2020/06/27 のログ
ご案内:「落第街大通り」にB・L・Tさんが現れました。<補足:身長210cm / ピンク髪 / ファーつきの上着 / 15センチのヒール / 悪役です ヒールだけに / 後入り歓迎!>
B・L・T > 「いっっひひひひひひ!!! 案の定!!!」
落第街。「誰か」の呼びつけは、この街を少しばかり揺らした。
そして、その噂は勿論落第街の住人なら誰でも耳にすることができる。
ということは、つまり。
この偉大なる大いなる強壮なる……ええーと?
「バッド・ラック・トゥルース!!!!」
ポーズを決める。誰が見てるかしらないけど。
少なくとも落第街にはいくつもの目が転がっている。
見えてるものも見えてないものも。ということでありまして。
「本当にい~? お話合いに~~?
人が集まっているのでしょうかあ~~~?」
く、と笑い声を洩らし。
身体を半分に折りながら、心底面白そうに笑い声を上げる影。
「どうでもいいんですけど!
“ソッチ”に人が集まってるなら、“ソレ”でいいんで!」
ひーひひひひ、と心底面白おかしく笑い声を上げる。
「ファッコーーーーフ!!!! くたばれ正義厨!!!」
まるで空き巣のように、少しばかり人通りの少ない落第街大通り。
どこぞへと中指を突き立てる。笑い声が、木霊する。
B・L・T > 「おお~~~っと!
あんなところに襲われている女性が~!」
どこかカメラにでも向かうかのような気軽さで手を振る。
その対面に誰がいるかはわからない。
最近流行のTokoTuberというやつのような感じでへらへら笑う。
「そう。これが賑やかなりし落第街の日常。
暴力を持たぬ者が、暴力に抵抗することなどできやしません。
そしてこっちは友人のサム。今決めた。な! サム!」
サムと呼ばれた屈強な男性の肩を馴れ馴れしく抱きながら。
サム(仮称)は、どこか遠いところを眺めながら首を縦に振っている。
「いけ! サム!」
ゲームのように、夜の落第街を怯えながら歩く女性を指差す。
サム(仮称)は、幽鬼のように身体を揺らしながら歩き出す。
そして、それを追いかけるようにヒールの音が鳴る。
――『それ』に出会ったなら、自分の運が悪いと思い給え。
――ヒールの足音がしたならば、振り向いてはいけないよ。
女性が振り返る。
B・L・T > ……振り返ったならば。
きっとそこには、君の『都合の悪い真実』があるからね。
「た、助けてーーーーっ!」
安いB級映画のように、落第街に悲鳴が木霊する。
そんな都合よく助けてくれるやつなんていやしないのだ。
だって、この世界漫画でもアニメでも映画でもねーし。
そんな都合よく助けられるなら、風紀委員会も公安委員会もいらねーし。
「アホくさ!!!!」
身体を折って笑う。
特に暴力沙汰を起こす必要はB・L・Tにはない。
ただ、目の前で不幸な目が起きたのであれば血も涙も出なくていい。
けれど、「わかりやすく」するためには。
「人間の皆様はこういう『お決まり』が大好きですからな~~!!!!」
釣り餌を池に放り投げるように、空き巣は目を細めて女性にサム(仮称)が迫るのを眺める。
他人の不幸は蜜の味。シャーデンフロイデ。幸災樂禍。ざまあみろ。
B・L・Tは思いを馳せる。
「もしかしたらいるかもしれない風紀委員がこの瞬間を見逃す」ことを考えると。
「ンンン~~~~他人の不幸で!! 飯がうまい!!!」
女性に、サム(仮称)の腕が迫る。
ご案内:「落第街大通り」にアルン=マコークさんが現れました。<補足:167cm58kg/細く靭やかな四肢に平凡な顔つき/悪を許さない光の勇者/後入り歓迎>
アルン=マコーク > 落第街大通り。
大通りと名はついているが、少し路地に入れば、そこは色濃い闇の蠢く魔境と言っても良い。
光の当たらぬ場所には、そこに相応しい悪徳が栄えている。
そこでは裏の世界の住民なりの均衡が、すれすれのバランスで保たれていた。
例えば、そう。か弱い女性に、どこか焦点の定まらない視線のまま、迫るむくつけき大男。
「た、助けてーーーーっ!」
こうした搾取の光景などもバランスを保つための小さな歯車の一つでしかなく、そんなものにいちいち構って自分の身を危険に晒す者などいない。
「やめたまえ、君たち!」
はずだった。
少年と言っていいあどけなさの残る、凡庸な顔立ち。まだ筋肉の発達が十分でない、中性的といっていいシルエット。
日本人の骨格であるはずだが、髪は夕暮れの太陽の如く金に輝き、その瞳は血のように紅い。
紅いマントをたなびかせ、竹箒を持って堂々と、少年が路地の入り口に立っていた。
B・L・T > 噂によれば? ワケアリ出所後違反部活のオンナノコが?
