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ご案内:「クローデットの私宅・リビング」に
ヴィルヘルム
さんが現れました。<補足:血のような紅色の瞳をもつ,アルビノの青年。真新しい常世学園の制服に身を包んでいる。>
ご案内:「クローデットの私宅・リビング」に
クローデット
さんが現れました。<補足:やや暗めの銀髪、整った美貌の女性。あまり締めつけの強くないクラシカルなワンピース姿。今日は他の大人の姿が多い… ※待ち合わせ>
クローデット
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いつもは二人で使うようセッティングされていたリビング。
そこに、キッチンから2つの椅子が持ち込まれ、2つの一人がけソファとその間の小さなテーブルの側に置かれている。
ソファに腰掛けているのは、やや暗めの銀髪の女性と、彼女より少し明るい銀髪をした、彼女の親くらいの年頃の男性。
持ち込まれた椅子は、彼女達二人の相談事に同席し、場合によっては介入を許可された存在のためのもの。
一人は、銀髪の女性ことクローデットと現在生活を共にするハウスキーパーの女性、ジュリエット。
そして、もう一人は…。
ヴィルヘルム
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…初めてこの家に訪れた日と同じくらいに緊張した青年。
汗をかくようなことは無いが,紅色の瞳が居心地悪そうに泳ぐ。
「……………。」
とは言え今は誰かに助けを求めることもできない。
自分以外の3人を順に見た青年の視線は,自然と目の前のテーブルへと落とされる。
クローデット
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ハウスキーパーの女性は、キッチンで飲み物を準備してきたようだった。
男性にコーヒー、クローデットに紅茶を差し出し…
『どうぞ』
そして、落ち着いた声で青年にも紅茶を差し出し…自分はコーヒーの入ったカップを手にするとトレイを背もたれに預け、椅子に浅く腰掛けた。
クローデットは、全員が座ったのを確認してから…
「…どこから、お話しすべきでしょうか」
そう、目の前の男性に向けて、普段より乾き気味の声で切り出した。
ヴィルヘルム
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ありがとう。そう声を出すことさえ憚られる。
静かにお辞儀をしてから,紅茶を自分の手元に引き寄せた。
「…………。」
クローデットがどう話を切り出すのか。
青年に今できることは,見守る事だけだろう。
クローデット
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クローデット達若者の緊張する様子と比べると、ハウスキーパーの女性にも…もちろんクローデットの目の前の男性にも、気負いの強張りは随分薄いように見えた。
『いや、根掘り葉掘り聞こうとは思わないよ。
こういう…将来の話で僕のことを頼る気分になるような変化があった。それだけで十分だからね』
『それには彼が関わっているんだろうことも想像がつくし』と、男性は青年の方にもチラリと視線を向ける。
青年の緊張を和らげようと思ったのか、にこっと人好きのする笑みを青年に向けてから、改めてクローデットの方に向き直り…
『僕が知りたいのは、多分ここにいる他の人達と変わらないよ。
…クローデットが、これから、どこでどうしたいのか。まずはそこが分からないと』
「………。」
クローデットは、すぐに声を出すことが出来なかった。
ごくりと、喉の上下が見てとれるかも知れない。
ヴィルヘルム
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男性の配慮は,瞬間的には逆効果だった。
視線を向けられ,息が詰まるような感覚さえ覚える。
「…………。」
けれどその笑みは,青年の緊張を解す遅効性の薬にはなったようだった。
徐々にだが,青年は心の落ち着きを取り戻し…静かに,紅茶を一口啜った。
けれど青年の緊張は,その笑みとは関係なく,急速に,霧散することになる。
クローデットが,どこでどうしたいのか。
その問いは,青年にとって何よりも知りたい問いだった。
クローデット
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「………まだ、迷いはあります」
話を切り出した時よりも更に掠れた、震えの気配のある声で、クローデットは語り始めた。
「「あたくし達」が何を掛け違えていたのか…あたくしが、何を取り違えていたのか。
少しずつ…分かってきているとは、思うのですが…」
視線が、下方を彷徨う。
「分かった上で、外の世界でその過ちを正す、償うために行動することが…許されるのか。
…告解するには、あまりに多くの命を、あたくしは奪ってきてしまいましたから…」
テーブルにティーカップを置き、自分の掌を見つめるクローデット。
「…それよりは…本国に出頭して、全ての掛け違いの始まりを…改めて、問い直すべきなのではないかと…それこそが、償いなのではないかと…思うのですが…」
ここで、クローデットはちらりと、ヴィルヘルムの方に視線を投げた。
しかし、改めて正面に視線を戻し…そして、落として…
「………他人を、生きる理由にするのは…卑怯でしょうか………」
そう零すクローデットの瞳は何も見ておらず、その言葉は、特定の誰かに向けて発されたものではないようだった。
