2020/06/09 - 23:20~00:47 のログ
ご案内:「コンビニ『アビスマート』」に戸田 燐さんが現れました。<補足:蒼い髪と瞳をした、セーラー服の一年女子。>
戸田 燐 >  
夕方。逢魔時。黄昏。昼と夜の境界。
こんな時間にコンビニに来れば、悪い事だって起きるというもの。

「…………っ!!」

ない。ない。ない。
売り切れている。私の大好物のおにぎり(昆布)が。
あり得ない。こんなことがあっていいはずがない。

これだから日直で帰りが遅くなる日は嫌。
私の平穏と静寂に満ちた幸福な夕飯を返してほしい。

戸田 燐 >  
落ち着け、心を落ち着けろ。
急いては事を仕損じる。
とりあえず買い物籠の中に緑茶を入れて考える。

残されたおにぎりから最適解を導き出せ。

腹具合からして、食べられるおにぎりは2個。
となれば、初手に味の濃いもの……
肉系おにぎりと梅おにぎりのコンボが無難。

となれば……鳥そぼろおにぎりと梅。
無難が過ぎる!!
こんなので昆布を喪った哀しみが癒えるはずがない!!

戸田 燐 >  
となれば、鮭の切り身とツナマヨ。
これはともすれば野暮ったいまでに舌に味を残す。
しかし、お茶を飲むタイミング次第で良いコンビとも言える。

鮭は熟練の刑事。ツナマヨは暴走しがちな新人。
ともすれば一人で突っ走り気味なツナマヨを、鮭が諌めながらリードする。
あとはお茶……お茶は………
渋みの強いお茶が良い。

しかしいつものお茶も売り切れ。この案もご破算。

戸田 燐 >  
つくづく昆布がないのが惜しい。
昆布があればどのコンビでも勝利を収めていたものを。

次のプランをいこう。
新しい味。つまり新規開拓を狙う。
この淡々麺風味のチャーハンおにぎり。

辛そうだけど、コンビニである以上そうとんがった味付けにはしない。
これに味玉おにぎりを合わせればあら不思議。
お互いソリが合わないといいながら試合で結果を出すフィギュアスケート男女混合ペアという風情に。
本番になれば結果を出す二人の感情が燃え上がる。

しかし……少し油が過ぎる。
度が過ぎると太る。
それは避けたい……どうしても。

戸田 燐 >  
太りたくないのなら、これもいいかも知れない。
枝豆五穀米おにぎり。
枝豆の典雅な風味を五穀米でどっしり受け止める名作。
これにおかかのおにぎりを合わせれば……

完成。140km剛速球ピッチャーとそれを支えるどっしりとしたキャッチャーの名バッテリー。
華麗にバッターを打ち取る投手…
その努力に裏打ちされたストレートを漏らさず捕球する捕手。

完璧。
今日はこれで……

「!?」

悩んでいる間に目の前で最後の枝豆五穀米おにぎりが買われていった!?
プラン……プランが崩れる!!
私の完璧な計画が!! ドラフト会議が!!

ご案内:「コンビニ『アビスマート』」に鈴木竜一さんが現れました。<補足:黒のショートヘア,袖をまくったワイシャツにスラックス。バイト用のエプロンを付けている。>
鈴木竜一 > あの客,おにぎりコーナーの前でずっと何やってるんだろう。
これは,そう思ったまま見守っていたバイトの青年。
一度バックヤードに引っ込んで,また戻ってきたら…まだ居た。

「……………。」

とっても怪訝な顔をしているバイトの青年。
だが,貴女にとって重要な情報は,そこではない!
この時間にバックヤードから戻ってきたということは,つまり,商品が補充されるということだ!
そこには荷台に積み上げられた補充商品の籠が,確かに聳え立っていた!!

戸田 燐 >  
あり得ない……これは何かの間違いよ…
平穏と静寂を愛する私の心に……こんなトラブルがあっていいはずがない………

その時。

「!!」

青年が姿を見せる、彼はこのコンビニのエプロンを装備していて。
それはつまり。商品補充のタイミング!!
神!! まさに神!! 
この戦(いくさ)、勝った!!

「……あー………昆布のおにぎりあります?」

言ってから恥ずかしくなった。
腹、減ってるのか?と思われたかも知れない。
しかし、補給物資の矢の本数を数えない軍師がどこにいる。

鈴木竜一 > 「……へ?」

まさか,棚に並べるより先に聞かれるとは思いも寄らなかった。
初めての経験に瞬時凍り付くバイトの青年。
けれども,並べる前の商品を売ってはいけないなどという決まりは存在しない!

