2017/07/03 - 21:07~02:47 のログ
ご案内:「訓練施設」に宵町 彼岸さんが現れました。<補足:白衣、黒のアーマードスーツ、軍用グローブ、灰迷彩のアーミーブーツ>
宵町 彼岸 >   
雨の降る夜の演習場に雨音とはまた別の水音が響いている。
それは暫く後、栓を捻る音と共に静かに鳴りやみ、
暫くすると演習場のシャワー室が開き、まだ濡れた髪と残った雫に濡れた白衣を薫った少女が姿を見せた。

「あー……これなんかこうぺたーってするぅ……」

何度か自身の腰回りを気にかけるような所作を見せた後
髪を拭きながら気だるげにコンソールへと近づき情報端子を差し込むと、指先で設定を開始する。
髪に含む水分を乱雑にふき取るタオルを近くのベンチに投げ、その上に羽織っていた白衣を脱いで投げる。
本来制服などを着込んでいるところだが彼女はラバーキャットスーツの様な物を身に付けていた。

「ああ、面倒だなぁ……誰かモニター(被験者)になってくれればいーのにぃ…
 でも研究室の皆は運動苦手だしぃ……仕方ないよねぇ……
 自分で計測するの大事だからっていう言い分はわかるけどぉ……
 私も運動苦手なのになぁ……」

彼女が身に付けているのは全身用のフィットスーツだが、
視覚的には最低限の防護のみを考えられたもので
彼女の白い肌がうっすらと透けて見えてしまうほど生地は薄く、
気密性の高いものの為に胸部や腹部に向かっての体の曲線がくっきりと浮き出てしまっている。
観測と記録に邪魔になる為それ以外の物を下に何も着込んでいない為
人によっては全裸以上に煽情的に感じるかもしれない。
同時にスタイルが残念な人物……例えば研究のみに没頭していて
あまり運動向きでない体型をしたような研究者等が身に付けたなら
きっと映像に残る自らの雄姿に涙があふれる事は想像に難くない。

……とは言え現状それを身に着けている本人はまったく気にしていない様子で
コンソールに対象用のデータをアップロードし細かい調整を行っていく。
画面上にインストール完了の文字が浮かぶと同時に演習場の真ん中付近に
影法師の様な人影がゆっくりと身を起こした。
演習場をよく利用する生徒や教師であればそれが
この演習場に設置されたインストール用ダミーエネミーだと判断できるだろう。

「……モニタリング開始
 デバイス起動。クラスⅠまでアクセス解除。
 想定対象……クラス”アーミー”
 対象は軽機関銃、標準小型拳銃、電磁ロッド、コンバットナイフを所持。
 CQB、CQCトレーニングクラスインストール」
 
中央に立ち尽くす人影を横目に小さく呟きながら
演習場のゲートをくぐり、シェルターを閉めると
スターティングエリアに入り、とんとんとつま先で地面を蹴る。
あと数秒もすれば”彼”は動き始めるだろう。

「サンプリングの為デバイス実行までに時差を設定。
 使用者の戦闘可能領域は”ノーマル(一般人)”
 被弾判定、行動障害の発生詳細データの出力は開始直後から開始」

そう呟くとカウントを始め……

「戦闘開始」

その言葉と共に轟音と閃光が演習場を駆け抜けた。
 

宵町 彼岸 >   
「……!?」

小さな体が後ろに吹き飛ぶ。
エネミーの拳銃から放たれた弾丸は狙い違わずその射線上の”物体”に突き刺さり
それを受けて崩れた体勢にエネミーは容赦なく追撃の弾丸を叩きこむ。
しっかりと訓練を受けた兵隊であれば当たり前の、的にたいする容赦ない射撃は
その体を吹き飛ばすには十分な威力を持っていた。
その刹那アラートが鳴り響き十分なダメージを受けたことを示す表示が空に浮かび上がる。
それと同時に煙の立ち上る拳銃を向けたダミーはぴたりと動きを止めた。
実際の戦闘であればなすすべもなく撃ち殺されていた。
その表示はその事実を無機質に周囲に知らしめている。

「……いつつ」

当の吹き飛ばされた本人は倒れた姿勢のまま身を丸めていた。
今は観測用、”データ提出用”の普通の調整体を使っている以上
普通よりも貧弱な身体能力程度しかない。そんな体で軍人相手に……

