2020/07/02 のログ
ソフィア=リベルタス > 「やぁ、閃先生でしたか。 かまいませんよ?
どうぞ、ここは別に私の領土というわけではありませんからね。」
ざわめきと、足音で、誰かが近づいてきたこと自体は分かっていた。
まさか数少ない教諭の一人が、同じ場所にまみえるとは思ってもみなかったが。
「えぇ、まぁ釣りは確かに趣味の一つではあります。
精神を落ち着けられる手段としても優秀でしょうね。
今日は別段、何か用事があった、というわけではありませんよ。
そうですね、物思いにふけっている、とでもいうべきでしょうか。」
たしか、彼はこの世界の生まれの人間だったはず。
そこまで長く接しているわけでもないので、どういった人物かは測り兼ねてはいるが。
まぁ、言った通り、ここは私の領地ではないのだから、だれがきてもおかしくはない。
「誰かに聞かせるような話でもありませんよ。 ただ、こうして海を眺めているのも、偶には良いものでしょう?」
だからと言って、自分の出生や、学園にも秘匿している情報を、話すつもりにもなれなかった。
悪い先生、とか、信用ならない人物だから、とかそういうことではなく。
単純に、理由がない。
閃 天兎 > では、と会釈して彼女の隣に少し離れて片足を立てて座り込む。
砂は白衣が阻んでくれるからそう気にする必要はない。
「そう仰るのでしたら余り詮索はしませんが...
...そうですね、私も今日はその気でここに来ましたし。
まあ、何かの縁です。少しお話ししましょう」
ソフィアと同じように唯、海を見つめる。
暗闇の中で波の音を静かに鳴らしながら揺れる海はどのような感情を引き立てるのか...
ソフィア=リベルタス、だったか。
異邦人の怪異である彼女のことは話には聞いても、あまりどう言った人物かは知らない。
ただ、落ち着きなくいろいろなところを彷徨っている、と言った事は聞いている。
そんな彼女が「思いに耽っている」所に遭遇するなど、何かの縁かもしれない、なんて。
あまり関わりがない彼女と話しておくにもいい機会だ。
「そういえば先生は異邦人でしたっけ?
どのような世界からおいでになったのですか?」
海を見つめたまま、波の音に掻き消されない声量で尋ねる。
異邦人は多くいて、その数だけ異世界は存在すると言っても過言ではない。
純粋な興味ゆえの質問。そこに他意はなく。
ソフィア=リベルタス > 「どのような、ですか。 そうですね。」
昔の、望郷の地を思い出す。
「あそこは、科学技術が発展した世界でした。 ある意味では、こちらの世界よりも、余程。
またある意味では、こちらの世界が勝っていたともいえるでしょうね。
閃先生は、スチームパンク、という創作の世界観をご存知ですか?」
ソフィア自身、この世界に来て初めて知った言葉、世界観の表し方。
蒸気機関が、もしそのまま発達したら、という、蒸気と鉄の街。
そんな機械でひしめき合う世界観を、この世界ではスチームパンクと呼び表すらしい。
この世界の娯楽である、『文庫本』という書物で知り得た知識だった。
「私の世界は、まさにそういう世界でしたよ、ただ、蒸気機関には様々な問題がありました。
環境汚染や、資源の枯渇、生態系の乱れ、えぇ、この世界より、余程荒廃が進んでいたでしょう。」
いつか、こちらも世界もそんな風に変わってゆくのだろうか。
そうは、なってほしくはないが。
「ただ、人間たちは技術を捨てることはできなかった、今を捨て去り過去に戻ることなど、土台無理な話だったのです。」
あぁ、懐かしい思い出だ。
あの世界では、いつもの洋装もおかしいものではなかった。
今となっては、あの霧にまみれた都市が懐かしい。
閃 天兎 > 「なるほど...スチームパンク、ですか。
ええ、存じております」
創作物にあまり興味は湧かないが、話題としてその類の単語は一応把握している。
確かに、ソフィアがそのような世界から来たのであれば以前見かけた彼女の普段の装いも納得出来る。
思い浮かべてみれば違和感なくその姿が馴染んだ。
「人間が技術を捨て去る事は...こちらの世界でも無理でしょうね。
捨てなければ世界が滅ぶとしても、私にも出来ませんとも。
一度進んだ文明を巻き戻す事なんてやろうとすら思えません
ええ、嫌ですとも。誰がこんな楽な世界捨てられますか」
何か特徴を付けて語るまでの考えでも無い。淡々と述べよう。
彼女の世界の住民の思考は決して彼女の世界の住民特有の思想ではないだろう。
地球の人間たちだって、きっと同じだ。
それが例え異能者であっても魔術師であっても、私であっても。
海へと向けていたその深く黒い、気力の無い瞳が彼女へと向けられる。
「...ですが、あなたはそんな汚れていた、空気の淀んだ故郷が懐かしい。
違いますか?」
