2019/02/03 - 20:31~01:04 のログ
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。<補足:29歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 「……という訳で、美術史の筆記試験もガチである。各々手抜かりのないように」

低い声に時々チャラい言葉遣い、コスプレめいた衣装、刺すようなハイヒール、人より頭一つ大きな背丈――
良くも悪くも目立つ美術教師ヨキの、座学の講義風景である。

美術史の授業といえば、この常世学園で履修する者は毎年そう多くはない。
だからと言って、彼は決して学生を甘やかしたりはしなかった。

「では、本日の授業は以上とする」

時刻は午後。冬の太陽がやや傾きはじめる時刻だった。
まばらな学生が席を立つと、小教室はたちまちヨキ独りが残された。

さて、と独りごちて、レジュメやプロジェクタの片付けを始める。
どこからどう見ても日本人離れしているヨキだが、授業に用いる機材は現代式だ。

ヨキ > (もう二月とはな……つい先日、年が明けたばかりだと思っていたのだが)

大きな口を引き結んで片付けをしていると、ヨキの顔は厳めしく見えるように出来ていた。
紙束を教卓の上でとんかとんかと揃えながら、黙々と考え事に耽る。

(金工ゼミの卒業制作はつつがなく終わったことであるし……レポート提出と筆記試験、ヨキ自身の制作も進めねばならん。
 ……来月の新クラスとエンドコンテンツ開放に合わせて装備を揃えておきたいし、来週には新譜の予約も忘れぬようにせねばな。
 それに再来週はバレンタインデーである……何と忙しいのだ……)

厳めしい顔立ちに反して、頭の中は公私混同も甚だしいようだ。

ヨキ > (今年はどうしてやろうかな。ゼミ生らを集めてまたチョコの試食会をするのもいいし……、
 一口サイズのチョコレートをたんまりこさえて配り回るのもいいな)

ヨキのバレンタインは豪勢である。教え子を集めてはチョコを食べ合い、教師にも手作りの菓子などを振舞う。
心ゆくまで甘味を堪能し、口直しのしょっぱい煎餅に舌鼓を打つ日なのだ。

(……チョコレートが食べたくなってきた。
 ああ、とは言えもうすぐ恵方巻が安くなる頃合いだろうか……腹が減ってきたな……)

考え事の内容が少しずつ、授業からも趣味からも離れてきた。

ご案内:「教室」にレイヴンさんが現れました。<補足:黒のスーツ、長袖白シャツ、革靴。>
レイヴン >  
(ガラリと扉を開ける大男。
 教壇に立ってなにがしか物思いに耽っている同僚を見て何してんだこいつは、みたいなリアクション。
 とりあえず片手をあげて挨拶しつつ、教室内へ。)

よう。
カギ見なかったか。
単車の。

(今日の受け持ちの授業が全て終わり、さて職員室へ戻って面倒なテストの準備でも、と思ったところでポケットに放り込んでいた鍵が消え失せていたことに気が付いた。
 心当たりは山ほどあるが、直前の授業をしていた教室では見当たらず、その前に使った教室がココ。
 教室の入り口からここまで歩きながら床を見回すのだが、それらしいものは見当たらない。
 今まで授業をしていた彼なら何か知っているだろうか、と尋ねてみる。)

ヨキ > 傍から見れば、授業の片付けをしながら小難しいことを考えているように見えたろう。
だが実際は、カフェテラス橘の期間限定メニューで頭がいっぱいだった。

そうしてちょうど荷物をまとめ終えたところで、同僚の来訪に振り返る。
長身の男が二人揃うと、画がでかい。

「――む、レイヴンではないか。……鍵? いや、見てないな。
 単車の鍵を失くすなど、一大事ではないか」

彼の様子から、きっとこの教室も使ったのだろうと見当を付けた。

「ヨキの授業では、人も少なかったからな……気付かれなかったのやもしれん。
 何か目印はあるか? ケースに入っているとか」

抱えた荷物を一旦教卓に置き直し、そこいらの机の下を探しはじめる。

レイヴン >  
ッチ。
そうか、参ったな……。

(バリバリと頭を掻く。
 バイク自体には自身の魔術のマーキングをしてあるのだが、鍵にはすっかり忘れていた。
 いつもポケットに放り込んでいるのでなくすことはないだろう、と油断したのがまずかったか。)

いや。
強いて言うならカラビナに家の鍵なんかと一緒に――あぁクソ、家の鍵も付いてんじゃねぇか!

