2020/06/28-2020/06/29 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 昼下がりのカフェテラス。

空調の利いた二階席で、さまざまな料理が載ったワンプレートの食事を摂る姿がある。
サラダや肉、パスタがバランスよく盛り付けられたランチプレートは、彩りよく食欲をそそる。
アイスティーをお供に、何とも美味そうな顔をして料理を頬張っていた。

ヨキ > 偏食を感じさせない、順序のよい食べ方。
皿がぴかぴかになるくらい綺麗に食べ終えて、ペーパーナプキンで唇を拭う。

「ふう」

満足しつつも、“ご馳走様”にはまだ早い。
空いた皿を下げてもらう代わり、再びメニューの表紙を開く。
初夏の暑さに打ち克つために、デザートも食べておきたいところ。

ヨキ > この店には、シーズンごとの期間限定メニューも多い。
どうせなら誰かがお勧めするメニューを食べてみたい、と、周囲をきょろきょろ。
ヨキはときどき、こうしてお勧めのメニューや、ひいては話し相手を探すことが多かった。
相手が見つからなくても、それはそれ。昼食時を和やかに過ごすための習慣なのだった。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に羽月 柊さんが現れました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>
羽月 柊 >  
カフェテラス内は学生や教師だけが利用しているという訳でもなく、
他に常世島に住んでいるモノも来店する。

ヨキが辺りを見回すと、
「ほら、店なんだから大人しく。」という声が耳に入る。


柊は今日は息子と共に、ここに食事に来ていた。
その息子は友人を見かけたとかで、その子に元気に引っ張られて行ったのを見送りつつ、
子供同士で話すのも良いだろうと小竜2匹を連れ、席に着こうとする所だった。

男が持ってきたプレートには、そろそろ暑くなってきた最近冷菓が恋しく、
カラフルなアイスクリームが複数種、積み重なっていた。

ヨキ > ヨキの席からすぐ近く、小竜を連れた男のテーブルに目を留める。
席を立つ“息子”の後ろ姿に見覚えがあるような気がしたが、昼下がりの人混みに紛れてすぐに見えなくなる。

色とりどりのアイスクリームのプレートに、へえ、という顔をして。

「こんにちは。それ、美味しそうだな。
一目でアイスクリームが恋しくなった」

にこやかに笑いながら、給仕を呼び止める。曰く、“彼と同じプレートを”。
注文を終えた後、くすくすと笑って。

「失敬。つい真似をしてしまったよ」

羽月 柊 >  
暑さにうだりながら食べるアイスはさながらオアシスの喜びのようだが、
空調の効いた屋内でのアイスは、贅沢感があって良い。

近くで聞こえた声に視線を向けた男は、着崩したシャツにネクタイ、
くたびれた白衣を着ていた。


「こんにちは。…1人には少々量が多くないか?」
 
同じプレートを頼んだヨキに、
声をかけられると思っていなかった柊は少々きょとんとした桃眼でそちらを見た。

柊の頼んだプレートには、スタンドに留められたコーンに積み重なった3段のアイスと
カップに乗せられた2段のアイスであった。

ちなみにラインナップは、ちょうど今が旬の夏みかんとグレープフルーツのモノが一つずつ
マスカットの果肉が入った淡い緑色が目をひくのが一つずつ。
そこからコーンの方には定番品であろうチョコチップ系。

こういう段重ねのアイスの良い所は、季節限定も定番も一緒に楽しめるという点だ。

ヨキ > 男の返答に、平然と笑って。

「ははは、ご心配を有難う。
ヨキはこう見えて……、いや、見た目のとおりに大食らいでのう。
午後の仕事に向けて、英気を養おうと思ってな」

何しろランチプレートを先に食べたくらいだ、と、別段膨らんだりはしていない腹をぽんと叩く。

「君こそ、そちらの“連れ”と一緒に食べるのかな?」

連れとは二匹の小竜を指している。

「いやはや、突然済まなんだ。ヨキというよ。学園で美術を教えている」

羽月 柊 >  
「なるほど、健啖家なようで何よりだ。
 隣席のモノの腹を壊したとあっては、後で"息子"に叱られてしまう。」

朗らかに笑みを浮かべる相手に釣られたのか、
柊もまたふと笑みを浮かべる。

「ああ、連れと……ヨキ…、あぁ、ヨキ先生。」

質問に答えようとしたが、相手の名前と所属を聞いて暫くの沈黙。
後、思いだしたよう顔をしながら、
もう一枚持ってきていたプレートにカップの方を置いて、小竜達の方へと。

「先日"息子"が世話になったようでありがとう。
 私は羽月 柊(はづき しゅう)。『カラス』というキメラの子の保護者だ。
 息子から良い先生と逢ったと聞いている。」