なんて、少し思いやるような、それでいてメスを入れるような鋭さを持った一言を彼女に向けた。
ソフィア=リベルタス > 「うん? あぁ、いや、そうでもありませんよ。
懐かしい顔ぶれや、思い出のある土地も多いですが。」
今更、というほかない。
ソフィアは途方もない時間の中を生きてきた。
それこそ何世紀という長い時間の間、あの世界の、発展と栄光の歴史を
そして、その中で育まれてきた営みを。
確かに、逢いたくなるような顔や、帰りたくなるような故郷もあったかもしれないが。
「わたしは、あの世界から放逐された『化け物』ですからね。」
ただそれだけのことだ、それ以上でも、以下でもない。
また、人の顔触れが変わるだけ。
時間の流れに取り残された怪物が唯、また一人で、そこにいるだけに過ぎない。
「技術、あるいは知識を極めた人間という種族は、未知、というものを恐れるものです。
自らが発展させ、並ぶ者が居ない筈の成功の頂点、しかしそれですら理解の及ばないもの。
えぇ、それが私でした。 だからこそ、彼らは私に恐怖した。」
恐怖という感情は、同時に人間に同一の目的を与える事が在る。
「そうして、わたしはあの世界から放逐された。
あの世界から私を追い出すことで、彼らは安息を得た。
まぁ、私もその方法までは存じ得ませんが。」
向こうの最新の技術力など、興味もなかった。
浪漫を失った、技術に溺れた人間たちに興味などなかった。
「ゆえに、私はあの世界に懐かしさを覚えたとしても。傷心になることはないでしょう。」
人間を愛しているからこそ、人間に失望した。
少なくとも、あの蒸気の世界では。
「ある意味感謝はしているのですよ、このような面白い場所に来られることになったのですからね。」
ご案内:「浜辺」から閃 天兎さんが去りました。<補足:白衣と黒いスーツ>
ご案内:「浜辺」に閃 天兎さんが現れました。<補足:白衣と黒いスーツ>
閃 天兎 > 「そうでしたか。それは失礼」
偉そうに言った割にそうで無いと言われてしまい恥ずかしい限りで...
バツが悪そうに視線を海へと戻す。
「しかし...化け物ですか
化け物ってなんでしょうね」
化け物。その言葉が示すのは一体何に当たるのか。
もし超常の力を持つ存在のことを指し示すのであれば、私だって化け物の一種だ。
「あなたの故郷があなたを化け物と言うのであれば
この世界は化け物で満ち溢れていますよ。
ほら、私だって化け物だ」
なんて、人さじ指を立てれば、その先端が揺らぎ人さじ指が見えなくなるだろうか。
「あなたの故郷は気に入らないあなたについての探究を怠っただけだと思いますよ。
あなたを追放する時間であなたを知ろうとすれば良かったんです」
消えた指先が揺らぎと共に戻ってくる。
「この島にはあなたの仲間が多く在りますよ
理解できない異能やら魔術やらを振るう多くの人々、どんな生物にも当てはまらない怪異。
あなたもそのうちの一人でしかありません。
私だってそうです。なんでこんな幻視を見せられるのかわかりません」
指先に魔術で点火しする。
小さな光があたりを照らしだし、僅かな潮風が其れを掻き消し再び闇が訪れる。
「良かったじゃ無いですか。
彼らはあなたが化け物では無い世界にあなたを送り出してくれたんです」
「もし、それでも自分を化け物と言うのでしたらー」
一呼吸
「この島にはあなたと同じ化け物しかいませんよ」
当たり前であるかのように、何事でも無いように。
鋭くも無い口調で。そう言い放った。
ソフィア=リベルタス > 「んっふっふっふ……、そうですね、あなた達の言う、『化け物』という基準でいうなら、その通りです。」
一般的に『化け物』といえば、所謂、怪物をイメージするのだろう。
『未知』で、『奇怪』で、理解の及ばない『生き物』。
言われてみれば確かにこの島には、ある種化物ばかりの島ともいえる。
無能力の人間もいる故に、しか、というには少し誇張だとは思うが
慰めようとしている、そんな気配を感じる者に訂正しようという気は流石に起きない。
「私は生徒を化け物、というつもりはありませんよ。
そんなことを言ったら彼らはきっと傷ついてしまいますからね。
この世界で、それは中傷の意味を持つと聞きました。」
それも、随分と昔のように思える。
「えぇ、ある種私たちは化け物です、能力を持たない彼らにとって、私たちはまぎれもなく。
ですが、そうではありません。 閃先生。」
ソフィアと彼らには決定的な違いが、そこにはある。
「彼らは生徒であり、人間です。 ですから、生徒の前ではそんなことは言ってはいけませんよ?」
ハハハ、とどこか自嘲的に笑って。
「わたしは、私という『現象』を、『化け物』と呼称しているにすぎません。
侮蔑ではなく、そうあるものとして呼んでいるんです。
