2020/06/22-2020/06/23 のログ
ご案内:「違反組織群 裏競売所」に羽月 柊さんが現れました。<補足:乱入歓迎:【はづき しゅう】長めの紫髪に桃色の瞳の男/31歳179cm。右片耳に金のピアス、黒のスーツに竜を模した仮面で顔を隠している。小さな白い龍を2体連れている。>
羽月 柊 > 『さぁさぁ今回の品は―――。』

遠く、そんな声がこだまする。

自分の研究の為に男はここ、違反組織群の一画に来ていた。
様々なモノが競りにかけられている声が、施設の前に居ても聞こえてくる。

男は竜を模した仮面で顔を隠し、黒のスーツに身を包んでいる。

いつもの護衛の小龍たちも一緒で、傍から離れないようにはさせている。
仮にも競売所。金を持っている輩の集まる所だ。無差別に手を出してくる確率は低い。

研究の情報集めとはいえ、こういった場所に潜り込むのいささか勇気がいる。
風紀委員の摘発に出くわさないことを祈るばかりだ。

羽月 柊 > "門"が出現している現在、表にも裏にも流れて来るモノが在る。
表で拾われれば適切に処理されたり保護されたりだが、
裏で拾われればこうやって金が動く元にもなる。

競売の利益の行先は――まぁ、違法活動の資金だろう。

(出来れば出費は避けたいな…。)

腕に留まらせている小龍を撫でやり、男は仮面の下で溜息を吐いた。

自分は一般人だ。息子を学園に通わせているからこそ、この島にいる。

羽月 柊 > 場合によっては表に報告を上げて、
検挙されて流れた品を目的の為に買い取る方が良い。

それでは間に合わない時、男は自分の金を動かすことになる。

その金が違反活動に使われようと、手を出す時は出す。



何者も現れなければ、男はスーツのネクタイを締め直し、施設に入って行くだろう。

ご案内:「違反組織群 裏競売所」に幌川 最中さんが現れました。<補足:クソ似合わないスーツを着込んでいる無精髭の男。いま受付からつまみ出されたところ。>
幌川 最中 > 男がネクタイを締め直すとほぼ同じタイミング。
盗みに入ったのがバレた猫のように、屈強な黒服たちの手によって
だいたい似たような体格の成人男性が首根っこを掴まれて外に放り出された。

「いやあ、ほら、忘れてきちゃったんですって~。
 本当に。本当に忘れてきちゃっただけで、持ってないとかではなく」

羽月の前に放り出されてもなお、男はそんな物言いをやめることはなく。
むしろ、羽月の姿を認めれば「オッ久しぶりじゃないですか~」と笑ってみせる。
正真正銘、初対面の男がへらへらと笑ったまま。

「ちょーっと忘れものしちゃいましてねえ。
 もしよかったら……ちょっと一緒に入れてもらっても構いませんか」

黒服の前で、そんなことを宣いながら。
似合わないスーツを着込んだ短髪の男が、羽月にこの場に不釣り合いな笑顔を向けた。

羽月 柊 > 流石に状況が一瞬では飲み込めなかった。
目の前に、自分とそう変わらない年齢の男が放り出され、
自分を既知の知り合いかのように笑いかけてくるのだ。

黒服たちは柊に対して、知り合いなのか? と言わんばかりの視線を投げかけて来る。
これはまずい。自分まで出禁にされてはたまらないのだ。

「……、…どうして仮面を忘れて来たりしたんだ。
 …ああ、もう……出直すぞ。」

顔丸出しの状態でこの競売所には入れない。自前で用意するか、中で買うか…買うには高すぎる。

息を呑み、不自然の無いように振舞う。大人だからこそできる取り繕いだ。
仮面から見える口元をきゅっと結び、踵を返すと後ろ手で来いとばかりに手招きをした。

幌川 最中 > 知り合いのように笑う知らない男は頭を掻く。
そして、羽月がそう言えば「いやあ、すいません」と。
猜疑の視線をどうにか潜り抜けて、手招かれるままその背を追う。

「死ぬほど助かりました。あなたがまともそうでよかった」

違反部活の競売にやってくる人間に、そう言って笑う。
そして、続いて。へらへらと笑ったまま、顔丸出しの状態で。

「で、……仮面の予備なんて、あったりしませんかね?」

図々しくも。当たり前のようにそう言ってから、肩を竦めた。

羽月 柊 >  
黒服が見えなくなる裏路地まで相手を引っ張って来る。
舐められてはいけない。今は自分も裏の人間として見られている。
相手もそうであるならば、堂々としていなければいけない。