(このまま見つからなければ家にも帰れないと言うことに今更ながら気が付いた。
 思ったより動揺していたらしい。
 教壇の下とか教室の隅とか、それらしいところを見渡しても出てこない。)

ヨキ > 「カラビナに、家の……」

机の隙間から上体を引き起こす。一大事どころではないぞ。

「それはあまりにも大変だ。何としてでも見つけねば。
 ……ここを使うということは、数学の授業だろう? 演習のように動き回るでもなかろうしな。
 教卓の周りか……?」

まるで自分まで失せ物をしたような顔だ。

「バイク乗りなど、この学園にはそう多くないからな。
 特に君の愛車は、恰好も良い」

言いながら、よもや自分の荷物に紛れ込んではいないかと、あちこち持ち上げてみる。

レイヴン >  
あぁ、まったくクソったれ……。

(教室の隅を探す体勢でがっくりとしゃがみ込んでうなだれる。
 見つけたらソッコーマーキング刻んでやる。)

――あんなデカデカと自分の名前刻んであるようなバイクがか?
モノ自体は気に入ってるけどよ……あ?

(カッコイイ、と言われてちょっとげんなりした様な顔。
 確かにあの車種は好きではあるが、あのマーキングはいただけない。
 何故あんなものを付けたのか、確か学生時代の友人が悪乗りで――と考えながら教卓に手を置いたら、金属音。
 教卓の中を覗いてみれば、)

――ここかよ……。

(盛大なため息と共に拾い上げる自身の鍵。
 見付かってホッとするやら、こんな簡単なところを真っ先に見なかった自分に対する妙な情けなさやら。)

ヨキ > 「はは。あれはあれで、ロゴのようなものだと思えばまだマシというか」

まだマシとか言う。正直だ。

「あの車種、人気だったのであろう? 名前も写真もよく見かける。
 何ならリペイントでも……、おや」

耳慣れない音に、レイヴンと共に教卓を覗き込む。

「――ふッ。はははは! ああ、安心した! ヨキまではらはらしてしまった。
 済まない、すっかり見落としてしまっていたよ」

胸に手を当て、ほっと一息。安堵した拍子、何やら思い出した様子で口を開く。

「……おお、そうだ。今度君に会ったら、尋ねようと思っていたことがあったのだ。
 島内でどこか、ツーリングにお勧めのルートはないかと思ってな」

レイヴン >  
あぁ、まぁたまたま通りの店に入っててな。
クソ、こんなとこ入れた覚えねぇぞ……。

(落ちていたのを見つけた生徒がここに入れたのだろうか。
 だったら職員室まで届けにくればいいものを。
 しかし落としたことに気付かなかった自分に、そんな偉そうなことを言う権利はない。)

――あー、なんだ、騒がせた。
悪かったな。

(とんだことで迷惑をかけてしまった。
 しっかりとカギに転移魔術のマーキングを施し、ポケットに放り込む。
 これでもう落としても安心だ。)

ツーリング?
俺ぁあんまそう言うの行かねぇからな……。
まぁ産業区とか農業区のあたりは結構良いんじゃねぇか。

(あちらの方は畑なんかが広がっているので結構見晴らしが良い。
 今の時期はともかく、温かくなってから走れば結構気持ちがいいのではないだろうか。)

ヨキ > 「いや、失くし物は仕方ないさ。
 次にヨキが困っていたときは、君に助けてもらうことにするでな。構わんとも」

気にした風もなく、軽く笑う。
産業区とか農業区、と聞けば、ほう、と声を漏らした。

「なるほど、確かに……。ふふ、ありがとう。
 春にでも、学生らの収穫の労いに行ってやるのも悪くないな」

鍵に手際よくマーキングが施される様子を見ながら、言葉を続ける。

「当てもなく走り回るのに、あまり興味はなかったか。君にとっては移動手段かね?
 ヨキはと言えば、休みの日にあちこち乗り回すのが楽しくてな。知った道も違って見える。
 普段は電車やバスで通っていた馴染みの店へ、パフェを食べに行くためだけに乗ったりするぞ」

レイヴン >  
あんま期待はすんなよ。
俺に出来ることなんてなぁ、そんな大したことでもねぇからな。

(数学と荒事くらいだ。
 あとは腕っぷし、つまりは単純な人手不足ぐらいにしか対応出来ないと思う。)

