2020/06/30 のログ
日下 葵 > 「ふむふむ?
 ここから先は危険度が更新されていますね?
 近々何か作戦行動でもあるんでしょうか。
 なんにせよ、この先に入るにはいささか装備が不足していますね」

端末に表示される地図を見ると、危険度を示す色が濃い赤になっている。
現時点で私個人が立ち入れるのはイエローのみ。
この先を見回るには装備を固めるか、サポートしてくれる仲間がいないといけない。

腕時計を見ると、もうすぐ定時連絡の時間だ。
適当に迂回して、報告をしたら今日は引き返そう。
聞き込みの感じではそこまで重大な異変もなさそうだし、
この先はより専門の風紀委員に任せればいいだろう。

そう判断して、踵を返せば、きた方向に戻りつつ、違う道を選んで帰っていくのであった>

ご案内:「落第街 路地裏」から日下 葵さんが去りました。<補足:風紀委員の制服 コンバットナイフ 拳銃 爆薬等を詰めたカバン>
ご案内:「落第街 路地裏」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。<補足:前髪アップ。本性スタイル。黒オーバーチェスター。>
群千鳥 睡蓮 > ここは路地裏、吹き溜まり。
何かを探して出歩いて、記述の増えぬ手帳にも、さしたる感慨も抱かぬまま。
そこにあるものをみた。運命の数々を覗いた。
誰とも肩をぶつけぬまま、影に潜むように歩き回った。

「……すれちがいかよ。 ついてねえな」

つい先日、大規模な戦闘があったらしい。
それなのに、そのせいか、今宵はずいぶん静かに思う。
噂を聞いて足を向け、見事空振りというやるせなさ。
何やってんだか。肩を竦める自分が足元にいた。
雨のあがって久しいのに、路地裏ともなれば水溜りも長く残る。
鏡像の光源、その本物を確かめるように、夜空を見上げた。

「…………」

親指とひとさしゆびでLの字。両手で組み合わせかぎかっこをつくる。
半端な形の月をとらえる。月は欠けるがいつかは満ちる。羨ましいことだった。

群千鳥 睡蓮 > 月の視え方は島の内外で変わらないように思える。
視点たる自分が変わっていないからだろうか。
月をとらえた、あるいは、とらえているつもりの瞳をにらむように細めた。
きれいだな、と思う。 半分よりすこしふくらんだ、やさしい光を投げかけるあの月を。

「…………」

此処からならば。
転びかけた思考をまばたきひとつで切り替えた。

「それ以外のかたちで、ひととかかわるとき――
 どうすれば識ったことになれると思う?」

ご案内:「落第街 路地裏」にソフィア=リベルタスさんが現れました。<補足:身長:147cm 体重:34kg 妖怪猫ロリババア >
ソフィア=リベルタス > 夜の時間は怪異の時間、教師の仕事も忘れて散歩。
そんなのんびりとしたお月見の時間に、こともあろうに現れたのは生徒らしき少女。
いやぁ、正直ちょっとおっかないんだけど、放置するわけにもいかないというのは辛いもの。
いきなり喧嘩をふっかけられるのも嫌なので、黒猫の姿のままでとりあえず声をかけてみることにする。

「とりあえず会話すればいいんじゃないかな?」

吾ながら場所を選べと少し思う。
ここは落第街、ならず者が多く集う場所。
本来ソフィアが来るような場所では断じてない。

群千鳥 睡蓮 > 「………え?」

ひとりごとに応えが返ってきたことに、間の抜けた声を出す。
その後、視線が真っ直ぐに声の出どころに向いた。
姿を認める。有り様を観る。そして運命を視た。
ファインダーを月から黒猫へと移す。間違いはないはずだ。

「猫さん……いや、今更だな。
 ついこの前も、猫みたいな奴とお話したわ。
 対話ね、確かに、まずはそこからか……なんだよ、付き合ってくれんの?
 今日はあいにく気の利いたもんは持ってないぜ」

彼女が教師だ、などと知る由もない。
学園での群千鳥ではなく、外での睡蓮として、
ずれたチェスターコートから覗く素肌の肩を竦ませた。
冷えた壁によりかかり、腕を組んでみた。

ソフィア=リベルタス > 「私でよければ付き合うよ? 月見でもしながらね。
あぁ、この姿のままだと不便なら、君に合わせるけど?
というか寒くない? 大丈夫? 風邪ひかないようにね?」

暗闇に光る黄色い眼光をパチパチと瞬きで点滅させては、壁に寄り掛かる少女をじっと観察する。
落第街にいる割には、という感想が真っ先に出たが、本人にはいうまい。
猫とお月見に生じてくれる若者、なかなか良いんじゃない?