皆はよく、私を化け猫の怪異、と思い込む傾向がありますよね。
無理はありません、私が普段人間か猫に化けることが多いですから。」
それは、ソフィアにとって都合のいい也代われる相手だから。
「わたしは、化ける『怪異』なんです、そこに制限はない。
人物だろうが、故人であろうが、物であろうが、区別なく、私は化けることができる。
やろうと思えば、という注釈がつきますが。」
やろうと思わない理由が、そこには存在する、ということで。
「先生、もし、私が、貴方の記憶も能力も、そのすべてをコピーしたとして、えぇ、仮にの話です。
仮にの話ですよ?
そこに私とあなたの違いは、どこに発生すると思いますか?」
隣に座っていた少女は、閃の外見になり替わる、ドッペルゲンガーでも見ているようなそれは。
『異質』というほかない。
閃 天兎 > 「そうですね...
まあ、生徒のことをそんな化け物と呼んだりしませんよ
あくまでも超常の存在であるあなたが化け物であるなら、皆化け物と
そう呼称しただけです。
私にとっては皆普通ですよ。
超常の存在で化け物とも言えるかもしれませんが...ええ、皆普通です」
そんな皆化け物な訳がない。
あくまでも皆あなたと同じ。あなただけが化け物ではないと、そう言いたかっただけだ。
「ですから、力を持つ生徒を化け物扱いしたり、それこそ化け物呼ばわりなど...
生徒でなくても、在り得ないですよ」
この島に住むどんな存在も化け物足り得ない。
なぜならこの島では超常が常だから。
超常など存在しないから。
「化ける怪異、ですか
そうですね、てっきり私も化猫の怪異とばかり思っていましたね。」
そんな耳が生えていて、人の姿をしていれば。
まあそうも思うだろう。
「そうですね...違い...ですか」
私が二人になる、と言うことだろうか。
突然鏡が現れたかのような。
今この場で「お前は誰だ」なんて問い掛ければ私は損なわれるのだろうか?
鏡や写真でしか見たことがない姿を見つめて、少し顎に手を当てて、ふむ、と考え込んで。
「私は私でしかないですが
私の複製はあくまでも上書きされた存在、という点でしょうか。
あなたが私になったとしても、その根っこにはソフィア先生、あなたが在るのでしょう?
でしたらそれは私ではありません。ソフィア=リベルタスという存在です」
「それに、もしそんなことをすればソフィア=リベルタスの中身は消えてしまうのでは無いですか?」
なんて、尋ねてみようか。
ソフィア=リベルタス > ソフィアは、くすりと笑う。 閃 天兎という擬態を解いて。
ソフィア=リベルタスという存在に還ってゆく。
「えぇ、『その通り』です。 閃先生、もし、私があなたを完璧にコピー出来たとしたら。
そこにもう私という意識と記憶は存在しない。」
それは、ソフィアの存在が、力の本質が、大きくかかわる。
「完璧なるコピー、複製、存在の書き換え、上書き。 そうすることで、『也替わる』ための異能。
いいえ、私の場合、それは異能ですらありません、私という存在の本当の意味。」
ソフィアという存在ですら、也替わったものかもしれないという事実。
「私という存在は、私が私であることをやめた瞬間に、消滅するでしょう。」
ソフィアの言う『化け物』とは、そういう意味。
そうあるべきもの、そう存在する者、不確かなもの。
「私は私を失うことが恐ろしい。」
ふと、笑顔が崩れて、少女の顔は、年相応に泣きだしそうに見えた。
たった、一瞬の、瞬きの内だけ。
「だからこそ、『化け物』は私だけでいい。」
少女は、『化け物』は孤独を許容した。
閃 天兎 > 「...」
つまり、目の前にいる幼い姿をした同僚は。
ソフィア=リベルタスは別の存在が成り代わった存在であり。
ソフィア=リベルタスは本当は別に存在していたかもしれなくて、彼女はただの成り代わりかもしれない。
...だがそんな事は聞けない。
彼女が彼女でなくなることを恐れているのなら。
きっとかつて彼女は同じ恐れを抱きながらソフィア=リベルタスになったのかもしれないのなら
何か理由があってかつての存在を捨ててソフィア=リベルタスになったのかもしれないのなら
それを彼女に思わせるわけにはいかない。
今の彼女はソフィア=リベルタスである。
唯それだけでいい。
彼女が一瞬見せたその酷く悲しげな表情はそう思わせるには、私の口を閉ざすのには十分すぎた。
「そう、ですか...」
そんな存在は自分だけでいい。
何者かに成り代わる、特定の存在に止まらない存在は自分だけでいいと。
化け物は、自分だけでいいと。
天兎はソフィアではないからその気持ちの全てを理解しているわけではなかったが。
それでも、表情をあまり表に出さない彼が悲しげな表情をするぐらいには理解していた。
「でしたら、私があなたの存在をずっと覚えていれば...
