2020/07/05 のログ
ご案内:「氷雪系探偵戸田燐の事件簿~アンチノックス/アンチヴァンダイン~」に戸田 燐さんが現れました。<補足:蒼い髪と瞳をした、セーラー服の一年メガネ女子。(乱入歓迎)>
戸田 燐 >  
事件は唐突に起こった。
第三教室棟の第十七準備室にて。

部屋が何者かにメチャクチャに荒らされるという事件が。

被害者兼容疑者は合計9人。
その部室はカーテンのような仕切りがあり、
三つの部が共同で『文化部定期発表会』の準備に追われていた。

要は弱小文化部が、こういう活動をしていますよとアピールし、
部費と部員を集めるというわかりやすい発表会。
その発表会が一週間後に迫り、いよいよみんな切羽詰まっていた時に。

「……見事に荒らされてるわね」

『なんかいつも本読んでるし眼鏡してるから』という雑な理由で呼ばれた私。
別に乱読家が全員探偵というわけじゃないのだけれど。

戸田 燐 >  
部屋は壊れたモノが散乱し、見るも無残という有様。
どんな悪意があったらこんなことができるのだろう。
みんな、文化部定期発表会に向けて頑張っていたはずなのに。

一方、部屋を仕切っていたカーテンがない今。
その中にいた三つの部はお互いを疑って喧々諤々の大激論。
ああ、疑心暗鬼。

そしてここまで揉めているからには勝手に密室事件だと思っていたけど。

聞いてみれば、『窓は全開、ドアは未施錠で誰でも入れた』ということ。

密室の、真逆。フルオープン事件。
何なら廊下の窓も全開だったらしい。
この部屋のエアコンが不調気味だったとかナントカ……

「これじゃ外部犯でも犯行できちゃうじゃない!」

探偵いる意味ないんじゃない!?

ご案内:「氷雪系探偵戸田燐の事件簿~アンチノックス/アンチヴァンダイン~」に水無月 沙羅さんが現れました。<補足:身長:156cm 体重:40kg 不死身少女>
水無月 沙羅 > 「……なんの、騒ぎ?」

開いたドアから顔をのぞかせるのは、風紀委員の一人。
『水無月 沙羅』通称、ドール。
なんてことはない、ほとんどしゃべらないし、動かない、表情も変わらないから『人形』。
唯それだけの話。
彼女が風紀委員預かりの身になっているというのは、同じ学年なら有名な話。
人を殺したこともある、とかいう噂もあるぐらいで。

とかく、重要なのはそんなヤバそうなやつがやってきたという事実なわけで。

「…………?」

教室は一気に静まり返ってしまった。

戸田 燐 >  
水を打ったように静まる教室内。
やった!! これで話し合いに移行できる!!

「よく来てくれたわねワトソンくん」

エヘン、オホンとわざとらしく咳払いをして。
彼女の噂は知っているけど。
噂は噂。彼女を知らない以上、彼女を知るのは私だ。
人の評価には主体性がなければならない。

「実はこれこれかくかくしかじかで第十七準備室が荒らされたのよ」

とにかく彼女を巻き込めば有利にコトを運べる!!

「はーい、はい。それじゃ全員から事情を聞かせてもらっていい?」
「この名探偵、戸田燐におまかせおまかせー」

適当なことを言ってみんなを宥める。
要は風紀が来るまでにみんなの喧嘩を止めればいいだけ。
あとは事情を聞いてる間に風紀が来て、適当に解決してくれる。

そこでニセ探偵の出番はおしまい。

それまで時間稼ぎをしていきまっしょい。
とりあえず別室で軽音部の人たちから話を聞いてみる。

「あなたたちが軽音部の、えーと……」

任意提出してもらったメモを見る。
自己申告なので話半分に。

軽音部(警音部)

輝 夜空(かがやき よぞら)さん(星の光のような破壊光線が出せる異能)

三兼 翔子(みかね しょうこ)さん(風と波と加速を司る異能)

山崎 春来(やまざき すぷりんぐはずかむ)さん(周囲の人間の行動を加速させる異能)

水無月 沙羅 > 「……。」

あぁ、この流れは、何処かで見た事が在る気がする。
そう、図書館にあったくだらない探偵漫画のソレ。
子供だましの犯罪トリック紹介。
作者が脳内知識をひけらかすだけの探偵小説とかそういう。

