2020/06/21 のログ
ご案内:「第三教室棟 屋上」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 夕刻。
屋上のベンチに腕組みをして腰掛け、うつらうつらと舟を漕いでいる。
傍らには空になったブラックコーヒーの缶が置かれている。
コーヒーのカフェインでも、毎日の仕事から来る眠気を取り去ることは出来なかったようだ。
「……………………、」
やたらと姿勢がいいので考え事をしているようにも見えるが、しっかり眠っている。
ヨキ > 時刻はちょうどマジックアワー。
自然が作り出す、美しい金色の光が島中を淡く照らしている。
薄明の光は、ヨキをも等しく包み込んでいる。
日中の暑さが和らぎ、風に夜の涼やかさが交じる、心地よいひととき。
ご案内:「第三教室棟 屋上」にカラスさんが現れました。<補足:黒髪赤眼の青年/外見年齢16歳167cm/1年生。黒い耳羽根と腰翼。首には黒くて大きな首輪。>
カラス > 生徒達の下校の声や音が遠くに聞こえるだろう、
なんてことないこの島の日常の一コマ。
光に陰が落ちるこの時間、逢魔が時。
そんな時間のまどろみに……バサリと、羽ばたきの音。
「はぁ……。」
小さな溜息を零す羽ばたきの主の音は、
ヨキの意識を叩くだろうか?
はたまた、眠りへと招く手に身を委ねたままだろうか。
ヨキ > 風が吹く。
カラスの大きな翼が、視界の端に陰を落とす。
「……うん?」
翼の音に、眉間に小さく皺を寄せる。
薄らと目を置ける――どうやら、自分でもよく眠ってしまっていたようだ。
心なしかすっきりとした顔で、周囲をきょろきょろと見渡す。
そこいらの鳥たちよりも大きく聞こえた、羽ばたきの主を捜して。
カラス > 音の主は、屋上に降り立った所であった。
学生鞄を引っ提げ、制服を着た青年。
暑さが鳴りを潜めた夕方の風に黒い髪が揺れる。
急にその場に現れた要因を示すかのごとく、腰から生えた翼があった。
青年は若干憂いを持った表情であった。
普段あまり顔を出さない学園に、今日は僅かばかり登校したのだ。
若干の人酔いも手伝い、下校の時刻に皆に混じるでもなく、
ここに逃げてきたようだった。
ヨキ > 翼の持ち主を見つける。
頭のてっぺんから大きな翼に視線を移し、そして靴のない足元を見る。
青年の表情に疲弊の色を察して、声を投げ掛ける。
「――やあ、こんにちは」
長身の男――ヨキが、ベンチの空いた隣を示しながらカラスに笑い掛けている。
「美術を教えているヨキだ。
一日頑張ってくたびれたかね? ここで少し、休んでお出でよ」
カラス >
ヨキの声に青年はひぇっと肩を竦めた。
どうやら他に人が居るとは思っていなかったようだった。
開かれた眼はヒトのそれではなく、縦に割けた瞳孔が目立つ赤眼だ。
明らかな人間では無い異形の容姿ではあるが、
おどおどした表情も相まってか、ヨキに威圧感を与えることは無いだろう。
「あ、こん…にちは。先生。」
20cmを優に超える身長差は、ヨキが座っていることで多少は緩和されていた。
ぺこりと頭を下げ、顔を上げると耳羽根がぴこりと動いた。
「ありがとう、ございます…久しぶりの登校でちょっと…。
俺は、一年生で、カラスって呼ばれてます…。」
カラス > 相手が先生だと名乗れば、警戒心も無い様子で
促されるままに近くに座るだろう。
ヨキ > 異形の生徒にも慣れている様子で、取り立てて困惑する様子は見受けられない。
カラスのおっかなびっくりな挨拶に、こちらも会釈を返して。
「一年生の、カラス君だね。どうぞよろしく。
君は背中側はあまり見えないだろうが、ヨキからは夕日が照り返して綺麗に見えるよ」
隣に座ったカラスの、足元を改めて見遣る。
「だが……カラスというには、少し変わった足元だね。
何か、他の種族が交じっていたりするのかね?」
カラス >
美術を教えているヨキにとって、
青年を己の授業で見ることは無かっただろう。
もしかしたら、職員室等に保護者連れで来た時に見かけているかもしれないが。
普通の学校で言う保健室登校にも近いのだが、
青年は少々特殊な扱いの生徒となっており、
学園に通うこと自体、頻度は低い。
ベンチに腰掛ければ座高の差で高くなった相手の碧眼を見る。
あどけなく、臆病さが伺える青年には、
不釣り合いな大きな黒の首輪と枷のようなリストバンドが目立った。
不真面目なアクセサリーを付けるには少々態度が似合わない。
「あ、えっと、…"竜"、混じりです…。
学園には、合成獣(キメラ)で、届け出、してます…。」
ヨキ > カラスの様相を間近で見る。
見分すれども、不躾にはならぬ程度に。
「キメラ……人為的に合成されたもの?
