2020/07/03 のログ
ご案内:「違反部活の拠点――とある孤児院」に神代理央さんが現れました。<補足:風紀委員の制服に腕章/腰には45口径の拳銃/金髪紅眼/顔立ちだけは少女っぽい>
神代理央 > はてさて。療養明け最初の任務は、中々に厄介な代物だった。
あらゆる魔術、異能、その他諸々を駆使して安価に出来の悪い合成獣を造り出し、他の違反部活に販売している違反部活。
その悪質さと脅威度の高さから速やかに殲滅させる事が決定し、風紀委員会によって迅速な包囲、避難と降伏勧告が行われた。
周囲の住民は"概ね"退避完了しており、既に何時でも突入出来る状態。風紀委員会の精鋭達は、とうに準備を完了している。
それでも尚突入に至らない理由は二つ。
一つは、単純に敵の守りが固い事。物理的なバリケードから魔術による障壁まであらゆる防御策が講じられていること。
それ故に、火力に特化した己がこうして呼ばれているのだが。
もう一つは――敵の拠点地表部は孤児院となっており、人質代わりなのか未だ孤児達が敵拠点から解放されていない事にある。
「……包囲してから既に30分、か。敵に時間を与えたくは無いのだがな」
孤児院から少し離れた広場に展開した異形達。
他の風紀委員は包囲に取り掛かっているため、悲しい事に護衛らしい護衛は周囲にいない。何時もの事なのでもう慣れたが。
兎も角、未だに発せられない攻撃命令を待ちながら、溜息交じりに缶コーヒーを啜る。
【砂糖は人類の友。友を煮詰めた糖度3000倍(当社比)の佐藤珈琲】と長々銘打たれた缶コーヒー。少し甘過ぎなくも無いがそれがまた良い。
神代理央 > まあ、上層部の気持ちも理解は出来る。
何せ、落第街の住民とはいえ、子供。孤児。力無き者。彼等諸共違反組織を処理するというのは、実に見栄えが悪い。
色々と嗅ぎつけてくるマスコミもいるだろう。人権派だの国境なき何とかだのといった連中が現れる可能性もある。
「…それで、連中に脱出の準備を行う時間を与えているのだから救われぬ。連中が野に解き放たれれば、再び危険に晒されるのは我々であり、一般生徒だと言うのに」
忌々し気な舌打ち。
此の組織が製造している合成獣は、個体の戦闘力は高くないもののやたら数だけは多い事で有名。それと"子供程度の知能"を持っている事も、他の違反部活で現れた合成獣との交戦記録に残されている。
「……まあ、流石に突入する前衛の連中には同情を禁じ得ないが」
缶コーヒーを傾けながら、深々と溜息を吐き出す。
押し付けてしまえば良いのに。己に命令すれば良いのに、と思うのだ。
良心の呵責などこれっぽっちも感じない己に命じれば、事は済むというのに。
ご案内:「違反部活の拠点――とある孤児院」に幌川 最中さんが現れました。<補足:腰で風紀委員会の赤い上着をツナギのように結んでいる。人好きのする見目。>
幌川 最中 >
風紀委員の仕事はやはり多岐に渡る。
こういう「汚れ仕事」や、「やりたくない仕事」というのは山程ある。
その上、誰かがやらなければいけない仕事であることは間違いない。
「……理央ちゃんさあ、信じてるものってある?
神様とか、それ以外とか、まあなんだっていいけど」
最前線には似ても似つかない男が、理央の隣で呟く。
攻撃命令を出すのは、現場にいる当人たちでは決してない。そして、それはまだ出されていない。
風紀委員の上層部がゴーサインを出してから、ようやく暴力という手段を使うことになる。
「ここの孤児院、『かみさま』がいるんだってさ」
違反部活群に存在する、とある孤児院をじっと見やる。
子どもたちを救う偶像としての「誰か」がここにはいるらしい。
その『かみさま』は現状、人質の子供たちを救わなかった以上、「そういう」ことなのだろうが。
幌川は、理央を見て首を小さく傾げた。
神代理央 > 「何を言うかと思えば。ありますよ。私は私自身を一番信じています」
己の横に立つ年上の風紀委員。幌川最中。生徒指導課に席を置く、年上の同僚。
そんな彼が呟いた言葉に、甘ったるい缶コーヒーを流し込みながら答える。一体、何を言っているんだと言わんばかりの視線と共に。
「『かみさま』ですか。生憎無神論者なもので偶像を崇拝する気にはなれませんが。我々に天罰でも与えてくれるのならば、是非今からでも宗教地区に駆け込もうとは思いますがね」
他者が神を信じようが信じまいが、己には関係無い。
一度命令が下れば『かみさま』とやらの加護も空しく、孤児院に籠る子供達は己の放った砲火に焼き尽くされる。ただそれだけ。
首を傾げる幌川に、だからどうしたのだと言いたげな視線と共に淡々とした口調で言葉を返す。
幌川 最中 >
「アハハハハそうだよねえ。
俺理央ちゃんがそう言わなかったら病院連れ込むところだった」
肩を竦めながら、安っぽい缶コーヒーを飲みながら笑う。
目の前で何人が死ぬかもわからないのに、日和った調子で。
そして、続いたのはなんとも「らしくない」世間話だった。
慌ただしく交渉担当の風紀委員が拡声器を持ち、大声を上げている。
携帯端末で委員会本部と連絡を取る委員も忙しない。
「そうじゃなくてさ。この調査資料読んだ?