勇者の仲間を集めてるぞ! みたいな話で、ラッキーなことに視線誘導! みたいな!
おかげでワタクシ、一週間前から腹ペコで腹ペコでしょうがなかったですし?
なんかお利口にみんなで席に座って~なんて、こんなゴミ溜めの人間が?
人間さんはお利口さんでスバラシですネ~~!
と。上機嫌で最高完璧パーフェクト鬼の居ぬ間に洗濯活動をしようとしてたのに?
「ヒーローキターーーーーー!!」
路地の上。低いビルの屋上からサム(仮称)と名前もつかないような女性を眺めていたものの。
その入り口に落ちる影を見て、B・L・Tは鬼テンションがガン下がりしていた。
大通りから路地を覗き込む人々は気味が悪いものを見るような目でアルン=マコークを見る。
そして、サム(仮称)は。
「ナンダア、テメエ……」
ろれつの回らない舌で、まるで『言わされている』ような状態で振り向く。
女性は足首を捻挫でもしたのかもしれない。落第街をヒールで歩くのはやめようね。悪役だけに。
逃げるときに、上手に逃げられないかもしれないからね。
「テメー、ココの、……ルールってモンを、ワカッ、ワッ、ワカッテんのか……ァん?」
サム(仮称)が、女性の細い手首を魚の尻尾を掴むかのように掴んだまま。
柄の悪そうな顔を引き攣らせながら、彼を見る。
アルン=マコーク > 「アルン。光の勇者だ」
サムの吃音混じりの問いかけに、少年―――アルンはごくあっさりと、恥ずかしげもなくそう答えた。
光の勇者とは何なのか、そんなことは知っていて当然だろうとばかりに説明さえしない。
無造作に竹箒を持ったまま、構えることもなく無造作に立ち、しかしその眼光だけは、異常なまでに鋭い。
明らかに体格で劣っており、人質までいるにも関わらず、サムに対する敵意を隠しもしていない。
「ここのルールなど知らない。しかし、まずはその女性を離せ。嫌がっているだろう」
路地の入口側、逆光でその表情を上手く掴むことはできないが、僅かに目を細めた。
「これは警告だ。君がそれを続けるなら……君を『悪』と見做す」
細めた目の中の瞳が輝く。爛々と、炎の如く。
B・L・T >
――悪!? 今悪って言った!? イーヒヒヒヒ。
笑い声は飲み込んで、B・L・Tはサム(仮称)しか見ていない少年を見る。
てゆか光の勇者って何!? イッヒヒヒ、痛い痛い。
そういうのが大好きな人間さん、助かる~。人間さん助かる~。
人質はサム(仮称)の大腕に掴まれたまま。
女性は助かったのか、それともと瞬くが彼女の足が宙に浮く。
今度はマグロ漁船のマグロだ。重さがないので市場には競りに出せませ~ん。
揺れるその瞳の先を見定めるように、
勇者のレベルがいくつでスキルどれ取ってるんですか?と言わんばかりの不躾な視線を向け。
「ッッッッッサ~~~~~~ム!!!! やあ~~~~~っておしまあ~~~い!」
両手を大きく広げてから、天を仰ぐ。
このサム(仮称)は、魔術的強化(違反部活による違反マッサージ店によるもの)と
エンチャントの施された衣服(違反部活による違反衣服量販店によるもの)、その他諸々。
そんじょそこらのサム(仮称)とは格が違う。スペックが違う。
自信満々に笑いながら見下ろす。
そして、先手を取ったのはサム(仮称)。
“人質を武器に”して、バットのごとく彼女を光の勇者に叩きつける!