「まぁ対処なんか無理だよねぇ」

少し咳き込みながらゆっくりと立ち上がる。
的確に急所を狙った射撃は体の各所に突き刺さり、呼吸もしばらくままならない。
訓練用とは言え、致死に至らないだけで使用を想定されている物は軍用品のデータが利用されている。
当然撃たれればとても痛いどころの騒ぎではなく、一定値のダメージが出れば死亡判定が出る。

宵町 彼岸 >   
「えーっと何々?
 肩鎖関節部に一撃からの鳩尾、心臓にとどめに側頭部に一撃かぁ……
 うっわぁえげつなぁぃ。これ綺麗に致命傷だねぇ
 正にハートブレイクぅ。あー……頭くらくらするぅ」

模擬弾に弾かれた頭部を抑えるように立ち上がりながらモニタを一瞥する。
最初の一撃で腕を砕かれた時点で実弾なら勝敗は決している。
というより最初の一撃でも十分人は死ぬだろう。
現状圧倒的な戦力の差がその少女とダミーエネミーとの間にはある。

「……サンプル用にもう一戦はとっておくべきかなぁ
 でも痛いの嫌だしなぁ……うーん」

立ち上がろうとしてそれもできず、ペタンと座り込みながら
腕に付いているデバイスの様なものを軽くタッチする。
其処にはこの戦闘を始めた理由である”研究成果”が装着されていた。

「ああ、面倒な玩具作っちゃったなぁ……
 我ながらなんでこんなの作ったんだろぉ」

それを眺めて一つため息をつく。
その研究成果(玩具)の性能実証の為にこんな面倒な事をしているのだけれど
これでは比較データが取れているとは言えない。
このデバイスを利用しない条件下でのデータが無ければ
それの有用性を証明できないからだ。
とは言え、自分一人で痛いなんて何も楽しくもない。
地面にこけて怪我をしているようなもので、
その怪我をわざわざ悪化させるような趣味の持ち主が居たなら

「……そーとーのへんたいだよねぇ?」

ぶっちゃけ自分を棚に上げて変な人扱いをする自信がある。

ご案内:「訓練施設」に柊 真白さんが現れました。<補足:フリル山盛りの白ワンピース、白ニーソ、赤いロリータシューズ、長刀。>
柊 真白 >  
(日課の鍛錬のために訓練施設を訪れた。
 空いている部屋は無いかと、廊下に並ぶ扉の窓から部屋を覗いて周っていたところ、部屋の中央に座り込んでいる人物を発見。
 体調でも悪いのか、もしくは怪我でもしたのだろうか。
 扉を開けて室内へ。)

どうしたの。

(声を掛けてつかつかと無遠慮に近寄る。
 身に付けているのはボディスーツのような、しかしかなり生地が薄い。
 何かの実験かテストだろうか。)

宵町 彼岸 >   
「……めんどーだしいいやぁ
 サンプルは他でとるっていぅ事で売り込んじゃおーっと。
 私がくせ―だしぃ」

あっさりと学生特権無責任を発動させて
ホログラムの画面を指先で叩く。

「”加速(アクセル)”起動
 スロット1を使用、セル固定。
 優先度は最優先。
 追加スロットはモード変更なし……っと」

呟きながら設定を終えると同時にシェルターが開く。
そこに姿を見せた相手の此方を伺う声に
まだ少しぼんやりする頭を押さえながらそちらへと顔を向けた。

「……んー。キミはボクが知ってるぅ人だっけ?
 まいっかぁ。んと、なんというか、ダミー体が強くって
 実験したくなーぃ誰か代わりにやってーってなってるところぉ
 銃で撃たれるのってぇ、いったいよねぇ」

一瞬きょとんとした後
ふんわりとした笑顔と間延びした返答をそちらに向けて声に応える。
なんと言うべきか、少し共通感というかシンパシーの様なものを感じる見た目の相手で
けれど今の自分と比べると体運びが実践向きだと思う。
この施設は武闘派の学生が訓練で利用する事も多いのでその内の一人かもしれない。

 

柊 真白 >  
知らない。
初めて会う。

(こんな格好をしている人物と会った覚えは無い。
 まぁいつもそんな格好だとは限らないわけだが。
 どちらにしても彼女の顔に見覚えは無い。
 これでも記憶力には自信があるのだ。)

ダミー体。
――私でよければ。

(代わりの人を探している、と言った。
 ならば自分がその代わりになろうと提案。
 勿論、)

報酬が貰えるなら。

(対価はいただくけれど。)