ここにいるコたちの『かみさま』は、『地獄』からやってくるんだってさ。
もし理央ちゃんが突入したらさ、理央ちゃん、神様になれるかもしれないぜ」
書類を挟まれたファイルを手渡してから、またコーヒーを傾け。
信仰の自由は、この常世島では強く認められている。
だから、誰が何を信じていようが、誰が何に祈ろうが許される。
どうやら、この違反部活のルーツは、《大変容》の前。
くだらない人間同士の紛争をしていた、中東と呼ばれた地域の新興宗教が由来らしい。
「理央ちゃんって、なんで風紀に入ったんだっけ?」
神代理央 >
「…人を何だと思っているんですか?先輩って時々……いや、何時も結構失礼ですよね」
鉄火場に似付かわしくない世間話。雑談。
彼に向けられるジト目は、此処が風紀の本庁かと錯覚させる様な"いつもの"表情。
孤児達を助ける為に。立て籠もる違反組織の者達と交渉の手立てを繋ぐ為に。懸命に走り回り、行動する委員達の中で、此の場所だけは気味が悪い程の平穏が漂っていた。
「地獄から……?またけったいな宗教観もあったものですね。まあ、何を信じようが誰を信じようが、個人個人の勝手です。
どんなに神を信じたところで、救われる訳がない。それは、歴史が証明しているのですから」
手渡されたファイルをパラパラと眺めるが、興味を示した様子は無い。どのみち死ぬ可能性が高い者達の些細な宗教観など興味が無い、と言わんばかり。
寧ろ、祈る時間があるのなら生き残る為に行動するべきだろうとまで思う有様。
「決まっているじゃないですか。学園の治安を守り、人々を守る為です。社会の規律と法を。秩序を守る為です。それが何か?」
今更何を、と僅かに首を傾げながらも聞かれた事には素直に応えるのだろう。
幌川に対しては、特に悪感情があるわけではない。同僚から聞かれた事で有ればと言わんばかりに、淀みなく答えるのだろうか。
幌川 最中 >
「理央ちゃんだって同じくらい失礼だろ。
人を守るため。ああ、そうか。予防なのか、これ。納得」
ほらトントン、と言わんばかりに瞬きを数度。一人で納得して頷く。
いつも通りの視線には、少しだけ悲しげな表情で笑った。
風紀委員会としても、「全てを焼き払って解決」などは本来不本意なのだろう。
どうやら、いつもより今回は時間が少しばかり与えられているらしい。
「死は始まりにすぎないんだってさ。
『生まれる』ために必要な儀式でしかないから、地獄から神様が迎えに来るって。
多分これもさ、宗教側が環境に合わせてそういう物語に書き換わったんだろうなってさ。
第四宗教史の講義、単位取るのはクソ難しいけど面白いからオススメ」
それこそ、カフェテラスや教室で行われていてもおかしくない会話。
じきに戦場になるだろう(どうやら交渉はうまく進んでいないらしい)地で男は言う。
「少年兵っていうのが、昔は流行ってたんだってさ。
旧時代は「そういう」のを組織して、敵が殺すのに抵抗を持ってくれるように、って。
その一瞬で少年側が大人を殺す、なんてのがあった時期が古い世界にはあるらしい。
そういうのの名残みたいだね。この違反部活ってさ」
「そういう少年兵って、最初に何やらされるか、知ってる?」
神代理央 >
「予防…まあ、そうですね。此処で彼等を逃がしては、今後考えられる生徒と風紀委員への損害は憂慮すべきものになりますから。
叩けるうちに、叩いておいた方が良いでしょう」
一瞬、考える様な素振りを見せるが、曖昧な笑みと共に彼に頷く。
確かに、この違反部活の逃亡を阻止する為の戦闘行動は予防足り得る。では、孤児たちを巻き込む事の意義は何か。幌川の言う様に、予防という言い訳が成り立つかも知れない。
しかし己にとっては、本当に孤児達の事など"どうでもいい"のだ。殺そうとも思わないが、救おうとも思わない。違反部活への攻撃の妨げになるなら、一緒に砲撃してしまおう、程度のもの。