誰かが君をキメラたらしめた、ということかな。
ふむ。
カラスと竜というのも、変わった組み合わせだ」
何の気なしに微笑んで、少し考える。
「…………。
君を造った人間の趣味にしては、種が離れている印象があるね。
カラスに成りきれなかった。
あるいは、竜になるはずだった?」
カラス >
好奇の目に晒される事自体はよくあることで、
居心地の悪さというのはどうしても抜けきらないが、
相手は学園の先生である故に、僅かに赤眼を彷徨わせるに留める。
ただ、相手の言葉に対しては、しょんぼりと耳羽根の先が下を向き、
申し訳なさそうに翼を縮こませては、隻手が己の首輪を撫でた。
「あ……えっと、竜になるはずだった…です。
いろんな竜の力を持つはずだったと、"お父さん"から、聞いています…。」
ヨキは常に魔力を溢れさせているようだが、自身の魔力感知自体はどうなのだろうか?
もし魔力の流れが分かるならば、
その首輪がヨキ自身が身に着けている指輪と似た魔力に親和性のある素材だと分かるかもしれない。
ヨキ > ヨキ自身、魔力を感知する能力は持っていない。
ただ野放図に漏出させているに過ぎず、カラスの首輪について察することはできなかった。
ただ、“着けさせられているのだ”と推し量ること以外には。
「……そうか。
“持つはずだった”、ということは、その力も持ち得なかったのだね。
済まない、カラス君。
先ほどは軽率に、君の翼の色を褒めてしまったな。
本当なら、質の異なる翼を持つはずだったであろうに」
そこまで言って、はたと気付く。
「……“お父さん”は。
君を『リュウ』とは呼ばないのか?」
カラス >
「あ、いいえ…その、ありがとう、ございます。
言葉自体は、悪いモノではないです、し。
良い所、褒めてくれる先生は、良い先生だと、思います。」
葛藤自体は確かにあるが、素直に褒められたことに対して礼を述べる。
怒りという感情など知らないかのように、へにゃりと笑んで見せた。
「…俺が、カラスと、呼ばれ慣れて、いるので…。
お父さんは、俺を作った人では、無いので、
最初は別の名前、付けようとしたみたい、ですけれど。」
ヨキ > 「ヨキは君たち生徒をより良く育てる、父親のような存在でも在りたいと思っているからね。
よいと思ったところは、素直に褒めたいんだ。
この学園では、褒めたものが図らずも持ってしまった要素ということが少なくないがね」
カラスの柔らかな笑い方を、じっと見定めながら。
「呼ばれ慣れている、か。
……カラス君。
君は、自分について何か誇りに思えることはあるかね?
その大きな翼や、立派な鉤爪のある足や、綺麗な髪の毛や……。
背筋を曲げていては、美しく在れるはずの君もくすんでしまうよ」
カラス >
本当に良い先生なのだろうというのが、態度と言葉の端々から分かる。
カラスも初対面ではあるが、ヨキに対して悪い印象は抱いていない。
ただただ、その朗らかさと、真っすぐな綺麗な言葉を、
どうしても素直に受け入れられない己を情けないと思う。
この異形は、過去に囚われ続けている。
何を誇りに出来るかと問われれば、返答に詰まってしまった。
「………良くわからない、です。
飛べることだけは、良いと、思っていますけど…。」
ヨキ > 「うん」
ヨキは短く頷いた。
「それでいい。『今は』、まだ。
君は一年生だろう?