年寄り臭い思考に染められながら、まぁ一応生徒の安否確認はそれでそれで大事なものだ。
風紀がどうとかは知ったことじゃぁないし。

「君こそいいの? 退屈そうに見えるけど?」

群千鳥 睡蓮 > 「こっちが付き合ってもらう側なんだ。
 あんたの一番ラクな形でいーよ。猫だろうと、なんだろうと。
 …ん、ああ、……大丈夫……ありがと……偉く気遣わしいにゃんこだな……?」

訝る。ただの通りがかりが、探検中の自分の独り言を好奇に思ったのだろうか。
言われるままにコートを羽織り直す。七月も間近とて、まだ夜は涼しさが感じられる。
問われれば組んでいた腕を解き、左手を振った。
手品のように、革張りの手帳が現れる。

「さっきまでは、ね……。
 異能とか、怪異とか。 そういうのを集めてるんだよ、こいつに。
 いまは……しゃべる猫さん。あんたのことが書けるだろ。
 識るために――どうすればいいのか、あんたの叡智を授けてほしい。
 あたしは、睡蓮、とでも名乗っておくよ。あんたは?」 

ソフィア=リベルタス > 「ふむふむ、教えを請われるなら答えないわけにはいかないよね。
それは気を遣うさ、生徒を気遣わない教師はいないだろう? 居ないよね?
この島にはいないと思いたいなぁ。 あぁ、でもマッドな人もいるからねぇ。
じゃぁ、お言葉に甘えまして。」

捲し立てる様に言葉の波を送りながら、猫の姿を煙に変えて、こんな夜だとその煙すら月明かりでしか見えなくなってしまうが
煙は少女の姿へと変わってゆく。
一風、中世から出てきたような、産業時代の服装ででてきたような、猫の面影を未だ残す小さな少女。
睡蓮よりは20㎝ほど小さい体躯で、隣に寄り掛かり。

「やぁ、私はソフィア。 ソフィア=リベルタス。 こんばんわ睡蓮。 良い夜だね。」

首を小さくかしげてにこりと笑う、あぁ、この少女もまた学びの徒なのだと。
ほんの少しうれしくなる。
年寄りが若者と話せるというのはうれしいものなのだ。

群千鳥 睡蓮 > 「あ?教師……?」

眉根を寄せては、絵本で読むように少女の姿へ化身した猫の挙措を見守った。
見守るしかなかったともいえる。ただのファッション、というには様になり過ぎた有り様。
ひとめで尋常の人でないことがわかる。名前を聞けば短い学校生活のなかで得た智慧が、思考しろと囁く。

「……魔術をご指導されてる、リベルタス先生、でしたか。
 それならそうと、先に言ってくださいよ……その、こういうところに出入りしてること。
 他の先生とか、生徒には……言わないでもらえますか。
 真面目でおとなしい生徒で通ってるんで……いちおう」

名前は聞いたことがあった。魔術の適正がないので、授業は選択していなかったのだが。
低く抑えた、学生としての自分ではない素の声のまま、相手が教師と見ればそれでも居住まいを正す。

「一年の群千鳥睡蓮です。
 そうですね、月がきれいですし、こんな淀んだ場所でも風は透明だ。
 なにより……ここであなたと出会えた。すべては必然、運命の導き。
 良い機会にしたいと思います……あなたのことを、識りたい。
 とはいっても……まずはあなたからの質問に答えるべき、ですかね?なにかあります?」

伺わしげに問う。いまは夜。仕事はとっくに終わっているだろう。
教師と生徒とはいえ、授業外だ。通すべき筋は通したい。

ソフィア=リベルタス > 「ぶふ、あっはっはっは! そんな今更かしこまらないでおくれよ、調子が狂っちゃうじゃないか!
さっきのままでいいよ。さっきの、有りのままの君がいいんだ。
私が言うのもなんだけれど、猫を被るのは疲れるだろう?
私は君を知りたい、君は私の知恵を知りたい。
どうかな? winwinの関係ってことで一つ。

