2020/06/08 - 22:02~01:20 のログ
ご案内:「屋上」に金剛 経太郎さんが現れました。<補足:小学生程の容姿の少年/実年齢18歳/普通の学生服を着ている/お気軽に後入りどうぞ>
ご案内:「屋上」にシュルヴェステルさんが現れました。<補足:人間初心者の異邦人。人型。>
金剛 経太郎 > 「煩悩……煩悩よ去れぇぇぇぇい!!」

屋上に声変わり前と思しき声が響く。
そして同時に重たい何かを振り回す様な風切音。
梅雨時にしてはすがすがしい程に晴れ渡った空の下、その場に不釣り合いな漆黒鎧の騎士が、身の丈ほどの大剣を振っていた。

「勉強第一!今の俺は勉強第一ぃぃぃ!!!」

そしてそのすぐ傍のベンチで、ぐったりと崩れながらも声を張り上げている少年が居る。
一目見て異様な光景である事は間違いが無かった。

シュルヴェステル > その異様な光景を見て、パーカーのフードを目深に被った青年は一度思考を止めた。
ざんばらに切られた白い前髪の間から、その漆黒の騎士をちらりと見やり。

珍しく今日は天気がいい。むしろ少し汗ばむくらいの時節だ。
つまり、屋上で食事をすると気分が晴れやかになることは知っている。
だが、先約がいることは知らなかった。1人で静かに食事でもと思ったはずだった。

「なるほどな、そういうやつも、いるんだな」

きっかり5・7・5の音に合わせて、どこか現実逃避するような視線を向け。
だが、屋上で食事をするという決定を覆すわけにもいかない。
ぐったりと崩れる少年の横の席に一言も言わずに座り込んで、鎧をじっと見つめた。
そして、安っぽい購買のパンの袋を開きながら事後承諾と言わんばかりに声を掛ける。

「失礼」

短く一言だけそう言って、もそもそとパンを咀嚼し始める。
梅雨時の晴れ間に、いやに黒鎧の騎士が映えていた。地球らしくない光景だった。

金剛 経太郎 > 「あっちいけ煩悩!!煩悩退散!!中間試験近いんだから!!」

きゃんきゃんと小型犬の様に喚き散らしていた少年だったが、不意に現れた人影に、ハッと我に返る。
すると同時に黒騎士もその動きを停めた。大剣を振りかぶった姿勢のまま、微動だにしなくなる。

「………いや、失礼くは無いけど。」

ぐったりと、酒におぼれた中年サラリーマンの様なだらしなさでベンチに半ば溶けかけていた少年、金剛経太郎は青年へと顔を向ける。
燦々と陽の光が降り注ぐ中で叫び続けていたので全身がほっかほかだ。

シュルヴェステル > 「ここでは子供も中間試験を受けるんだな。煩悩に困っているのか?」

説明はされたが、と呟きながら薄っぺらいパンを丸めて口に放り込む。
そういえばそんなものもあった……と思いながら視線は黒騎士に向けられたまま。
薄っぺらいパンを適当に口の中に放り込んで、のそりと立ち上がる。

「失敬、貴君はどこの異世界の出身だろうか。
 門を伝ってこの世界へとやってきた異邦人だろうか。……若輩の身に一つ、教えては頂けないか?」

固まったままの黒騎士の前に立ち、じっと見つめる。
返事が返ってくるまで、本人も微動だにしない。
真面目そうな表情で、「いかにもそれらしい」姿に丁寧な言葉を選んだ。

金剛 経太郎 > 「あ゛ーーー、まあ、そんなとこ。」

子供、と言われ少し思う所はあったが、甘んじて受け入れて頷いた。
困っている。大変に困っている。
しかし、青年の興味は傍の黒騎士の方にある様で、声を掛ける姿をどこか遠い目で見ながら、