宵町 彼岸 >   
「そっかぁ、じゃぁはじめましてー、だねぇ?
 よろしくねー?まぁ私何時だってはじめましてだけどぉ」

ペタンと地面に座り込んだままけらけらとそちらに笑顔を向ける。
顔の判別がつかないのだから知っていてもどうせわからない。
けれど彼女の白い髪はなんだか少し好きな色かもしれない。
そんな事を考えながら眺めていると投げかけられた言葉に少し目を丸くする。

「えーっとそれは、どゆこと?
 実施試験の被験者的な意味でぇ?
 それともダミー体の代わりにデータとるのに協力するってことぉ?
 私うんど―苦手だからぁどっちにしろ助かるけどぉ」

少しだけきょとんとした後にこりと笑って見上げる。
データを取るという点ではいろんなパターンがあるに越した事は無いので
正直どちらにしても彼女にとっては悪い話ではない。

「ほ―しゅ―……えと、内容によるかなぁ?
 とりあえず欲しーものてーじしてくれてもいーし、
 私が勝手に決めても良いならそーするけどぉ?」

故に拍子抜けするほど簡単に首を縦に振った

柊 真白 >  
(いつだって初めましての言葉に若干首を傾げるも、特に気にしない。
 それより今は仕事の話だ。)

実験に協力しても言いし、ダミーの代わりしてもいい。
報酬さえ貰えれば、貴方の足りない手の代わりになる。
――命の危険を伴う、もしくはそれに類する事はやらないけど。

(流石に人が死ぬ時のデータが欲しいから死んで、何て依頼はどんな金額を積まれてもやらない。
 が、そうじゃなければ大体なんでもやるつもりだ。
 彼女の顔を見下ろしながら、淡々と続ける。)

報酬の額は内容に釣り合うなら何でもいい。
お金が一番手っ取り早いとは思うけれど、物とか行為とかでも構わない。

宵町 彼岸 >   
淡々とした口調からはこういった交渉に慣れている印象を受ける。
というよりも、其処か嗅ぎなれた香りがするような気配すらあるものの……
今の彼女にとってはそれは正直知った事ではない。
今のところ面倒を代わりにやってくれる人が居るのは渡りに船なのだから。

「そーぉ?じゃぁお願いしちゃおっかなぁ
 実験報酬は……うん、成果給ってことで?
 足りないなーと思ったらその都度交渉って事でおねがぁぃ。
 じゃ、けーやくかんりょーなら、よろしくねー?えーっと」

名前はわからないので適当に濁しながら片手を差し出す。
先ほど撃ち抜かれた衝撃でまだ指先がふらついているものの
先ほどよりは元気に見えるかもしれない。
仮にその手を取ったなら二コリとほほ笑んだ後少し強く手を引くだろう。

柊 真白 >  
真白。
柊真白。

(名乗りながら差し出された手を握る。
 瞬間、軽く引き寄せられるように手を引かれる。
 倒れないよう、引かれる動きに合わせて一歩距離を詰めた。)

――何?
なんでもないなら、何をすれば良いか教えて。

(悪戯のようなことをされ、ほんの僅かに目を細める。
 今度はこちらから手を引いて、立つように無言で促した。)

宵町 彼岸 >   
「ああ、先に言っとくねぇ。
 ちょっと調整するから動かないでくれると嬉しいなぁ」

二コリとほほ笑むとそのまま相手の指先を口に含もうとする。
今はまだ試験中のデバイスという点と、
調整データはまだ学校側に開示したくないという理由で
副作用を抑える方向にデバイス出力を調整する必要がある。
とは言え其れを説明するのは面倒なので、説明するよりやっちゃった方が実際早い。

と言う訳で相手の指先を咥えようとしつつ、成否に関わらず
片手の小さな機械をするりと外すと相手の手頸へと装着し、コンソール画面を叩く。
設定はニュートラル状態に戻し……

「声紋はもうサンプル貰ってるしぃ……登録完了っと。
 うーん、追加スキルは……加重で良いかなぁ」

恐らく対飛び道具には慣れているだろうとの判断から一撃を重くするという”異能”を選ぶ。
瞬間的な質量増加と筋肉の出力を高める異能自体はそう珍しくもないが……

「能力実行は”起動(オン)”の一言で発動するように設定してあるからぁ
 好きに使っていいからねぇ。
 あ、でも慣れない所使うから使いすぎると筋肉痛になるから気を付けてねぇ」

そう告げると再び二コリとほほ笑んでその手を放す。
それと同時にダミーエネミーが初期位置へと戻っていき、臨戦態勢を取る。
好きなタイミングで交戦を始められるだろう。

