2016/07/05 - 21:10~00:18 のログ
ご案内:「訓練施設」にステーシーさんが現れました。<補足:猫耳の剣客。木刀を持っている。>
ステーシー > 木刀を持って訓練施設に現れる。
ステーシーは近頃色々あった迷いを振り切るために、体を動かすようにしていた。
走りこみ、生活委員会の仕事(主にきつい除草作業)をし、怪異対策室三課の業務に取り組んだ。

幾分かクリアになった視界と思考。
それを恩師に見てもらうためにここにいる。

ご案内:「訓練施設」にリビドーさんが現れました。<補足:若い風貌の男性教師。シャツとスラックスのクールビズ仕様。緩めの着こなし。>
リビドー >  
「――さて。」

 打診を受ければ二つ返事で応じた。
 元より拵える意味でも手を合わせておきたかったものだ。
 ――彼女の精神を疑っている訳ではないが、念のため。念の為だ。

 再び鈍ってしまうのも宜しくない。
 故に、刃が毀れぬように、立ち会おう。
 
「悪いね。お待たせしてしまったかな。」
  
 扉を開けて近付く。
 教師にしては大分ラフに声を掛けた。
 

ステーシー > 「いいえ、時間ちょうどです、先生」

教師が来れば、頭を下げて出迎えて。

「今日はよろしくお願いします」

木刀の先と尻尾と猫耳が揺れた。
顔を上げれば、英気にして十分。

「私、頭が良くないから。考えすぎると同じところをループしてしまう」
「だから体を動かすことにしました。今日はお付き合いください、リビドー先生」

そこまで言って一瞬の硬直。

「あの……考えていなかったわけではないのだけれど」
「レギュレーションはどういうことにしましょうか…?」

リビドー >  
「ああ。こちらこそ。」

 頭こそは下げないが、快い声で応じ。
 瞳を確かめる。意志は十二分か。

「安心すると良い。頭が良くたってそうなることもある。
 ――ああ、存分に付き合おう。」

 少々の間の後、
 レギュレーションを問われれば。

「ふむ。
 加減をする必要はない が そうだな。真剣の類は止めておこう。
 木刀・石剣・刃を潰した獲物――その辺りを用いて、降参ないし10秒以上のダウンで決着だ。
 ただし、獲物を禁ずるだけで、斬る事は禁じない。」

「とは言え、ここの仕様規則上、
 当然ながら相手を殺傷することや重大な怪我を負わせるようなことは認められていない。」

「まどろっこしい言い方になってしまったが、言いたい事はどうだ。

 事故を防止する為にも普通の模擬戦に近いルールを設ける。
 『どうしても斬りたい』と思ったら 鈍らや木刀 で斬るぐらいの事はしろ。

 但し、斬るものは択べよ。鈍らや木刀を握っている以上、無理を通さなきゃモノは斬れん。
 斬ったのならば、それはお前の意志に因るものだ。事故にはならない。」

ステーシー > 相手の言葉を理解して、神妙な顔つきになる。
もう授業は始まっているのだ。
相手の言葉を、一挙手一投足を見逃してはならない。

「……わかりました」

まるで自分の悩みを見透かされているようで、少し怖かったけれど。
この人に自分の力を見てもらいたいという気持ちが勝った。

「では、いざ尋常に………勝負」

木刀の切っ先を正眼に向ける。
五行にして水、基本にして正道の構え。
そのままリビドーの左手側に回り込むようにすり足を始めた。

リビドー > 「ま、気負う必要はない。
 いや、気負わせる暇を与えてしまってはダメか。」

 フィンガースナップを一つ。
 それに応じれば、土塊の剣がリビドーの手元に手繰り寄せられる。

「本懐は拳や魔術だが、使えない訳でもなくてね。
 とは言え加減のつもりも、本懐を縛るつもりないが――打ち合ってみるとしよう。」


「覚悟は良いかな?」


 土塊で出来た肉厚・幅広剣。
 全長1.5m、刃渡り1m程のそれを両手で握って構えて、踏み込み
 
 ――大きく踏み込み、真上段から振り下ろす!
 