「あー、そいつは喋んねえよ。
話しかけても通じない。何処の出身かって話なら、VRゲームの出身、かなぁ。」

と、問われても居ない経太郎が応えるのだった。

シュルヴェステル > 「…………」

人間を横目に人間らしくないもう一人に話しかけたはずだった。
が、返ってきた答えは「子供」と形容した相手からで、思わず困惑の表情を浮かべる。

「なるほど。貴殿の連れ立ちということか。
 ……非礼を詫びる。失礼な物言い、すまなかった」

「VRゲーム」という世界の出身者をこうして連れ歩き、訓練をさせている。
つまるところ、彼はおそらくこの黒騎士の主であり、おそらく相当の実力者であると考えられる。
青年は申し訳なさそうに頭を軽く下げてから、少年へと視線を向ける。

「失礼の詫びになるかわからないが、その煩悩とやらを斬ろう。どこだ?
 ……剣の腕には自信がある。任せてくれ」

どこかから箒を持ってきて、黒騎士同様に素振りを始める。
「黒騎士遣い」の少年に、異邦人はどこか憧れの混じったような表情を浮かべてみせた。

金剛 経太郎 > 「………。」

困惑の表情を浮かべた青年を真顔で見つめる。
それから一連の言動を同様に眺め続け、箒で素振りをし始めた辺りで、ふぅん、と頷いた。

(……なるほど、こいつ面白いやつだ。)
「いや、別にそこまで失礼くもなかったし?
この暑い中、あんたまで暑苦しくなるの止めて。いや、ホントに。勘弁して。」

気怠そうに答えながらベンチに座り直す。
先程からの青年の言をそのまま受け取れば、つまり彼は異邦人で、しかもこちらに来て日が浅いのだろう。

「そいつは喋んないけど、代わりに俺が話相手になるよ。
なあに、単なる気晴らしだから。結果それが煩悩退散につながりそうだし。」

ニヤリ、と幼い顔立ちに不釣り合いな笑みを浮かべる。

シュルヴェステル > 「……そうか。貴殿ほどの男が言うならそうなのだろう。
 斬らば消えるものならば私がと思ったが……ああ。気晴らしになるのなら」

丁寧に屋上の入り口に箒を立て掛けてから、少年の横に座る。
そして、フードとキャップは被ったまま、視線を熟練すら感じさせる笑みに合わせ。
ごくりと生唾を飲む。実力者の気晴らしとやら。
それなりに自分はできる男であると自負しているが未だ未熟の身。
この異世界の「年齢不相応な」「従者すら従える」「謎の少年」にどこまで打ち合えるか。
まるで不要な葛藤をひとり、ひとしきり繰り返してから再び頷く。

「彼は、『VRゲーム』とやらからやってきたのか?
 一人で門を潜ったのか? それとも異世界からの召喚か? して……」

「貴殿は、一体何者だ……?!」

ひとり、熱が入っている。

金剛 経太郎 > (……あー、やっぱり面白いやつだ。はいはい、オッケーオッケー。
大丈夫、こういう手合いっぽい奴らは散々相手して来た事あるわ。所謂RP勢みたいなもんでしょ、こいつは多分ガチだけど。)

「むしろアンタが何者だって聞きたいとこだけどまあいいや。」

こほん、とわざとらしく咳払いをして、ベンチの上で少しばかり偉そうに座ってみる。
片膝を立てて、その上に頬杖ついて。こっちもこっちで調子に乗ったら止まらないタイプ。

「そうだなあ、俺は元々この世界の住人さ。
異世界からの従者をこの世界に招く力を持った、凡庸な人間だよ君ぃ。」

ふふん、とほくそえみながら片手を振れば、黒騎士が動き出す。
大剣を天へと掲げるように持ち直し、恭しく経太郎へと向き直って片膝をついた。

「“彼”はその従者のうちの一人。こうして俺の傍で俺の身を護っている、というわけだ。」

シュルヴェステル > 幾ばくかの沈黙を経てから、青年は視線を少しだけ逸らす。
キャップのつばをぐいと下げてから、「そういえば名乗っていなかった」と呟く。

「私は……私は、シュルヴェステル。
 呼びにくいと何度も言われたが、こちらの言葉に合わせるなら『そう』なる。
 ……シュルヴェステルだ。先に名乗るべきはこちらだった」

二度ほど自分の名前を繰り返してから、その仕草に手に汗を握る。
名乗らなかった身である自分を「まあいいや」で流し、そして、更に。

「……凡庸な人間だと? 貴殿が?」

異世界からの従者を、自分のいる世界に招く。
そんな所業を、「凡庸」と嘯かれてしまっては明らかにこの世界は異常であると認めるほかない。
門を経て荒野に放り出された自分を拾った職員の寛大さを思い出す。
あれは、あの人物が寛大だったのではなく、この世界の人間が全員「こう」なのではないか?

