2020/06/19 - 20:59~00:40 のログ
ご案内:「落第街大通り」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 黒い私服の広い襟刳りから伸びる白い首が、落第街の猥雑な光に浮かんで目立っていた。
ヨキはどこにでも現れる。
ヨキにとって、どこにでも教え子が居るからだ。
勝手知ったる庭のように、通りを歩く。
怪しげな薬を売るのが生業の少年と、拳を打ち付けて労い合う。
喧嘩でしか己を表すことのできない少年の、軽やかなパンチを躱して笑う。
街娼なぞやっている少女にヨキセンセ、と甘い声を掛けられて、おお、と足を止める。
「元気か? 済まんな、今日はただの見回りだ。また今度な」
名残を惜しむ少女の唇に、挨拶の口付けをひとつ。
そうして独り、そんな調子で往来の中を歩いてゆく。
ヨキ > 鞄から、赤いパッケージの煙草を取り出す。
火を点けて、紫煙を己が歩く軌跡のように棚引かせる。
煙草の匂いに交じって、女物のシャンプーの匂い。
ヨキはそういった移り香を特に隠しはしなかった。
ぷか、と煙を吐き出す。
美味くて吸っている訳ではないが、なくてはならないもの。
ヨキ > 表通りには表通りの平和がある。
裏通りには裏通りの安寧がある。
裏の悪辣が表を塗り潰さぬように。
表の傲慢が裏を圧し潰さぬように。
ヨキはそれこそを常世島の“秩序”と看做していた。
守られるべきそれを守るために、こうして夜は表通りを外れた区画を歩くのだ。
ヨキ > 煙草の煙と共に、余韻を残すものがある。
それはヨキから漏出する、膨大な魔力だ。
まるで魔力そのもので形づくられた生き物であるかのように、神性めいた余波が夜風に紛れる。
ヨキにはそれをどうすることも出来ない。
たとえ魔力に聡い者に嗅ぎ付けられようとも。
いかなる魔物をおびき寄せようとも。
ご案内:「落第街大通り」に日ノ岡 あかねさんが現れました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。>
ご案内:「落第街大通り」にカナタさんが現れました。<補足:灰色のサメパーカー、その上にLサイズの白衣を羽織っている。ホットパンツ、鉤模様ニーソ、白地に青のラインが入ったスポーツスニーカー、左手だけで前腕半ばまで覆う黒の軍用手袋>
ご案内:「落第街大通り」からカナタさんが去りました。<補足:灰色のサメパーカー、その上にLサイズの白衣を羽織っている。ホットパンツ、鉤模様ニーソ、白地に青のラインが入ったスポーツスニーカー、左手だけで前腕半ばまで覆う黒の軍用手袋>
日ノ岡 あかね > 「いーけないんだぁ」
紫煙にまるで招かれるように。
音もなく、その女は現れた。
「教師が歩き煙草はどうかと思いますよ? ヨキせんせ」
現れたのは……常世学園制服に身を包んだ、ウェーブのセミロングの女。
元違反部活生。
日ノ岡あかね。
「相変わらず、見回り続けてるんですね」
あかねは薄微笑みを浮かべて、馴れ馴れしくヨキに声を掛けた。
ヨキ > 「日ノ岡君」
にやりとして足を止め、長い指に挟んだ煙草を口から離す。
彼女から顔を軽く背け、残った煙を明後日の方向へ吐き出す。
「君と大して変わらぬよ。
君は監視という戒めの中で。
ヨキは職務という使命の中で。
それぞれ“自由に”やっているに過ぎん」
あかねの微笑みを受け取って、返すように。ふっと笑む。
「ヨキが見回りを辞めることはない。
いくら表通りから距離があろうとも、ここに暮らす“教え子たち”を見放すようなことはせんよ」
日ノ岡 あかね > 「ふふ、そういうの世間だと屁理屈っていうんですよ?」
可笑しそうに笑いながら、煙草の香を気にすることもなく隣まで寄ってくる。
まるで、餌付けされた野良猫のように。
「私は好きですけどね」
そのまま、承諾も取らずに一緒に歩き始める。
監視の証の首輪もどこか自慢気に襟を開いて見せびらかして、堂々と。
「私がずっと『補習』してる間も、センセは変わってなかったんだなぁって思うと……少し嬉しくなっちゃいますね。相変わらず私の優しいヨキセンセなんだなぁって思うと……こうして、夜道の散歩も安心して出来ちゃうし」
ヨキの顔を見上げて、嬉しそうに目を細める。
ヨキ > 「はは、君ならよく知っておろうが?
