2020/06/26 のログ
ご案内:「ヨキの美術準備室」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 午後。日が傾くにはまだ余裕のある時刻。
窓と入口を開け放し、サーキュレーターを回している美術準備室は、初夏のさわやかな風が吹き込んでくる。

そんな中、事務机に座って居眠りをする教師がひとり。

「…………、すぴー……」

とても気持ちよさそうに、とても無防備に眠っている。
腹の上で十指を組み合わせ、足を伸ばした格好でオフィスチェアに凭れた格好。

ヨキ > スケジュール管理用の帳面は開かれたままで、その傍らにはスマートフォンと缶コーヒーが置かれている。
ヨキにしてはいろいろな文房具が中途半端に使われたままで、いかにも仕事の途中といった具合。

いつもならきっちりとセットするスマートフォンのアラームも、今は鳴る気配がない。

「……………………」

深く上下する肩と腹の動きから、眠りの深さとすこやかさを察せられる。

ご案内:「ヨキの美術準備室」に宵町 彼岸さんが現れました。<補足:灰色のサメパーカー、その上にLサイズの白衣を羽織っている。ホットパンツ、鉤模様ニーソ、白地に青のラインが入ったスポーツスニーカー、左手だけで前腕半ばまで覆う黒の軍用手袋>
宵町 彼岸 > 音もなく準備室の扉が開く。
ヒエンソウとカンパニュラを活けた花瓶を抱きしめるように持ちながら
そっと人影は準備室に潜り込んだ。

「……」

口の形だけでオジャマシマスと発言し……ゆっくりと眠る教師に近づく。
その衣擦れの音も花瓶の水もミュートにした映像であるかのように音を立てない。
音もなく傍らに立ち尽くし寝顔を見下ろしながら暫くたたずむと身をかがめ……

「……」

慎重に場所を見極め微調整しながら花瓶を机の上に置く。
そのまま音もなく机を通り過ぎ、窓際に置いてあったカバンを拾い、
再び入り口側に少し戻ると床にぺたんと座り込んだ。

僅かに首をかしげながら構図を確かめるとわずかに満足げに頷いた。
実は少し前にこの部屋に来たのだが……そこで眠る教師を見てふと思いついたことがあった。
そのままの構図を保ちたかったというのもあるが気持ちよさげに眠る教師を起こしたくなくって音と気配を完全に消去しつつ花を活けて。
こうしてみると本当に窓がキャンパスのよう。

「……」

視線の先には眠り込む教師と窓から見える青。
晴れ渡る青と逆光の影法師。そして活けた花瓶。
絵画のような背景の中央で微睡む教師の安心しきった表情を白昼夢を眺めるようにじっと見つめる。

ヨキ > よほど疲れていたのか、彼岸が花瓶を置く一部始終の合間も目を醒ますことはなかった。
そよそよと吹き込む風に、波打つ髪がちらちらと揺れる。

ようやく目を醒ましたのは、彼岸がたっぷりとヨキの寝顔を眺めた頃。
ふとした拍子に、徐に瞼を開く。

「…………。ん……」

長い睫毛が小さく震えて、ぼんやりと目の前を見る。
そこに色鮮やかな花が活けてあるのを見て――いちどきに上体を引き起こした。

「おや。これは……」

何事かと振り返ったところで、床に座っていた彼岸の姿が目に入る。
見知った教え子の姿に、笑顔がふっと和らぎ、深まる。

「――やあ、カナタ君。この花は、君が?」

宵町 彼岸 > 以前にもこんな光景を見た気がする。
確かあの時は風鈴がとても綺麗な音を立てていた。
あの頃はもっととげとげしかったような気もするけれど……
ああ、やっぱりこのヒトは藍色が良く似合う。

じっと眺めた後満足したのか座り込んだままゆっくりと目を閉じ耳を澄ます。
部屋に響くサーキュレーターの音、運動部、それか体育系の授業だろうか。
少し遠くから聞こえてくる潮騒のような喧噪と布を流すような風の音。
そして規則的な呼吸の音。
酷くゆったりと時間が流れているような空間で無音のままただただ耳を澄まし続ける。


椅子のきしむ音に衣擦れの音。どうやら起きてしまったよう。
こちらに視線を向けられる気配にゆっくりと目を開け、
お気に入りのソレがこちらを見ていることを認めると
数秒間無言のまま見上げ、じっと見つめ続ける。