「な、なるほど。
 つまり、貴殿は契約者でありながら学生生活を送り、そして……。
 身を護らせているということは誰ぞに狙われるような人物であると」

真剣極まりない声音でそう言ってから、数度瞬き。
キャップの下から、赤色の視線が少年に向けられる。

「……こんなに射線の通る屋上にいるのも何ぞの策略であるのだな。
 これは失礼。……本当に邪魔をしたようだ。寛大な対応、改めて感謝する」

金剛 経太郎 > 「シュル……なるほど、確かに呼び辛い。
が、まあシュルヴェステル……慣れればそれほどでもなさそうだな。」

繰り返し繰り返し名前を呟いてから、なるほどー、と頷く。
噛みそうと言うほどではないが、慣れない発音をするのは違いない。

「ああ、凡庸だ。凡庸だとも。
俺みたいな奴はこの世界にはごまんと居るぞ。」

ふっふっふ、と不敵に笑いながら再度手を振り黒騎士を立ち上がらせる。
どんどん勘違いを加速させていくシュルヴェステルに面白いなー、と満足げに微笑んで。

「いや、まあ……射線が通るとはいえこの辺りは見晴らしも良い。
周囲にはこの校舎よりも高い建物は無いから、そこまで意味は無いぞ。」

流石に危険な場所だと思われるのは、要らん誤解が誤解を呼びそうで怖いので訂正しておく。

シュルヴェステル > 「何度言ってもシュールストレミングとしか呼ばぬ者もいる。
 それほどでもないのであれば幸いだ。有り難う」

素直に礼の言葉を口にしてから、ペットボトルを手にしようとして取り落とす。
いま、ごまんと言ったか? この世界にはごまんと召喚の術者がいるのか?
いるのだろうおそらく。彼が嘘をついているとは思えない。

「……ああ、そうか。異能者が集っていると聞いた。
 つまり、どこに居たとて同じであるが故にこうして高台から人々を見下ろして――」

おかしな納得をしてから。否、したように見えていただけだ。
隠してこそいるが震える手はペットボトルを取り落とし、動揺のままに自分のパーカーに炭酸飲料を飲ませる。
ひどい惨状に、苦笑いを浮かべてからびしょ濡れのパーカーを脱ぐ。

「して、その実力者であれども煩悩には打ち勝てない、打ち払えない、と。
 ……。……、おそろしいな、この世界は。そんなものまであるのか」

目を細めて黒騎士を眺めながら、へらりと情けない笑みへと笑いの形を変えた。
フードの下の「山火事」と書かれたキャップを再び目深に被り、肩を竦める。

金剛 経太郎 > 「はっは、そりゃあ確かに間違えそうだな!
まあ……俺は覚えた、シュルヴェステル。長いから縮めたくなるけどな。」

シュルとかヴェスとか、そんな感じでと笑いつつ。
何やら動揺し始めた彼を見つつ、流石に罪悪感が芽生える。
でも嘘は言ってないのが性質が悪く、訂正は非常に面倒臭い。
そのうち勝手に誤解も解けるだろうとこの場での訂正は早々に諦める経太郎だった。

「おいおい、びしょ濡れじゃねえか。大丈夫か。
煩悩はまあ、いや、確かに打ち勝てないけども……そいつも使えないし。」

しかしダッセェキャップだな!?とパーカーフードの下から現れた山火事の文字に目を瞠る。
外国人が意味も解らず見た目の良さで漢字デザインを選ぶのと同じだろうかと、首を傾げて。