あぁ、安心してほしい、私はこの町の風紀とかぜーんぜん興味ないから、君が過去や未来で何をしていようが私の知ったことではない。」

やはり、なんというか不思議な子だ、というのが率直な感想だった。
真面目なのか、悪ぶっているのか、それとも何かに飢えているのか、まぁおそらくは最後だが、
その割に均衡がとれている、所謂精神の均衡とでもいうべきか。
ヤバい人間ならそれこそ今の会話で襲ってきそうなものだが、そんな装いはこれっぽっちもない。

「んー、しかし私の名前を憶えているとはなかなか優秀というか、よく覚えてるね、今のところ私の名前覚えてるの君だけだよ。」

とケラケラ笑う、正直少し毎度名前を憶えられていないのは寂しかったのだ。

「で、遠慮は抜きにして、構わないよ、私は教師で、君は生徒だ、私は教える人物で、君は識るべき輩だ。
ごらんのとおり、私は怪異、化け物、妖怪、人間ではない異邦人。
ちょっと他の生き物に化けるのが得意なだけの化け物さ。」

群千鳥 睡蓮 > 「ちょっと……笑わないでくださいよ……!」

顔を赤くして、楽しそうに笑う彼女に不満げに抗議した。
そのあと壁に後頭部を預けると、眼を閉じて、言い訳がましく言葉を並べる。

「べつに自然体です、ありのまま、ですよ、これでも。
 普段はもうちょっと声とかつくって……『せんせー!』って感じで……。
 あたしは、子供で……生徒で。 リベルタス先生は、先生でしょう。
 肩書だけじゃなくて、あなたは『先生』だから、こう、接させてください。
 あたしが、生徒であって、子供であることを、見失いそうで。
 汚い言葉とか、暴言があっても……お目溢ししてくれるというなら、まあ」

照れと羞恥を隠すように、話しているうちに落ち着きは取り戻せてきた。

「きょう、ぜったい忘れられない名前になったと思う。
 ――異邦人。 『外つ国』からの。 さっき猫に化けていたのはそういう――
 口ぶりからして異能ではなく異邦人として備わった特技、ですか。いや特性、種族的な習性か……?
 猫に化けられる。いいな。あたしにも化けられたりします?」

物怖じはしない。そして、化け物という言葉も否定はしない。
人と人を並べて比べるだけでもこんなに違うから、化け物というだけであれこれ見る目を変える必然性がないだけだ。

「この眼で、猫からいまのお姿になったところを観たので、こいつは自動で書いてくれるんです。
 教えて、見せてくれれば――あるなら――あなたの異能も。他の魔術も。
 ただね……視る、分析し、正確な事象をこの手帳に記したとする。
 だが、それでは……それだけでは『識った』ことにはならないのではと。
 それがさきほどに月に問うていた思索です……なんか聞かれてたって思うとめちゃくちゃ恥ずかしいな」

口元を手で覆って顔を逸らす。独り言を聞かれるのって、存外効くものだ。

ソフィア=リベルタス > 「んふっふっふ、めんこいめんこい。 君は素直だねぇ。
うん、良い生徒だ、私が太鼓判を押してあげよう。
自ら学ぼうというその姿勢、他の生徒にも見習ってほしいものだねぇ。」

うんうんと何度もうなずきながら、恥ずかしがる若者を背伸びをし、わしわしと撫でる。
こういう顔を見ることは、厳格な教師では決して味わえないだろう。

「当然、一度見た生物になら化けられるさ、外見だけだがね、逆に言うと、生物でないものや、その性質までは真似られない。
これは、私の、うーん、異能、というよりは、存在としてもともと持っている力というべきかな。」

悪魔でも外見だけ、それがソフィアの『変幻万化』の能力。
だれかに、何かに成りすます、入れ替わる、騙すための力。

「ま、無茶をすれば本質も真似ることはできるけれど、あまりやりたくないで、いろいろ代償ってものがあるのさ。」

彼女にとってそれは便利な力であって、何か特別誇るようなものでも、隠すようなものでもない。
喋ったからにはもう驚かせるのも難しいか? いやそんなことはないだろう。
人間というものは予想外には弱いものだ。