ヴィルヘルム
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青年は,クローデットの言葉に口を挟むことはしなかった。
その言葉を,言葉を紡ぐ貴女の表情を,真っ直ぐに見つめていた。
不意に視線を向けられれば…狙ったわけではないが,青年と視線が合うだろう。
その表情は真剣で,紅色の瞳が真っ直ぐに,貴女を見つめる。
「…………………。」
クローデットが正面に視線を移し,小さく言葉を漏らす。
それを聞いてなお,青年は,何も言わなかった。
貴女の言う“他人”が誰の事であるのか,思い至らなかったわけではない。
けれど貴女の背に圧し掛かる重荷は,そう容易く掃いて捨てられるようなものでもなかった。
「…………………。」
青年は,必死に考えをめぐらす。
貴女のために,そしてそれは同時に,自分自身のためにも。
クローデット
>
青年の真剣な瞳が、だからこそクローデットには苦しかった。
多分、今誰よりも信頼出来る人。「幸せに生きて欲しい」と、願う対象。
視線を落として、苦悩を吐き出す勢いのまま、うずくまるように背を丸めるクローデット。
若者達の想いの交錯、その苦しさをどの程度見てとったかは分からないが…
男性の表情は、穏やかさを保ったままだった。
『自分のため「だけ」に長い人生を歩ききれる人なんて、そんなにはいないよ。
みんな、大なり小なりつながりの中で生きてるものさ』
男性はコーヒーの入ったカップをテーブルに置くと、背を丸めるクローデットの方に歩み寄り、視線の高さを合わせるように、腰を落とした。
『そもそも、「全ての掛け違いの始まり」を、「子ども」が全部背負おうとすることが大間違いなんだ。
もっと、優先して背負うべき人間が、他にいくらでもいるよ』
『僕とかね』
そう言って、男性は場違いに朗らかな笑みを浮かべてみせた。
クローデットは、驚愕に目を見開いて、まじまじと男性の…自らの父親の顔を見つめる。
ヴィルヘルム
>
貴女がうずくまってしまう様子を見て,青年は視線を手元のカップに落とす。
こんな時,何を言ってあげたら,貴女は楽になるのだろうか。
いくら考えても,言葉は形にならず,思考はまとまらない。
けれど,その答えはすぐ近くにあった。
クローデットに歩み寄る男性の姿。そしてクローデットに向けられるその言葉。
苦悩を全て受け止めてくれるかのような微笑み。
「……クローデット!」
やっと口から出た声は,僅かに上ずった。
目の前の男性のような微笑みはまだ見せられないが,その分,真剣な表情。
「僕がこんなことを言うのは,変かもしれない。クローデットみたいに,沢山の物は背負ってないから…。
でも僕は……その,クローデットに,笑っていてほしいから…。」
話すことをまとめたはずなのに,思いも寄らぬことを口走ってしまった。
そこで言葉は途切れる。ここからは,アドリブだ。
「…僕が代わりに背負うのは無理だし,一緒に背負う,なんてことも簡単にはできないけど。
僕は,クローデットのことを…支えたい。きっと,独りで悩むよりは寂しくないと思うから。」
ぎこちないかもしれないけれど,青年は微笑んだ。
「……僕のため,とかじゃなくて…
…僕と一緒に,少しでも,幸せになってほしい…かな。」
クローデット
>
「子ども」扱いされたことに対する、混乱と憤り。
歴史の系譜を、より近いものが背負うべきだと朗らかに言い切ってみせた目の前の「大人」に対する、戸惑いと…僅かながらの安堵。
戸惑いながら口を開きかけたクローデットの言葉は…僅かに上ずった青年の声に、完全に遮られた。
「…ヴィルヘルム…?」
戸惑いながら、そちらの方に顔を向けるクローデット。
一応父親の前では一定の距離を保ってみせるつもりだったのだが、父親の器やら、今まで完全に借りてきた猫状態だったのに急に声をあげた青年への驚きやらで色々吹き飛んでしまったらしい。
しかも、そこで青年が発する言葉ときたら、まるでプロポーズのようではないか。
「………そういえば…嘗て、「ご自身の人生を生きて欲しい」と、申し上げたこともございましたわね。今度は、わたしがそれを望まれることになってしまいましたか」
ふっと、力の抜けたと息を零した。口元は、微かに笑っているようにも見える。
『なるほどね、蒼二じゃなくて彼がこの場に呼ばれたわけだ』
クローデットの父親たる男性は、若者二人とは礼節を保った距離を置いたまま、穏やかに笑っていた。
ヴィルヘルム
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青年の言葉には,飾りも偽りも無かった。ただ,真っ直ぐに思いを言葉にしただけだ。
それが自然とできるのは,この青年の最大の美点かもしれない。
青年はこの学園で多くを学びながらも,この気質だけは変わらなかった。
とは言え,言葉を紡ぎ終えた瞬間,自らの言葉への不安が湧き上がる。
自分の思いを押し付けることはできない。それもまた,この青年の気質なのだろう。
「……クローデットは,どうしたい?」
改めて,青年は貴女に問いかけた。
クローデット
>
「………。」
青年に再度問われて、少し視線を彷徨わせる。
しかし、その瞳から、苦悩の色は幾分薄れていた。
「…他にも、解決せねばならない問題が細々とございます。
本国にある研究機関の身分をどうするかですとか…実家から距離を置くとして、ジュリエットとの関係をどうするかですとか…」
それから、父親の方を振り返る。
「…ですが…それらの解決に他の人の手が借りられるならば…」
そう言って、改めてヴィルヘルムに向き直った。