それが他者には些か過激な発言、行為として捉えられている事を理解するが故の、曖昧な同意。
「死が始まりに過ぎないのなら、生は終わりなんでしょうかね。
彼等の宗教観では、始めの生物は最初から死んでいたとでも言うのでしょうか。面白い話だ。
宗教史、ですか。まあ、後期のシラバスを確認してみます。興味が無い訳では無いので」
へえ、と言わんばかりに相槌を打ちながらの会話。
死臭が漂う様な此の場所で、交わされる朴訥な日常会話。奔走する委員達も、怪訝そうな視線をちらちらと向けているだろうか。
「少年兵はコスパ良いですしね。というか、今でも島の外にはいるんじゃないですか、少年兵。彼等が最初にすること?さあ――」
「――自分の親でも殺すんじゃないですか?」
小さく肩を竦め、彼に視線を向けて、笑う。
幌川 最中 >
「そういうときは都合よく『そうです』っつっときゃいいの!」
多少鈍い幌川にもその意図は伝わったらしく、
困ったような表情を浮かべながら、無理矢理理央の肩を組んだ。
つまるところの真意も少し、一端ばかりは指先で感じる。
「死んでるから、死ぬのも怖くないってね。
この違反部活は『そうやって』子どもたちと接してきたんだろうし、
きっと彼らからしても『そう』なのかもしれないよね。
俺はそういう神様を信じてないから、全然わかんねえ話だけど。
こういう話してくれるし、先生カワイイから。27歳彼氏なし。浮いた話なし」
コーヒーの缶を揺らしながら、ぼんやりと前線の距離が詰まっていくのを見る。
無理な突入はしないが、どうやら事態が少しだけ進んだらしい。
いい方向にか、悪い方向にかはここからでは知れないが。
「君のやってることは正しいよ、って丁寧に教え込むんだってさ」
全部がそうとは言えないけどね、と付け足してから軽く笑った。
笑えないこの場で、不謹慎極まりないのだが。
「今でも『島の外には』ってことは、
理央ちゃんは『島の中』にはいないと思ってるのかい。
どうなんだい理央ちゃん。理央ちゃん。理央ちゃん。……理央ちゃんって、ご両親は健在?」
後輩の挙げ足を平然と、干支で言えばひとまわりほど違う相手に。
しれっと、明日の天気を聞くように問いかけた。
「孤児院のコからしたら、親を全員奪われるようなもんだよなってさ。
自分の親を殺されても、子どもたちは銃を持つようになったらしい」
神代理央 > 「…まさか先輩から処世術を教えられるとは…不覚です。今度麻雀してるとこ見つけたら刑事課に通報しておきますね。ラムレイ先輩に怒られれば良いんです」
肩を組まれれば、何なんですかと言わんばかりのジト目を向けるも振り払う事は無い。
相変わらず距離感の近い先輩だな、程度のもの。
「私にも理解出来ませんよ。死への恐怖が無い事は結構ですが、彼等が死してまで成し遂げようとしている事は余りに下らない。
…いや、下らない事だから、そういう『かみさま』を与えているんですかね。順序が逆なんでしょうか。
先輩はもう少し浮いた話を作って落ち着いて下さい。その27歳の先生とでも構いませんから」
突入部隊は、未だ子供達の解放を諦めてはいないらしい。
防御魔法の薄い場所を。突入出来る場所を、懸命に捜索している様子。それは、交渉担当達も同じ事。孤児院が完全に包囲されており、幾ら時間を稼いでも脱出は不可能だと訴えながら降伏を勧告する。
「いないと良いな、くらいには思っていますよ。直接相対した事はありませんが実際に戦うと面倒そうですし」
取られた揚げ足には、のしをつけて返礼を。
もう慣れたものだと言わんばかりの態度。
「健在ですよ。両親ともに健在でいるのは喜ばしい事です。
まあ、そうやって復讐心だのなんだのを焚き付けた方が、色々とやりやすいでしょうしね」
幌川 最中 >
「俺からなんか言われんのそんな嫌……?
……レイチェルちゃん起こるとこえーからなあ!