「独り言っていうのは自分の中身を整理するためのものだ、そう恥じる物でもないだろう。
いや、なかなか詩的で美しいとは思うがね? 」

当然揶揄うことも忘れない。

「では逆に問おう、君にとって『識』とは何かな?」

群千鳥 睡蓮 > 「そのぶん、別のところでだめな生徒、ですから――
 でも、学ぶために来ました。それは、確かです、でも……
 授業を受けに来た、わけではなくて……いつか、がっかりさせてしまうかも」

撫でられると…振りほどけない。大人と子供。体格に依らない差はたしかにある。
好きにさせる。くしゃくしゃになった髪。バングのセットが崩れて、片目だけにかかった。

「種族ではなく、存在の……ああそうか、先生はそういう。
 化けるモノ。その様に『在る』モノ……なるほど?
 ……どこまで真似られるかを突き詰めていては、自分を見失うから……?
 もし、本質というところまでを模倣したとき……
 『もとに戻った』先の自分が、ほんとうに自分なのか、とか。
 ……化けられるだけでも、楽しそうですものね。猫になれる、鳥にも?
 自分以外になりたい人なら、羨ましがりそう…先生は、ソフィア先生でいてね」

考えると、少し恐くなった。首の裏側を撫でて、苦笑する。

「ほら、やっぱりからかってる…! 詩は、ね……きらいじゃないですけど。
 人に見せるつもりで書くものでは、必ずしもないでしょう……ん……?」

からかわれっぱなしだ。今なら何にでも騙されそう。
真っ直ぐ問われたことには眼を丸くしてから、

「あたしの……識、とは何か……識……」

癖なのか、唇を指先でたたき、なぞりつつ。

「知識……識を、知る……感じ取ること……受容すること……
 ………『世界』? あたしが受け止めた……こと、……
 ……言葉にするのは難しいです、でも……そう……感覚的なもの、かな……?」

直感的に応えてから、捕捉する。改めて考えると、不思議なものだ。知識という字は。
感覚的なものであるというなら、手帳に記される『事実』とは少し違うものな気がして。

ソフィア=リベルタス > 「一を教えると十を知るしとっていうのはいるんだなぁ。 いや、これもある意味天才というのか。
うん、そうだね、私は私という存在が希薄になりすぎると、消滅するというリスクを負ってこの能力を行使している。
自分を自分として認識できなくなったら、私という存在は永久に失われるわけだ。」

正直、ここまで見抜かれるのは衝撃的であった。
称賛に値する思考力に観察眼だろう。
故に、彼女は「知りすぎる」、だから本当の意味で『識』ることがない。
見ただけで、というのは自分が言うのも業腹だが、少々不幸なのかもしれない。

「識る、とは道理を捉えるということだ、事実を捉えるのとは少し意味合いが違う。
道理、とはつまり理(ことわり)だ。
学者っぽく言うのなら、全ての物事には理が存在する。
簡単に言うなら、そうだね、君の知る言語でいうなら、理由、かな?」

物事には理由がある、存在する理由、生まれた理由、力の伝達、事象の根源、全てに元となった何かが存在する。
生命が海から生まれたのにはアミノ酸が関わったように。

「その本に書かれるのは結果だけだ。 君が知りたいのは、そこじゃない、本質だからこそ、君はそれだけでは知った気にならないんじゃないかな?」

例えば、基礎の足し算ができなければ掛け算ができない様に、物事には過程が必要なのだ。

群千鳥 睡蓮 > 天才、と言われると、少し体をもじつかせた。
それが肯定的な言葉では必ずしもないことは、たかだか十五年の道筋ですら弁えられたことだ。

「月がああも輝くのは……太陽の光があるゆえ、というように……?
 なるほど? ……なるほど? つまり……ああ。
 それを例えとすれば、こいつには、『月が輝いている』としか書かれないから
 あたしは月を識ることができていない、という運びですかね」

かなり大雑把な喩えばなしになったが、うなずくことはできる話である。
この手帳はそれそのものの成り立ちを記載することはなく、どのようなものかを淡々とする。
それで十全に異能として機能する。正しく事象が書いてあれば。思えば浪漫を解さないやつだ。