――まさか相手が風紀委員であるなど、柊は思ってもいないだろう。

その場で腕組をし、小龍を二匹つれた男の仮面から覗く桃眼は鋭く最中を見ていた。

「例え持っていたとしても、素性も知らないモノにそう貸せない。
 …俺と君は初対面のはずだ。」

自分の記憶違いで無ければ、だが。
柊の身なりは良く、手には大小様々なアクセサリーを身につけている。
この競売所で金を動かせるだけの財力はあるように見えるだろう。

幌川 最中 > 「そう、初対面なんですよ。
 俺が見込んだ通りで。……役者ですなあ、兄さん」

繰り返すようにそう言って、やはり笑う。
裏路地のゴミ箱の上に腰掛けながら、顎髭に触れる。
そして、小龍を連れた男を相手に、完全に丸腰の男は。
両手をあげながら、困ったように眉を下げた。

「素性……素性わかったら、貸してもらえますかね」

申し訳程度にスーツを着込んでいる男は、羽月とは対照的に。
胸ポケットから学園の生徒手帳を取り出して、申し訳無さそうな声で。

「幌川最中いいます。風紀委員……なんですがね。
 別に仕事で来てるわけじゃあない。素性明かす手段、これしかなくて。
 ……ああいや、でも、報告書は挙げらにゃなりませんけども。
 あんまこういうやり方はよくないんでしょうが。……協力してはもらえませんか。
 7割くらいは『偶然』ここにいるだけですし、貴方が誰かは聞くつもりはない」

常世学園の正規の学生手帳。身分を明かすには最適なそれを示し。
ぼりぼりと情けなく頭を掻いてから、へらりと笑ってみせる。

羽月 柊 >  
ああ、ああ、嫌な予感というのは時に的中してしまうのだ。
先程ちらと考えてしまったことがまさか現実となるとは。

人それをフラグという。

「…風紀委員。」

驚いた。以前出逢った風紀委員はそこそこキッチリした格好をしていたのもある。
しかし学生手帳をまじまじと見れば、
それが己の"息子"が持っているモノと違わないモノだと分かる。…偽証でなければだが。

「…己の居合わせの悪さに溜息が出る。
 否と答えればこちらはこの島にとって良くないモノになるだろうな。

 ……こちらはここの犯罪の助長の為に来た訳じゃあない。それは言っておく。」

軽く指をパチンと弾くと、薄暗い路地裏に光が出現する。
柊の紫髪が照らされて鮮やかに揺れた。
手に持っていた鞄を降ろすと、その場にしゃがみこんで開けて中身を漁り始めた。

幌川 最中 > 「いやいや、そんな大それたモンじゃあないですよ。
 摘発やら何やらするんなら、もっとぞろぞろ連れてきますよ。
 趣味……いや、趣味ではないな。こんな面白くない趣味はない……」

と、冗談交じりにそう言って。
あくまで風紀委員の仕事でやってきたわけでない、と繰り返す。
そして、強権を振るうつもりなんかはない、と付け足して。

「単純に幌川って男からの頼みだと思ってください。
 苦情とか、上に言われちゃうと、その、俺が……俺が困るんでね。俺が。
 ……もちろん。悪い人だと思ってたら声なんて掛けません」

そう言ってから豪快に笑う。
恐らく、羽月が悪い人でもそうじゃなくとも声は掛けていただろう。
かばんの中身を不躾に覗き込む。

「よそじゃ買えないようなもん、お探しで?」

世間話をするような気軽さで、首を傾ぐ。

羽月 柊 >  
柊の鞄の中身は、今回の競売に入る為の申請用紙やら、
透明な小瓶に入った血のようなモノ、
灯に照らされて僅かに透ける小さな袋には、何か煌めく殻のような…。
それから、彼が身に着けている装飾品の予備と思われる数々。

その下からごそっと取り出して来たのは―――仮面だ。

「先日"息子"から歳のいった学生もいると聞いたばかりだが…本当に逢うとは思わなかった。」

仮面の表面に予備の装飾品の一つをあてがうと、
表面の文様がぐるりと変わり、狐の意匠に変わる。

「このような場所にいる男が、苦情が出せるとは思わないが……。
 ……研究の一環だ。表に流れることもあるが、こっち(裏)に流れてることもある。」

幌川 最中 > 「アッハッハッハッハ……。
 学生は幾つからでも始められますよ。
 息子さんと同じ学校に通うのも可能です。そう、常世学園ならね」

囓った程度しかわからないが、少なくとも異能者の鞄らしくない、と思う。
異能者であらば、こういった場所に徒手空拳でやってくることも少なくない。
どちらかといえば、魔術師の側に属するものであろう、と推測をつける。