「ん」

否定とも肯定ともつかない声を返したあとゆっくりと笑みを形作って。

ヨキ > 「ああ、有難う。手土産に持ってきてくれたのかな?
君は前にも職員室で、ヨキの机を飾ってくれたっけ」

花瓶を眺める視線は柔らかで、嬉しげだ。

「これは何という花だったかな。
知っているようでいて、なかなか名前が出てこないものだね。
ふふ、綺麗な青色だ」

写真を撮らせてもらうね、と。
言うが早いか、スマートフォンのカメラアプリを立ち上げて、机上の花瓶を取る。

「もしかして、素敵な花言葉がある花だったりするのかな?」

なんてね、と。くすくす微笑む様は、まるで写真に大事な宝物を収めたような顔。

宵町 彼岸 > 「……きがむいた、から」

園芸部に知り合いがいるというのもあるけれど
この部屋にとても似合うと思った。それだけ。
やはりパズルのピースがはまったかのように綺麗に収まった。

「しらべるの、たのし、です?」

写真を撮る姿をじっと見つめる。嬉しそう、に見える気がする。
花を写真でとるのが好きなのだろうか。それとも花が好きだったのかもしれない。
もう夏の盛りが近づいてきているからだろうか。なんだかふんわりポカポカした感触を覚える。

「……ん」

かくっと首を傾げ数秒固まり、にへらっと笑みを浮かべた後
うつむいて前髪をくるくると指先で遊ばせる。
花言葉は勿論覚えているけれど……なぜか口にするのがはばかられる。

ヨキ > 「ふふ。気が向いた先がヨキの部屋、というのは嬉しいね。
まるでプレゼントみたいではないか。
花を贈られる、というのはいつでも気持ちのいいものだよ」

調べるのが楽しいかと問われて、迷わず頷く。

「ああ。
花の色から引く図鑑、というようなのもあってね。
それを一ページ一ページ、繰っていくのも楽しいものさ。
知らないことが少しずつ、自分の知識になってゆくのが楽しいのだろうね」

花言葉を言い淀む彼岸の様子に、ふっと吹き出して。

「何だ、そんなに恥ずかしい花言葉なのか。
他に誰も聞いてはいないのだし、教えてくれてもいいだろう?」

はにかんで、席を立つ。
彼岸のもとへ歩み寄り、子どもを見下ろすように傍らへしゃがみ込んで。
教えてくれよ、とばかり、笑い掛ける。

宵町 彼岸 > 「……きがむいたから」

違う意味で同じ言葉を繰り返す。
実際贈り物というのも間違ってはいないから。
花を選ぶとき、確かにこのヒトと部屋に合いそうな花と
考えていたのは確かなのだから。

「そ」

ああよかった。花の名前を答えなくって。
内心そっと胸をなでおろす。
危なく調べるのを邪魔するところだった。
言わない方がいいかもと思いついてよかった。

「えっと」

こちらを覗き込む瞳をじっと見返していると
思わず手を伸ばしそうになるけれど思いとどまる。

「……清明、と、共感、感謝」

花言葉に複数の意味があってよかったと思う。
思いついたものはもっと言いようのない物だったから
それを伝えたらモヤモヤしてしまったかもしれない。

「画材、とか使わせてもらって、ますし」

そう、これは感謝と気まぐれなのだから他に意味なんかない。

ヨキ > 「ふふふ……。何だかくすぐったいな。
次はヨキの方から、君に贈り物をしたいね。
君はどんなものが好きかな」

彼岸の、癖毛の中に垣間見える緑色の瞳を真っ直ぐに見つめる。
ヨキの目は笑みの形に細められ、さながら真正面から教え子の顔を覚え込むかのよう。
相手の中に、手を伸ばしそう、などという衝動があることにはついぞ気付かず。

「…………。ふふっ。ふ……、そうか」

花言葉を聞いて、どこか照れ臭そうに顔をくしゃくしゃにする。
目尻には笑い皺が薄く浮かんで、口元を手のひらでごしごしと拭った。

「それは嬉しいな。有難う、カナタ君。
ヨキにそんな花言葉の花を贈ろうと思ってくれるだなんて。
先生をやっている甲斐があるというものだよ」

宵町 彼岸 > 「んー」

かくんと首をかしげる。
好きな物と言われると多分、甘い物とかそんなものなのだろう。
あとは、そう。綺麗なもの。
でもそれを上手に言葉にするのは難しい。

「うん」

嬉しそうだなぁ……なんでだろう。わからない。
このヒトのことは本当にわからない。
切っ掛けもその後のことも覚えている。

「たのしそー?」

素直で表情に出るヒト。隠し事なんかできなさそうで
くるくると鮮やかに表情が入れ替わる。
喜怒哀楽が豊かで本来の自分とは正反対かもしれない。
……けれど何故だろう。このヒトに関わる時、いつも自分は不安定だ。
どうしてこんなに不安定なのか感覚の振れ幅が大きくなるのか理解が出来ない。
どうしてここまでこのヒトに執着するのか、分からない。

