2016/10/09 - 21:42~02:09 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にヨキさんが現れました。<補足:【リミット1時】27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた白コート、細身の白ボトム、黒ショートブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 休日の自宅で「学生になる」という決意を新たにしたあとの、週明け。
昼食どきのカフェのテーブル席で、メニューと睨めっこをしているヨキが居た。
目当ては鶏肉と根菜のグリルを中心にした、女子力お高めの洒落たランチプレートである。
ところが定番メニューの他に、秋限定のデザートを掲載した別紙を見つけてしまったのだ。
サツマイモに栗にカボチャ。ケーキにプリンにフレンチトースト。
かつての食欲ならば全種類を平らげることも朝飯前であったが、今となってはそうもいかない。
「ぬ……ぬぬぬぬぬ……!」
全部食べたい。こまめに通うのも吝かではないが、今この瞬間にすごく食べたいのだ。
こんなことなら女子を引き連れてくればよかった。
明日にでも世界が滅びそうに深刻な顔をしていた。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に斉藤遊馬さんが現れました。<補足:風紀委員制服、茶革靴>
斉藤遊馬 > (世界の終わりはそんなに遠いわけではなかった。)
あの……ヨキ先生、ですよね?
(男の背後から声をかけたのは、まだ年若い少年。)
(風紀の制服を着ながら、左の手元にはバインダーが一つ。)
(どうやら委員会の調査か何かで訪れたらしく。)
周りがめっちゃびびってるんですけど、なんかあったんです?
(言いながら、右の手、持ったペンで周りをぐるりと示せば。)
(さっと目を背ける人々の姿があった。)
(そして少年の後ろにも、少しおどおどとした様子の店員の姿。)
先生タッパあるんで、その顔して唸ってると、若干怖いんですよね……。
(つまるところ、この場において若干風紀が乱れていた。)
なんか問題ありました?さっきメニュー見たときは、普通の中身でしたけど。
ヨキ > 何しろ規律に厳しいことで有名なヨキである。
真剣な顔をしていると、それだけでオーラは凄まじかった。
ヨキ先生、と名を呼ばれて、すわ問題でも起こったかと振り返る。
初めに目に入ったのは、風紀委員の制服。それから顔を見上げて――
「………………!」
遊馬の言葉に、初めて「問題」の根源が自分であることに気が付いた。
「あ、いや……」
いやいやいや、とすっかり鎮火して頭を掻く。
「モンブランロールとかぼちゃのタルトとスイートポテトのフレンチトーストと、
どれにしようか迷ってしまって……」
周囲を慄かせるにしては、しょうもない理由だった。
斉藤遊馬 > (相手から帰ってきた言葉に、がくん、と首を折った。)
とかく女の好むもの 芝居 浄瑠璃 芋蛸南瓜とは言いますが、栗加えたらヨキ先生釣れるんすね……女子に伝えときます……
(表情に浮かんだ苦笑い、特に隠すでもなく。)
(相手の手元のメニューを覗き込むようにして、首を傾げた。)
でも、食べたいなら、三つとも注文したらいいんじゃないですか?