 
 

ステーシー > 「覚悟はできていますッ!」

咆哮。相手の幅広にして重量もありそうなそれと斬りあえばパワー負けは必定。
ならば。

「バントライン一刀流……黒法師ッ!」

相手の切っ先に木刀を合流させるようにそっと添える。
力の方向を変えて逸らしながら、自分はその場で一回転。

「だぁ!」

木刀による横薙ぎ一閃。
今まで派手な技ばかり使ってきた。
だが、今なら。師匠があれほど心血注いで教えてくれた『剣技』のありがたみがわかる。

リビドー > 「っ、!」

 添えられれば流される。
 真向から受けられれば押し勝てるものでも、
 斜めに添えられ力の向きを流されればどうにも逸らされる。

 振り下ろし切った所に迫る横薙ぎ。
 手と獲物は降ろし切っていて使えない。
 ならば、と、

「そら、よッ――!」

 本懐を以って応じる。
 回る身体から最短で仕掛けるとすれば横軸の攻撃と読み込み、
 横薙ぐ一閃が体に迫る前に蹴って弾くことで応戦する。 
 

ステーシー > 咄嗟の判断が光る相手の蹴り、これは当てにいっても弾かれて不利。
無理やり当てにいっても自分が蹴りを受ける可能性があった。
これが真剣勝負でないことを知った上での迎撃、まずは相手が一枚上か。

切っ先を引いて後方に跳ぶ。
攻撃の途中で変幻自在に姿勢を変えられるのも猫が持つボディバランス。

次はこっちからいく。
脇構えに構えを変更する。
これは切っ先を体の後ろに隠れさせることで軌道を読みづらくすることもできる、玄人好みの構え。
五行にして金、幻惑の切っ先。

「バントライン一刀流…雪童!」

切っ先はステーシーの後ろから迫る。
最短距離ではない、しかし。
相手の左肩、右肩、胸元を狙う三段突き。

リビドー >  木刀の腹を叩けば足を引き、構えを直す。
 真剣でも木刀でもそれくらいの事はしてみせる。
 木刀であったからこそ、選択し易かった事も事実ではあるが。

「ふむ。」

 切っ先を後ろに隠す。
 読ませぬ為の技巧はいくらかあるが、見せない事を択んだ。
 つまり、読み合いの利を取りに来た。

「――ふむ。」

 打ち合った数は蹴りを含めて二合。
 完全な初見でない故に読めるものは多いが、読み切るには些か足りない。
 だから、

 左足を右足の後ろへ動かし、全身をそれに追従させる。
 所謂 半身の構え。左肩を狙う初撃を空振らせる。

(とは言え――)

 最短でないのは初撃だけだ。
 矢継ぎ早に二撃を繰り出されればかわしきれぬ。
 それでも上身を捻りながら二撃目を掠める程度に留め――

「く、ッ!」

 三撃の刃には右腕を縮め肘鉄を併せる。
 真剣だろうが木刀だろうが胸元への直撃は痛手となる。
 出来得る限り真正面に中らず木刀の腹に中るよう、角度を付けて放つ。

 その分動きは遅れるし、リーチの問題もある。
 丁度胸元を推した木刀を、押し切る前に跳ね上げさせる形になるだろう。

ステーシー > 「なッ!?」

切っ先が跳ね上げられる。
三連突きを読みきられただけでなく、ダメージ覚悟で最後の攻撃を崩しに利用した。

ピンチだ。でもプラーナを使ったブーストも卑技の数々も使う気になれない。
この打ち合いに、山岳の頂上の空気を肺腑に吸い込むような清涼な居心地の良さを感じている。

木刀を跳ね上げさせられ、姿勢を崩したまま獰猛に笑った。

リビドー > 「かっ――は、っ!」

 教師であり、哲学者の肩書は持っている。
 誇張して云うのならば、幾多の旅路を経て此処に居る。
 
 "読む"――分からないものを分からないなりに対処することに於いては少なからずの造詣と矜持がある。
 とは言え、分からない故にリスクは減らすしリターンも減る。加えて言うなら初撃以降は反応と速度の勝負だ。
 それで身軽さに優れる彼女にここまで応じられたのなら重畳だ。