ついでに稲刈りでも手伝ってくりゃ、新米分けてもらえるかもしれねぇぞ。

(口の端をわずかに引き上げた笑みを浮かべながら。
 流通に乗る食料だろうからそううまくはいかないかもしれないが。
 たまになら肉体労働もいいだろう。
 自分はやらないが。)

転がすんなら単車よりクルマの方が良い。
単車はなんだかんだ楽だからな。
学生通りなんかはクルマだと通れねぇ道も多いし、路地の先の喫茶店なんか行くには――

(そこまで喋って言葉を止める。
 直後にえらく不機嫌そうな顔になって右手で口を覆った。
 シフォンケーキが絶品の行きつけの喫茶店の情報を漏らしそうになってしまった。
 あそこで鉢合わせるのはマズい。
 絶対にマズい。)

ヨキ > 「何、ヨキとて大したことはしておらんからな。
 君にも作りすぎた煮物のお裾分けとか、お一人様一点限りのセールに協力してもらうとか、それくらいの気楽なことで協力を仰ぐさ」

数学も腕っぷしも関係なかった。

「新米……ナイスアイディアだ、レイヴン。傷物の野菜なども分けてもらえるやもしれん」

乗り気だ!
レイヴンの車の話に、興味深げに耳を傾ける。ヨキは車の免許を所持していないのだ。

「確かに、学生通りは案外入り組んでおるからな。…………、路地の先?」

その言葉を聞いて、頭の上に何やら思い浮かべる様子が見える。

「――ああ! ヨキもよく知っておるぞ。
 あのサイフォンコーヒーと、フルーツサンドが有名な店であろう?」

ヨキが挙げたのは幸いにも、レイヴンとは異なる店であった。
だがフルーツサンドなどという、別のスイーツ情報が出てきた。この男も大概だ。

レイヴン >  
……そりゃお手軽でいいや。

(面倒は面倒だが、まぁそのぐらいなら付き合ってもいいだろう。
 煮物なんかはむしろこっちがメシにありつけるわけだし。
 複雑そうな顔。)

お前それ単車で持って帰るつもりか。

(まさか大型二輪のタンデムシートに米袋や野菜の入ったカゴを括り付けて走るのだろうか。
 しかもこの格好で。
 その様子を想像し、苦虫をかみつぶしたような顔になる。)

――あぁ、そうそう、そこそこ。

(ホッとした様な気が抜けたような複雑な表情を手で抑えて適当に相槌を打つ。
 行きつけの店は別にサイフォンでコーヒーは入れていないし、フルーツサンドなんて、)

……。

(気になる。
 フルーツサンドが物凄く気になる。
 しかしそれを聞くとフルーツサンドへの興味を持っていると言うようなものだ。
 言えない。
 だけど気になる。)

ヨキ > 収穫物の持ち帰り方を訊かれて、平然と答える。

「む? 勿論そうだぞ、バイクの後ろに。割といろいろ積めるからな」

まさか服装のことを考えられているとは思ってもいない。
ヨキが単車に乗るときは普通にライダーススタイルなのだが、知らない者からすればこの奇矯な格好しか浮かばないだろう。
この、じゃらじゃらでひらひらの、コスプレとかSMの一歩手前みたいなスカートとハイヒール姿が。

苦い顔は、大荷物を心配されているものとばかり早合点した様子だった。
喫茶店の話に相槌を打たれると、満足げに顔が華やぐ。

「ふふ、仲間が見つかったぞ。
 あの店と言えばコーヒーやフルーツサンドばかりが取り沙汰されるが、ヨキはフレンチトーストや自家製プリンもなかなか良い仕事をしておると思うのだ……」

レイヴンの苦悶も知らず、しみじみと甘味の記憶を述懐する。
皮肉にも、さらに新しいスイーツ情報が飛び出してきた!