柊 真白 >  
(事前情報無しで指を咥えようとしたのならば抵抗をしただろうが、動くなと言われている。
 微動だにせず成されるがままだ。)

好きに使っていいと言われても。

(何も説明を受けていない。
 加重と言う言葉と「オン」と言う単語から、なんらかのスキルを追加するようなデバイスだろうと言う事はわかるのだが。)

これがどういうものか説明してくれないと、何も出来ない。
説明を求める。

(じ、と彼女の顔を見つめ、説明を要求。)

宵町 彼岸 >   
「あっれぇ?説明してなかったっけ?」

きょとんと首を傾げるところを見ると素で忘れていたらしい。
少しの間首を傾げたまま固まるとそのままかくんと人形のような動きで元の姿勢に戻った。

「感覚派というか使ってみて考えるみたいなタイプかと思ってたけど
 意外と慎重だねぇ?まぁいい事だよね、うん。」

柔らかい笑顔のままうんうんと頷くと
指先を空に向け遊ばせながら説明を始めた。

「要は外付けの異能みたいなものだよぉ。
 加速とか加重追加とか……まぁ軍用品想定だから出力はそこそこだけどぉ
 あの異能便利だなーとか、いざというときに一手が欲しいって経験あるでしょぉ?
 それだけじゃなくってぇ
 仮に異能を持たない複数の兵士に外付けの異能をインストールできたら?
 インストール可能な異能があるとしたら便利だと思わなぁぃ?」

笑顔のままかなり物騒な事をさらっと言い放つ。
くすくすと笑う口から紡がれるのはある意味幻想領域の言葉。
最も彼女にとっては自身の能力の一端を簡素な玩具で劣化再現したに過ぎないのだけれど。

「まぁ各国軍事部が開発してて、喉から手が出るほど欲しいだろうモノの
 負荷の少ないプロトタイプってとこかなぁ?
 その分出力に難があるけどねぇ」

簡単な異能であれ、瞬間的にでも使えるとなれば目の色が変わる国は多いだろう。
勿論、国以外でも。

「一応事前実験では死亡率は格段に下がったよぉ
 というか普通のヒトなら多分使いすぎると筋肉痛やらで動けなくなるかもぉ。
 無理やりに動かしてることは間違いないからねぇ」

その言葉には嘘はない。
実際問題”彼女以外にも”転用可能とふんだからこそ、テストに踏み切ったのだから。

柊 真白 >  
ふーん……。

(彼女の言葉を聞きながら、手首に装着されたデバイスを眺める。
 確かにそうなれば便利だろう。
 自分のような他人の異能を使う異能・能力を持っていても、使うには色々制限があったりする。
 中には制限が軽かったり、そもそも制限などないような者もいるだろうが、それは一般的ではない。
 一瞬とは言え戦場ではそれが生死を分けるのだから、確かに国としては垂涎物だろう。)

大体わかった。

(なんにしても「オン」の一言で発動できるのは楽でいい。
 ダミー人形に向き直り、)

始める。

(直後、銃弾が飛来。
 それを消えたと錯覚する速度で回避。
 不規則に部屋を跳ね回りつつ、回りこむように距離を詰めていく。)

宵町 彼岸 >   
ダミーエネミーは拳銃を数発撃つと即座に単発では意味をなさないと判断したようで
クラスアーミーの名を冠するだけある判断力で
最低限の所作で効率よく相手の動きの先に置くように弾丸をばら撒いていく。
射撃はけん制、動線の誘導に使い堅実に動ける範囲を狭めていこうとするだろう。
そのパーツの無い顔は僅かに遅れているもののその動きにぎりぎりついていっているようで
射線を楯にするよう飛び道具で最も有利なリーチを保ち、相手を近づけないようにするだろう。
その姿を見て彼女は楽しそうに笑った。
いや、実際に見ているのは別の影かもしれない。

「うんうん、解析通り。
 速度系に特化ってとこかなぁ。
 弾丸程度なら単発だと足止めにもならないねぇ」

流れ弾が顔の横を通り過ぎ、片目を隠した長髪の一部を攫っていく。
一瞬だけ露になった左目はぼんやりと発光して見えたかもしれない。
踊るように交戦する二つの影を面白げに眺めながら
その指はすさまじい速度で手元のPDAを叩いていく。
最適化とデータ処理を並列で進めながら決してその視線は二つの影からずらさない。

