2019/02/07 - 22:19~01:11 のログ
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にヨキさんが現れました。<補足:29歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 書物が堆く積み上がった一室。
ソファにどっかりと腰を下ろしたヨキが、缶コーヒーを片手に煙草で一服している。
もちろんここはヨキの研究室ではないし、煙草は「ヨキにもくれ」と強請ったものである。
紫煙を呑んで細く吐き出し、部屋の主へ話し掛ける。
「参ったよ。……『空を飛ぶ魔術』。試そうとしたら勢いよく引っ繰り返って、訓練施設の床に顔から突っ込んだ。
おかげで眼鏡を一本台無しにしてな……、ヨキにはなかなか、ハードルが高すぎて敵わん」
今日のヨキの眼鏡は以前と違うものらしいが、傍目には見分けがつかない。
「で、獅南、そちらの首尾はどうだ。仕事や研究は進んでいるか?」
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼ニさんが現れました。<補足:不健康そうな顔色,無精髭,くたびれた白衣。>
獅南蒼ニ > そんな貴方に背を向けたまま,机に向かう獅南の手元にも,缶コーヒーが置いてある。
「単純だが,案外と難しいものだろう?
箒を使うなんて馬鹿らしい発想だが,形状や重量の認識しやすい物体を飛翔させてそれに乗るというのは理に適っている。」
視線すら向けずに,受け答えをする獅南。
きっと,いつもこんな感じなのだろうという,確信に満ちた安らぎのようなものを感じる。
「魔術学会で講演をしろなどと依頼されてな,どうせ時間合わせだろうが……ほれ。」
視線だけそちらへ向けて,ひょい,と手のひらに乗る程度の石を投げ渡す。
それは水晶の原石を,ある程度研磨して成形したもの。
「お前には必要のないものだろうが,それを必要とする魔術師は,少なくないだろうと思ってな。」
獅南と過ごす時間が長いのなら,すぐに分かるだろう。
それは,以前彼が付けていた指輪と同じもの…魔力を蓄積させる人工の魔石。
ヨキ > 今日の缶コーヒー以外にも、手作りの弁当だとか、新発売の菓子だとか、煙草だとか。
ヨキが差し入れるものは、日によってまちまちだった。
「魔力のコントロールが難しいなどというレベルではない。
なるほどお前が気に入りそうなテーマだ、と思った」
笑う。普段は泰然としているヨキの顔は、獅南の前ではどこか少年のような稚気を孕んでいる。
講演と聞いて、ほう、とソファの背凭れに肘を載せる。その気楽さはまるで自宅だ。
「凄いではないか。時間合わせなど言うなよ、お前の実績が買われたに違いないぞ。もっと喜ばんか」
自分が褒められたような顔をしながら、咥え煙草で放られた石を受け取る。
「む。これは……見覚えがあるな、お前の指輪と同じ石か。
『誰でも魔術が使えるように』――これを大量生産でもするつもりか?」
獅南蒼ニ > 喜んで受け取る,という姿はまず見せないのだが,受け取らないということもない。
というよりも,研究への没入具合によっては差し入れだけが唯一の食事になっていることも多々ある有様だ。
「問題は魔力制御ではない。単純に,我々は自己という対象を一つの物体として俯瞰的に捉えることが苦手なのだろう。
経験則や才能で魔力を操っている者ならなおさら,対象の固定と指向性の調整は,至難だな。」
馬鹿を言え,と貴方の言葉に肩を竦め…くるりと椅子を回して貴方の方へ向き直る。
「テーマを提出しろだ,何だと五月蝿くて敵わん。ただでさえ忙しい時期に。」
これは本当に心の底から面倒くさいと思っている顔です。
論文纏めるのは好きだけれど,講演とか好きじゃないタイプ。
「…それは私の仕事ではない,ただ,その可能性を示すだけだ。
『魔力の貯蔵』……『魔力の概念と,その貯蔵』……」
テーマが良い感じにまとまらないらしい。
この人の論文はホントに面白味も何もないタイトルついてますからね。仕方ないですね。
ヨキ > 「鳥や航空機は、何ともシビアな進化と発展の末に飛んでいるものだ。
その翼も、羽ばたきの仕組みも、美術のためにはつぶさに観察を重ねたが……自分がいざ飛ぶとなると、さっぱりだ」
こちらを向いた獅南の表情を見るなり、にんまりと目を細める。
「お前がそう言ってトンズラしないように、学会も見張っているのではないか?
