプレイに表示されているのは、二面ボス戦中でのゲームオーバー画面だ。
すぐに画面が切り替わり、オープニングムービーに戻る。

「み……見えない……」

あろうことか、ケアレスミスでの被弾だった。

去年に養護教諭蓋盛と会ったときには、まぐれとは言え四面まで到達出来たはずだ。
それが人間の視力となった今では、弾幕のピクセル単位の隙間を視認することが困難になっていた。

とは言え、それでもヨキはヘビーゲーマーと呼んで差し支えない程度の腕前ではあるのだが。

獣の動体視力にどれだけ頼り切っていたかを突き付けられて、こうして脱力しているという訳だった。

ヨキ > 息をついて、立ち上がる。
ニッチなタイトルだけあって、人待ちが出るほどではない。

後ろへ振り返ると、そこには対戦格闘ゲームが一通り並んでいる。
学生が熾烈な対戦を繰り広げる、自分も飽かずやり込んだ筐体を何気なく遠目から覗き込む。

無言の感嘆と溜め息。

どういう思考でその動作や技を選ぶか、ヨキは一から十まできちんと把握し理解している。
だが獣人であった頃には、画面のごくわずかな明滅さえ判別出来たものだった。

やれやれ、とでも言いたげな顔を作って、フロアを見渡し、手のひらで首筋を擦った。

実のところ、夕飯を済ませたのち結構な時間をこの店で過ごしていたのだが、まだ長居するつもりらしい。

ヨキ > 格闘ゲームで馴染みの学生と五分の戦いを繰り広げ、再度挑戦した「紅蜻蛉」は辛うじて三面の序盤まで進む。
自販機が並ぶ休憩スペースへやってきた頃には、肩が落ちそうなくらい疲れていた。

「はふーー……」

長椅子から緩く足を投げ出す。
眼鏡が度入りの近眼用に戻るまでに、そう時間は掛からないだろう。

買い求めた茶のペットボトルの蓋を開け、ぐびぐびと一気に飲む。
強い酒でも飲んだような息の吐き出し方をして、首を左右に小さく鳴らした。

ヨキ > それから深夜まで遊興は続いたらしい。
学生と笑い合い、共にゲームで盛り上がり、知らぬ者と連絡先の交換をして、和やかに別れる。
そんな刹那的な愉しみの繰り返し。

そして。
不意に擦れ違った学生のグループへ、ヨキが静かに振り返る。

「……………………、」

リーダー格の身なり。取り巻きの顔触れ。会話の内容。交わされる符号。
それまで人懐こく柔らかだったヨキの眼差しに、ふと獣の怜悧さが過った。

細めた目の奥で、どこまでも深い青だけが雄弁だった――“見つけた”。
正規の学生との格闘ゲームの次は、違反学生を相手取った、ゲームでない格闘の時間だ。

――視線を感じてグループが振り返った空間には、誰も居ない。

ヨキ > その日を境に、街で悪さをしていた集団のひとつが忽然と姿を消す。
獣であった時分から、人間に成り代わった今の今まで、密やかに続いてきたヨキの“雑用”。

すべては些事にして不可欠。

秋めく空気の冴えと共に、穏やかな日々が続く。

ご案内:「歓楽街」からヨキさんが去りました。<補足:【リミット1時】27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒ボートネック七分袖カットソー、濃灰デニムジーンズ、黒革ショートブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>