「そしてあたしには、月を識れていないという実感があるから……。
 ……これは、しかし、それで十分だと言うんです。
 この手帳には副次的な効果があって…いいことが起こるんですが……
 私が正しく分析し、記せばそれでいいと、いいことは起きるんです。
 でも何かが足りない、いや、足りないからこそ、あたしは『こんな』なんです。
 あの月みたいに……いや、もっと鋭い三日月みたいに欠けてて……ふつうじゃない。
 ……識っていけば、満ちますかね。あたしに足りないものは……?」

ひたすら手帳を満たし、際限なく鋭さを増す己のいびつさに気づいたからこそ、
ここに来た。ここに在るすべてを喰らうために。
空を見上げた。月は島外と同じように視える。だから今までと同じじゃだめなのだ。

「すべては……運命のもと、複雑に因縁が絡み合い、縁起して果を生み出す。
 それが識というならば、すなわち、自己の認識というものは、
 『ソフィア=リベルタスが、ソフィア=リベルタスで在る由縁』……
 ……先生のお言葉を借りるなら『理由』を、みずからとらえる、ということですか?
 ……先生はどのようにして……『ソフィア=リベルタスである』んですか?」

興味は、彼女の異能でなく、存在に移った。
ではまず、識ってみよう。おそらくは、手帳に記されぬものを。
直感的な疑問で、教師を困らせる生徒のように、まっすぐな視線を彼女に向けた。
そのこたえが……もしくはこたえをもらうという一連の動作が、自分のなかで、なにかを育むのかという予感が籠もる。そこには教師への純粋な信頼と期待があった。

ソフィア=リベルタス > 「私がどうしてソフィア=リベルタスであるか、だって?」

なかなか、どうして、人間というものは分からないものだ。
ここまで物分かりがいいのに、こんなところで彼女は躓いている。
いや、おかしいことではないのかもしれない、齢10幾何の少女にとっては、
自分が何のために生まれてきたのか、と問いかけるようなものだ。
だれにでもそんな記憶はあるだろう。

「そんなものは決まっているじゃぁないか、睡蓮。 簡単だよ。
だれでもわかる簡単な答えだ。」

彼女をがっかりさせてしまうかもしれない、ありきたりな答えすぎて
教師としてこたえるには、余りに学がない。

「そりゃぁ、私がソフィアとしてありたいからソフィアとして存在しているんだよ。
それ以外の理由が、必要かい?」

わたしは、こうして人間と語らうことができる、このソフィアという存在が気に入っているのだ。
それ以外の理由など、知りはしない。 ありもしない。

「君がそうであることを君が望んだように、私も私であることを望んだから存在するんだよ。
群千鳥 睡蓮。」

子供を見るような優しいまなざしで、『化け物』が微笑んだ。

群千鳥 睡蓮 > 「………。 ……………?」

彼女の言葉を聞く。言っていることは、とてもシンプルなしくみだった。
そしてしばらく噛み砕いて、教師から外れた視線は下を向いていたが、
ぴんと来たのかしばらく月を見上げた後に、あらためてソフィアに視線を向けた。

「こう在りたい、という意志が、自己認識という道をつくるという理屈は、得心しました。
 ……あなたがすてきな先生で在りたいと思っていてくれたのは……嬉しいです、とても」

特段深刻なものでもなしに、視線をそむけると。

「あたしは漠然と、もっとも強きもので在りたいと望んでいます。
 すべてが終わったときに、それを運命として笑って受け止められるように。
 ……それは客観的に『知って』いるだけで、きっと『識れて』はいないんでしょうね」

教師の笑顔が眩しかった。こたえたかったけど、さらなる迷い路に沈んでしまった。

「ソフィア先生のこと、すきです」

手帳を弄う。うっすらほほえみながら、穏やかに語る。

「友達といえるひともいて…ここでもできました。
 当然、嫌いなやつもいます。見下げ果てたやつ、許せないやつも。
 …家族がすきです。そういう外的な因果が、わたしを群千鳥睡蓮である、と定義してくれるのかな。
 理由……識、ですか。きっとそうなんですが、わたしはきっと物事をまず『知って』しまうんでしょう。
 たかだか15のガキが、小生意気に、識ったかのように……」