勉強代と思ってうまいこと勘弁してくんねえかなあ!」
肩を組んだまま、一息をついてから解放する。
趣味を没収されては困ってしまう。それは嫌だ。勘弁して欲しい。
「『下らなく』なかったら、理央ちゃんは理解しようとするもん?」
単純な、どうにも興味本位の質問だった。
視線の先では、『何らか』の理由と信念を持っている誰かが大声を上げている。
違反部活の信念・理念……なんてものは、十把一絡げに押し潰されるというのに。
書類上にそれを記されて、その報告書を掘り起こして読むような物好きも多くない。
『それ』を知る者は、こうして現場の最前線で『それ』に触れた者のみ。
きっと、この違反部活もそうなのだろう。じきに、それがあったことも忘れられる。
「それなら、『親を奪われる子供』の気持ちはわかんねえわけか。
ううむ。これ、俺流の理央ちゃんへの説得なんだけどさ。
『死人を出さないで』、この一件、上手いこと片付けてくれねえかなあっていう。
っていうか俺がここにいる理由、それなんだけど。理央ちゃんの説得。
委員会側はどうしても子供を傷つけたりはしたくないみたいだしね。被害はできるだけ抑えたい」
それで、と息継ぎをしながら笑う。
「理央ちゃんならできたりしない?
適当に頼まれるんじゃ、理央ちゃん、頷いてはくれないでしょ」
神代理央 > 「冗談ですよ。麻雀してたら通報するのは流石に控えます。報告書上げるだけにしておきますから」
解放された肩や首をコキコキと鳴らしながら、呆れた様に笑う。
報告書は、結構真面目に書くつもりであった。
「どうでしょうね?結局は、自分の命を投げ出して迄成し遂げたい事など、或いは全て下らない事なのかもしれません。
まして、あの孤児院の子供達は結局のところ自分の意思で選択した道では無く、与えられたレールの上で死んでいこうとしている。其処にどんな大義や理由があっても、興味はありませんよ」
彼に合わせる様に視線を向けても、決してその視線に色が灯る事は無い。結局のところ、違反部活にどんな大義があれ。其処で死ぬ者達に信念があれ。
死ななければ成し遂げられない。或いは、成し遂げられないかも知れない事など、己にとってはどうでも良いのだ。
「そんな事だろうとは思っていました。被害がゼロ、という訳にはいかないかも知れませんが、あの建物を消し飛ばすよりは穏便に済ませる事も、まあ、出来なくはないかもしれません」
「でも、間違いなくあの孤児院ごと、籠る連中を吹き飛ばした方が犠牲もリソースも少なくて済むのです。それをせずに得られるものは、一体何なんでしょうか?」
己の深紅の瞳が、じっと彼を捉えて離さない。
ある程度の犠牲を是認した上で、子供達を助ける事は不可能ではない。しかし、其処まで風紀委員が 骨を折り、危険を犯してまで助ける価値が、あの孤児たちにあるのだろうか。
そう問いかける様な瞳が、静かに、しかし苛烈な焔を灯して、彼に向けられていた。
幌川 最中 >
「真面目に仕事しなさい!!
……って冗談は置いといてね。
俺が知りたいだけなんだけど、理央ちゃんの思う『下らなくないこと』ってどんな?」
“どうでもいい”。無関心。
大いにそれは自分が賛同する主義ではあるが、“どうでもいい”ならば。
なにもせずに放ったらかしておいて勝手に死ぬのを待つほうがラクだろう。
わざわざ出張って、相手の庭に踏み込む理由。
「あ、やっぱ? バレてたかあ~。
まあ、俺がこんな現場に呼ばれる理由なんてそんくらいのもんよな」
そして、赤い瞳に視線を合わせて笑う。
理央がこうして質問をしてくるのは珍しいな、と胸中思いながら頷き。
「……理央ちゃんって、二級学生までちゃんと葬ってるって知らない?」
常世島関係物故者慰霊祭。
祭祀局を中心として、各種委員会や部活の協力の下、喪われてしまった
常世島・常世学園関係者のための「関係物故者慰霊祭」が毎年行われていること。
そんな物故者たちの慰霊のために、様々な宗教の祭式作法に則り、
あるいは「無宗教」形式にて、慰霊のための祭祀が数日に渡って行われる大きなイベント。
「犠牲も、リソースも。
感情をエネルギーと捉えるのなら、よっぽど少なく済む。
恨みも、憎しみも処理するのは面倒だし大変だし、“もとに戻す”のも面倒だ」
年上ぶりながら、そう言って笑う。
なにかを喪ったものの心のケア。それに伴う二次被害の増加。
そのどれもが、“面倒”であると幌川は言い切った。
燃えるような視線に対して、フラットで――平坦で、平等な冷ややかさを孕んだ視線。
「これは、『レールを壊す』仕事なんだよ、理央ちゃん。
レールは、なにも全てを更地にしなくても壊してやれる。
レールさえ壊しちゃえば、嫌でも自分の意思で考える『キッカケ』になるっしょ」