「まぁあの速度なら掻い潜れると思うけど」

普通に戦えば恐らくダミーの方がじり貧に陥るだろうことは目に見えているが……

「打ち合いになったらどうだろうねぇ」

あのダミーの進化は実際のところ近距離戦での能力に傾けてある。
思った以上の耐久力と出力をもつあのダミーに彼女はどう対処するだろうか。

柊 真白 >  
(なるほど、そこそこ手ごわい設定にされているようだ。
 抑えているとは言え、こちらの速度にギリギリではあるが付いてきている。
 置いてくる射撃に対し、上下左右前後に自信の身体を振り回しながら銃弾を避ける。
 距離を詰めるにつれて、流石に避け切れないものも増えてくるが、そちらは切り払いで対処する。
 こちらの速度と動体視力ならばそれもたやすい。)

――。

(そうして刀の間合いに入った瞬間、刀を抜く。
 データ取りが目的らしいので、これまでの交戦から感じ取ったダミーの力量上限ギリギリに合わせた速度の抜刀。
 もし反応が少しでも遅れれば、あっさりと首が飛ぶ。)

宵町 彼岸 >   
抜き打ちで放たれる抜刀にダミーがわずかに上体を逸らす。
その見えない視線はわずかにぶれており、普通の身体構造であれば追撃を放つような揺れ方をしていた。
けれど、追撃を狙うのであれば歴戦の猛者であれば多くが持っている予感のようなものを感じるかもしれない。
相手は人形。故に感情も殺意も無い。
つまり……

「気配を察知する前にノータイムで致死の一撃が飛ぶよねぇ」

上体を逸らすと共に通常その体勢では放てないような衝撃波を伴う蹴り上げが
刀を振り切り力が反転する一瞬の硬直を狙って駆け抜ける。
軍人特有の巨躯と足の長さを生かした必殺の一撃。
回避と同時に放たれるカウンターはもしも当たればそれこそ容易に意識を持っていかれるだろう。
明確に異能を理解し、その特性を生かしたうえで、一撃で意識を奪う……
そんな理論の元に繰り出された一撃は音の速度を超え、空気を鳴らした。

柊 真白 >  
(殺意は感じない。
 ただ、予感があった。
 すでに鞘から刀身が放たれていた刀を無理矢理捻じ曲げ、その蹴りを防ぐ軌道へと変える。
 それでもこの小さな身体は浮くだろうし、見た目どおりの力では衝撃を逃がす事が出来ない。)

オン。

(だから、何のためらいも無くそれを使った。
 自分の身体とは思えない重さと、それを充分に動かせるだけの力。
 副作用がどうとか言っていたけれど、それを考えずに全力で迫る脚へと刀を叩き付ける。)

宵町 彼岸 >   
「わーぉ」

音速を超え、白の少女に叩きつけられた足は
轟音と共にまるで冗談のように少女の持つ刀で動きを止めた。
同時にその反作用で軸足を中心に地面に蜘蛛の巣状のひびが入る。
超高質量の物を蹴り上げ、打ち負けた力は地面を破砕するに十分だったようだ。
それは同時にダミーの軸足が埋まる事を意味する。
あの速度を持つ彼女であれば首を取るには十分な時間を稼げるはずだ。

「えくせれーん♪」

それを見て能天気にも聞こえる調子で称賛の声を上げる。
いくら宙を浮く異能があるとしても空中に浮くとなれば動きをかなり制限される事になる。
しかも近接高速戦闘ともなれば……相当の不利は免れない。
打ち上げられれば地面に足が付くまで一方的に打たれても不思議ではないのだから。
だからこそためらいなく迎撃に刃を振るった判断力は素晴らしいものがある。
同時にただ説明を受けただけの物に躊躇いなくその身を任せる胆力にも。

「それを躊躇いなくつかって打ち合うんだもんねぇ」

加えてデバイスは本人の適正に出力を左右される。
負荷の関係上数秒しか起動を行えないものの……
単純な力比べで打ち勝つ程度の出力を確認できた。
仮に使わず迎撃すれば刀ごと蹴り飛ばされてただでは済まなかっただろうけれど
結果として真逆の状況になったのだから、戦闘センスはやはり目を見張るものがある。
純粋な戦闘データとしても価値あるものと言えるだろう。

「うんうん、やっぱり特化型って汎用性持たせるには良いよねぇ」

素晴らしい物には称賛を惜しまない。それが彼女の作法。

柊 真白 >  
(当然そのスキを見逃す自身ではない。
 返す刀でダミーの首をオモチャのように跳ね飛ばした。)

――。
便利と言えば、便利。

(ダミーが動きを止めたことを確認し、刀を鞘へ納める。
 副作用とやらも、一度の瞬間的な使用ならば特に問題も無いらしい。
 身体の調子を確かめるように動かして、感想を口にした。)