「わかんない」

……本当に、わからないの。
この花言葉を衝動的に選んだ理由も。

「そ。……よかった」

だからいつも通りの表情を被る。

ヨキ > 「君はまだ、『好きなもの』が定まっていないだろうからね。
ヨキの方から、君にいろいろなものを見せてやりたいな。
その中にはきっと、君が好きになれるものもあるだろうから。
そうやって、自分の世界を広げていって欲しいんだ」

しゃがみ込んだ格好で、間近の距離からぽつりぽつりと語る。

「楽しいよ、ヨキは。教え子と接するときには、いつだって。
別にお返しを期待している訳ではないが、対話をしたり、何かを贈り贈られるとき、より心が通じ合ったような気分になれるからね。

君は言葉少なだから、なかなか本心を打ち明けてはくれないが……。
あの花瓶の花は、君の代わりに多弁で居てくれるように見えてね。
花言葉って、そういうものだと思うんだ」

彼岸の本心を見定めようとするように、瞳を覗き込む。

「花に託す以外にも、いつか君の心が、君自身の言葉でヨキに伝わってくれたら、もっと嬉しいな」

宵町 彼岸 > 「せんせ、は、沢山ありそう」

間近で静かに語る言葉に感情がこもっているような気がする。
このヒトにとって世界は綺麗なのだろうか。
それとも綺麗にするのが好きなのだろうか。
何をどうして好きだと思うのだろう。
どうしてあんなに綺麗な絵をかけたんだろう。

「……ふしぎ」

本当に不思議に思う。
……ああ、知りたい。何故それを知りたいんだろう。
何をこの花に託したんだろう。何を期待したんだろう。
じっと見つめ返した後困ったように首をかしげる。
本当に困っているのだ。自分でも珍しく。
言っていることも、起きていることも理解出来ない事が多すぎて。

「……こんな、ばしょなのに?」

この島には本当に色々な者が居る。
純粋で多彩で、未来に向かうことが楽しそうで仕方がない。そんなものと一緒に
誰かを傷つけ、舐る事が楽しくて仕方がない者やこういう人を騙すことを好むもの
……そして自分のような化け物もいる。
ここはまるで巨大な実験棟だ。
それでもどうしてそう言い切れるのだろう。

「ボクにも、上手くわからない、です
 花だって、気まぐれ。なにもない、のかも」

自分にココロがあるのかすらわからないのに、伝える事なんてできる気がしない。
覗き込む瞳からついと目を離す。こうやって見つめていると何か言いようのない感覚があふれそうで
そしてそれをなぜかこのヒトにだけは悟られたくなくって

「別の子、にじかんかけてあげた方、が建設的、ですよぅ?」

そうやって誤魔化すしか思いつかなかった。

ヨキ > 「それは勿論、たくさんだ。
居眠りは好きだし、花も好きだし、美味しいものも、楽しいことも。
それから、君と過ごす時間もね。

こんな場所でも……ヨキにとっては、大事な家のようなものだからね。
たとえ大変だろうが、くたびれようが、傷付こうが、こういうひとときを過ごせば全部吹き飛ぶのさ」

否定的な彼岸の言葉に、尚も穏やかに微笑む。

「たとえ花に何も込められていなくても、花言葉などというものがなくても、ヨキは構わないのだよ。
あの花を見て、ああ綺麗だ、とか、嬉しいな、と思った気持ちは本当なのだから。

上手に言葉にならなくたって、心が揺れ動いているのは事実だ。
カナタ君も、それだけは覚えていて欲しいな。
決して『なかったこと』にはして欲しくないのだよ」

にんまりと笑って、逸らされた瞳を目線で追い掛ける。

「ヨキは教え子みんなに時間を掛ける。
そうしないことこそが、今まで『先生』として培ってきたヨキのすべてを壊すことになってしまうから。
君がどれだけ自分を粗末に評しようと、ヨキは絶対にそれをしない」