それを四年掛けて見つけてゆくのが、この常世学園なのだよ」
空き缶を手の中で戯れに軽く潰す。
ぺこ、と気の抜けた音。
「ヨキはこれから君を『教え子』として、良いところをどんどん見つけてゆくよ。
それらが果たして、君自身にとって誇りに成り得るものかどうかは判らない。
君は自分で答えを見つけられずとも、ヨキや他の誰かが見つける『それ』を切っ掛けにして欲しい。
そうして――君は『カラス』を名乗り続けるも良し。
“お父さん”から新たな名をもらうも良し。
カラスでもリュウでもない、新しい自分を見つけるのも良し。
気が遠いようでいて、あっという間の学園生活を過ごして欲しいね」
カラス >
「あ、はい…ありがとう、ございます…先生。
…ええと。多分、それよりも、もっと長く、学校、いると思います…。
あまり、出席しないので…。」
"四年掛けて"と言われると、腰の翼がもじもじと。
この青年、本当に出席する日が少なく、"進級していない"のである。
もしかすればこの先進級することもあるかもしれないが、
少なくとも過去数年、青年はそうしてこの島で暮らしてきた。
それはヨキの今現在では知り得ないことである。
「……想像は、つきません、けど…。
がんばって…みます。」
ヨキ > 「おや、それはそれは。ははは、構わんとも。
ここでは居心地が好いあまり10年を過ごした者も居るくらいだ。
15年教師をやっているヨキなど、進級しない者の筆頭のようなものだ。
四年とは言ったが、それ以上の時間を掛けたって罰は当たらんよ。
頑張りすぎない程度に、気楽にな」
気にした風もなく、明るい調子で笑ってみせる。
「そうか……それにしても、君はあまり出席しないのか。
それは体調の所為かな。それとも他の理由があって?
……いや、あまり根掘り葉掘り訊くのも失敬だな。
答えたくなければ、まったく構わない」
カラス >
「じゅうねん。」
えっ人間で? と言わんばかりに復唱された言葉であった。
「その生徒さんは、卒業したんですか…?」
青と茜と黒の混じる空は、徐々に黒を連れて来る。
陽は地に喰われていき、遠くにぼんやりと月が見えた。
「俺、戦う力が全然、無いので…危ない時期は、お父さんが研究区から出ないように、って。
後は、身体の、調整で、出られない時期も、あります…。
最近だと、魔術学会の事も、お父さん言ってました。」
聞かれれば素直に答えるだろう。
先生に対して情報を伏せてもメリットが無いと考えているのだろう。
ヨキ > 「ふふ、まだまだ元気に学生をやっておるよ。
卒業する気はないのだろうなあ。
この島には、そんな物好きも少なくないのさ」
くすくすと可笑しげに笑う。
けれどもカラス自身の複雑な現状には、真面目な顔をして。
「それは確かに、単位を取ろうとするとなかなか大変だな。
近頃は何かと物騒であるし……、自衛する力がなければ、何かと騒動に巻き込まれて苦労するだろう。
部活や委員会に所属すれば単位も取れようが、そうすることも難しいのかな。
何か好きなことが結び付くような活動で、単位が取れればよいのだがね」
カラス >
まさかの現在進行形で現役学生であった。
はぇぇ、と興味深いのか耳羽根が声を聞き取るのにぴこぴこと動いていた。
「色んなヒトが、います…ね…。
先日は、時計塔から、飛び降りようとしてた子とか、いましたけど…。」
その子も容姿としては随分幼かったのを思い出して。
「一応、飛べば、そこまで追いかけて来るのは、少ないのですけど…。
…部活も、委員会も、考えたこと、無かった…です。役には立たないと、思って…。
本当に危ない時は、お父さんの護衛の子達と、一緒に行動するんですけど…。」
先生は何かの顧問とか、しているんですか? と。
ヨキ > 「全く、あの時計塔は立入禁止というに……忍び込む者が後を絶たん。
……それを見ていたということは、もしや君も忍び込んだクチではあるまいな?