ヨキ先生、確かめっちゃ食べるでしょ。
(ペンのお尻を己のあご先に当てながら、視線を、つぃ、と左にやって)
女子が、調理実習の後に『ヨキ先生ちゃんと食べてくれるのー!』とか言って、
偉い量のお菓子持って廊下ダッシュしてるの、取り締まった覚えあるんですけど。
そんなおっきくないですよねこれ。直径22cmとかそういうのじゃなく。
(振り返り、己の背後、ほっとしていた様子の店員に確認すれば、こくこく、と頷く姿。)
ヨキ > 眉を下げて笑う。若干顔が赤い。
「あはは、君は渋い言い回しをするね。もちろん釣れるぞ。
入れ食いだ。ぜひ伝えておいてくれ」
首を傾げる遊馬に向けて、うん、と何気なく腕組み。
何気ない腕組みですら威圧感がある。ここがカフェテラスでなければだが。
「前は全部食べられたんだがな。
それは“獣人”だったときの話さ。今はほら、この通り……」
自らの耳を抓んで引っ張る。
先月まで、彼はハウンド犬のような耳をしていた。
それが、まるきり人間の耳をしているのである。
「人間になって、食欲も人並みになってしまってな。
おかげで食費もずいぶん安くなったぞ」
店員へ目配せする遊馬に倣って、自分も小さく手を振る。怖がらなくて大丈夫。大丈夫だから。
「それにしても、取り締まりで君に間接的に世話を掛けたか。
何ならみんな頼んで、ヨキと君でシェアでもせんかね。
仕事中の買い食いはご法度、という決まりがあるならば別だが」
斉藤遊馬 > (相手の恥ずかしげな苦笑に、少年も笑って。)
この間の古典の授業で習ったんですよね。
女子が差別だ!って叫んだんですけど、直前まであいつら干し芋貪ってたんで、説得力半端なかったですわ。
美術室のオーブンからなんか焼き芋の匂いする、とか通報受けたくないんで、加工品持ってくように伝えときますよ。
(口をへの字に曲げてそう言いながら、女子共の様を思い出したのか。)
(少年は目を閉じて、溜息を一度吐いた。)
(そして開いた目に写ったものに。)
え。
あ。
(口を開けたまま、瞬きを数度。)
(記憶の中の、目前の相手のデータとは異なるもの。)
そうだったんですか。そりゃ、失礼しました。
しかしそうなると、さっきの話、伝えるのやめとかなきゃなぁ。
(理由やなんやを聞くでもなく、消費しきれぬ食品を齎すこと無いよう、少年は考え直した様子。)
いや。別に、これが俺たちの役割ですし。
先生にしたら単純に悩んでただけですしね。
……え。いいんすか?いや、どうせ今日の仕事これで終わりだったんですけど。
(言いながら、お言葉に甘えて、というように、相手の対面の椅子を引いて、腰掛けて。遠慮がない。)
じゃあ店員さん、それお願いします。後俺アイスコーヒー。
ヨキ > 変わらず軽い調子で、自分の変化に対する遊馬の反応にくすくすと笑う。
「ふふ、びっくりしたろう?
大変だったよ。手続きとか、周りへの説明とか。
だから、もしも次に大量の差し入れが届いたときには、君に湧けるようにしようか。
そうしたらせっかくの好意を無碍にすることもなくなるかも」
言いながら、早速自分の対面に腰を下ろす遊馬へにやりと笑い掛ける。
「いいよ、ご馳走する。お勤めご苦労様。
ええと、デザートに君のアイスコーヒーに……、
ではヨキは、この秋のランチプレートと、あと紅茶をストレートで」
昼食とデザートとを合わせれば、そこそこの量にはなる。
注文を済ませてから、相手へ目をやった。
「風紀委員だなんて、この島のヒーローではないか。
ヨキはもちろん、君もモテて然るべきだ」
自分もモテたいことには変わらないらしい。
「真面目な風紀委員の君、名前は?」
斉藤遊馬 > そりゃ大変だったでしょう……。種族も含めて、学校には登録されてるでしょうし。
そもそも、ほんとに同じ人なの?って確認取れなくなりますしね。
偽物が成り代わって贋作ヨキ先生爆誕。美術の授業崩壊!とかなったら偉いことになる。
(その場合の騒動を想像したのか、げんなりとした表情で、うへぇ、と声を漏らした。)
(相手の提案、お菓子の譲渡には、首をぶんぶんと振って。)
勘弁してください。万が一にも俺が食べてる所見つかったら、
翌朝には俺の身体が17くらいにバラされて、青垣山と海底遺跡あたりにばらまかれます。マジで。
(手の中持っていたバインダーの表紙、ペンでデカデカとNOの文字書いて、勝訴示す如く相手に見せた。)
ん?先生それ俺と分けても結構な量じゃないです?