「おおこりゃ。狐たあ、こらありがたい。よく見ていらっしゃる。
 歳取ると椅子に座ってばっかりになっていやあよくない。
 こうでもしないと仕事をしたような顔すらできやしませんから」

それ、貸してもらえるんですよね? と言わんばかりの表情で手を出す。
既に強権を振るっているようなものだが、笑顔でごまかしながら。

「……研究者先生でしたか。そら、必要にもなりますわなあ。
 どういった研究を、ってのは、聞いても怒られませんかね?」

羽月 柊 >  
柊は警戒を解いている訳ではない。
こんな場所にこんなにも無防備に現れるのだ。
いくら風紀委員であり大人とはいえ、
組織立って悪事が横行しているこの場所で単独で居られるのは相当だと判断している。

「予備に持ってきた申請用紙をこんな使い方するとは…。」

差し出された手に仮面を渡す。
それから一枚、小さな金属板を取り出すと、扇ぐような動作をする。
ぐんと板は広がり下敷きのような大きさになると、申請用紙とペンを添えてそれも相手へ。

「……研究はこれらだ。
 "門"の開いてる今の時期、大小なり卵なり流れて来る。
 裏に渡るのは基本的に良くない。」

そう言って、自分の肩口に留まる小龍の一匹を指した。

幌川 最中 > そんな羽月の思索などすこしも知らず。
男は、また別の意図をもって、風紀委員でもなくただの個人としてここに来た。
パーソナリティとして、幌川最中という男に付随する情報の一つに風紀委員はある。
が、それはそれとして。本人は、すこしもその意図はない。

「備えあれば憂いなしって言いますもんなあ。
 いやあ、ありがたいありがたい。……ああ、なるほど。
 それであれば、《表》に流れて来ぬものも必要になるでしょう」

わかりますよ、と言わんばかりに頷く。
そして、申請用紙には全く別の名前を記す。
かつて失われた違反部活の首魁の名をすらすらと書いてから、狐面をつける。

「便利な魔術で。羨ましい限り。
 ……どうでしょう、これ、似合います? 似合ってます?」

狐面を見せながらそう笑ってみせてから、息を吐く。

「ああ、それから……俺がいたってことも、どうかご内密にお願いします。
 独断専行はいつ誰がやっても怒られますからね、組織ってのは」

と、平然と表へと向かって歩いていく。
一緒にどうです、なんていいながら会場へと入っていくのだろう。

「研究は、個人で?」

羽月 柊 >  
最中が書類を書き終わるのを見れば、
仮面の下の桃眼を伏せ、相手に向かって手を出すとまたパチンと一つ、指を鳴らす。

抵抗をする様子が無ければ、スーツに着られている状態の最中の状態を正すだろう。
ネクタイを綺麗に締め、服の皺が伸びる。

「…これで多少は、様にもなるだろう…。」

似合うか、という問いにはそう返って来た。


会場に戻れば、先程の黒服たちへの態度の手前、一緒に行動しない訳にもいかず、
柊の方で申請用紙を2人分受付へ通し、
今日の出品リストを代わりに貰ってくる。

本日の出品は、門の影響のモノが確かに多かった。


生きたまま捕縛された怪異、異世界から来た鉱物。
縄張り争いに負けた死体の材料、狩られたモノ…… 一際眼を惹くのは、人型の素材も。

今回竜の生体や卵の出品は無く、素材としての出品はいくらかあった。
その場で狩られた個体としての登録もあり、柊は内心歯噛みする。

「… 一応、個人になる。」

雑踏に声が紛れる中、連番の席に腰かける。

幌川 最中 >  
抵抗など少しもなかった。
腹を出したまま無抵抗の大型犬のように整うスーツにすこし笑う。
ネクタイを締められれば、情けない呻き声が耳に入るだろう。

「……個人でしたら、そら大変でしょう。
 もしなにか手伝えることがあれば、俺でよければ借りは返しますんで」

そんなことを言いながら、連絡先の記されたメモを手元で差し出す。
賑やかしい会場内では、ある程度言葉もざわめきに紛れて誰のものかはわからなくなる。
うんうん、と機嫌良さそうに頷きながら腕を組む。

出品物に興味がないわけでは決してないらしく、
あれこれと指を指しては質問を繰り返しながら競売が進むのを眺めている。
《異世界》由来の物品はそれなりに表面を浚う程度だったが、人型には一度黙り。

