研究区内にある羽月 柊の個人研究所。

竜、龍、ドラゴンを専門に研究している。
建物の規模はさほど大きくなく、大型の竜がここに居る様子はない。

2020/07/05 のログ
ご案内:「研究施設群 羽月研究所」に羽月 柊さんが現れました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。>
ご案内:「研究施設群 羽月研究所」にルギウスさんが現れました。<補足:胡散臭いサングラスの闇司祭>
羽月 柊 >  
「肉食組、ご飯の時間だ。
 カラスはすまないが鉱石組の準備をしておいてくれ。」

ここは羽月 柊の個人研究所。
研究所とはいうものの、小さな竜が居住区の方を闊歩しており、
半ば孤児院やふれあい動物園と化している。

今はお昼時。草食、雑食はドーム状の建物の中に食料があるが、
肉食やその他を食べる竜の食事を用意している最中の柊であった。

この研究所の、いつもの日常の光景。

ドーム状の建物の天井部から、夏の太陽が差し込む。

ルギウス > そんな平和な研究所に、来客を告げるベルがなる。
もちろん、アポイントメントなんて取ってはいない。
むしろいきない背後に出てきて話しかけないだけ誉めて欲しいものだ。

「失礼、こちら羽月研究所でよろしいですか?」

出迎えに向かえば、そこに立つのは異世界風の司祭服を身にまとう黒髪にサングラスの変……もとい人間である。

羽月 柊 >  
人が来たと分かると、息子に給餌を任せつつ、
傍に置いてあった白衣を手に取って羽織り、来客対応の出来る玄関側の平屋へ向かう。

鏡を通り、扉を出れば全く知らない人物。
傍らに常についている彼の護衛竜であるセイルとフェリアも
誰? と空中を飛びながら首を傾げている。

(異界の迷い人…という訳でもないか、いや、表札を見たのかもしれないが)

「あぁ、ここは羽月研究所だが…。何か用事か? 宗教勧誘なら断っているが。」

じっとりとした日本特有の熱気と日光に迎えられ、
僅かに桃眼を細めながら司祭服を見て素材のことが頭に浮かんだりと、
研究者なせいか頭の中は小忙しい。

ルギウス > 「ああ、よかった。この辺りにはあまり足を運びませんので」

場所を間違えていたら赤っ恥ですよ と笑って。
竜を視界に収めれば、そのまま流れるように話を続ける。

「こちらで、竜に関しての研究を行っているとお聞きしまして。
 お話を伺わせていただければ……と。
 お時間をいただくのですから、相応の報酬は用意させていただいてます」

ルギウスが懐から取り出したのは、一枚の鱗。
岩石を見間違えそうになるソレは間違いなく竜のソレ。

「どうでしょう?」

羽月 柊 >  
鱗を眼前にすると、柊の眼が訝し気に細められた。
表情こそさして変わらないものの、目は口程に物を言うのである。

竜の鱗を見慣れている柊には、大方の予想はつく。

しかし、少なくともそれが良く出回っている類のモノではなく、
先日行われた裏競売で出た密漁の素材とは類似点が無い。

故に、柊としては内心苦い思いなのだ。
新たに狩られた種がいるのでは、という考えが頭に奔る。

「…うちは基本買取はしない方なんだが…。
 その鱗の出所は気になるな。」

頷くと相手を室内へ入れる。
客間の方へと通すが、道中に竜は柊の傍の2匹以外見えない。
客間よりも奥へと進まなければ、
住居やドームへ繋がる鏡にはたどり着けない仕組みになっている。

「珈琲と紅茶、どちらがお好みで。
 普通のお茶もあるが。」

ルギウス > 「ああ、そんなに険しい顔をされずとも。
 ご安心ください、合法も合法……私の飼っている竜の鱗ですよ。
 数年前の生え変わりの際に拾ったものです」

こちらの顔は張り付けたような笑顔が一切動くことなく。
口だけは非常に流暢に動いていく。

「ええ、買取ではなくお時間をいただいたお礼に差し上げます。
 そこらの刃や銃弾なら傷一つつかない強度の代物ですよ。
 属性は地。
 元の持ち主は、日向ぼっこが好きで日当たりのいい場所でのんびり草を食んでますよ。
 写真とか見ます?」