ヨキ > 「羽月――ああ、君が彼の“お父さん”なのか。
これはこれは偶然だ。では、先ほど見かけたのがカラス君だったのね。

いい先生とは、それは何より。
彼の聡明さに助けられて、こちらが話しやすかっただけのこと。
彼の方こそ、さぞいい父に恵まれたのだろうと思っていたよ」

間もなくして、ヨキの元へもアイスクリームのプレートが運ばれてくる。

「いつかぜひ、話をしてみたいと考えていた。
よもや、斯様に早く機会が巡ってくるとは思わなんだ。

もしも君さえよければ、相席させてもらっても?」

羽月 柊 >  
小竜たちは食べて良い? 良い? とばかりにキュイーと鳴いていたが、
溶けるから早く食べなさいと言われると、
テーブルの上に降り立ち小さな口を開けてアイスを頬張り始めた。

「どうぞ、この子たちは大人しいので安心して頂きたい。
 
 息子も挨拶をさせたい所だが、先ほど友人を見つけて引っ張られて行ってしまってね。
 まぁ、子供同士大人に聞かれたくない話も多いだろう。

 …そうか、あの子が少しでも他人と話せているようでなによりだ」

ヨキが座りやすいようにと少し椅子とプレートを詰めた。

「親御と話したいとは少々驚きだな。
 最近の教師だと、生徒の親を煩わしく思うモノも少なくないというのに。」

そう話ながら、照明を反射する銀色のスプーンがアイスに差し入れられる。
ひとつが果肉が使われているからか、瑞々しい夏の果実の香りがする。

ヨキ > 柊の向かいの椅子へ腰を下ろす。

「お気遣いを有難う。
この街中で見かける動物たちは、みな行儀がよいから安心している。

彼はたどたどしいながらも、自分の身の上を一所懸命話してくれたものだった。
自分自身に少し自信がないようにも見えるが……、これから先、少しずつ身に着けていって欲しいと思っている」

ヨキもまたスプーンを取り、アイスを掬って口へ運ぶ。
すっきりとした甘酸っぱさが口内に染み入って、思わず表情が緩む。

「カラス君は、君を“自分を作った人ではない”と言っていた。
複雑な身の上ならば、彼自身を理解するためには“お父さん”にもまた話を聞きたいと思ったのだよ」

羽月 柊 >  
「…そうか、先生とはいえ自分の出所を。
 余程貴方が話しやすかった相手と見える。
 
 …あの子は出来る事も本来は多いのだが、出自が出自でな……。
 過去に縛られて自分に自信を持てずにいる。」

美味そうに食事をする男だな、と思いながらこちらもアイスを食べ進める。
スプーンを繰る度、手についた様々な装飾品が目立つが、
服装とは相反して手だけ成金趣味か? と言わんばかりでもある。

「…制作者までとなると、本当に随分話したのだな。
 
 息子の言う通り、合成獣…キメラたる身体として産んだのは自分ではない。
 俺の研究はそもそも、この小竜たちのように小型化・ペット化が主なのでね。
 
 ――あの子は、元の制作者から捨てられたんだ。」

ヨキ > 「彼は、カラスと呼ばれ慣れている、と言っていた。
……ヨキが言ったのだ。竜として造られるはずだった君は、『リュウ』と呼ばれることはなかったのか、と」

紅茶とアイスとを交互に味わいながら、言葉を続ける。
そうして不意に、スプーンを止めて。

「君の説明で、少し納得がいった。
事情はどうあれ、彼を“捨てた”制作者が、彼をリュウではなくカラスと呼んだのだ、とね。

ヨキは彼の脚は元より、翼も髪も艶やかで美しいと思ったものだ。
だのに彼は、自信の取っ掛かりさえ見つけられずにいるように見えた」

手つかずのアイスが少し柔らかくなる。
溶けてしまう前に、掬って食べる。

「君のような父親に恵まれて、まだ良かった。
これからはこのヨキも、ぜひ彼のサポートをさせて欲しいと思う」

羽月 柊 >  
「…貴方はなかなかに察しが良いようだ。
 食事の不味くなる話で申し訳ないが、仰る通り、と言っておこう。」

隻手を伸ばすと小竜の一匹の背を撫でやった。
食事中のペットに手を伸ばすと噛まれたり唸られたりといったこともあるが、
そういう様子は一切ない。どうしたの? とばかりに柊を見上げたが。

「その察しの良さに心労も多くなければ良いが、と勘繰ってしまう程だがな。
 
 ……息子に今の姿を与えたのも俺だ。元の姿はほぼ鳥の鴉と相違無い。足以外は。
 大きくなったことで自分も、息子の翼も見目も良いと思うのだが…。
 生来ではないのはやはり引っかかるのだろうな。

 …いいや、私も不甲斐ない養父だとも。」

早々に食べ終わってしまった小竜達に、自分の溶けかけたアイスを一つカップへ移してやる。

「幼馴染を止められなかったのだから。」

ヨキ > 「いや。こうして話してくれるだけ有難い。
それだけヨキのことを信用してもらえた証なのだから」

微笑んで、首を振る。

「心労など。
ヨキはこの学園に、好き好んで身を捧げているのだ。
教え子たちを見守るのに、何の負担もありはしない。
彼らが育つことの喜びは、何よりヨキを癒してくれる」