「――そらッ!」

 剣を"投げる"。
 逸らさせなどしないと、両手から手放してぶん投げる。
 至近故に速度は乗り切らずとも、重くてでかいだけ手段足りえる。
 

ステーシー > 次の攻撃は?
先ほどの蹴りに準じる白打?
剣を使った斬打?
それとも投げか、あるいは。

思考を上回る相手のアンサー。

リビドーは剣を、投げた。

「――――――っ!!」

まともに受け止めればそれでおしまい。
押しつぶされるように倒れて大ダウン。
鼻の奥がチリチリする。
思考速度が、際限なく鋭くなっていった。

その時、自分も木刀を一旦手放した。
相手の虚を突く意図はない。
それが自然だと感じた。
事実、脱力は屈む猶予をくれた。

相手に向けて加速していく。
自分がこれほど速く動けるとは思わなかった。
いや、これは、まるで。

自分の剣の師匠、リルカ・バントラインがやっていたのと同じ。
加速行動(アクセラレイター)だ。

投げられた剣を掻い潜って、リビドーの直前に移動する。

「わわっ」

ダメだ、攻撃手段がない。そのままの速度で拳を前に突き出した。

リビドー >  
 刀を捨てて最短――あるいはそれ以上の高速接近。
 それがどういうものであるかは置いておくとしても、
 眼前の少女は意より速きものとしての神速を以って肉薄してみせた。ただ、

 (惜しい、な。)

 とても惜しい。
 恐らく経験に基づいた無意識・反射的アクションだったのだろう。
 動いた後に動揺が見えた。

 然らば十二分に間に合う。
 気合を入れて拳を受け止め、足を引いて踏み込む。
 とても好いが惜しい。だから甘やかすのは宜しくない。腕を水平に広げ――ラリアットを仕掛けた。
 

ステーシー > ラリアットを喉に受けてよろめく。
それは剛斧のように強烈に、それでいてフルーレの一撃のように正確に喉を強打していた。
酸素が喉を通らず、呻いて踏鞴を踏んだ。

リビドー >  
  
「惜しい、なッ!」

 次いで踏み込み、脇腹へと両手を伸ばす。
 ――甘んじて受けてしまえば、そのまま豪快に放り投げられるか。
  

ステーシー > 伸ばされたリビドーの両腕。
このまま終わってしまえば、どんなに楽だろう。
しかし、それじゃダメだ。
ダメなんだ。

掴みかかるリビドーの左手を切って右手を掴む。
小さな体全体を使って、相手の右腕を極める。

バントライン流格闘術が一つ、腕絡み・白鷺。
いわゆる飛びつき腕ひしぎ逆十字固め。
失敗すれば完全に死に体だ、投げられるも関節技をかけられるも覚悟するしかない。

リビドー >  
「ぐ、腕ひしぎ逆十字固めの類だな、これは――ッ」

「がっ!」

 掴みかかる事は出来るだろう。
 ――掴んだ腕をそのまま体を揺らし、地へと身体を落として極める直前に"仕掛ける"。
 自分からなだれ込むように、非常に強く大地を蹴って滑り、暴れる。

 極端に勢いを付けて自分ごとステーシー押し倒し、受け身をしくじらせてダメージと隙を作る狙いなのだろう。
 例えそれで腕が曲がってはいけない方向に曲がろうが覚悟の上。
 そう言わんばかりの気迫と勢いを叩き込み、仕掛ける。
 

ステーシー > リビドーが暴れた。
ステーシーが床で後頭部を打つ。

「い……っ!!」

目に火花が散る。相手は本気だ
そして自分には、これ以上極めることはできない。

尊敬する教師の腕を折ることなんて、できない。

ぱっと腕絡みを外して横に転がり、涙目で相手に右掌を突き出す。
参った、のポーズ。

「降参です、先生……普通、関節をキメられて暴れますか…」

その場に座り込んで、はぁーと深く息を吐く。
命のやりとりじゃなくったっていい。
自分は正しさの中で呼吸ができるし、完全に満たされる。
それがわかっただけでも、嬉しかった。