「人って、幾らくらいで売れるもんなんでしょうなあ。
 異能もない、ただの人間。……少し勘がいいだけの人間は、どんなものでしょう」

竜の生体と比べて。異世界から来た鉱物と比べて。
人間ひとりの価値は、どのくらいだろうか、と。ざわめきの中で、問う。

羽月 柊 >  
同行者扱いに近い状態で入ったのだ。
多少は自分に見合う恰好をしてくれないと困る…ということなのだろう。

差し出されたメモはチラリと目を向けて、
スーツのポケットへと入れるのみに留まり、追及の言は無かった。
何分先ほど書類に書いた名前が学生手帳の名前と違っている。信頼を寄せ切れない。

「次に逢った時に初対面の顔をしてくれるだけで良い。
 慈善事業の一つみたいなモノだが、妙な火種になるのはごめんだ。」

今回の競売の内容に興味が無いとはいえ、金を出さないのは冷やかし扱いされる。
柊は時折手を上げては、他人に買われるギリギリを狙い、競りに参加した。

負けて悔しそうにする演技付きである。



淡々とした言葉で、競売中の質問には答えていくだろう。
男は異世界にもある程度造詣が深いようで、あの鉱物は水を産むモノだとか、
怪異は影を喰う生物で、喰われた人間は徐々に消えていくとか。

そんな中、最中の"人の価値"を問う言葉に、仮面から覗く眼を細めた。

「…俺達人間にとっての人間の価値は、大変容以前の歴史を見ると、昔よりは下がった。
 
 ただ、"異世界側"の方に、薬や素材として高く売られていく例もある。
 こちら側にとって異世界の素材が貴重であるように、
 人間の居ない世界では、人間の素材が貴重になることも多い。
 人間だけが特別ということはない。数は確かに多いがな。」

幌川 最中 >  
「そりゃ勿論。なんせ俺は、あなたの名前一つ知らない。
 ……『演技上手』で助かりました。ありがとう、名無しの君」

演技を見れば心底楽しそうに横で笑う。
なるほど、と横でわざと真似てみたりみなかったりしたがそれは別の話。
落札寸前でかいた冷や汗の話も、ここでは重要ではない。

まるで課外授業を楽しむかのように、幌川は頷きながら視線をステージの上に向ける。
拳銃よりも簡単に人を食う「怪異」なんかには「困るんだけどなあ」と笑いながら告げ。
風紀委員「らしくない」――当然、本人はそのつもりで来ていない。
「そのつもり」なら、最初から赤い隊服を着込んでここにやってきていたであろうから。

「やっぱり、そうですわなあ。
 詳しいことは何らわかりやしませんが、人間に明確な値段がつくようになったのも。
 ……釈迦に説法でしょうがね。そうか。確かに道理が通ってる。
 『ない場所』に『ないもの』を出せば需要を満たせる。ありふれたものの価値が下がるのも妥当だ。
 ……それじゃあ、地球上で一番「ただの人間」の価値が低いのは、」

意味深にそう言ってから、またあっけらかんと笑う。
豪快にこそ笑わないが、気持ちよさそうに頷きながら「教師もやれそうじゃないですか」と付け足し。
「地球上にないもの」が並ぶ競売の最中に。その会場である超常集まる常世島の中で。

「どこなんでしょうなあ」

冗談めかして笑ってから、立ち上がる。仮面はどうやら返すつもりはないらしい。
「また会ったときに返す」くらいの気楽さで、思わせぶりに仮面に触れてから。

「勉強になりました。……是非、『また』」

その場を辞そうとして、一度だけ振り返る。男は、ゆっくりと歩いていった。

ご案内:「違反組織群 裏競売所」から幌川 最中さんが去りました。<補足:クソ似合わないスーツを着込んでいる無精髭の男。いま受付からつまみ出されたところ。>
羽月 柊 > 「………収支マイナス…。」

最中が去ってから、柊は雑踏に溺れるように長い溜息を吐いて、そう呟いた。
 
仮面を持って帰り調べるならば、その仮面の素材は魔力との親和性が高く、
決して安いモノでは無いということが分かるだろう。


演技上手と言われてもさほど動じることは無かった。
こんな場所に調査に来るのだから、これぐらい出来ないと
あっという間に裏の連中に捕まってしまう。

その後も買わないとはいえ、竜の素材がどんな素材か見極めるのに終盤まで参加していた。

目的が終わり椅子から立ち上がると、
ポケットに突っ込んだ最中の連絡先のメモがカサリと音を立てた。

(――地球上で一番人間の価値が低い場所、か)

そう独り言ちて、柊もまた、この競売所を後にするのだった。

ご案内:「違反組織群 裏競売所」から羽月 柊さんが去りました。<補足:乱入歓迎:【はづき しゅう】長めの紫髪に桃色の瞳の男/31歳179cm。右片耳に金のピアス、黒のスーツに竜を模した仮面で顔を隠している。小さな白い龍を2体連れている。>