ヨキから屁理屈を抜いたら、世界一寡黙な男になるであろうとね」
あかねが隣に在るというのに、煙草を消す素振りもない。
指先に手にしたまま、並んで歩き出す。
のらりくらりと、夜行性の犬と猫。
「ああ。もう一生、君の顔を見ることがないのかと覚悟もしたが……口が達者なのは相変わらずだな。安心したよ。
そうだとも、君の優しい優しいヨキ先生だ」
空いた左手を、閉じては開く。
「君が迷子にならぬよう、エスコートしてやろう。手でも繋ぐか?」
迷子になるだなんて、いかにも冗談みたいな口ぶりで。
あかねを見下ろしながら、楽しげな半眼で笑う。
日ノ岡 あかね > 「ふふ、センセに会いたかったから……ちゃんとイイ子にしてたのよ私?」
冗談とも本気ともつかない減らず口を叩いて、ヨキと共に夜の街を歩く。
落第街の喧騒も相変わらずで、紫煙の香りもまるで気にならない。
様々な人の匂い。街の匂い。
紫煙の香も、此処ではそのほんの一部でしかない。
「一年も掛かっちゃったからダブっちゃったけど、まぁ、女子高生一年延長と思えば、それもまたいいかなって」
当然のように手を繋いで、ヨキの横顔を見ながら歩く。
誰かや何かにぶつかったりなんて勿論しない。
勝手知ったる二人の街だ。
「センセ、女子高生好きでしょ?」
半目でにやにやと笑って、そのまま腕に抱き着く。
身長差のせいもあって、まるで大人と幼女だ。
ヨキ > 「それは光栄なことだ。ヨキ以外にも言っておるのではなかろうな?」
人のことを言えたものではなかった。
相手を問わず言葉が甘やかなのは、このヨキだって変わらない。
「君は元から大人びているからな。二年だろうと三年だろうと、変わりはせんよ。
ふふ、失敬な。ヨキが好きなのは、女子高生でなくて君だ」
平然と言って、腕に抱き着くあかねを長身がしかと支える。
「で? 以前と変わらず君とつるんでいたら、風紀に筒抜けなんてことはなかろうな?
誰に知られようと恥じはせんが、君にくれてやる言葉は君以外の誰にも聴かせたくはないからな」
日ノ岡 あかね > 「ふふ、センセこそ、私以外にもいってるんじゃないの?」
相変わらずといった様子で、お互いに軽口の応酬をする。
お互いにどこか昔を懐かしむように……一年の間を埋めるように、言葉を交わす。
それは、この二人なりの睦言のようなものなのかもしれない。
「さぁ? 筒抜けかどうかはわからないけど、問題視はされないんじゃないかしら? だって私は夜道をセンセに補導されてるだけですもの。誰に咎められることもないわ」
得意気にそう胸を張って、可笑しそうに笑う。
夜のネオンが、仄かにあかねの顔を照らした。
「それに……聞かれたくない事は、こうして耳元で喋れば平気よ。きっとね」
何の保証もないそんな言葉を口にして、くすくすと笑う。
紫煙とあかねの髪の香りが、互いの鼻先で入り混じった。
「ねぇ、センセ、私がいない間に……何か面白い事ありました?」
そっと、確認するようにそう呟く。
軽く、小首を傾げながら。
ヨキ > 「さてな。似たようなことは言っているやも知れんが、まったく同じ言葉は言わないつもりだ」
それこそ全くの屁理屈で。
笑い交じりの言葉の合間に、紫煙を呑む。
「ふふ、それなら安心した。……ヨキもどちらかと言えば、近い距離で喋る方が好きだ」
ヨキの香水の匂い。煙草の匂い。男の肌の匂い。女の家で使ったと思しき、フローラルな石鹸の匂い。
顔を近付け合ったとて、互いの瞳の底は見えないほど深い。
ほんの水面を掻き混ぜ合うような、戯れの言葉選び。
「面白いことね……バイクを乗り回すのが上手になったことかな。
それ以外は、何だろうな……、」
路地の奥を見る。
何か思い出すように目を細めたが、すぐに霧散して視線を引き戻した。
「君が面白がるようなことを、君を差し置いて楽しめるヨキではなくてなあ。
何か気になることでも?」
日ノ岡 あかね > 「センセも割と大人しくしてたってことね。ふふ、良い子良い子」
そういって、無理に背伸びをして頭を撫でる。
犬でも撫でるかのように優しくヨキの癖毛を撫で回して、あかねは笑った。
「……だから、風紀の会議とやらにも顔を出さず、こんなところで油を売ってるわけね?」
今、中央庁舎で行われている会議。
どんな事が話し合われているのか、当然あかねはわからない。
しかし。
「センセは『現場』の方が好きそうだものね」
どんな事が話し合われているのか……想像くらいは簡単にできる。
かつては日ノ岡あかねも……その話し合いの『話題の一つ』程度には、名前があったことがあるのだから。
その結果として、あかねは一年の『補習』を受けた。
想像できない筈もない。