いや、別に娯楽として否定するつもりはないけれど。
今この場で、『私が風紀委員です』とは言ってはいけない雰囲気。
なんだか、少女も楽しそうにしてるし、喧嘩も収まったようだし、
口を挟む必要もないだろうか。

「ワトソン……」

何故私が助手にされているのか、わからない。
おかしい、彼女とは初対面のはずなんだけれど。
……それとなく、それと抗議の視線を送ってみる。
何もないのなら帰りたいのだけれど。

……自称ホームズは聞き取り調査を始めてしまった。

「はぁ。」

仕方ない、問題の報告書をまとめるためにも、少しだけ付き合うことにしよう。

戸田 燐 >  
彼女のことは人を殺した、という噂は知っていても。
風紀委員だということは知らないわけで。
私はそのことを大分後になって知るのだった。

「ええと……このかっこ警音部かっことじるというのは」

聞くと、軽音部(警音部)のバンドマスター、輝夜空さんが私達の会話に答える。

『軽音部って音が軽いじゃない? 私達ってデスグラインドだから』

ギター兼ボーカルの夜空さんがそう言うと、ベースの三兼翔子さんが食い下がる。

『違うよー、うちってグラインドコアじゃない?』

翔子さんのその言葉に、ドラム・山崎春来さんが言う。

『うちは新ジャンルデスからガーリッシュゴアデスメタル、デスよう』

頭痛がする。私は水なしで噛んで飲める頭痛薬を口の中に放り込んだ。

「ジャンルの話はもういいとして……」
「今日、何があったか聞かせてくれる?」
「水無月さんも何か聞きたいことがあったら何でも彼女たちに質問してね」

メモ帳を左手に持って腕組み。

水無月 沙羅 > 「……。」

よくわからない単語が目の前を飛び交っている。
デスグラインド、刃物かな?
グラインドコア、なにか研いでるの?
ガーリッシュゴアデスメタル、だれか死なないとダメな理由でもあるの?

頭の中は血みどろの拷問器具でいっぱいになった。

「そもそも誰もいない間にこうなったの? それともみんなここにいる状態で起きたの?
自然現象ではないの?
とか、それなりに、あります。 です、はい。」

頭痛がしそう、この探偵に異能を使って私の苦悩を知らせてあげたい。

戸田 燐 >  
輝夜空さんが前に出る。
自分たちの身の潔白を証明するためにも、ここで話をしなければ。
そういう意思が瞳に満ちている。

私たちの魔女狩りが始まる。

『さっき、停電……があって』
『カーテンの仕切りでただでさえ薄暗い準備室が真っ暗になって…』
『部室内にいた全員、9人がそれぞれの主張をしていて……』
『今は大混乱中、みたいな……』

私はメモ帳にペンを向けながら言う。

「自然現象かはちょっと厳しいかもね。壊れ方が嵐って感じじゃないし」
「第十七準備室だけが壊れる自然現象、ってのもちょっとわからないわ」

その言葉に、翔子さんが食い下がる。

『きっと料理部の連中よ!!』
『あいつら、実態は可愛いアルキサボテンを料理して食べるサボテン料理部なんだから!!』
『あんな残酷なことをする人たちなら、全部ぶっ壊して私達を疑うくらいするわよ!!』

翔子さんの肩に山崎さんが手を置く。

『それ以上は良くないデスよう、翔子ちゃん』
『でも、私達は確かにサボテン料理部の人たちがあまり好きじゃないのデス……』 
『それだけは、間違いのないことデスよう』

その言葉は、深い怨恨が見て取れた。

「Why done it?」
「ありがとう、次はサボテン料理部に話を聞いてみるわね」

水無月さんに視線を向けて。

「次の聴取を行うサボテン料理部のメモよ、一応目を通しておいて」

料理部(サボテン料理部)

黄昏 帳(たそがれ とばり)さん(光と闇を操作する異能)

包平 長平(かねひら ちょうへい)くん(包丁を鋭くする異能)

山東 美玲(さんとう みれい)さん(周囲の人間の異能の出力を上げる異能)

水無月 沙羅 > 「……そもそも停電なんてあったのかな。」


率直な感想というか、疑問。
教室の一部だけ停電になるなんてあり得るだろうか、否。
多分それはない、できるとしたら、光系の操作魔術か異能、あとは電気操作の類だろう。
そもそもこの学校停電した?
先ずはそこからかもしれない。