もっと大きな単位で、もっと大雑把な枠で、見てしまう。
手帳を見つめる。これが在ることで、全ての異能者と、異能者を異能者たらしめる常人、
――『自分以外のすべて』を『自分のために価値がある尊いもの』と「知る」ことができる。
だから、どうにか、ぎりぎり、抑えが効いているのだ。
他者を観たとき、はっきりと知れる死への道行き、天命、必然の落着。
見えてしまう――知れてしまうものは、どうしても証明への興味を誘ってしまうのだ。
殺したいんじゃない。相手が自分に殺されるために生まれてきたのか確かめたくなってしまうのだ。
虚しさしか残らずとも、『知れて』しまうから。

「ソフィア先生みたいに、はっきりと、こう在りたい、というのが見えてればいいんですけどね。
 それは……多くを『識って』いけば、透明になってくるものでしょうか?」

少し考えるの疲れちゃった、と、頬を壁にあずけて、溜め息。苦笑した。
とてもわかりやすい授業だった。だからこそ胸の内側がいたくなった。 

ソフィア=リベルタス > 「………」

黙って、生徒の告白を聞いていた。
能力を持ってしまったゆえに、自分を失いかけている少女の独白を。
聴くことしかできない。
自分は教師であって、導くものではあるが、答えを指し示すことはできない。
それは、彼女自身が導き出すべきことだから。
そんな痛々しい彼女が、今にも泣きだしそうな子供に見えて。

「それは私にはわからないな。 多くを『識』るということは、確かに君を育てるだろう。
君を構成するいくつもの要素になりえるかもしれない。
だがそれは、君の根源にたどり着きはしないだろう。
だがね、睡蓮。」

この世界に、現実に、彼女自身にあきらめてほしくは無くて、つい言葉に出た。

「考えることをやめてはいけないよ、君が君であることを、君が如何ありたいかということを。
だれに向けてではない、君が、君自身に問いかけ続けなくてはいけない。
誰かではない、君がなりたいものを、見つけるために。」

それは、化け物が教師としてではなく、一存在として、少女に送ったエールだった。

「君みたいな優秀な生徒が、全てをあきらめてしまうのは、実に惜しいからね。」

体裁を繕う、そんな言葉しか送れない自分の無力が、初めて悔しいと想った。
智慧など、役に立たないときもある。

「きっといつか、君を見つけてくれる人と出会えるはずさ。」

そう、だれにでも、そんな存在はいる物だと
それこそが、きっと運命というものなのだ。

群千鳥 睡蓮 > 「そう、あたし……考えるためにね、ここに来たんだと思う。
 考えずに外にいたころは、面白くもなんともなかったけど、すごく、楽で……。
 ……まあ、ちょっと色々あって、このまんまじゃだめなのかなって……」

考えろ、問いかけ続けろと向けられると、恥ずかしげな苦笑で受け入れた。
この学校に来た直接の理由は、語るのも恥ずかしいものだ。
それらが自分を縛り、そうすることで、彼女の言葉を借りるなら、
辛うじて「群千鳥睡蓮」を自ら認識できている。わかりやすい。
『叡智(ソフィア)』とはよく言ったものだ。
難解な言葉必要なかった。智慧は明晰に降りてきて、この身に注がれる。月光のように。

「はい、かんたんに……放り投げたりは、しません。
 そうするのがたぶん、一番かんたんで……でも、それは多分弱者の行い。
 考え続けますよ、問いかけ続けます。 
 大変ですけど、たぶんあたし、あんまりそういうのきらいじゃないんだと思う」

欠けた月が如何に満ちるか。少なくともえぐり取ったような空漠に、
真っ直ぐな優しさと、激励は、じわりと染み込んだから。
微笑みで頷いた。額面以上のものが伝わって、だからとても嬉しい。
優しくされると、嬉しくなる。

「先生も、あたしを見つけてくれたひとだよ。ありがとう。
 ……こうして、ここで出会えた必然の、その意味も……ちゃんとずっと、考え続けるから。
 ね、学校で……またヒマなとき、話に付き合ってくれる?
 物分りの良い生徒じゃあ、ないと思うけど」

自虐的に笑って、いまからは少し考える時間。
のんびりと、次第に朝もやに烟りゆく月を眺めながら、
敬愛すべき恩師のひとりに、そんな軽口をむけたのだ。

ソフィア=リベルタス > 「あぁ、もちろん。 もちろんだとも。 生徒の訪問は、教師にとってうれしいものだよ。
いつでも、来るといい、学校なら、きっと図書館にでもいるだろうからね。」