たまには表に出て見れば、ヨキよりずっと賢いお歴々からの賛辞も得られようにのう」
魔石を照明に向けて翳し、無味乾燥とした天井を仰ぐ。
「可能性ね。可能性……」
言い淀む獅南を横目に、ほれ、と水晶を返す。
「……『魔力貯蔵技術を用いた』……、『魔術学の持続可能な発展について』?」
獅南蒼ニ > 「なるほど美術のためか…私とは観点が違うが,魔術学的にも,学ぶものは多い。
変身術を使うにも対象を正確に把握していればそれだけ,完成度も上がるというものだ。
……まぁ,飛ぶだけなら自己の形状や重量を魔術的に再定義すればいい話だが。」
貴方の表情を見れば,大袈裟にため息を吐き,
「そういうお前も同じだ,また個展でも開けばいいものを。」
案外と悪くなかったぞ?などと,その気にさせそうな発言をしたりしつつ…
「……少しばかり,手を広げすぎではないか?」
それでも,自分が考えたテーマより響きが良かったのか,目を細めて真剣に考える。
ヨキ > 「そう。描くにも作るにも、巧い者ほど資料を繰るものだ。
……いくら運動や格闘で身体を統御出来ようとも、魔術学の話ではな。
お前にじっくり習うとしよう」
個展と聞くと、指先に挟んだ煙草を燻らせて笑う。
「もちろん、ヨキもまた個展をやるつもりで居るさ。人間になって以来、作品も増えてきたしな。
今は……ほれ。少しばかり、単車を弄るのが楽しくなってしまってな。資金を貯め直している」
ふは、と吐き出した息と共に、煙草の煙が宙に消える。
「少しくらい大風呂敷を広げてやらねば、それこそ時間合わせと侮られるばかりだぞ。
大体、概念と貯蔵でハイそーですかでは、夢も希望も感じられんではないか……。
お前自身は少なくとも、その魔石に可能性を感じている訳だろう?」
獅南蒼ニ > 「資料が欲しければいくらでもくれてやるぞ?
ほれ,お前の座っているソファの後ろから,好きなだけ持って行け。」
缶コーヒーを開けて,ぐっと半分ほど飲む。
軽く言っていますが,そこに積み重なっているのは持ち出し注意~厳禁レベルの魔術書ばかりです。
「まったく,私より先に手を出すとは思いも寄らなかったが…
…この島にも,転がすのに向いた道はあったか?」
単車の話題には,しっかりと食いついた様子。
表情は変わらないが,少しだけ,声のトーンが高くなった気がする。
受け取った人工魔石を机の引き出しに戻しつつ…
「……なるほど,お前が正しい。
コレはまだ,黎明期の電池も同じだが…誰もが努力と研鑽に応じて魔術を行使する世界の実現には,不可欠な代物だろう。
現時点ではまだ,魔力供給を人間に頼るしかないのは問題だが…ね。」
ヨキ > 「自力で読み解けなくては、資料の意味がないではないか。
だからヨキはお前に教えを乞うと言っておるのに……。まあ、借りられるものは借りてゆくがな」
ふふん、と鼻を鳴らす。当然ながら、ヨキに魔術書の危険性を一目で判じるほどの目はない。
「何しろこうでもしなければ、お前はいつまでも乗らぬと思ったのでなあ?
ずっと電車やバスばかり使ってきたから、街中の景色がまるきり違って見える。
海沿いの道を飛ばすのはとても爽快だったよ」
“のりもの”が好きな子どものような調子で、うきうきと話す。
「……共に走るのが無免許のお前では、ハラハラして爽快どころではないだろうがなあ?」
そして苦笑い。
短くなった煙草を、テーブルの灰皿に押し付ける。
「だったら、聴衆にその『不可欠さ』を示してやればいい。
仮にもお前は常世学園が誇る魔術学者の一人なのだから、皆と共にさまざまな可能性を提示して然るべきだ。
お前を慕う学生や、尊敬する者にとっても大層刺激になるはずだとヨキは思うね」
獅南蒼ニ > 「右の列,それから奥側の3冊はやめておけ。お前の手に負えるような代物ではないからな。」
流石に貴方の扱いに慣れているようで,先に釘を刺しておくことを忘れない。
きっと,以前に何かやらかしているのだろう。
「…まったく。」
貴方が語る言葉があまりに純粋だったからか,肩を竦めて…
「…免許を取れと言いたいのだろうが,そんな時間がどこにある?