弱点を補えると言うのは良い。
これが無かったら浮かされていたし、流石の私でも空は走れない。
ただ音声認識だと口の動きを読まれる可能性がある。
武器にスイッチつけたり、複数の起動方法を用意するといいと思う。

(淡々と感想を述べる。
 勿論その程度は彼女も承知の上かもしれないが、こういうのは感想を言う事が大事だと分かっているから。)

宵町 彼岸 >   
「おつかれさまー。うんうん、思ってた以上に良いデータとれたよぉ
 ふふー。満足満足。色々改善点も見えてきたしぃ。
 でもぉ……んー、やっぱり起動方法は複数あった方が良いよねぇ。
 軍人さんは規格化好きだからそこがネックなんだよぉ……
 まぁトリガーアクション採用すればいいんだけどぉ」

後半は独り言になりながら賛美を表すようにぱちぱちと拍手をしながら歩み寄る。
今回の想定は低級クラスの異能を所持した兵士を想定したデータのため、
この相手にこうも軽く勝てるなら大体の相手に後れを取る事は無いだろう。
最も現状では目前の彼女の身体能力と判断というオプション付きで
初めて真価を発揮する製品になっている。
やはり最後にものを言うのは何処まで行っても経験値だ。
現状のままでは納品しても事故を起こす未来しか見えない。
もっとも起こしても彼女にとってはどうでも良いのだけれど。
とりあえず調整中のパフォーマンス程度に公開しておこうと脳内で少し予定を変更する。

「うんうん、協力ありがとねぇ。すっごい助かったよぉ。
 やっぱり使用感っていうのは貴重なフィードバックだからねぇ」

うんうんと頷きながら投げていた白衣をばさりと音を立てて羽織り
改めて椅子に腰かける。
そうして少しだけ首を傾げて……

「で、ほーしゅーだけど、
 これ使いたい?」

一介の学生(と思しき相手)に軍用品を報酬として提示してみる。
無邪気にトンデモ発言をする辺り
本当にこれの価値が分かってるのかと突っ込まれてもおかしくないかもしれない。

柊 真白 >  
どういたしまして。

(短く答える。
 正直軍の事はあまり詳しくない。
 それでも規格化が便利だと言うのはなんとなくわかる。
 物によって使い方が違うのは不便だし、同じものを揃えれば使いやすいのだから。)

――これ。
特定の異能を無効化もしくは弱体化させることは可能?

(彼女の言葉を聞き、腕に装着されたデバイスの画面をしばらく見つめてから。
 正直貰っても設定とかは良く分からない。
 彼女に協力もしくは対価を支払って、都度設定してもらってもいいのだけれど。
 それ以上に気になることは、それだった。)

宵町 彼岸 >   
「ん―……ランクの低い異能とか物理的に付加するような物なら
 相殺できない事は無いよぉ?
 特定のコレ……って限定してもらえればその分
 精度とか出力も上がるけどねぇ」

椅子に腰かけて足をゆらゆらとさせながら気軽に応える。
よどみなく回答する辺り、その用途に関しても想定しているのだろう。
というより……

「だってそれ劣化品だもぉん。
 ぶっちゃけデバイス形態じゃなくても動かせるしぃ
 いちいち初期化とかめんどくさいでしょぉ?
 汎用性捨てたらもっと特化させられるもん」

ほんわかとした笑顔でさらっとぶっちゃけた。
要は一番の完成品は彼女自身の玩具なのだから
それをわざわざ軍なり国なりに流すつもりは正直ない。

「なーに?消したい異能でもあるのぉ?」

そのまま小さく首を傾げて相手の瞳を見上げるように覗き込んだ。

柊 真白 >  
そう。

(異能のランクについては分からないけれど。
 あれはそんな低級な異能でもないだろう。
 短く答える顔は、きっと落胆の色を隠しきれていない。)

――別に、なんでもない。
それじゃあ、これを報酬として貰う。

(彼女の問いかけに首を振って否定。
 とりあえずこれは便利だ。
 劣化品と言えど、咄嗟に使える事には変わりない。)