生徒の言葉に救われた。
自分はまだ教師でいられると、少しだけ安心する。
彼女をまだ導ける存在でいさせてくれることに、感謝を。
口惜しさは残る、しかしそれもまた、自身の智慧になる。
この経験を無駄にはしまい。

「バカな子ほどかわいいと、言うだろう?」

可愛い生徒に、精いっぱいのエールを込めて、もう一度化け物は微笑んだ。

ご案内:「落第街 路地裏」からソフィア=リベルタスさんが去りました。<補足:身長:147cm 体重:34kg 妖怪猫ロリババア >
ご案内:「落第街 路地裏」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。<補足:前髪アップ。本性スタイル。黒オーバーチェスター。>
ご案内:「落第街 路地裏」に227番さんが現れました。<補足:白い髪、青い瞳。ボロボロのマント。フードを目深に被っている。裸足。待ち合わせ無し。>
227番 > 空から水が降ってくる。
あめというらしい。瓶に入ったものと同じ名前だ。

できればマントを濡らしたくなくて、軒先で雨宿りをして、空を見つめる。

227番 > どうしよう。

このままこの雨が止まなければ、濡れて帰るか、ここで丸くなって眠るしか無い。

できれば濡らしたくはない。代わりはないのだから。
乾かすのも、一苦労だ。
どうやって乾かせば良いのかもよくわからない。

かといって、ここで眠るのもあまりよくはない。
身を隠せる場所ではないからだ。
……知らない人にも、知っている人にも怒られてしまう。
それは避けたい。

227番 >  

227は、雨が嫌いだ。

雲がきらきらひかる星を覆い隠し、水が臭いを洗い流し、周りの音をかき消す、雨。

恨めしく、真っ暗な空を見る。

……風も少し強いみたいだ。
マントがなびいて濡れないように、しっかりと握る。

ご案内:「落第街 路地裏」にシスター・アリアさんが現れました。<補足:銀髪のシスター、今回は優しい?>
シスター・アリア > 「あらあらぁ、大丈夫ですかぁ?」

ニコニコと笑いながら、シスター姿を見せて、傘を持って現れた

227番 > 「……だれ?」

声をかけられれば、驚いて距離を取ろうとする……が、
軒はそんなに広くない。体をすこし引く程度しかとれなかった。
それでも、いつでも逃げれるようにと、姿勢を低く持った。
その格好から相手がどういう人物かを連想できるような知識は持ち合わせていない。

シスター・アリア > 「そうですねえ、アリアと申します、神の僕などをしています〜、そこに居ると風邪を引きますよう、こちらへ如何ですか?」

優しい声で呼びかけて

227番 > 「……かみ……?」

知らない概念に首を傾げる。

声色は優しいものだと感じるものの……じっと相手を見たまま動かない。
ここは落第街の路地裏だ。他人に警戒心を持たずに居られる方が稀有な存在だ。

「……どうして?」

見知らぬ人間に声をかけられる野良猫のように体を引いたまま見つめている。

シスター・アリア > 「わたしの仕事ですからねえ、安心して、とはいきませんがぁ、放っては置けませんよぉ」

自分が濡れるのにも関わらず、傘を貴女に向けて

227番 > 「しごと……」

たまに聞く言葉だが、それが何なのかはよくわからない。
見れば、相手が雨にさらされている。

「……濡れる、よくない」

自分のためにそうまでされるのが不思議でたまらないが、
それはさておき、このままだと相手はもっと濡れてしまう。

「……わたしは、どうしたら?」

シスター・アリア > 「そうですねえ、信じてるものは、ありますか?」
優しい声で近づきながら

「私はぁ、良くあれ、と言う事を信じています、ので」

「雨宿り、しませんかぁ?雨風は凌げるのでぇ」
こう、提案する

227番 > 「信じてるもの……?……ともだち?」

質問の意味がよくわかっていない。
近寄られるも、そもそもこれ以上さがる余地はないので、そのまま聞く。

「あまやどり……どこか、行くの?」

ここに居ても雨宿りはできているものの、そう提案するということは、場所を変えるのだろうと思った。

シスター・アリア > 「友達が心配しますよ?雨に打たれているのは」
にこりと微笑みながら

「はい、わたしの寝床ですけれど、雨が止むまで、どうぞ?