ふふ、ヨキ以外の教師にはあまり口外するでないぞ」
悪戯めかしたウィンク。
「ああ、この常世島では、部活も委員会も運営の根幹を成しているからな。
所属して活動する者には、授業に出ずとも単位が与えられるのだよ。
カフェテラスや学生街など、穏やかな店舗も多い。
もし興味があれば、検討してみるといい。
ヨキか? いや。ヨキは顧問には就いておらなんだ。
仕事以外の時間は、自分自身の作品制作の時間に充てているゆえな」
そこで、すっかり空が暗くなっていることに気が付いて。
「ああ、これはまた長話を。
久しぶりの登校で疲れていたろうに、話し込んでしまったね」
カラス >
「あ、えっと…忍び込んだというか…見晴らしが良くて、
たまに天辺に座ってます…。高い所いると、落ち着くので…。
飛び降りようとしてた子は、助けて、下に降りるまで見送るのに、中に入りました…すみません。」
ウィンクされると、こくこくと何度か頷いた。
「ああ、お父さんが、言ってました。
『この島は子供に重責を任せすぎる』って。
風紀委員の方に、良く逢う、みたいで……だから、俺も、余り入れる印象が、無くて。」
夜の帳がおりると、空は青年とヨキの髪と同じ色になり、
そう諭されれば、あっと気づいたように立ち上がると、頭を下げた。
「わ、お父さんが心配する……あの、色々、ありがとう、ございます。ヨキ先生。」
ヨキ > 「君はまだ飛べるからよいが、あすこには興味本位で入る者が多すぎる。
その子とどんなやり取りがあったかは判らぬが……これからはこの屋上で過ごしてもらえると、ヨキも心穏やかだ。
……とは言え。
教え子の数が多いゆえ、『君がどこで何をしているか』まで逐一検知することは出来んがのう」
くすくすと密やかに笑う。
「そうだな、社会勉強というには重すぎるやも知れん……だが必要なのだ、それが。
この異能と魔術と無能力の坩堝たる世界へ、羽ばたき出してゆくためにはな」
立ち上がったカラスの一礼に、首肯を返して。
「ああ。こちらこそ、たくさん話してくれてありがとう、カラス君。
君の“お父さん”ほど役には立てぬだろうが、ヨキのことも気軽に頼ってもらえると嬉しいよ」
カラス >
「確かに、散歩で来ると、結構人、見ます…学生の人、も。
飛び降りようとした子は、びっくり…しました、けど。
……でも、その子のこと、ちょっと心配、なので、多分何度か、行くと…思います…。ごめんなさい。」
空中から見るからこそ分かる、侵入状況であった。
素直にそう申告してしまう辺り子供なのである。
夜の涼しさと同時に、今の季節、空気が憂いを連れて来る。
色んな言葉をもらった青年は、
人間なら止められそうな、屋上のフェンスの方へと歩き出す。
「ええと、さようなら……。」
まどろみの中に聞こえた羽ばたきの音と共に、
ぐっと竜の足が地面を蹴ると、ヨキより小さな体と大きな翼が宙に躍る。
ヨキ > 「ふ……、ははは! 君は素直で好ましいな。そこまで言われたら、ヨキは何も言えなくなる。
改めて、他の者にはあまり言わぬようにな」
唇の前で人差し指を立て、秘密だぞ、のジェスチャ。
カラスがしかと飛べることはもう知っている。
だから、彼がフェンスへ近付くことを止めはしなかった。
「ああ。さようなら、カラス君。
どうか無理をせぬように、身体を大事にな」
飛び去ってゆく相手を、手を振って見送る。
独り残ったヨキもまた、ベンチから立ち上がって徐に屋上を後にした。
ご案内:「第三教室棟 屋上」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ご案内:「第三教室棟 屋上」からカラスさんが去りました。<補足:黒髪赤眼の青年/外見年齢16歳167cm/1年生。黒い耳羽根と腰翼。首には黒くて大きな首輪。>