宵町 彼岸 > 「……そ」

ちらっと蒼色の瞳を見返しまたすぐに視線を逸らす。
顔なんて認識できないのにどうしてまっすぐ見れないのだろう。

「……ぅ」

意味があると言いたい事に驚く。
どうして期待してしまうのだろう。
なんでこんなにめんどくさいんだろう。
言いたいなら言えばいい。伝えればいいだけなのに。

「せんせ、すき、いっぱい。
 時間どんどん、無くなっちゃう」

それでもこの人は喜んで過ごすんだろうなと思う。想像に難くない。
だからこのヒトは評価が賛否両論にも関わらず、とても多くの生徒に親しまれている。
それはきっと教師としてはとても素敵な事なのだろう。

「……せんせーは、いけず」

ヨキ > 二度目に逸らされると、再び追い掛けることはせずにその横顔を眺める。

「君はヨキの時間のことは気にしなくていいんだよ。
時間を捻出して、作り出せるのが大人なのだから」

大したことはない、とばかり、にっと笑ってみせる。

「……うん? いけずだって? ヨキが?」

穏やかに問い掛ける。

「君は本当に、ヨキが他の子に時間を掛けていた方がいい?
それとも、」

小首を傾いで、声を落とす。

「ヨキを独り占めしたい?」

宵町 彼岸 > 「その点がくせーは不便。
 ……それ以上に、良いことも沢山です、けど」

学生とは基本拘束されるもの。
とはいえこの学園はかなり学生に対して緩い分そこまで制約はないし
以前の扱いに比べれば相当良い身分であることは間違いない。
……研究だって好きに出来るし。

「……ん」

思わず選んだ言葉に自分でも少し悩む
どこかストンと落ちる言葉でもあったのでそのまま頷き
ぼうっと窓へ視線を向けていた。
いつも通りこのヒトは笑っているだろう。
……そう思っていたけれど、少し予想と違う低い声の含みを持たせた言葉についと振り向く。

「……わかん、ない。
 せんせーは、ほしーよぅ?
 けど……理由が分からない、の」

言いようのない戸惑いが少し言葉にのる。
人によっては告白そのものの返事を平然と返し
ゆらゆらと揺れる瞳でじっと瞳を見つめて。

ヨキ > 「そうだよ。学生には学生しか出来ないことがある。
教師には、教師にしか出来ないことがある」

静かに微笑んだまま。
彼岸から返された言葉を聞く。

「そうか。君は、ヨキのことがほしーか」

静かに、微笑んだまま。
目を伏せて、二三頷く。

再び顔を上げ、彼岸を見つめる。

「ふふ。
理由がわからない、では、まだもう一歩だな。

それでは……。
これは宿題にしよう。次に会うときまで、とは言わん。
ずっとずっと考え続けて、答えを導き出してくれ。

どうして君は、ヨキのことが欲しいのか。

なかなか答えが出ないようでは、研究の題材にはぴったりだろう?」

な、と念を押して、徐に立ち上がる。

「さあ、ヨキはもうそろそろ、仕事に戻らなくては」

宵町 彼岸 > 「ん」

こくんと一つ頷き、じっと瞳を覗き込む。
ああ、本当に綺麗だなぁ。深くて、艶やかで。
私なら誰より綺麗に濁せる(アイセル)と思うのに。

「……やっぱり、せんせーって」

きっとこの感覚の答えをこのヒトは分かっているのだ。
何も話さないし、何も伝える気はないけれど
ソレでもこのヒトは……

「……いぢわる」

言葉では詰りつつもふにゃっとほほ笑んで
そのままふらっと立ち上がるとくるりと踵を返す。
何時か言葉にするだろうか。いや、きっとしないだろう。
そしてきっとその事も伝わっているに違いないから…

「おしごと、……ふぁいと」

後ろを向いたままぐっと両手でガッツポーズを作った後
振り向くことなく部屋を後にする。

ヨキ > 「ヨキは教師である以前に、大人だからな。
多少は意地も悪いものさ」

腰に手を当てて、にっこりと彼岸を見下ろす。

「……ふふ。そればっかりは、まさか褒め言葉ではなかろうな」

参った参った、とでも言いたげに。
部屋を出て行く彼岸の背中へ、声を投げる。

「――綺麗な花、ありがとう。
次は何かお返しするよ」

花瓶を手に微笑む。

それを机の隅に据え――絶えず眺めながら、己の仕事へと戻ってゆく。

ご案内:「ヨキの美術準備室」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブに黒革ハイヒールブーツ、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ご案内:「ヨキの美術準備室」から宵町 彼岸さんが去りました。<補足:灰色のサメパーカー、その上にLサイズの白衣を羽織っている。ホットパンツ、鉤模様ニーソ、白地に青のラインが入ったスポーツスニーカー、左手だけで前腕半ばまで覆う黒の軍用手袋>