あぁいや、タッパあるもんな。そりゃ食えるわ……。
(注文を受けて帰っていく店員に、よろしくー、と手を軽く振って。)
(バインダーとペンを机の端っこに置きながら相手を見る目、口にはしないものの身長への憧憬が僅か滲む。)
ヒーローって先生、そんないいもんじゃないの、先生もご存知でしょう。
口うるさい、学園の犬、いざとなったら役に立たない。評判大体そんな感じですよ。
(からからと明るく笑いながら、首を振る動きはゆるゆると。)
あ。すみません。俺は斉藤遊馬(さいとう あすま)。二年です。
名乗りもせずにご相伴に預かってすみません。でもいただきます。めっちゃありがたいです。
ヨキ > 「先日も、危うく偽物扱いされかけてな。
これだけ多彩な異能や魔術が存在していては、自分が本物だと証することも難しい」
喉元を過ぎれば笑い話だ。
苦い顔の遊馬に対して、軽く笑い飛ばす。
「ははは、大丈夫大丈夫。
ヨキの可愛い女の子たちは、そんな過激なことなど……。
…………、するかな。女の子だし」
異性の勢いは時としてよく分からない。
無責任に小首を傾ぐ。可愛こぶってみせたつもり。
空腹らしく、腹を手のひらでぐるぐると擦る。
「ああ、図体はでかいし、あちこち動き回っているからな。
二時間ごと何となく小腹が空いてしまって……むやみに食べて太る訳にもゆかんしな」
あっはは。結局のところ、割と大食らいらしい。
「斉藤君か。なあに、とやかく言う者は君らの苦労を知らぬのさ。
大きな街の平和は、地道で小っちゃい活動によって守られている。
ヨキは君ら委員をいたく尊敬しているのだよ」
まずはコーヒーと紅茶が運ばれてくる。
お疲れ様、とカップを軽く掲げ、微笑んで一口。
「それにしても、二年生か。
さぞかしてんてこ舞いの一年間だったろう?」
斉藤遊馬 > ずっと昔は写真一枚で身分証明できましたけど、今だと普通に顔変えたりしますしね……。
昔の人、整形手術とかどうしてたんだろ。
(首を二、三度捻って考え込む様子であったが、目前の男の発言に、真顔で。)
する。
する。
します。
女子はマジで怖い。さっき話した調理実習の廊下疾走止めたときも、俺、死を覚悟しましたからね。
”冷めんだろうがよぉ!おめーマジぶっ殺すぞ!”とか廊下で叫ばれて非常に辛かったです。
(女子の口調の再現をした瞬間だけ、不意に少年の声が変わった。)
(少年の喉から出たのは、少し高めの女子の声。カフェの喧騒に紛れたものの、出元は確かに少年の喉。)
(怖い怖い、と肩を竦めながら、思い出した過去の様子に顔をしかめている。)
確かに人間の体になったら、肉のつき方も人間と同じになりますしね。
でも、こまめに少し食べるほうが太りづらい、とも言いますよ。
……先生の場合少しじゃなさそうなのが問題なのかな。
(先程の注文の様子を見れば、なんとなくそんな気がしたか。)
(相手の笑いに釣られるように、少年も笑った。)
(しかし突然に褒められれば、は、と笑いを止めて。)
あー…いや、その。ありがとうございます。
(少し照れたふうに、視線を左右に少し揺らしてから、頭を下げた。)
(運ばれてきたアイスコーヒーを手にとって。)
ゴチになります。
(軽く掲げてから、ミルクとシロップを注いで、一口。)
(はぁ、と一息ついた。)
てんてこ舞い、っていうか。なんでしょ。現実感がないまま、一年終わった感じです。
このまま四年終わって卒業なんじゃないか、って思うくらいに。
長く居ると、慣れるものなんですかね、これ。
(うーむ、と首をひねった前に、追って運ばれてきたランチプレート。)
(そちらそちら、と、目前の男を掌で示して。相手の前に置かれた、洒落た一枚。)