「っと,少々お待ちください。」

小さく頷いて切り替え,貴女の所望するブツを探す。
だがそれも,長い時間を必要とする作業ではないだろう。
昆布,それはいかなる時間帯でも,いかなる客層でも,安定して売れる…いわば安牌の商品!

聳え立つ籠の,まさに最上段に“それ”はあった。

「……1個で良いっすか?」

4つも!

戸田 燐 >  
勝った!! 私こそがこの世界の勝者!!
勝ち組、リア充、ザ・ウィナー!!

「はい、1個で大丈び………大丈夫です…」

テンションが上がりすぎてちょっと噛んだ。
フッフー!! 昆布とツナマヨに緑茶!!
今まで数多の世界チャンピオンを輩出しながら老いと同時に一線を退いたトレーナー、ツナマヨ!!
名伯楽である彼が見出した黄金の才能を持つボクサー、昆布!!
世界に見せ付けろ、この輝きを……才能を!!

「すいません、陳列前に話しかけて…」

礼節大事。とても大事。
青年に感謝。彼という命を育んだ世界に大感謝。

鈴木竜一 > 事もなく,貴女が求めた“それ”は手渡される。
税込み110円…けっして大きく売り上げに貢献するほどのものではない。
だが,塵も積もればエベレスト山脈という言葉もあるのだ。

「全然おっけーっすよ,他に何か買います?」

そうして,更なる購買意欲を刺激する。
青年の無意識の心遣いが,貴女に更なる出費を強いるのだろうか。

なお,たぶんきっと,大抵の物はこの聳え立つ巨塔の中に入っているだろう!!

戸田 燐 >  
「…………え?」

他に? 待て………私は勘違いをしていた…
昆布とツナマヨという定番サクセスストーリーに目を取られて…
新しい感動を求めることを、忘れていた。

このお兄さん、できる!!

これは彼に恥じない選択をしろという挑戦状。
負けてはいられない。
空の陳列棚を見る。

アビスマートプレミアム・豚トロおにぎり……だと…
この写真を見た感じ、とんでもない化け物だ。
異形で、厳つく、力が強い怪物。
だけどそれに昆布を添えたら………?

異形の怪物と、その存在に心の安らぎを求める可憐な少女のコンビに!!
まさか……この可能性を示唆していたの!?

「……豚トロのおにぎりありますか………?」

鼓動が早鐘を打つ。あったら。あったら…とんでもないことだ。最早事件!!

鈴木竜一 > 無意識,それは完全に無垢な言葉であった。
いや,必ずしもそうとは限らない…全てが策略であったとしたら…

「新発売のやつっすね,ちっと待って下さい。」

…だんだんと口調が砕けてきているのも,貴女に安心感と距離の近さを感じさせるためであろうか。
などと地の文が暴走しているうちに貴女の求めたそれは,2段目から現れた。

“アビスマートプレミアム・新潟産コシヒカリ豚トロおにぎり”

税抜き価格160円,税込み176円。
その差はたかだか66円。されど,パーセンテージで見れば概ね150%である。
単純に計算して1.5倍の戦力。その差は,まさしく,圧倒的!!

「ほい,どうぞ。」

それが今まさに,貴女に手渡されようとしていた。

戸田 燐 >  
「………!?」

あるの!? 豚トロ、昆布!! この出会いは、運命!!
手渡されたおにぎりを掌に載せると、脳内で何らかの物質が分泌された。

花畑で座り込む怪物に、笑顔で花冠を被せようと必死に背伸びをする少女。
いつか別れのさだめが二人を待ち受けていようとも。
別々に生まれた二人の運命が悲劇として待ち構えていようとも。

「ありがとうございます」

今、この瞬間の微笑みは、嘘をつかないし嘘がない!!

アビスマートの店員、恐るべし。
未だ見ぬ境地への到達……怪物(豚トロ)と少女(昆布)を彩る美しい花畑(緑茶)。
この光景を生涯忘れない。
そう誓って私は会計を済ませてコンビニを出た。
 

妄想だけど。

ご案内:「コンビニ『アビスマート』」から戸田 燐さんが去りました。<補足:蒼い髪と瞳をした、セーラー服の一年女子。>
鈴木竜一 > 会計へ進む貴女を,にこやかに見守る青年。
…そう,最後まで,自分はただただ,善意でそうしたかのように。
やがて,貴女は必要以上のカロリーを手に,必要以上のYENを支払って,店を出ていく。
その満ち足りた横顔を,男はきっと,3日くらい忘れないだろう。

ご案内:「コンビニ『アビスマート』」から鈴木竜一さんが去りました。<補足:黒のショートヘア,袖をまくったワイシャツにスラックス。バイト用のエプロンを付けている。>