「アルキサボテン……」

サボテンが歩きそうな気味の悪い名前をしていらっしゃる。
なんかもう頭が痛い。

戸田 燐 >  
水無月さんの言葉に、自信なさげに唸る。

「停電あったっけ…………」

私もよく覚えてない。そもそも昼間だし。
エアコンがちょっと切れるくらいじゃ気づくものも気づかない。

料理部の聴取をしに行く。
一室に集められた面々。
サボテン料理部の部長、帳さんが大声で話し始める。

『新世代の食材、アルキサボテンを知らないの!?』
『異世界からやってきた新しい味、二本の足でてってこてってこ歩き回る愛らしい姿!』
『今回もアルキサボテンをアピールするために、アルキサボテンのでっかいぬいぐるみを作ったのに!!』
『何もかもパァよ!! 今から一週間で作り直しなんて、できるわけがないッ!!』

部員、包平くんが鋭い眼光を私達に向ける。

『………全部、最高速裁縫部の仕業だ……………そうに違いない………』

部員、山東さんがおどおどしながら私達を見る。

『わ、私達……最高速裁縫部が………アルキサボテンのぬいぐるみに嫉妬してやったんじゃって…』
『勝手に思ってて……でも、それじゃ説明つかないこと、多くて………そのう…』

私は困ったように眉根を寄せてメモ帳にペンを走らせた。

「How done it?」
「ありがとう、次は最高速裁縫部に話を聞いてみるわね」
「水無月さん、次の部のメモよ」

裁縫部(最高速裁縫部)

砺波 熱(となみ ねつ)くん(熱風を撃つ異能)

小平 康平(おびら こうへい)くん(他人の異能を強制起動させる異能)

土岐 海斗(とき かいと)くん(山にいれば身体能力が、海にいれば知性が上がる異能)

水無月 沙羅 > 「……サボテンに嫉妬するって……何。」

菜食主義者なの?
後声が大きい、静かにしてほしい。
鼓膜が破れる、慣れてるけど、むかむかする。
とりあえず異能で全部ぶつけたくなる。
……先輩に怒られそうだからやめておこう。

「……じゃぁ裁縫部にたのめばいいんじゃない?
 文化祭でサボテンお料理出せばいいのだし。」

なににこだわっているのだろう、私にはわからない。

さらに手元のメモが増える、最高速裁縫部って何だろう、裁縫部じゃダメだったのかな。

「……役に立たなそうな異能。」

むかむかがとうとう口に出てしまった。
反省。

戸田 燐 >  
「アルキサボテンのぬいぐるみに、本職同然の最高速裁縫部が嫉妬というのもおかしな話よね」

むむむ、と唸る。
これは難事件。

「嫌いな人に頼むのも、いろいろと勇気が要るものよ…まして犯人と疑ってる相手になんて」

肩を竦めてオーバーリアクション。

「人の異能を揶揄っちゃダメよ、ワトソンくん」

裁縫部の聴取に行く。
一室に集められたメンバー。
最高速裁縫部の部長、砺波くんが熱弁を振るう。

『うおおおおおおおおぉぉ!! 最高速裁縫部!! それは!!』
『スピードの中で進化した裁縫!! 如何に早く出題されたものを裁縫で表現するかという極限ッ!!』
『その発表会を前にッ!! 嫌らしい妨害に遭ったこと、まっこと無念ッ!!』

部員、小平くんが端正な顔立ちを悲痛に歪めながら言う。

『そうだね……僕たちも最高速の極みを目指して努力していたのだけど…』
『僕たちは警音部の人たちを怪しんでいる』
『彼女たちの野蛮でうるさいだけの音楽には人間性が感じられないからね……』

部員、土岐くんが眼鏡をクイッと上げながら冷静に言葉を発する。

『僕たちだって人を疑うのは本意ではありませんが……』
『実際に被害が出ています。さっさと片付けていただきたいものですね……名探偵サン?』

メモ帳から顔を上げてため息をつく。

「Who done it?」
「これで聴取は全て終了ね………」
「水無月さんから誰かに聞きたいこととかある?」

謎は謎のまま残り。

水無月 沙羅 > 「………。」

色々と状況を整理する、とりあえずアリバイもくそもない被害者(仮)達の言葉は頭から放り投げる。
重要なのは起こった事実であって、心情は今はどうでもいい。
ついでに言えば人間関係にも興味がない。