お前と違って,この通り私は仕事が多いのでな。」
…避けているわけではないが,獅南はいつも,免許の話を聞き流す。
きっと,この年になって教習などやるのは気恥ずかしいのだろう。
「そうさせてもらおう……もっとも,お前には必要ない代物だがな。」
ノートパソコンの画面にテーマを打ち込んで,提出する。
「魔術学者も魔法使いも魔女も,皆才能に溢れている者たちばかりだ。
必要のない技術に関心を向けるほど,愚かで暇な人物が居ることを祈ろう。」
珈琲を飲み干し,空き缶を机の上に置く。
「……で,ここでグダグダと3時間も私の邪魔をしたんだ,それなりの店を見つけて来たんだろうな?」
静かに立ち上がりつつ,貴方に声を掛ける。
研究がひと段落するタイミング,夕飯時。きっと,そういうことなのだろうと。
ヨキ > 「右の列と、それから奥の三冊……、」
本の山をしばらくじっと見つめてから、「判った」と頷く。
素直な代わり、こっちは持ち出していいのか、アレについて書かれた本はあるか、としつこく尋ねることになるのは目に見えている。
「ふふ。素直でない奴め。どうせ散々乗り回してきて、その年齢で今更教習などと、…………。
……幾つになるんだ、そういえば?」
“この年齢になって”と笑うには、相手の年齢も誕生日もよく知らなかった。
コーヒーを空にしながら、端末に向かう獅南の様子を眺める。
「そりゃあ、品物自体は必要ないやも知れんがな。
お前が発表の場に立って、未来を語ること自体がこのヨキには大事なのだ。
いくら煙たがられようと、応援することも、労うことも止めんよ。……」
本当に素直でない奴、と、同じ言葉を繰り返す。
「たとえお前に生まれつきの才能がなかったとしても、ヨキはお前の努力に敬意を表する。
だから冗談でも、あまり謙遜してくれるな」
空き缶や吸殻を甲斐甲斐しく片付けながら、立ち上がる獅南を見上げる。
「三時間? もうそんなに? ……あ、本当だ。
魔術のことは判らねど、美味い店を見つける鼻に自信はある」
不敵に笑って、機嫌よく。
プレゼンテーションばりに紹介してみせるのは、新しく出来て間もない、蕎麦と魚の美味く、品の良い店だった。
獅南蒼ニ > その全ての質問にノールックで答えられる程度には読み込んでいるので問題は無かった。
むしろ,魔術学の棚であれば,図書館も禁書庫も案内できるだろう。
「言っていなかったか?…次の6月で40だ。」
さらりと答えて,教習の話題には触れなかった。
バイクの話は確かに好きなのだが,いつもこの話題に展開されるのが悩みの種である。
「…愚かで暇な人間が,どうやらここに一人居たらしい。」
貴方の真っ直ぐな言葉に,獅南はそうとだけ返した。
獅南は,自らの研究が広く世界に受け入れられないものであると理解している。
だからこそ,貴方という理解者が傍らに居るという事実が,何より幸福だったのかもしれない。
「…あぁ,その点に関してだけは,全面的に信頼しているとも。」
貴方に導かれるまま,真新しい店へと赴き……獅南は数日振りに,人間らしい夕食を楽しむのだった。
ヨキ > 「六月でよんじゅう……」
呟いて、まじまじと獅南の顔を見る。
「……そうか。そうだったか。もちろん初耳だ。
ヨキがお前の誕生日など知っていたら、毎年祝うに決まっておるではないか」
人間みんながみんな、ヨキのように産まれた日や年齢があやふやな訳がない。しばし呆気に取られて、頭を掻く。
堅物のヨキは、友人が無免許でバイクを乗り回すなど許せん、という性質ではあるのだが、諌める気持ちが何となく吹き飛んでしまった。
相手の皮肉な返答に、小さく笑う。
「暇人呼ばわりは心外だが、愚かであることは否定せんよ」
さて、と一声上げると、獅南を連れて研究室を後にする。
これまで三時間は喋り倒したというのに、まだまだ話の種は尽きそうになかった。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」からヨキさんが去りました。<補足:29歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」から獅南蒼ニさんが去りました。<補足:不健康そうな顔色,無精髭,くたびれた白衣。>