「…わたしが重みに耐えられる間は、自分の生き方を探してみたいです」
そう、普段に近い柔らかさの声で言って…優しく微笑んだ。
ヴィルヘルム
>
クローデットの笑みに,青年も柔らかく笑う。良かった。と,安堵の息が漏れた。
そして,ずっと願っていた未来が形になろうとしているこの瞬間が,この上なく,幸せだった。
「……………。」
頷く。静かに,力強く。
何があっても,クローデットを支えていこうと,そう強く思った。
けれどきっと,支えられるのは自分の方なんだろうな,と,思い直して青年は苦笑する。
「…すみません,出過ぎたことを言って。」
今更だとも思ったが,男性に向き直った青年はそう,小さく頭を下げた。
クローデット
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安堵の表情を向け合う若い二人だが、クローデットのこれからの道程に待ち受ける困難は多い。
また、クローデットはこれまでの人生で頼ってきたものの多くを、自分から切り離すことになる。
それでも、クローデットは落ち着いていた。これ以上、失うものはないのだから。
『いや…適材適所じゃないけど、僕にはそこまで踏み込む資格なんてないからね。
僕に出来るのは過去を背負うことと、それに付随する事務処理くらいだ』
男性はそう言って穏やかに笑う。
「…お母様のこと、お忘れではいらっしゃいませんわよね?」
自らの父親に対してそう念を押すクローデットの声は、甘やかながらも冷たい響きだった。
『…そうだね。家族の問題をどうにかするのも、僕にしか出来ないことだ』
『ごめん』と謝る父親に対して、「分かって下さるならば良いのです」と、やっぱりどこか冷淡な響きで応える娘。
嘗ての「同志」との距離感で繋がっているとはいえ、断絶していた時間が一瞬で埋まったりはしないらしい。
ヴィルヘルム
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ヴィルヘルムにできることは,多くない。
特に,クローデットの家族に関する内容というのなら尚更だ。
それにしても,この二人は,仲の良い親子には決して見えない。
しかし,断絶されてもいない。きっと,複雑な親子関係があるのだろう。
「…………………。」
けれどその全てが,青年にとっては羨ましかった。
母も父も知らない青年にとって,家族というのはそれだけで,夢の存在だったから。
クローデット
>
青年の孤独を見てとってか否か、男性はクローデットと並ぶ位置に進み出てくる。
『一応細則を確認してからだけど、多分クローデットはもうしばらくここにいることになる。
…そうなると、僕が出来ることなんてほとんどないからさ』
多分「支えてやって」と言って青年と握手をしようとしたのだろう男性の動きは、ほかならぬ娘によって遮られた。
「上から目線で「支えてやって」とか何様のつもりか」と笑顔の凄味が父親に主張した後、青年には柔らかい表情を向ける。
「…ですから、ヴィルヘルムのお勉強のことですとか、もうしばしの間は相談に乗れるかと思いますわ」
にっこりと笑って、ヴィルヘルムの手を取りにかかるクローデット。
その背後で苦笑いを浮かべる父親と、3人のやりとりを微笑ましく見守るハウスキーパー。
ヴィルヘルム
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父と娘,何となくここの力関係が見えた気がする。
青年としてはもちろん,両方と仲良くしていきたいし,二人にも仲良くなってほしい。
とはいえ,きっと,この二人はこれでいいのだろう。
思わず吹き出してしまいそうになるのをこらえて…
「……ありがとう。」
…クローデットの手を優しく握った。
クローデット
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若い二人が仲を温めているのを見ていた男性が、時計を確認して…
『…じゃあ、僕はそろそろホテルに引き上げようかな。
シュピリシルド君も帰るなら送るけど、どうする?』
そう、若い二人に問うた。
冬の空は、すっかりオレンジ色に染まっている。
ヴィルヘルム
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落第街にすら住んでいた青年にとって“送られる”というのは新鮮だった。
けれど,それを断る理由もない。
「えぇ…折角なので,お願いします。」
少し緊張気味ではあったが,青年は笑みとともにそう答えた。
クローデット
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帰ると言っても帰らないと言っても、男性の態度は変わらなかっただろう。
彼は人の良さそうな物腰を崩さず、
『よし、それじゃあ行こうか。
寮の方がここからは近いよね』
と、青年に声をかけ…娘に対しては、
『それじゃあ、今後のことで決まったことがあったらその都度連絡するよ』
と言って、青年を先導するように家を出て行く。
ヴィルヘルム
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青年に深い考えがあったわけではないが,二人で話す機会は貴重だ。
もっとも,何を話していいのか,青年の頭は真っ白だったが…。
「ありがとうございます。」
男性にそう礼を言ったあと…
「…それじゃ,今日はこのまま帰るよ。」
今日は,と限定したのはきっと無意識なのだろう。
自然に笑って,2人にお辞儀をし…男性の後を追って,歩いて行った。