ヨキ > 「異能や魔術の怖いところは、その痕跡も残らんところだよな。
年長のご婦人などは、整形っぽい、などと見分ける目に長けていた頃もあったようだが……。
今となっては、いつどこで姿かたちががらりと変わるとも知れん。
それでもしも、内面まで模倣するような能力があったとしたら……、
いやはや、自分を自分と証明するのもなかなか大変なことよ」
奇しくも目の前の少年が、それに類する異能を持っているとも知らずに。
何気ない言葉が、つらつらと零れた。
それでいて、目の前の遊馬から実際に“女子の声”が放たれたものだから――
瞠目して、ぱちぱちと瞬く。
「……おや、これは驚いた。
よほどの役者か……それとも『今の』が、君の異能か?」
カップを片手に、遊馬の顔を冗談めかして見分する。
タネも仕掛けもなかろう、とばかり。
「小腹が空いたときのためのおやつは、職員室や美術準備室の机に密かに常備してあってな。
だがお腹をしっかりとペコペコにしておいた方が、三食をより楽しめるというもの……。
ふふふ。いただきます」
運ばれてきたランチプレートを前に、箸を持って合掌。
ごはんに味噌汁、鶏肉と根菜のグリル、豆のサラダにキノコのおひたし。
献立と盛り付けはキャピキャピしているが、口へ運ぶ一口一口の量は男のそれだ。でかい。
だが食べ方はえらく綺麗で、マナーはきちんとしている。
「現実感がないまま、か。
これだけ毎日、上へ下への大騒ぎをしているような島の学園ではな。
ヨキはもうずっと教師をやっていて……慣れはしたが、飽きないな。
人の出入りが激しいから、良くも悪くも、新しいことばかり起こる。
斉藤君は、異能や魔術を学ぶために常世島へ?」
斉藤遊馬 > あぁ、すみません。はい、これが俺の異能です。
(特に隠し立てするようなものでもないと考えているのか、さらりと言って。)
とはいっても、モノマネできる、ってだけなんですけどね。
例えばさっきのヨキ先生の顔とか。
(軽い調子で言いながら、表情が変わった。明日にでも世界が滅びそうに深刻な顔。)
(顔立ちは全く異なるが、少年と男以外の他者が見れば、”何処か通ずる”と判る表情。)
(暫くやってから、ぱっと元に戻した。照れくさそうに笑う。)
変身の異能を持つやつが、気づいたら自分でも、自分が誰かわからなくなる、とか。
そういう話も、風紀で聞いたことあります。
俺のはそういうやつじゃないですけど、こんだけ色々溢れてたら、身分とかそういうの、あんまり意味ないのかもしれないですね。
(風紀委員が言う台詞じゃないか、と。冗談めかして言いながら、アイスコーヒーを一口。)
(からん、と氷の鳴る音。弄ぶようにグラスを軽く傾けてから、卓上に置いて。)
あ。わかります、それ。お腹めっちゃ空いてるほうがご飯美味しいのは。
でも空かせ過ぎるとお腹鳴るんで、バランス難しいですよね。
夕方とかもう菓子パン食べても晩飯食えるし良いかな、ってなっちゃう。
(小洒落た感じの皿の上の料理たちが、次々目前の男の口の中に消えていく。)
(あまり人の食べるところを見つめてしまうのも心苦しかったのか、視線を軽く逸らして。)
子供の頃、初めて新宿とかに行ったとき、お祭りみたいだと思いましたけど。
この島って、それ以上に、なんだろ。別世界ですよね。
生活の匂いがするのに、ひょっこり変なものが顔出すっていうのか……上手く言えないですけど。
慣れるけど飽きないって、それいいですね。一々びっくりしなくなれれば、楽しいだろなぁ……。
(腕を組んで頷く少年。いつになったら慣れられるんだろ、とぽつり呟いた。)
(問いかけには、不意を疲れたように瞬き繰り返してから、笑う。)
え?あぁ、いえ。そんな志とかなくて。ただ、外に比べても、異能とか普通の島でしょ?
