2020/06/21 のログ
ご案内:「崩落した家屋群」に角鹿建悟さんが現れました。<補足:180cm/茶髪銀瞳/作業着(ストレッチドビー長袖シャツ&カーゴパンツ)/作業安全靴/【第九修繕部隊】の腕章>
角鹿建悟 > つい数時間前に入った依頼――どうやら、落第街の一角にある家屋群で派手な”倒壊騒ぎ”があったらしい。
ならば、生活委員会傘下――第九修繕特務部隊【大工(カーペンター)】にも出動要請が来るのは当然だ。

先日出会った白髪の少女との『約束』もあり、自ら率先して一番被害が酷い区域を男は希望した。
そして現在。現場に到着すれば、事前に決めていた担当区域へと散っていく。

「―――この辺りか。…また、派手に壊されたものだな、これは」

一目見て、これが倒壊したのではなく外的要因で壊されたのだと悟る。
この辺りは経験則などもあるのだろう。ザッと頭の中で修復手順と優先順位を洗い出す。

(――正直、あまり時間を掛けたくはないが手を抜く訳にはいかないしな)

落第街でもこの辺りは少々物騒だった筈だ。他のチームの皆は自衛くらいは出来るだろうが…
己は違う。戦う力なんて持っていないし、自衛どころか逃げられるかどうかも怪しい。

「――まぁ…それはそれだ」

神だろうが悪魔だろうが、俺が直すと決めた以上はどれだけ妨害されようが必ず直す。

角鹿建悟 > と、本気で思うが実際、そんなとんでも連中が現れたらただの人間でしかない自分など塵芥以下だろうが。
――くだらない事を考えてしまった。仕事にさっさと取り掛かろう。時は金なり、とかいう言葉もある。

「――っし!…やるか。」

パンッ!と、両手で己の頬を叩いて気合を入れる。まずは魔術による元の状態の仮想再現。
それを元に修復、というのが自身の復元作業の大まかな手順だ。
ただ、この魔術が曲者で精密な魔力操作を必要とするので地味に魔力だけでなく気力も削る。

「――回路起動・並列展開(サーキット・オープン。マルチタスク)――1番から6番まで。7番から13番は待機指定。…3,2,1…開始(スタート)」

詠唱のようにブツブツと呟きながら作業開始。魔力を回路のように展開し、周辺家屋に番号を割り当てて並列仮想復元開始。
……もうちょっと行けそうだが、この後の修復を考えると余力があるに越した事は無い。
手を抜く事は絶対に無いが、力の配分とペースを間違えたら仕事にならない。

(――このくらいなら…2…いや、1時間で行けるか?)

倒壊したそ"れぞれの家屋に重なるように、壊れる前の状態の家屋たちが立体映像のように浮かび上がる。
それを眺めながら、元の形状から修復手順を算出――内部構造をスキャン。

「―――腐食がやっぱり激しいな…ここは何とか補うか」

ご案内:「崩落した家屋群」に山本 英治さんが現れました。<補足:風紀委員の腕章。あちこちに包帯を巻いた夏服姿のアフロ。>
山本 英治 >  
「失礼します、風紀委員です」

体のあちこちに包帯が巻かれたままのアフロの男が現場前に現れる。
表情険しく、瘡蓋のままの擦過傷もあちこちにある。

「今回、作業の立会いに参加してもよろしいでしょうか」

アーヴァリティ。黒蝕姫。あいつだ。あいつがやったに違いない。
俺があいつを止められていれば、こんな惨劇は防げた。

角鹿建悟 > 「……構いませんが。俺としても風紀の護衛や監督が居てくれた方が色々と有り難い」

残りの7番から13番までの待機状態を稼動状態に――残った倒壊家屋にも重なるように倒壊する前の状態の家屋の仮想映像が浮かび上がる。
一瞬、彼へと視線を向けて軽く言葉と会釈をするが、仕事最優先なので直ぐに集中と目線を家屋へと戻し。

「――…派手に怪我をしているみたいだが、平気か…んんっ、平気ですか?」

一応、自分より先輩かもしれないので敬語で言い直す。それでも、ついぶっきらぼうになってしまうが。
あと、中々に目立つ髪形だが…人それぞれだ。気にしないし笑いもしない。
彼が望んでいないなら兎も角、仮に望んでその髪型なら笑うのは失礼に値する。
そうしながらも作業は抜かりなく、一通り検分と修復作業の道筋を立ててから魔術を解除。
仮想映像が全て消えて、また元の倒壊した家屋――都合、13棟。