「……どうしたレイヴン、浮かない顔をしておるな。
 何か他にも忘れ物でも思い出したか?」

ふと尋ねるヨキの顔は、本気で同僚を心配している表情だった。

レイヴン >  
まぁ、色々乗るのは知ってるけどよ……。

(知ってはいるが、大型バイクに野菜や米は死ぬほど合わないだろう。
 人のセンスと言うか、その辺の感覚に口を出すつもりはないが、もう少しこう、風情と言うか……。
 端的に言えば、恰好が付かないだろうと思う。
 口には出さないが。)

っ、――いや、ちが、違う。
そこじゃない。
俺が言ってるのはそこじゃない。

(プリンとかフレンチトーストとか、余計な新情報を矢継ぎ早に繰り出してくる。
 これ以上聞いていると甘味が欲しくてたまらなくなる。
 と言うかもう欲しい。
 ので、手を開いて彼の顔の前に突き出した。)

いや、なん……なんでもねぇ。

(その状態のままもう片方の手でこめかみを抑える。
 本気で心配されているのがわかるだけに質が悪い。)

ヨキ > 「まあ、ヨキの単車は日常の足であるからな。
 本当は野菜や米よりも、女性を乗せる方が好きなんだが」

そこまでは聞いてない。

錯綜した話題はさらに混迷を極める。
制止されて訝しげな顔をするも、こめかみを押さえる様子にはっと気付く。

「まさか……。
 済まぬ。もしや君は、甘味の類が嫌いであったか。
 もしくは、その店で別れ話をしたことがあるとか……?」

想像力が豊かだ。

「……いや、失敬した。あまり興味のない話を続けても気分は悪かろう。
 このヨキと来たら、甘いものには目がなくてな。軽率にあちこちの店について話してしまうところであった……」

額に手を添え、ふっと目を伏せて首を振る。
芝居がかった口調はわざと言っているように見えなくもないが、ヨキは本気で反省していた。

「うむ。君の前で菓子について話すのは止しておく……」

どこか悲しげでさえある。

レイヴン >  
女、ねぇ。

(まぁ確かにその方が似合っているような気はする。
 そもそもこの同僚が結構な美形だし、様にはなるだろう。)

い、――嫌い、って、わけじゃ、ねぇ。

(いや違う、と否定しそうになり、慌てて言葉を止める。
 そのあと地獄の底から響いてきそうな声で否定とも肯定とも取れないような言葉。)

ぐ、う、ぬ。

(もはや声ともつかぬ声を絞り出すのみ。
 甘味の情報は得たい。
 しかし自身が甘味好きだと言うことは知られたくない。
 その矛盾を抱え込み、鬼か修羅のような表情。
 長い長い葛藤の末、)

――――――言え。

(欲望が矜持を上回る。)

ヨキ > 常世島の異邦人は、その特殊性ゆえにどんな呪いを抱えているとも知れなかった。
恐らくレイヴンも自分の与り知らない苦痛を抱えているのかもしれない……などと、素っ頓狂な想像でハラハラしていたのも束の間。
言え、という短い言葉に、目を丸くする。

「………………、」

その様子に、ヨキは只ならぬ事情を察した。彼には、大っぴらに話が出来ない理由があるのだ。

「……そうか。君、秘してでも菓子を食わせてやりたい相手が居るのだな……!」

違う。

「良かろう、良かろうとも。いくらでも教えてやるぞ。ええとだな、ヨキのお勧めは……」

言いながら、スマートフォンを取り出す。
保存されていたメモを手際よく開くと、そこにはさながら住所録のようにあちこちの菓子店や喫茶店の名前が記されていた。
それもご丁寧に、店の場所に加えて「美味しかったメニュー」の覚書付きだ。

「どこもかしこも、ヨキの行きつけであるぞ。きっと満足出来るはずだ」

にっこりと親しげに笑う。
パフェにケーキにアイスにパンケーキ。
ガイドブック並みの情報量だが、全てヨキの行きつけなのがネックだ。
中にはきっと、レイヴンが贔屓にしていた店名もちらほらと見受けられたりするかも知れない。

レイヴン >  
(とりあえず良い感じに勘違いしてくれたらしい。
 わざわざ否定して根掘り葉掘り聞かれるのも嫌なので、否定も肯定もせず無言を貫く。
 沈黙は金。)

――悪ぃな。

(こちらもスマホ――は持ってきていなかったので転移させてマップを開く。
 彼の目もに乗っている名前を検索し、探し出してはタグを付けていく。
 ――開いたマップを見れば、常世中の甘いもの情報が片っ端からタグ付けされているのがわかるだろう。
 こちらはヨキスイーツガイドの情報を調べるのに集中しているため、チラリと見えるかもしれない。)