ずっとあなたがソフィア=リベルタスであることを望めば。
あなたはソフィア先生であり続けますか?
化け物である必要はなくなりますか?」
本来隠すべき自身の異能の一端を匂わすような。
そんな事を口にしてしまう程には。
天兎はソフィアの孤独をどうにかしたいと。
そう思った。
ソフィア=リベルタス > 「どうでしょうね、他人の記憶を操作する力までは、無い……と思いますよ。
でも、そう思ってくれる人間が、この学園の生徒が、知り合いが居るのだとしたら。」
もしも、今ここに存在する自分を、大切に思ってくれる人間が居るのだとしたら。
「私は私であることを守り続けたい、そう思っていますよ。」
いつか、生徒から、『先生が好き』と言ってもらえたことを思い出す。
確かに、自分で自分を消してしまうかもしれないことは、恐ろしい。
だが、それ以上に、その言葉を大切にしたい、そう思うのだ。
「先生が、そう思ってくださるのであれば、
えぇ、精一杯、私はそれを叶えるために、存在し続けますとも。」
なぜならそれが
「そう望むのが、わたし自身の願いですから。」
そうありたいと思う心こそが、ソフィアを証明し続ける。
そう信じているから。
閃 天兎 > 「でしたら、私があなたがソフィア先生であり続ける事を望みますよ」
それで彼女が彼女で居続けてくれるのであれば、私はそれに喜んで尽力しよう。
...あれ?
「...なんと言うかあなたが教師ではなく生徒に見えてきました。
不思議ですね。あなたは先生であるはずなのですが」
こう、誰かの為にと言った行為を教師だから生徒の為によく行っているが為に。
こうしてソフィアのために望み続けよう、と言う行為がソフィアを生徒としてその目に写していた。
「海の生物についての授業でもしましょうか?
私は生物学の教師ですから」
まあ、そんな彼女はきっと今だけなのだろうが。
励ますと言うわけではないが、冗談の一つでも言って見せようか。
ソフィア=リベルタス > 「おや、『Sophia<叡智>』の名は伊達ではありませんよ?
なんでしたら私がご教授して差し上げましょうか。
魔術で海を割る方法とか。」
生徒と言われるのは、はるか年下の、まだまだ若い人間に
そこまで言われるのは少々癪に障る、何よりプライドが許さない。
「私の方が、生徒のためを思ってるんですからね!!」
悲し気なソフィアはもうそこにはおらず、ケラケラと笑いながら
対抗心に燃える教師の姿がそこにはあった。
閃 天兎 > 「それは生物学ではないと思いますが...
そのうちご教授願いたいですね。使えるかは別として」
端から叡智の名を持つ彼女に勝てる知識を持てるとは思っていませんでしたが。
海も割れてしまうとは...驚きですね。
「果たしてそれはどうでしょうかね」
なんて、元気な彼女を見れれば。
満足したような笑みをうっすらと浮かべて、やはり彼女はソフィア先生である事が一番似合っていると。
そう再確認した。
ご案内:「浜辺」から閃 天兎さんが去りました。<補足:白衣と黒いスーツ>
ご案内:「浜辺」からソフィア=リベルタスさんが去りました。<補足:身長:147cm 体重:34kg 妖怪猫ロリババア / 乱入歓迎>