これ、異能の種類は変えられる?
なんなら引き続きモニターしてもいい。
必要ないなら代金は払う。

宵町 彼岸 >   
「ふぅん」

言葉少ない返答と裏腹に滲む濃い落胆を宿すその表情を見上げ、
のぞき込むその瞳に一瞬何かを察したような光が走る。
そうして何故か透明な笑みを浮かばせた。

「ん、これ(劣化版)で良いの?
 もう少し便利にできるけどぉ
 あと内容に関してはもちろん変えられるよぉ?
 万能ってわけにはいかないけどぉ」

けれどそれは一瞬の事で、またにこーっと何も考えてないような笑みを浮かべ、
けらけらと楽しそうに笑い声を響かせる。

「長く使うつもりならいくつか注意しとくけど、
 異能の種類によってその内容が変わるんだよねぇ
 だから先に希望があるなら聞いておくよぉ?
 クラスによってはそだね―……
 何かお願いする事もあるかもぉ?」

なまじ金銭にあまり興味がない分割と適当だったりもする。

柊 真白 >  
――。
便利にしてくれるんなら、その方がいい。

(彼女が何故笑顔を見せるのかわからない。
 軽く首を傾げて、とりあえず返事。
 より便利になるのならその方がいい。)

内容が変わる、って言うのはどう言う事。
希望――今はこのままで良い。

(そもそも使えるようになる異能は何があるのかわからない。
 とりあえず今のものは、一瞬とは言え自身の欠点を潰せるのでかなり使い勝手がいい。
 しばらくこのまま使ってみて、何か不足を感じたらその時変えてもらうとしよう。)

何でも言ってくれていい。
出来る限り協力する。

宵町 彼岸 >   
「んーとねぇ」

ツイと座っている椅子の下に手を差し込み、何処からともなくケースの様なものを取り出す。
その中には数枚の結晶状の小さな板の様なものが入っていた。
その中の一枚を取り出すとダミーが握っていたナイフを拾い上げ、握りこむと……

「つまりはねぇ、こういうこと」

無造作に壁に向かって投げつけた。
力の欠片も感じられないような、そんな軽い調子で投げられたそれは
けれど金属が震える重低音を響かせて深々と壁に突き刺さる。
同時に大質量の物が叩きつけられたかのように壁にひびが入り、轟音を響かせた。
その数秒後……ナイフはまるで崩れるかのように形を失い壁には亀裂と深い刺痕だけが残った。

「質量系だとノーセーブで使うとその分の質量の消失を引き起こしたりとか……
 加速系だと体機能破壊しちゃったりとかするんだよぉ。
 でもその負荷を考えないなら……」

(ハイクラス相当も可能なんだよねぇこれぇ)

人差し指を唇に当て、小さな声で悪戯っ子のように囁く。
それは本当に無邪気な、玩具を前にした子供の様な表情。

「だから、その代償を別の何かに付与すればいいんだよぉ。
 もしくはそれを補う機構をつけるとかねぇ?
 でも代償が無くなるわけじゃないから、注意点は常に守る必要がある……
 それをちゃんと理解するなら好きに使っていいよぉ?そんなとこぉ
 その後は勝手にこっちでデータ取らしてもらうからぁ気にしないでもーってとこかなぁ」

柊 真白 >  
――要は、ちゃんと加減して使えってこと?

(流石に腕とナイフの速度に差があり過ぎて目で追えなかった。
 轟音の後にゆっくりと壁を見て、彼女の方へ向き直る。
 代償を別の何かに付与――つまり、押し付ける。
 どこかで聞いたような話だ。)

設定でリミッターみたいなものは付けられるのなら付けて欲しい。
自分で加減しろってことなら何とかするけど。

(流石に外付けの異能で自爆とかは勘弁して欲しい。
 万が一が無いとも限らないし、それならば最初から制限をかけていた方が使いやすい。)

あと、これはどちらかと言えば私からの依頼なんだけど。

(真っ直ぐに彼女の目を見て。)

解析して欲しい異能がある。
まだどうなるか分からないけど、お願いしてもいい?

宵町 彼岸 >   
「そそ。話が早くて助かるよぉ。
 キミの場合は具体的には大体一日に多くても3回ってとこかなぁ。
 意外と負荷に耐性あるみたいだしぃ。
 さっきのデバイスとか普通に使ったら今頃立てない位体力使ってるはずだもん」

使用後にサラッとえげつない話を公開するが、そもそも之の用途はそれで良いのだから。
的確なタイミングで使用し、対処すらさせずに一撃で屠る……それこそがこれの正しい使い方。