ペラペラと喋りながら、応接間に通り。

「紅茶を。砂糖はなしでお願いします」

羽月 柊 >  
紅茶の注文を受けるとティーバッグを出してくる。
アイス、ホットも対応する。
研究者肌なせいか、淹れ方は大分機械的で、
ティーバッグのパッケージ通りにタイマーを置いて作って来るだろう。

ただ自分の分はといえば、かなり雑に珈琲を砂糖多めで淹れていた。

「どうぞ。なるほど、飼い竜か。
 写真を見せてもらえるなら安心も出来るが、
 何分ここは竜の保護も兼ねた研究所なのでね。

 現代のシーシェパードや愛護団体ほど苛烈じゃあないが、
 目の色を変えたのは悪かった。」

ソファにかけてもらい、対面に座ると膝上で手を組む。

「地に属する竜は地上で生き抜くために堅牢さを身につけることが多い。
 銃弾にも抵抗出来るのは強い種だな。

 それで、何の話が聞きたいんだ?
 ある程度ジャンルを絞ってもらえた方が助かるがな。」

ルギウス > 「写真はこちらになります」

今時に、現像した写真を取り出してテーブルに並べ始めた。
一緒になって写ってるものや、単体での日向ぼっこや呑気な食事シーンなど。
一緒に他の幻獣種が写りこんだりもしているけれど。
後は背景に写る森が異常に暗くて何も写りこんで……あれ、人の顔かな?気のせいかな?という具合で実にペット自慢の写真である。

「ははは、グリーン(ピー)スとか愛護団体の方たちほど過激であれば、別のアプローチを考えてますよ」

紅茶ができるまでの間に懐からお茶菓子なんかも持参しつつ。

「竜の小型化やペット化を研究している とお聞きしまして。
 それについて、色々と。
 一代で行うのか、品種改良のように世代を重ねるものなのか……等とね。
 私も竜を飼っていますので興味深いのですよ」

羽月 柊 >  
写真をまじまじと見ている。偽造写真ではないだろうとは思うが。
他の幻獣種が写っているのを見る限り…。

「ふむ、これは異邦の写真で?
 もしくはイギリスやあちらの世界がもっと身近な場所か。」

空間術のひとつだというのならなんとも言えないが、
他の幻獣種が写っていることに興味があるらしい。

「…良くこんな魔術学会の木っ端の研究者を知っているもんだな。
 
 うちは基本的に一代で行う。
 生まれた時から魔術で外形の成長を阻害したり、
 場合によっては大きさそのものを縮めたり、
 性質の似通った別の姿を与えたりもする。

 卵や幼体から行うから、それ(写真)ような成体には少々酷だ。

 下手をすれば、その過激団体から怒りを買うような作業だ。
 まぁ、この子らに無理を強いている訳じゃあない。
 ペットとして譲渡するにしても、身分や資産をしっかり持ってる奴じゃないと渡さない。」

慈善に近く、愛護よりは遠い。
柊の仕事はそんなモノである。

ルギウス > 「異邦と言えば、異邦ですか。
 私の館を魔法で空間や次元を少し弄ってあります。
 現世よりも、隠し里や幻想郷に近くしてあるのでそういう種には快適ですよ」

もっとも、マグマの中に住むなんて種は持てあましますが と笑い。

「発表された論文タイトルと記述者には目を通していますから。
 なるほど、後付けの成長抑制が主な手法でしたか。
 一時的な変質であるなら、一緒に散歩などもできるかと思っていたのですが。
 ふむ、上手くはいきませんねぇ。
 
 ところで、先ほどの二匹も、その技術で小型化を?」

羽月 柊 >  
「…なるほど、空間や次元を扱えると。
 生物が内部に生息できると考えれば、俺には出来ない高度な術式だな。」

それが出来ないからこその小型化、ペット化なのである。
そこから今の事業があるのだから悪い事ばかりでもないのだが。

「この2匹は最初の成功例で、俺の護衛をしてくれてる。」

そう言いながら手元に招き寄せて首元を指でくすぐる。

「一時的な変質は竜本体が魔力、魔力素材の塊として
 扱うのが難しいというのが俺の見解だ。
 
 それが出来るというなら何も言えないが、
 一時的な方法は専門じゃあないから信頼できる情報は出せないな。
 研究者として、ソースのない不確かなことは言いたくない。
 ただ、縮小化して連れ歩くなら、自衛力は大事になるというのは覚えておいて欲しいな。
 竜であることには変わりない。小さくても狙われることはままある。」