アルン=マコーク > 「そうか。君は『悪』か」
攻撃が成功したかを、目視することはできなかった。
眩い何かがサムの視界を覆い尽くしている。
『それ』が、アルンを、武器としたはずの人質さえも柔らかく受け止め、守っていた。
輝く羽根、光の翼を瞬時に生成して見せた少年は、先程までと変わらぬ淡々とした口調で、告げた。
「ならば容赦は要らなかったな」
気づけば、アルンは武器にされて目を回していた女性に、マントをかけてやっていた。
手首をしかと握り、もう一度振り下ろそうとしていたはずの彼女が、いつの間にか手元にない。
その理由に気付くことは、そう難しくはない。
サムの腕は、優しく横たえられた彼女の手首を握ったままだったから。
「光の勇者アルンが『悪』を討つ!」
光の翼を一度羽打つ。その右腕には、バチバチと音を立てながら雷が集っている。
大技の気配。避けるか防ぐかしなければ。
B・L・T > 「ワーオ!」
アメリカ人がアメリカンフットボールの実況中継を見るように。
いつの間にかポップコーンとコーラを片手にその一部始終を見ていた影は、目を細めた。
サム(仮称)。本当の名前は何だったのだろう。
静かに合掌をしてから、「カワイソウデス!」と小さく呟く。
そして、大技の気配があれば。
勇者って、大技打つ前ってタメの時間ありますよね?
ほら、あのタメ技のときに、上下左右がシェイクされてグチャグチャになったら。
「オオオ~~~~ッ! ミスッ、テーーーイクッ!!」
屋上から飛び降りて、彼の真後ろに立ち。
サム(仮称)は放っておいて、勢いよく俵投げが210cmの長身から繰り出される。
「おまけのベーコン・レタス・トマトもお付けします」
妙にいい声で笑って、通りすがりの男の異能が発動する。
一瞬、その視界が黒に塗り潰される。視界情報をたった一瞬取り上げる。
光の勇者アルンの、『悪』討つ雷は――!
アルン=マコーク > 「神聖雷撃魔法(カンデイン)!」
通りすがりの男の目論見は、結果的には成功しなかった。
勇者アルンの手元の雷球が弾けると、サムどころかその周囲10mほどの範囲に天から雷の嵐が降り注いだからだ。
雷は意思を持つようにアルンと女性、それから通りすがりの長身の男を避ける。
周囲の建物は砕け、火の手が上がる。サムの身体からは煙が上がり、切断された腕は炭化していた。
「何者だ……ベーコン? 君が僕に【盲目】を?」
投げられた勢いのまま、空中で光の翼をひと打ち、慣性を殺して宙返りすると、音もなく着地する。
女性を守るように前に立ち、新手の男に油断ない視線を向けた。
「君も、『悪』なのか?」
B・L・T > 「ワタクシ必要ないじゃないっスか~~~!!!」
ヒールの底が音を鳴らす。
かつん。かつん、と落第街の路地(かつて路地だったもの)を歩み。
アルン=マコークに振り返る。極彩色の長髪が揺れる。
「君も、『悪』なのか?」
その問いかけには、薄笑いを浮かべてから、
割けるのではないかほど口元を三日月形にしてから、返答する。
「ご飯中に通りかかっただけデス!」
はいともいいえとも言わなかった。何を食べるかも言わなかった。
発言の真意をマントで隠すように赤色の口元が動く。
「【盲目】は~。結構落第街のほうでよくある天気で~。
気をつけたほうがいいっスよ。晴れ時々【盲目】。よくあるんで」
世間話のようにそう笑ってから、かつてサムだったものを見る。
アアー可哀想に。「お話し合い」にも出ていけないほどの弱者が。
こうして正義の手によって成敗される。ヒーローショーの悪役のように。
お気の毒さまに、と嗤って、なにもなかったかのように。
「雷も降ったようですねェ~。いやー、天気が変わりやすくて困る!
