2020/06/19 のログ
フィーナ > 「さて」
相応に効果があった。同じ手を何度も繰り返せば相手は確実に死ぬだろう。

だが、千日手では面白くない。
次はこうだ。

ごぽり、と。また杖から水が発生する。今度は、それが薄い膜となって上空を覆う。

アーヴァリティ > 「魔術使えばこれぐらい防げるんだけど…
今日の僕は魔術なんて知らないからね」

最初に身体強化使ってた分際で何を、と言う話なのだが。
それにここまで魔術を縛って、最後に逆転するのがその思い込みをひっくり返すのが戦術というものだろう。

全身火傷自体は実はそこまで問題ではないのだ。
一時的に...やりたくないが全身から痛覚を消し去る。
この体は消し飛ばされた時か首が飛んだ時か、意識が無くなった時。
それぐらいしか実は弱点がない。
あくまで感覚を模倣しているだけだ。その模倣を無くして...

全身から触覚が失せる。
これで頼りになるのは目と耳だけだ。
だが何ら問題ない。僕の触手は元から何の感覚もないのだ。
上空を覆おうとする水の膜には目もくれずひたすら、先ほどの威力を、先ほどの数倍の触手が魔力の障壁に向けその威力を繰り出す。

おそらく先ほどよりも圧倒的に短い時間でシールドは砕けるだろうしそれでシールドが消えればその威力はそのままフィーナに向かうであろう。
ー1発なぐるー

ただただ逃げで終わってたまるか。

フィーナ > 「んー…」
ちょっとまずいな。これだと間に合わないかもしれない。
ピキピキと水の膜を凍らせつつあるが、ソレよりも先に障壁を破壊されそうだ。
避弾経始の原理を使いながら、受け流そうとしている。

アーヴァリティ > 触覚を無くすと叫べないのだ。
口の感覚もなくなり、非常に喋りづらいのに叫ぶなんてできる訳が無い。
それでも、一発お見舞いする。
それだけの為にここまでダメージを耐えて。
その上で打ち込む1撃は嘸かし気持ちいいのだろう。
口元が歪んだ気がする。
実際歪んでいる...本人には分からないのが残念だが。

さて、魔術師のシールドがこちらの攻撃をどうにかして防ごうとしているが、その程度、攻撃の向きを変えればいい。
今まで視覚と聴覚で扱ってきた触手。
余計な痛みも何もなければ、むしろ普段より扱える。

そして、障壁を破り切った。
一発お見舞いしてやろう。
速攻でテレポートの術式と身体強化の術式を組み立てる。
超近距離テレポート。右手だけの身体強化。
そして触手で自分の前方にドームを作り出せばー

フィーナの目の前にテレポート。
障壁を貼り直す隙も、思考の隙すら与えない。
僕のだせる最速で、最高の拳を左の頬にぶち込んでやる。
触手がドームを作り逃げ道などない中。
右の拳を全力で振りかぶった。

フィーナ > 「…参った」
対応出来るスクロールがない。デコイは視認されてる今は効果がない。
テレポートはこの状況では壁に埋まる目算のほうが高い。
指向性爆破もこの閉鎖環境だと間違いなく自分を巻き込む。

だが、あの右手に当たるよりかはマシか。

「勉強代」

避けられもしない拳を避けるために、スクロールを発動する。

触手のドームの中が爆風に包まれ、同じくフィーナも吹っ飛んだ。

アーヴァリティ > 「...」

爆風を間近で受けたが、ここで止まるほどこの執念は浅くな...
「気絶しちゃったか」
そう呟いた気でいるが、実際はその声は出ておらず、心の声で止まった。
振りかぶった右手の身体強化を解除し、爆風で吹き飛び檻代わりの触手に引っかかって気絶している魔術師を見下しながら、異能で体の中身、外殻の順で体を再編する。

「はあ...これどうしたらいいのかなあ...」

爆風だったり水蒸気爆発だったりで消し飛んだ服代わりのボロ布。それの代わりに一枚の大きめの布で体を覆い、気を失っている魔術師の首根っこを掴んで持ち上げ、軽くその頬を握った拳で殴った。
軽くだ。

「次はゴリ押し以外で戦うから。またやろうね」

再模倣された綺麗な顔に、疲れた笑顔が浮かぶ。
強力な魔術師の襲撃を彼方に有利な状況で二度も退けてやったのだ。きっとこの魔術師も気に入らないと思っているだろう。
そうであるなら、また挑んできて欲しい。
そうでなくては僕もつまらない。
油断を後ろからつく勝利も、ゴリ押しの果てに引き分けで逃げられるのも、納得がいかない。
次こそは、勝ち負けを堂々はっきりさせてやろうじゃないか。
ゴリ押し以外で勝ってやるんだ。

「はあ...魔術以外で戦う方法かあ...何か考えないとなあ...」

ため息をつき、疲れ切った体で、月の光の届かない影へと姿を消す直前。

「いい夜だね」

皮肉気味にそう呟いて、退場した。

ご案内:「スラム」からアーヴァリティさんが去りました。<補足:ボロ布を纏った幼女。>