とはいえ、空間や次元を扱えるという相手に対しては忠告にもならないかもしれないが。

ルギウス > 「幸いに研究を行う時間だけはあったものでして。
 維持コストを考えると、もう一か所……とはしにくいものですよ」

相応にお高いと口にしながら。
羨ましそうに、竜を見る。

「なるほど……確かに、魔法に長けた成龍が行うならともかく幼竜ならば難易度は高いでしょうねぇ。
 ええ、確かに自衛は大事ですとも。一時間の散歩に一か月先までの精神力を支払うのはバランスが悪いですし」

ところで と前置きしてから。

「性質の似通った別の姿を与えたりもする……と仰っていましたが。
 例えば……人間などとの互換性は、どうなのでしょう?」

笑みの質が、変わった気がする。

羽月 柊 >  
茶菓子を食べる、手が、止まる。

「…人間の互換性は高い。
 位の高い龍が人間の姿を取り、龍人と呼ばれることがあるように。
 人間は元々他の種との融和性が高いんだ。
 二足で歩き、脳の容量が増え、四足よりも手が自由に使える。
 そこに他の種の強靭さが備われば、人間としての脆弱さも成りを潜める。」

飼い竜を人型にでもするつもりだろうか、
そんな思案を巡らせながら、桃眼がサングラスを見る。相手の目の全ては見えない。

「ただ、安易に人間になれば、本人は苦しむかもしれん。
 …最近知り合った知人からは、
 『言葉と頭脳と五指の両手を手に入れた以上、獣は獣として生きることは出来ぬ。
  考えなければならないことが増える』そう言っていた。」

ヨキの言葉が頭を掠めた。
目の前の人物が、そのヨキを知る人物だとは知らずに。

ルギウス > 「なるほど。
 純粋な竜ではなくなるでしょうからねぇ。自ずと在り方が変わるのでしょう」

知人の言葉を聴けば、ああきっと彼ですねぇ なんて顔を想像して少し苦笑した。
さすが、人に成った獣の言葉だ。深い と。

「では……同じ竜同士の互換……いえ、この場合は上乗せですか。
 それは、どうなります?」

羽月 柊 >  
「人に成った以上、否が応でも人間の社会に組み込まれる。
 人に成った以上…嫌でも人間の考えを押し付けられる。」

柊はヨキが元は獣であることは知らない。
知り合ったのはほんのつい最近である故にだ。
ただ、息子に向けられたその言葉は、真実だと思えた。

一旦止まった動きを再開し、珈琲を啜る。
部屋内の照明に照らされ、右耳のピアスが光る。

「竜同士の互換は、同じ属性で行うのが一番だ。
 他の属性を繋ごうとすると、大体が破綻してしまう。

 元々竜は自然の権化のような存在だ。
 空を征く種に地を統べる種を繋いだ場合、強い種同士だと天変地異すら起こり得る。
 それこそ"竜"ではなく"龍"であれば、特にな。

 …素人が手を出そうとは思わない方が良い。俺でも手を出したくはない。」

そう忠告するように言葉を紡ぐ柊は、それまでの態度よりも更に真剣であった。
まるで、過去に犯した罪を見るような。

ルギウス > 「なるほど、実に参考になりました。
 無理な互換はやめておくとしましょう」

聞きたい事が終わったのだろう、広げていた写真やらを片付け始めて。

「さて、美味しい紅茶と為になるお話に少しばかりのお礼をこめて。
 欲の獣にご注意ください。属性は……例えるなら、『悪』でしょうか。
 まぁ、注意したところでどうにもならないのかもしれませんけれどね」

片づけ終わり、最初の宣言通りに 岩石竜の鱗を一枚と名刺をセットで置いていく。

「大変、有意義なお話でした。
 ……そういえば、名乗り忘れていましたねぇ。私はルギウス。“自由なる”ルギウスと申します」

以後、良しなに と恭しく頭を下げた。

羽月 柊 >  
「ああ、こんなうんちくにちかい話で良かったなら良いがな。
 君は異邦のモノにも見えるが、言葉を食べたりするのかもしれないな。」

半分冗談、半分本気。
言葉繰りをする相手に対してそんなことを言ってのけた。

「どうも、ルギウスとやら。
 しかし、『悪』の欲の獣……注意しろとは、なかなか穏やかじゃないな。」

鱗には現段階では手を付けず、
相手の忠告に対して脳裏の記憶を遡ってみるも、今の所該当がない。

ルギウス > 「私は……異邦人というよりは、彷徨える旅人なのかもしれません。
 そんなモノなら言葉だって食べますとも」

頭を上げて、両手を広げて。

「実際に行っている事なら出来ると言い。
 そうでないならわからないと口になさる技術者ですからねぇ。
 蘊蓄であっても、結果を口にしてくださったなら……それは実験の結果でしょう?