ここで普通に過ごせるようになったら、どこでも生きていけるかな、って。
きっかけはそんなやつです。……でも、来てよかったな、とは思ってます。
ヨキ > 遊馬が見せた自らの異能に、おお、と感心した顔。
自分の表情を再現されると、どこか気恥ずかしそうに口を噤む。
確かに声を掛けづらい顔をしていたらしい。
「なるほど、物真似……。見聞きしたものを、完璧に再現してみせるのか。
なかなか応用のし甲斐がありそうだな。
この島へは、外での身分や居場所を失くして流れ込んでくる者も少なくない。
自分が誰か判らなくなる、という苦しみが、下手をすれば増してしまう訳だからな。
風紀委員が言うから良いのさ。それを承知してなお、風紀委員を名乗れるくらい骨のある者が好い」
遊馬の軽口に、にやりと笑みを作って返す。
遊馬も遊馬だが、ヨキの方も大概だ。
「仕事の帰りに、学生通りで買い食いをするのが最高に美味くてな……。
君も今のうちに、どんどん食べておいた方がいいぞ。
大人になると、ついた肉が落ちなくなってゆくと言うからな」
太らない体質であった頃、散々愚痴られたであろうことが察せられる。
ヨキ先生はいいですね、などと言われたのだろう。
「妙な人やものを集めて、煮凝りにしたようなものだからな。
君の言うとおり、ここで平気な顔をしていられれば、きっとどこでも図太く生き抜けるさ」
肉を咀嚼して飲み込む。塩胡椒ベースの、さっぱりとした味付け。んまい。
遊馬のささやかな表情の変化に、何だ、と穏やかに笑う。
「“ごっこ遊び”を演じるのは、子どもの遊びの常套だが……君の異能は、それどころではなかったか?」
軽やかに晒された異能。その巧緻さに、含みを思う。
斉藤遊馬 > あ、すみません。本人の前でやるとやっぱり嫌ですよね。
応用って言っても、カラオケとかで役立つくらいですよ。
(頭を軽く下げてから、申し訳なさそうに後頭部を掻いて。)
勘弁して下さいよ。一部の先輩たちに聞かれたら、根性が足らん、とかいって走り込みとかさせられそうです。
(居ないだろうな、と周囲を見回して、見当たらなかったようで安堵の表情。)
(委員会が委員会だけあって、上下関係のしがらみも、それなりにある様子。)
あー…学生通りは完全に、その需要で成り立ってますもんね。
しかも大体競い合うから、普通に美味いし、ある程度安いし……。
懐が許す範囲で食べてますけど、肉がつくより金が尽きるほうが早いから安心…安心かこれ…?
(悩ましいところであった。腕を組んで複雑そうな顔。)
(ご相伴にほいほいと乗ってきたあたり、そこらの学生と同じで、懐にそう余裕があるわけでもないらしい。)
そこに自分たちも入ってるんですから、あんまりその通りです、って言って良いものか難しいですけどね。
卒業までには平気な顔できると良いんですけど。
(どうかなー、難しいかなー、と。首を左右に振りながら考える様、まだまだ慣れるには遠い様子であった。)
(己の力に対する相手の推測には、笑いながら首を振る。)
いや、別にそんなことは無いですよ。
誰かの害にもならないし、テレビでやってるダンスとか真似すると、皆喜ぶし。
新曲出たら覚えてくれよ、とかそういうのはめんどくさかったけど。
俺にとっては、この異能が在ってよかったな、って。そう思ってます。
(その表情歪み無ければ、含むところのない様子、本当にそう思っているようで。)
(一拍置いて、視線を目前のグラスに落とした。外側についた水滴を眺めながら。)
でも、風紀委員やってたら、そういう人間ばっかりじゃないのは、わかります。
多分俺は運が良かったんだ。だから、うん。来てよかったのは、純粋に。
この島楽しいなって。今のところ、そう思えてるからです。
ヨキ > 遊馬の謝罪には、気を害した風はない。
物真似をされる、ということが新鮮だったらしい。
「走り込みか。さすがに風紀は厳しいな。
ヨキと付き合っておったら、否応なしに口も腹も緩んでしまうやも知れんぞ」
校則に厳しい反面、学生との付き合いは緩やからしい。
親しげににんまりとする。
現状について語る相手の顔には、安心したように微笑む。
「よかった。君が異能を持ったことで、必要以上の負担を強いられていなければそれでいいんだ。
いろいろな異能があるということは、それだけ無数の使い方があるからな。
あって良かった、と思えるならば、それに越したことはない」
ほっとして、昼食を食べ進める。
デザートを店員に頼むと、間もなくして三種類と、二人分の取り皿が運ばれてくる。
「風紀委員への風当たりと同じで、自分と相手の出自を比べて強く当たる者も少なくはないからな。
運が良かった、ということを悪く思う必要はないし、また君が責められてよい理由にはならん。
ここでヨキと一緒にデザートが食べられるのも、君の運の良さだ。
君の楽しさと真面目さが続く限り、ヨキは君を応援しよう」