「ワトソンじゃなくて、沙羅、です。 はい。」

いい加減訂正してほしい。
私は探偵助手でもないし、何なら医学もたしなんでない。

「……異能を少しでも使った人、この9人の中にいるの? 意識的に使った人、で構わないのだけれど。
 犯人とか関係なく。 暑かったから風を起こしたとか、その程度でいいけど。」

まずは、行動を把握するべきかな。

……この探偵、何もしてなくないか?

戸田 燐 >  
「わかったわ、ごめんなさい沙羅」

大して悪いとも思っていなさそうに笑って答える。
そこから先の聴取は平行線だった。

自分は異能は使ってない。
あいつが異能を使ったに決まっている。
いや、私は異能は使っていない。
いいやお前なら異能を使えばできる。

そんなこんなの醜い争い。
その時、私の脳内に一瞬のひらめきが走る。

「私……犯人がわかったわ」
「犯人………放課後のトリックスターはこの中にいる!!」

全員が胡乱な視線を私に向けた。
えっ、こういう事件って犯人に大仰な名前がつくものじゃないの!?

「ただまぁ、今回の事件について詳らかにする前に約束して欲しいの」
「絶対の絶対に禍根を残さない、ってね」

そう言って器用に片目を瞑ってみせた。
さぁ、解決編だ。

水無月 沙羅 > 「……この場合のトリックスターは貴方なんじゃないかな。」

愚者という意味で。
というのは口が裂けてもいうまい。

「……お手並み拝見。」

まぁとりあえずは、自称ホームズの推理を聞いてみるとしよう。

戸田 燐 >  
「さすがにその皮肉は傷つくわー」

トホホ。名探偵になれません。
コホンと咳払い。

「今回の事件、まず推理モノで言うところのノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則に全く当てはまらない…」
「アンチノックス、アンチヴァンダイン的な事件と言えるわ」
「アンフェアにして掟破り、そんなお話ね」

全員が固唾を飲んで見守っている。
推理ショーの始まり。

「そして今回の一件……誰がやったか、どうやってやったか、ではなく」
「Why done it?」
「どうしてやったか……ある意味、推理モノで推理の段階で一番軽視されがちな部分が大事な話でもあるわね」

現場の荒らされた部屋に足を踏み入れる。
カーテンの仕切りもメチャクチャ、中にあったものはほとんど壊れている。
いや、壊されている。

「まず、この部屋のエアコンは調子が悪かった」
「その時、部品がスパークしてこの区画が一瞬停電になった」
「まぁ、適当だけど暗くなった理由はそんなとこ」
「常世は配電システムは優秀だからすぐ復旧したと思うけどね」

そこで事件は起こった、と人差し指を振る。

水無月 沙羅 > 「そういえば、そんなこと言ってたね。 早く変えればいいのに……。
 熱中症患者が出る前に、もう夏場なのだし。」

先日も危うく水分不足で倒れそうだった、主に血液だけど。

「事故、じゃなくて事件なのね。」

風紀委員としては大事なのはそこである。
最悪取り締まらなくてはならない。

戸田 燐 >  
「本当なら近日直るはずだったんじゃないかしら…第九の人たちもいるしね」
「でも、そうはならなかった」

警音部のヴォーカル、輝夜空さんを見る。

「真っ暗になった瞬間、あなたが異能で光を出そうとしたんじゃない?」

夜空さんが困惑する。

『えっ、私!? いや、ちょっと……!!』

困惑する彼女を他所に、私は肩を竦めてみせた。

「ごめんなさい、ただの仮定の話。でもなんでもいいの」
「実はあなたが異能で破壊光線をそよ風程度の出力で小さく撃ったのかも知れないし」
「サボテン料理部のメンバーが真っ暗になった瞬間、どこかに引っ掛けたのかも知れない」