柊を真っすぐに見つめる視線に、嘘はなさそうだった。
芝居でもおべっかでもなく、心からその言葉を口にしているのだ。

「……そうか。元は人間の姿ですらなかったのだな。
言葉と頭脳と五指の両手を手に入れた以上、獣は獣として生きることは出来ぬ。
考えなければならないことが増えて、心労を抱えているならカラス君の方だろうとも」

幼馴染。その言葉に、途方もないものを垣間見たように小さく首を振った。

「それでも、彼は君を慕っている。
取り零してしまったものがどれだけ大きいとしても――君は辛うじて掬い取ることが出来た」

羽月 柊 >  
「……これは同じ大人としてだが、
 自分にも見えない所で負担や心労が重なることもある。

 貴方のような良い先生だと特にな。
 
 日々忙しい充実して楽しいのは顔から分かるが、
 自分を休めることも忘れないようにしてくれると、息子を任せている身としても安心できる。」

嘘偽りの無い視線を受け、半面柊はその桃眼を僅かに伏せた。
表層のアイスを食べてしまうとコーンを齧る気になれず、小竜たちに食べて良いぞと譲ってしまった。

「…そうだと良いがな。

 ああ…息子は姿に不釣り合いな首輪と枷をしているだろう?
 あれは俺の作でな。息子をヒトの姿たらしめているモノでもある。
 不格好だが魔術学会のお上達に、"これは危険なモノではない"という証明でもあるんだが。

 『合成獣、しかも混ざりモノなど危険すぎる。"処分"してしまえ』
 と言われているのを押し切って人型にさせたが、
 悩むことが増えたのは事実だろうな。」

獣は獣として生きる事は出来ぬというヨキの脳裏には、己の歩みが過っているのだろうか?

ヨキ > 「ああ、それはご心配なく。
おかげでヨキ自身趣味は多く、休日は確保しておる。
ヨキが倒れてしまっては、教え子らの手本にはなれぬでのう。
“先生”を名乗るからには、まずは己が健康で居なくてはね」

柊に反して、こちらは手に取ったコーンまで噛り付いてしっかりと味わう。

「彼が人型であることを選び、それを生徒として受け入れたことは、君とヨキら教師に等しく課せられた責任だ。

君は彼の苦悩を取り除く。
ヨキは彼に障壁の乗り越え方を教える。

それが父親であり、教師だと思わんか。

重責の在りようを嘆くよりは――それを分かち合い、共に進んだ方が建設的だからな」

羽月 柊 >  
「いらぬ心配だったか。
 最近島の空気が焼けついているような感覚がしたのもあってな。」

表情の機微は少ないが、ふと笑う。
あまり見せないだろう笑みは柔らかい。
それは確かに誰かを見守るモノで、子供を育てる父親の笑みであった。

それが例え、偽りの親子であってもだ。

「そうだな。ヒトはつい過去に拘ってしまう。
 全て忘れる事は出来ずとも、誰にも明日はやってくるというのに。

 この島の子供たちは得てして力を持っているせいか、
 自分たちで物事を解決しようとしがちだが、
 我々大人もいるということを、覚えておいてほしいモノだ。」

ヨキ > 「島の空気が?」

それを聞いて、ふっと笑う。

「……それを杞憂とするのが、我々常世学園とその教師だ。もしも君の身に危険などあらば、そのときは教えてほしい。
教え子と同じく、その保護者もまたヨキにとっては守るべき存在であるのだから」

柊の微笑みに、どこか安心したように表情を和らげる。

「ああ。たとえ生徒らが運営の主体だとしても――
その背後には我々のような大人が在る。
子どもに負けぬように、踏ん張りどころだな」

話に花が咲くと、アイスクリームを食べる手もいつの間にか進んでいる。
一人分にしては量の多いプレートを綺麗に完食すると、ご馳走様でした、と手を合わせて。

「それでは、ヨキはそろそろ仕事へ戻らねばならぬ。
カラス君にもよろしく伝えておいてくれ。
君もカラス君も、実によい“親子”であるとな」

笑い掛け、席を立つ。別れの挨拶と会計を済ませ、店を後にする。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
羽月 柊 >  
「……"良い親子"か。そうであると良いがな。」

ヨキが去っていく背を見送り、言葉を反芻する。

時たま、息子以外の島の子供も心配になることがある。
過去遭遇した、異能を暴走させた炎の巨人事件。

偶然居合わせたモノだが、ああいう火種は燻っている。

――しかし、いくら自分に戦闘能力があるとはいえ、
応戦は認められるとはいえ、自分は常世島の一般人だ。
率先してそういうことが出来る立場ではないし、
風紀委員だとしても子供にすら"護るべき対象"とされるのは、どこか納得のいかなさもあった。

そんな小さな悩みは、胸の中に秘めてさておき。

「ん、あぁ、おかえり。友達はもう良いのか?」

たったかと戻って来た息子と合流し、親子もまた日常へ戻っていく。
ヨキ先生と話したと息子が聞いて、
親子の間で何の会話があったかは、また別の話。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から羽月 柊さんが去りました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>