それじゃ、自分はこれで~。は~い。失礼シャース」
実力差を垣間見て、「イヤー勝てるわけないっすわ~」と、
まるで知らない人のような顔をして光の勇者の横を通り抜けようと。
圧倒的な暴力。圧倒的な破壊。圧倒的な――蹂躙。
「正義」という台風が通り過ぎたあとを見て、軽くげっぷをした。
アルン=マコーク > 「そうか……済まなかった。異界では天気で【盲目】になることもあるんだな……勉強になったよ、ありがとう!」
決して大きいとはいえないアルンが、210cmの男の眼を見ようとすると、ほぼ真上を向くような形になる。
どこか含みのある薄笑いに対して、満面の笑みで応えて、アルンは深々と頭を下げた。
「いつかお詫びをしたい。名前を教えてくれないか? 僕はアルン。光の勇者、アルン=マコ、あれ……ちょっと……」
そそくさと場を去ろうとする長身の男の背に、手を伸ばそうとして、後ろで唸る女性の声に我に返る。
「あっ、気が付きましたか? もう大丈夫ですよ……痛いところがあるなら言って下さいね」
意識を取り戻そうとしている女性の介抱に気を取られ、アルンの頭から男への注意は完全に消えた。
大規模な雷が落ち、周囲に野次馬がちらほらと現れはじめても気にすることなく、女性が眼を覚ますのを待つ。
B・L・T > 「ハアーイ。どういたしまして。【盲目】にはご注意くだっさーい」
小柄な少年の顔を覗き込むようにして、淀んだ緑色の目が細められる。
そして、女性の介抱に気を取られたアルン=マコークへと振り返って。
「あなたの友人、路地裏の住人B・L・T。
明日の天気にい~~~~、ご注意くださァ~~~い!!」
このあたりは、居場所をなくした落第街の寄り合い所があったらしい。
力もなく、誰も頼れずにただ身を寄せ合っていた人々の塒があったらしい。
そこに人がいたのか、いなかったのかも知ったことじゃあない。
知らないからね。死者がどれだけ出てるとか、サムだったものが今は何なのかとか。
全員無事かもしれないし、瓦礫に押しつぶされてるかもしれないし。
こういうのをシュレディンガーの人間さんといいま~す。
ヒールの足音を響かせながら、B・L・Tは笑った。
「ん……わ、私、生きて……」
女性が辿々しいながらも言葉を取り戻した。
周りには「可哀想だな~」「今からヤられるんだぜ」と野次馬の不躾な声が次第に増え。
次に振り向いたときには、B・L・Tの姿はもうそこにはない。
ご案内:「落第街大通り」からB・L・Tさんが去りました。<補足:身長210cm / ピンク髪 / ファーつきの上着 / 15センチのヒール / 悪役です ヒールだけに / 後入り歓迎!>
アルン=マコーク > (びい、える、てぃー……? てぃーは茶だよな、確か。茶屋の旦那とかか?)
背中越しに聞こえた名乗りに、そんな見当外れのことを考えながら、意識を取り戻した女性にほっと息を吐く。
そして、その表情が野次馬から投げつけられた不躾な言葉に曇るのを見て、目を閉じた。
連続する破裂音。再び、雷の雨。
先程よりも小規模なそれは、しかし先程よりも広範囲に降り注ぎ、野次馬たちを黙らせるのに十分すぎる威力を持っていた。
「それ以上彼女を侮辱することは許さない。君たちは『悪』なのか?」
ぐるり周りを睥睨してみせる光の勇者に、誰一人異を唱えることはできないだろう。
どう見ても、まともに関わらないほうがいい手合いであった。
「神聖治癒魔法・広域(キクワコレ・ミナ)」
そして、雷の雨に撃たれた野次馬たちは、元通りに回復させられる。
傷つけるも癒やすも自在。まるで冗談のような、隔絶した存在。
半笑いで語られるような、『光の勇者』そのもののようだった。
「道を開けてくれ。後遺症が残ってはいけない……彼女を医療施設に運ばなくては」
自分と同じくらいの女性をらくらく抱えて立ち上がると、アルンは堂々と大通りの真ん中を歩き去る。
誰もその歩みを妨げず、背中に声をかけようとはしなかった。
ご案内:「落第街大通り」からアルン=マコークさんが去りました。<補足:167cm58kg/細く靭やかな四肢に平凡な顔つき/悪を許さない光の勇者/後入り歓迎>