「あ、あと連続使用は1時間に2回までね?
 それ以上制限考えずに使った場合は最悪ぅ……」

キミが消えちゃうかも。
そう口の動きだけで告げると小さく人差し指を手に当て秘密ねと無邪気に笑みを浮かべる。

「その代わり片手で大型トラックを止められる程度の出力は保証するよぉ。
 刀に埋め込み式にしてあげるから、さっきの難点もクリアできるしぃ、良いことづくめでしょ?」

要は切り札を適切に切ればいい。ただそれだけの事。
そこから先は使用者の問題で、彼女の問題ではないと割り切っている。
たとえどのような願いでそれが振るわれようとも。
暗にその言葉を含ませながら真っすぐに見つめられた瞳を見上げる。
少しの時間じっとその瞳を見つめ……

「ん、良いよぉ?
 その時が来たと思ったら好きに連れてくればいいと思うの
 面白い異能ならちゃーんとみてあげるぅ」

ふわりとほほ笑み言の葉を綴った。

柊 真白 >  
一日三回、一時間に二回。
分かった。

(充分過ぎる。
 元より自身には一撃必殺しかない。
 無駄な戦闘をする方でもないし、一時間に二回と言う回数制限も問題ない。)

それは、ちょっと困る。
使い勝手は変えたくない。
手首も違和感が出るから――首に巻けない?

(出来れば手首の周囲は開けて起きたい。
 居合いと言うのは結構手の感覚が重要なのだ。
 出力に関しても充分――と言うか若干過剰ではあるけれど。)

――本人は連れてこない。
私がその異能を使って、それを解析してもらう。
誰の異能かは言わないし、詮索しないで欲しい。
許可もらえなかったら、無しになるけど。

宵町 彼岸 > 「まぁ別に本人が良いなら好きに使えばいーと思うけどぉ。
 ”もう少し長生きしたい”ならーくらいかなぁ?」

本人にとって長寿などが望んだものではないという事はもう
”知っている”けれど。

「一応使用感も変えないようにはできるよぉ?
 ”そういう風に作ればいいだけ”だしぃ。
 まぁ希望があるならペンダント型でもマフラー型でもよゆーですよぅ?
 ボク天才だもぉん」

敢えて口には出さないし別に知りたくもないだろう。
似たような能力を保持しているなら猶更、知られたくないだろうから。

「……ふぅん。大事にしてるねぇ。
 まぁ、うん。いいよぉ?
 気が向いている間は付き合ってあげるぅ」

白薔薇の冠に殉ずるというのであればそれもまた一興。
綺麗なものは好き。それを造り守るものも。
面白ければ、それで良い。

柊 真白 >  
まだ死ぬつもりも無い。

(別に望んでいないわけではない。
 望んでいるわけでもないと言うのは、人間と同じだ。)

物理スイッチがあるだけでも変わるから。
首輪みたいなやつがいい。
ちょーかー、だっけ?

(ある、と自覚しているだけでも違和感が出る可能性がある。
 出来れば武器に手は加えたくない。)

わかった。
恩に着る。
――そろそろ帰る。
ちょーかー型デバイス、出来たら送って。
これ住所。

(頭を下げて。
 帰る事を注げて自分の住所をメモに書き、そのページを破って手首から外したデバイスと共に彼女に渡す。
 そうしてくるりときびすを返し、訓練施設を後にした。)

ご案内:「訓練施設」から柊 真白さんが去りました。<補足:フリル山盛りの白ワンピース、白ニーソ、赤いロリータシューズ、長刀。>
宵町 彼岸 >   
「うんわかったー。ここに送ればいーんだねぇ
 届いたらテキトーに使えばいーと思うのぉ
 それじゃぁまったねーぇ」

軽い雰囲気のまま去っていく彼女を見守る。
その後ろ姿を見送ると、おもむろにドアを閉め、
映像記録の保管等の退室処理を進めると
閉じたドアに寄りかかるように背中を預け、呟いた。

「ボクがザミエルじゃない保証はないんだけどね。
 君の最後の弾丸は誰を射抜くか楽しみだよぉ。
 ……まぁ面白いから何でもいいかぁ……それに」

”きっと全て忘れてしまうだろうから。”

そう呟くとゆっくりと瞳を閉じ、
いつの間にか真横に佇んでいた漆黒の人形の腕へと倒れこんでいく。
それはふわりと彼女を抱きとめると優しく抱え上げ、訓練施設から音もなく去っていく。

「君の魔弾の射手を大切にね……せめて亡くしてしまう前に」

そんな小さな誰かのつぶやきは夜の闇に微かに響き、溶けて消えていった。

ご案内:「訓練施設」から宵町 彼岸さんが去りました。<補足:白衣、黒のアーマードスーツ、ソケットの付いた機械、軍用グローブ、灰迷彩のアーミーブーツ>