「センセは……最近の風紀とかってどう思ってるの?」
夜の瞳が、ヨキを覗き込んだ。
ヨキ > 小首を傾ぎ、頭を撫でる手に応える。
ひととき目を閉じると、それはまさに大型犬のような顔だった。
その犬が。
「は」
笑った。
「なあに、ヨキは委員会からは距離を置くのがセオリーでな。
風紀からも公安からも遠いところで、『現場』を巡るのがこのヨキだ。
云わば、第三勢力とでもいう奴さ」
あかねの瞳に見据えられるのは、ヨキの紺碧。
さながら星空のように金砂の煌めきがちらつく。
「そうだな……ヨキも全貌を把握している訳ではないが。
迷いのない者と、迷いの多い者が極端なように見受けられるな。
警察を通り越して、まるで軍隊のように見えるときもある。
いずれは落第街が更地になるのではないかとすら思うね」
日ノ岡 あかね > 「また、思ってもない事言って」
楽しそうに、あかねが笑う。
夜の黒に、星屑の煌めきが映り込み……夜が薄く細まる。
静かに、移り変わる月のように。
「更地になんて……意地でもさせないつもりの癖に。それこそセンセの目が黒いうちはね」
ヨキの活動を、あかねはほとんど知らない。
あかねが知っていることは……彼がただ、夜を往く猟犬であるという事だけだ。
それでも、『噂』くらいはいくらでも聞く。
この街にかつていたのなら……それこそ、いくらでも。
だからこそ、日ノ岡あかねは。
「ねぇ、センセ……もし、私がまた『何かしたら』……手伝ってくれる?」
教師であるはずのヨキに。
己に首輪をつけるはずの立場であるヨキに。
「『今度』は私を……助けてくれる?」
そう、静かに問うた。
ヨキ > 「――そうだよ」
薄らと笑う。
大きな口は、猟犬のそれ。
「ヨキは落第街を守るよ。
この街が表へ魔の手を伸ばそうものなら、殺してでも止める。
表からこの街へ粛清の手が入ろうものなら、手足が飛んででも止める。
可笑しいね。
存在しないはずの街が、あんなにも表の人間を悩ませる。
存在しないはずの街から、どんどん悪党が出てゆく。
変わろうとするなら、もっと変わりようがあるはずなのに」
そうして、あかねの問いに。
持っていた煙草を、するりと地面へ取り落とす。
携帯灰皿へ入れる時間すら惜しむように。
空になった手で、あかねの頭を抱く。
「…………、その『何か』にもよるがね。
君がきちんとヨキの教え子であるうちは、ヨキは君を助けるよ。
君が“補習”で過ごした一年よりも――ヨキがくれてやる一年の方が、ずっと楽しい自信があった。
それが叶わなかったのは、ヨキの力不足だ」
日ノ岡 あかね > 愛しの教師に頭を抱かれ。
大人しく、その懐に潜り込む。
男の香をたっぷりと楽しむように身を寄せて……あかねは笑う。
「――だから、私はヨキせんせの事大好きよ」
存在しない筈の街。それでも存在している街。
強大な委員会が『黙認』する街。
生徒会が『見て見ぬ振り』をする街。
街に生きるのは人。
街をつくるのは人。
――即ち、真に誰もが『目を逸らしている』のは?
「安心して……私はアナタの大事な教え子。だから、私を――」
日ノ岡 あかね >
「――信じてね?」
日ノ岡 あかね > するりと、あかねが身を離し。
「またね、センセ」
薄笑みを浮かべて、夜の街へと消えていく。
深い深い路地の向こう。
月明りも届かない、闇の奥底。
まるで野良猫が棲み家に帰るかのように……日ノ岡あかねは、姿を消した。
ご案内:「落第街大通り」から日ノ岡 あかねさんが去りました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。>
ヨキ > 「信じているともさ」
あかねの頭を、ぽんと叩く。
限りなく優しく、寝物語めかして。
「――信じるほかにないんだ、ヨキはな」
その信頼が貫かれようとも。
裏切られようとも。
守られようとも。
欺かれようとも。
いかなる委員会からも遠い“第三勢力”には、後ろ盾などなく。
だからこそ身軽で、だからこそ自由で。
傷付いたとて、失うものはない。
だからヨキは、愚直なまでにそんなことが言えるのだ。
「ではね、日ノ岡君。……ヨキの大事な君よ。
どうか安らかに眠れるように」
おやすみ、と。軽い足取りで去ってゆく背中を――見送る。
ヨキ > そうしてヨキもまた。
落第街の奥へ。奥の奥、そのまた奥へ。
裏通りを抜けて、最奥のスラムまで。
惑わぬ足取りが、街を突き進んでゆく。
何故ならば。
ヨキは常世島のどこにでも在る。
教え子は、島の何処にだって居るからだ。
ご案内:「落第街大通り」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>