シュルヴェステル > 「いくらでも切り取ってもらう分には構わない」

頷きながら、びしょびしょになったパーカーを畳んで小脇に抱える。
安っぽいレジ袋のビニルにゴミやらペットボトルと一緒に放り込んで、立ち上がり。

「微塵も大丈夫ではない。見ての通り、この有様だからな」

今日一番自信満々にそう言い放ってから、今日一番の笑みを浮かべ。
続いた言葉に「なるほど、力技では勝てないか」「それなら私にも勝機があるやも」だのと呟く。
そして、立て掛けた箒を片付けるために忘れずにちゃんと持ってから、屋上への入り口に向かう。

「貴殿、名を問うても構わないだろうか」

一角の人物であるところの少年に、ややスポーティーな印象に変わった青年が、去り際にひとつ問いかける。

金剛 経太郎 > 「お、そうか。
じゃあヴェル。ヴェルにしよう、どうだ呼びやすくなったろう。」

海外の言葉だと変に省略しては意味が変わってしまう事もある。
万一名前を縮めた結果、それが彼の祖国で失礼な言葉になってしまう事も起こり得たが、どうやらそうではないらしい。
ということで、経太郎はシュルヴェステルにヴェルという愛称を着けることにした。ヴェスだとなんか犬っぽいし。

「まあ今日は暑いくらいだ、すぐに乾くだろうよ。
 しっかしなんだ、随分と男前じゃねえか。」

ちんちくりんな自分とは大違いだ、と少しばかり嫉妬も込めた視線を投げて

「ああ、そっか。俺も名乗ってなかったな。
キョウタロウ、だ。金剛経太郎。まあ、俺の方も好きな様に呼んでくれて構わねえから。」

ニヤリと笑ったまま、立ち去ろうとする彼を、そのまま見送るだろう。

シュルヴェステル > 「構わない。コンゴーキョータローは切り取るのがうまいな。
 文字斬りの匠と言っても過言ではない。間違えないだけで十分だ」

そもそも「こちらの言葉」に合わせたら「そう」なったというだけのこと。
イコールでない借り物の言葉だ。どう切り刻まれても特に文句は言わない。
現にシュールストレミングでもシュールレアリスムでもポリエステルでも文句ひとつ言っていない。
よくわかっていないというのが10割だが。

その配慮を青年が知ることはなかったが、滲んだいいひと感には敏感に反応し、笑む。

「ああ、男前だろう。見た目以外全部悪いなとよく馬鹿にされたものだ。
 私も私の見てくれだけは十分気に入っている。コンゴーキョータローも気に入ってくれると嬉しい。
 では、また」

貴殿からフルネームカタコト呼び捨てという明らかな格下げが行われているが、特に青年は気にせず。
好きに呼びながら、青年が一度だけ振り返り。

「私は1年生らしい。1はいちばん小さな数だろう。今後とも、宜しくお願い申し上げる」

彼の体格からして、(まあ小さいのだから1だろう……)という確信をもとにそう笑いかけた。

ご案内:「屋上」からシュルヴェステルさんが去りました。<補足:人間初心者の異邦人。人型。>
金剛 経太郎 > 「おう、またなあヴェル!
……やれやれ、何というか根が真面目というか、面白い奴だったな。」

最後になんか滅茶苦茶失礼な事を思われた気がする、と。
彼の姿が見えなくなってから、再びベンチで崩れ溶ける。
話をした事で気晴らしは成功したが、日射の下で元々少ない体力はガリガリ削られていたのだ。
正直な所、経太郎の体力は既にアラートが鳴るくらいには限界だったりする。

「俺も中戻るか……そもそも何で上に来たんだっけ」

待機させていた黒騎士に自分を担がせて。
重厚な鎧が音も立てずに進むなか、ふと考える経太郎であった。


数分後思い出した経太郎は、午後の授業が全く身に入らなかったという──

ご案内:「屋上」から金剛 経太郎さんが去りました。<補足:小学生程の容姿の少年/実年齢18歳/普通の学生服を着ている/お気軽に後入りどうぞ>