朗らかに笑いながら、てきぱきと半分ずつ取り分けてゆく。
栗にカボチャにさつまいも。柔らかな生地に、しっとりとしたクリームの甘い香り。
斉藤遊馬 > 仕事ちゃんとしてればいいじゃん、って先輩も居るんですけど、しっかりきっかりな先輩もいるんで……。
正しいよなー、と思うんで、別に嫌いじゃないんですけど……先輩の前行くときは口にチャックしときます。
この異能なら、反省した表情も楽々で作 教師の前で言うことじゃないですね。口ゆるっゆるだな俺。
(右の手で、口を叩くように隠して。もごもごと。)
持ってるだけで害になる異能とかだと、本人の性格とか関係なく、本人にも、周囲にも負担になりますしね。
先生なら……先生のほうが長くいる分詳しいとは思いますけど、
そういう人でも、俺たちの立場としては連れてかないといけないこと、ありますし。
(はぁ、と溜息吐いて。本人としては中々に複雑な心模様が垣間見える。)
(しかしそれも、デザートが姿を見せれば表情を変えて。)
(思春期男子である。甘いものが嫌いなはずもなかった。)
ありがとうございます、先生。
色々めんどくさいことも多いんですけど、美味いもの食えたら大体解決します。
(非常に現金な発言しながら、相手の手元、切り分けられるデザートを見ている。)
……やっぱり先生、担当が担当だけあって、器用ですね。
俺が普通にやると、ケーキとかぐちゃぐちゃになるんだけど……。
(相手の手元をじぃ、と観察するように眺めているのはきっと、”次”に使うためだろう。)
(しかし、ふわり香った甘く香ばしい匂いに、その表情も緩んで。)
あ、やばい。お腹鳴りそう。
ヨキ > 「風紀委員にも、模範になるような者から幽霊までさまざまだ。
君が『反省した顔の作り方を教えてくれる』いい先輩、ということにならないよう信じているよ。
葛藤を知れば知るだけ、君はきっといい風紀委員になれる。
そうすれば“履歴書にいい内容が書ける”以上に、君を大人の男にしてくれるはずさ」
だから頑張りたまえ、と。
いかにもお腹を空かせた思春期男子の面構えに、取り分けたケーキをさらに一口分ずつ多めにサービス。
「甘ったるいのは今回だけだからな。
次からは、自分で食べた分はしっかりと自分で払ってもらおう」
空になったプレートは下げられて、あとはデザートが輝くばかり。
自分の手元を見る遊馬の視線に気付くと、ちょっとだけ色気を含めてみせる。
どこからどう見ても、「女と食事をするとき用」だ。
「ふふ。参考にしなさい」
しれっと一言を添える。
そうして支度が整ったら、あとは満喫するだけだ。
「それでは改めて――いただきます」
フォークを手に、大変幸せそうな顔。
甘味にでれでれと頬を落としそうなほど緩める表情は、きっと初めに地獄のような顔をしていたヨキからは想像もつかなかったろう。
女子からの差し入れも、こんな顔をして食べ切っているに違いなかった。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からヨキさんが去りました。<補足:【リミット1時】27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた白コート、細身の白ボトム、黒ショートブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
斉藤遊馬 > 途中で折れた先輩の話も聞きますし、同級生でも途中でやめたやつもいます。
(視線が不意に遠くなる。脳裏、思い出している光景を見ているのだろうか。)
……俺もいつまで続けられるかわからないですけど、できることなら体が動く限りは、続けて、
先生の言う大人ってやつに、なれると良いんですけど。
(瞳の中に、少し滲む不安の色。目を閉じて開いたときには、消えていた。)
了解です。今回は、ご相伴に預かります。
(少しばかりこちらの皿の分量が多いことに、一瞬申し訳無さそうな顔をしたものの。)
(その表情の端に笑みが滲んでいるあたり、嬉しいという感情が溢れている。)
ん。
(ケーキが器用に切り分けられるのを見る中、途中で相手の手つきが変わったことに気づいた。)
(しかし二つの動作が”どう”使い分けられるべきものなのか、少年にはまだわからない。)
(問いかけるのも違う気がして、ただ、記憶する。)
(その異なる二種類、再演した時に指摘されて初めて気づくのだろうか。)
(そして互いの前に並んだケーキ。もう、限界であった。)
いただきます!
(ぱしん、と両の手を合わせて。意気揚々とフォークでケーキを崩し始めた。)
(その後に少年の浮かべた表情については、特に異能で真似をするでもなく目前の教師に似ていたであろうことは、想像に難くない。)
ご案内:「カフェテラス「橘」」から斉藤遊馬さんが去りました。<補足:風紀委員制服、茶革靴>