「ただ、最初にそれは起こってしまった……大きなアルキサボテンのぬいぐるみが、倒れたのよ」

「それは仕切りのカーテンを壊しながら警音部のほうに倒れ込んだ」
「部室はもうメチャクチャよ、警音部は暗い中でもそれに気づいた」

「その瞬間、警音部の三人は顔を見合わせた」
「サボテン料理部の奴ら、許せない……ってね」

「そして警音部の三人はサボテン料理部を暗闇に紛れてメチャクチャに」
「自分たちの発表物が壊されてる!!と思ったサボテン料理部は報復に恨みのある最高速裁縫部を襲いに行く」
「襲われた最高速裁縫部は、よくもやりやがったな警音部と仕返しにいった」

「その時、異能も使われたのかもね」
「思わず力の入った小平くんが他人の異能を強制起動させる異能を発動」
「山東さんの周囲の人間の異能の出力を上げる異能もその時に連鎖発動」
「並行励起した山崎さんの周囲の人間の行動を加速させる異能で破壊行為は加速した」
 

「ここにいる9人、全員が被害者で、加害者なのよ」

 
「それで最初の話に戻るけど……禍根は残さず、みんなで協力し合って発表会の準備をしない?」

そう言って笑顔を見せると、優雅にカーテシーをする。

「ただ人間がそこに存在するだけで、戸田燐はこの程度の推理が可能です…」
「如何でしょうか、皆様方?」

水無月 沙羅 > 「ピタゴラスイッチだったと……そういいたいわけ?」

まぁ、ありえそうな話だ。
最初こそ事故であったものの、人間関係のもつれと勘違いによって起きた不幸な事件。
もしそれが本当なのだ、としたらだが。

「で、真相のほどは……聞いてもいいの?」

戸田 燐 >  
沙羅さんの言葉に項垂れる全員。

『ええ……私は…ううん、私達はやったわ』
『うむッ!! 俺たちも過ちを犯したッ!!』
『サボテン料理部も、認めるわ…!!』

それぞれの部長が罪を認めて。

「推理というのは無意味に真実を暴く知的強姦であってはならない」
「真実の果てに人の心を守るのが最優先」

「さ、みんな! もう時間がないわよ!」
「私も手伝うからさ、みんなで発表会、間に合わせよ?」

そう言ってそれぞれが謝罪をして。
どうかしら? 犠牲者こそ出なかったけど。

今度こそ彼らは手を取り合えるかしら。

「それで……この一件はどう報告するのかしら」
「風紀委員の水無月沙羅さん?」

水無月 沙羅 > 「……気がついていたならもう少し早く言ってほしい。」

……本来なら、本来ならば、風紀委員として取り締まるべき案件。
全員とりあえず制圧してそれから……それから、たぶん連れていくべきなんだと思う。
でもそうすると、発表会? だっけ、間に合わない、って言ってたよね。

沙羅にはよくわからない。 それが大事なものなのか。
沙羅にはわからない、そこまで人を憎んでつぶしあいしながら
どうして最後には手を取り合えるのか。
沙羅にはわからない、この意味不明な探偵はなぜここまで親切にご丁寧に、仲裁しているのか。

分からないが。

それを壊してしまうのは、何か間違っているような、そんな気がした。

「…………、今回は、異能の暴発事故、ということで。
 発表会が終わった後、各自反省文の提出……で、手を打ってあげないことも、ない。」

無い知恵を絞って、最低限の譲歩を提示した。

戸田 燐 >  
「ごめんね、なんか後の方になって気がついて言い出せなくて」

今度はちゃんと申し訳無さそうに言って笑顔を見せる。
そして沙羅さんの譲歩には、頷いてから。

「ありがとう、沙羅さん」

今度はお礼の言葉を口にした。

全員で協力しながら発表会という難局を乗り越えた9人。
私も毎日、居残りで手伝ってヘトヘト。

でも、新しい形で彼らの協力は実を結んだ。

部の統合と新機軸の活動。
『最高速サボテン裁縫警音料理部』の誕生だった。

 

何もそこまでしろとは言ってないわよ!?

ご案内:「氷雪系探偵戸田燐の事件簿~アンチノックス/アンチヴァンダイン~」から戸田 燐さんが去りました。<補足:蒼い髪と瞳をした、セーラー服の一年メガネ女子。(乱入歓迎)>
ご案内:「氷雪系探偵戸田燐の事件簿~アンチノックス/アンチヴァンダイン~」から水無月 沙羅さんが去りました。<補足:身長:156cm 体重:40kg 不死身少女>