お前まさかこれ全部回ったんか。

(タグ付けをしながら問う。
 人目に付かないようにと言う制約があるとはいえ、自身でもここまでの数は回っていない。
 喫茶店はかち合う可能性があるので慎重に行かねばなるまいが、持ち帰りが出来る店ならあまり気にすることもないだろう、と今日の帰りによる店のめぼしも付けて。)

ヨキ > レイヴンの手元の画面が垣間見える。覗く趣味などないが、妙に多くの目印が見えた。
それは何と殊勝な、とヨキを大いに感心させ、人知れずレイヴンへの好感度を上げたのだが、全部勘違いである。

「全部? ああ、当然だ。
 一日の食事を、それぞれ違う店で済ませたこともあるぞ。

 ヨキはこの街が好きなのでなあ、隅々まで回らねば気が済まなんだ。
 どこの店でも、大事な学生らが頑張っているからな。余さず回ってやりたいのだよ」

にこにこと話す。
店のリストに時々人名が交じっているのは、ヨキ自身と面識のある教え子の名だという。

「学内で知り合った教え子と外で会うのも、外で知り合った教え子と学内で会うのも、いずれも楽しくてな。
 甘いものを食べ歩くのと同じくらい、ヨキの趣味なのだ」

レイヴン >  
(スマホを操作する手がぴたりと止まる。
 メモ帳から、彼の顔へと視線が移動して。)

――お前アレだろ、学内の生徒の名前と顔出来るだけ覚えようとするタイプだろ。

(とても楽しそうに話すのは、きっと自分の好きな甘いものに付いて話しているから、ではないだろう。
 こいつは生徒が好きなのだ。
 甘いものと同じぐらい、生徒のことが好きなのだろう。
 ――苦労するタイプだと、思う。)

っと、そろそろ休み時間終わるぞ。
次の時間授業ねーのか。

(スマホの画面に映る時間は、もうじきチャイムが鳴り出す時間だ。
 つい話し込んでしまったが大丈夫なのだろうか。
 スマホをスリープにし、教室の出口へ。)

ヨキ > レイヴンと目が合う。
問われるなり目を細め、弧を描く唇でにやりと不敵に笑った。

「愚問だな。
 何しろヨキは食べることが好きだが――それ以上に、この学園が好きだ」

何の気苦労をも窺わせない、うっとりとした笑み。
――時刻を指摘されると、その不可思議な表情は常の気さくなものに戻った。

「やあ、すっかり話し込んでしまった。ヨキの方は、職員室で事務仕事だ。
 君こそ災難であったな」

スマートフォンを仕舞うと荷物をまとめ直す。
ヒールを硬い床にこつこつと鳴らして歩き、レイヴンの後へ続く。

レイヴン >  
――ッハ、そりゃ良い先生だことで。

(思わず笑う。
 趣味と言い教師としての信念と良い。
 どうしてこうもいろいろ違うのに、こいつは。)

見付かったから別に構わねぇよ。
――そういや今日なんか用事あるか。
学生通りの路地の奥にいい喫茶店があるんだがよ――。

(廊下を歩きながら他愛もない話。
 密かな趣味をばらすわけにはいかないが、まぁお気に入りの店を教えるぐらいなら構わないだろう。
 用事がないなら連れて行くし、あるなら店の場所と名前だけ教えて――)

ご案内:「教室」からレイヴンさんが去りました。<補足:黒のスーツ、長袖白シャツ、革靴。>
ヨキ > 「ふふん。伊達に『善き先生』と呼ばれておらんよ」

冗談めかして鼻で笑う。レイヴンの心中など、知る由もないままに。
彼の隣をついて歩きながら話していると、不意の誘いに声が明るんだ。

「用事? いや。
 ――ほう、君のお勧めの喫茶店かね? それは良い。
 夕飯の前に何か抓んでしまおうかとも考えたが、それならこのまま腹は減らしておこう。
 是非教えてもらいたいね」

学生との交流を尊ぶのと同じほどに、教師との付き合いもまたヨキにとっては大事なものだった。
仕事をてきぱきと片付けて、彼に連れられて行った先の店で――ヨキの鼻と舌は、あのシフォンケーキを嗅ぎ付けたりするんだろう。

何気ない軽やかさで、君も半分いかがかね、などと。
とっておきのスイーツをシェアすることになるのは、また別の話だ。

ご案内:「教室」からヨキさんが去りました。<補足:29歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>