「ありがとうございました、先生」

立ち上がることはできないけれど、感謝の気持ちをストレートに伝えた。

リビドー > 「つぅ、たた……」
 
 外れてから調子を確かめる。
 ……大分痛めた。

「ボクの為か、好ましい生徒の為ならこれくらいはやる。
 ――人を斬るのも自分を斬るのも大差はないだろう?」

 当たり前のように言ってのけつつ、
 肩を抑えたまま立ち上がった。

「もしもの話だ。
 相手が殺す気でやってきた。キミの背後には守るべき人が居る。

 ……その時に無茶をしたくないから正しいまま死のう。キミはそれでいいのかな。
 意地悪な話を加えると、キミがボクをみたように、
 守るべきものもそれを普通じゃないと思うだろう。」
 

ステーシー > 「………私は、自分を殺してでも戦うのが正義だと思っていました」
「でも、それは人を殺すのと大差がない……」
「私を大切に想ってくれたたくさんの人の気持ちを裏切ることです」

観念したように立ち上がり、コブができた後頭部を手で押さえる。

「正しいというのは、難しいですね…先生」
「腕、大丈夫ですか? ごめんなさい、痛めたでしょう」

しょんぼりとした表情で相手の顔を見る。
尻尾の動きも弱々しい。

「……回復魔法とか使えたらよかったのだけれど」

リビドー >  
「その通りだよ。とは言え、難しくないよりは好いとは思わないかい。
 ……だって君は、簡単に人を殺す暴力は嫌いだろう。」

 柔らかく、優しく。
 ステーシーの繊細さを肯定するように、口元を緩めて笑んでみせる。
 ――その上で、改めて表情を引き締める。

「――最後はキミが決める。其処に覚悟があれば良い。
 少なくともボクはそう思うし、殺意も捨て身も時には強力な味方だ。
 安易にそれらを敵にしてはいけないよ。自分が使うにしても、誰かが使うものを見ても、な。」


「ん、ああ。どうにかするよ。
 幸い、手段やツテは持っている。どうにかなるし、どうにかするさ。
 言う程大きなけがではないし、そもそもボクの選択故だ。甘んじて受けるさ。」

ステーシー > 「……そうですね」

そうだ、自分には力がある。
その力の使い方と責任を見誤らないことだ。
きっと自分には、それができる。そう信じる。

頬を掻いて、笑みを浮かべた。
その時、私は悟ったんだと思う。
自分が成すべきことを。

「殺意も捨て身も、殺さない覚悟も自衛の意志も」
「全部…自分なんですね」
「安易に敵にしないという言葉、覚えておきます」

リビドーのその言葉を聞いて、安堵して胸を撫で下ろす。

「そうですか、それじゃ私もこの頭のコブを受け入れます」
「さて、今日は本当にありがとうございました」
「リビドー先生、色々と教えていただいたこと、忘れません」
「って…お別れみたいですねこれじゃ……それじゃ、また会いましょう!」

笑顔で小さく手を振ると、木刀を拾って去っていった。

ご案内:「訓練施設」からステーシーさんが去りました。<補足:猫耳の剣客。木刀を持っている。>
リビドー >  
「今生の別れにはしないよ。
 ――ああ、また会おう。」

 立ち去るステーシーを見送り、右腕へと目を遣る。

「ボクならいつものことで済まされる気がしないでもないが、
 念の為にここの医務室は使わないでおこう。大きな怪我の内にも入らないつもりだが、
 厳しい医務員に当たれば少しばかり面倒だからな。さて……」

 右腕を眺めて独りごちてから、ゆっくりとその場を立ち去った。
 

ご案内:「訓練施設」からリビドーさんが去りました。<補足:若い風貌の男性教師。シャツとスラックスのクールビズ仕様。緩めの着こなし。>