 だとすれば、それは立派な指針であり……挑むべき常識になるじゃあないですか」

まずは先人をなぞる事。
そこから始まると、続けて。

「竜とは悪の権化でもあるからですよ。
 聖書や英雄譚、はたまた伝承でもよくあるでしょう?

 人の欲が集まり受肉した怪異とでも言いますか。
 竜であるなら、うっかり何かと互換するかもしれない……そういう話です」

羽月 柊 >  
その通り、この世のいったいどれだけのモノが、
"類似のない新しい事柄"に挑めるというのだろうか。
それは本当に確率として低い。

この世に生きるモノは無数にいて、
自分には新しく思えても、それは誰かの模倣なのかもしれないのだから。

「俺は机上の空論に過ぎない話が嫌いなだけだ。
 実際に行ってみなければ、"予想外は起こりえない"
 だが、危険な事に後先考えずに突っ込める子供でもない。」

小竜の一匹を手の平の上におさめ、親指で背を撫でる。
撫でながら、目線は冷ややかに。

「……そうだな。
 異であるから、姿が邪であるからと狩られた種もいただろうがな。

 ――悪意の塊が竜のごとく受肉を果たすかもしれないと?」

ルギウスの言葉の真意を聞き出そうとする。

ルギウス > 「場所が本土であるならば、無視できる程度かもしれませんけれどねぇ。
 何せこの島は特異点と言っても過言でない状況です。

 ちょっとした備え、心構えはあってもいいでしょう?
 小型化を行っているとはいえ、最強と名高い竜種を扱っているのですから。
 縁が深ければ自ずと邂逅してしまうものですし」

もっともーと腕を組みながら人差し指をピンと立てて、天に向けながら。

「現状で、兆しも預言もありません。
 ですから、私としても注意のみのお話となっているわけでして」

我ながら歯切れの悪い注意勧告ですよねぇ と 嗤って。

「今日のところは、そんなお話ですよ。
 長々とお時間を頂いて申し訳ありませんねぇ」

羽月 柊 >  
「……神託にはほど遠い、ただ言葉としては覚えておけ、か。
 あまり鎹を覚えたくは無いがな。」

やっぱり宗教勧誘なのかと内心過ったりもしつつ、
手元の小竜を飛び立たせ、肩と頭に双方を乗せると立ち上がる。

「言葉は祝いであり呪いだからな。」

そう言いながら、相手を見送る準備をするだろうか。

ルギウス > 「そのうちに、またお邪魔させていただきますよ。
 そろそろ岩石竜の歯の生え変わりが起きるかもしれませんので」

畑から兵士がとれる材料ですよ と笑って応接室を後にする。

「今度きたときは、羽のある竜種への懐かれ方を教えてください」

一礼して、きちんと出入り口から出ていった。

ご案内:「研究施設群 羽月研究所」からルギウスさんが去りました。<補足:胡散臭いサングラスの闇司祭>
羽月 柊 >  
「……なんとなしに妙な相手だったな。
 異邦人、旅人であると考えれば不思議でもないだろうが。」

そう零しながら、受け取った岩石竜の鱗を手に取る。
話だけでこれだけの報酬なのは、随分と破格に思えてならない。

出来る事だけを言ったつもりだ、
無茶さえしなければとんでもない事態は起こりえないはず。

……昔のようなことには。





「お父さーん、餌やり終わりました。」

と、息子が奥から出て来て声をかければ、
そんな杞憂も一旦は頭の隅へ追いやられた。

「ああ、今行く。」

こうして奇妙な邂逅は終わる。

神託が成就するのか否かは、まだ誰にも分らない。

ご案内:「研究施設群 羽月研究所」から羽月 柊さんが去りました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。>