「…さて、ここからか。すいません、今から修復作業に入るので、もし何か襲撃があったら、対処を頼めますか?」

と、包帯だらけの彼に頼むのは気が引けるが、そう頭を下げて頼み込む。

山本 英治 >  
「危険な地域ですので……」

会釈を返して、護衛に入る。
まだ病院で寝ていろと言われているが。
とてもじゃないができない。
あいつは……黒蝕姫、アーヴァリティはまだ活動している。

「一年です、言葉遣いは普通で構いません」
「……ここを壊したヤツにやられたんですよ」

奥歯を強く噛む。
自分の弱さが。迷いが。人を殺したも同然だ。
今の自分に明るい未来を目指す資格はない。

「わかりました」

ガリガリとこめかみの辺りを掻いて作業を見守る。
彼は集中している。
第九。常世を支える屋台骨。
彼の茶髪を流れて汗が一条流れた。

思えば。壊すことしかしてこなかった。
彼の行いを見れば、真の善行がわかるだろうか。

角鹿建悟 > 「…まぁ、何処だろうと依頼があれば出向くのが俺達ですから。仕事にえり好みはしません」

そう、依頼が成立したならば後は簡単。絶対に直す、それだけだ。
彼に護衛を任せながら、手近な廃屋の一つに足を運んで…瓦礫の一つに手を触れて能力発動。

――すると、まるで映像の巻き戻しのように瓦礫が動き出し、寄り集まり、接着するように元の形状を取り戻していく。
その際、腐食している柱や土台付近もきっちりと”直して”補強は忘れない。

「――俺も1年だから…じゃあ、お互い堅苦しいのは無しで頼む。
……そうか。まぁ、壊れたなら直せばいい…それが俺達の仕事だからな。」

矜持もある、約束もある、そして……直す事が角鹿建悟の生き様だ。
覚悟はとうに完了し、迷いは無く、ただ直して直して直して――直し尽くす。

「――まぁ、正直言えば…壊した連中に言いたい事はあるさ。
けどな――言った所で改める連中ばかりなら苦労はしないし、俺達の仕事ももっと少ない筈だ。
――それに、文句や愚痴を言う暇があるなら自分の手を動かす…まだまだ直すべき物は多いからな。」

と、少しだけ肩を竦めてみせるが、あくまで集中は途切れさせずに…そうやって一つ目の家屋を完全に復元させる。

山本 英治 >  
「……そうか? じゃあ気楽に話させてもらう」
「俺は山本だ、山本英治。英語の英に、体を治すの治」

壊れたら直せばいい。
そう言い切れる彼らがいるから。
常世は崩壊と衰退から逃れられている。

割れ窓理論、という言葉がある。
窓が割れた建物を放置すれば、誰もこの地域に関心を持っていないと認識され、犯罪が増える。
彼も立派に、この島の治安を守っているのだ。

そう、歓楽街側に侵蝕をする落第街を。押し留める最強の力。

「あんた……良い職人だな」
「俺は………壊すことしかできない異能だが…」
「それでも今はあんたを守れる」

家屋は修復される。
風にアフロが揺れると、元通りになったそれを見聞して書類に書き込んだ。

角鹿建悟 > 「…俺は角鹿建悟だ。角に鹿、建築の建に悟る、で建悟だ。」

こちらも律儀の漢字がどういうものかを交えながらの自己紹介を返す。
それでいて、視線は基本的に彼ではなく家屋に向けられているのは集中を途切れさせない為。

「――俺はまだまだ新入りだけどな。上には上が居るのは身に染みているし。
…自分の未熟さは自分がよく分かってる。あと、…壊す事にだって意味はあるだろう、きっと。
…それに、護衛してくれるだけで俺は充分有り難いさ。俺は直すことしか出来ないから、自分の身すらろくに守れない」

それでも、直す為なら鉄火場だろうが世界の果てだろうが行ってやろう。そして必ず直すのだ。
どれだけ時間が掛かろうが、命や体を磨り減らそうが――それが、己の矜持ゆえに。

「――あと12棟。流石に効率が悪いな…もうちょっと最適化を…いや、それより――」

ぶつぶつと呟いていたが、確実性を取る為か矢張り一棟ずつ確実に行こうと方針を固め。
彼に護衛と修復後の検分や記録を頼みつつ、2,3,4…と、次々に修復作業を敢行していく。
山本 英治 >  
「良い名前だな……あんたの親父さんは、良い父親なのだろうな」

勘当されても。両親に感謝する気持ちを忘れたことはない。
あまり喋ると彼の集中を切るだろうか。
喋る頻度を減らしながら、要点を押さえた喋り方をするよう心がけた。

「はは…………そう言われちゃ護衛に手は抜けないな」

壊す事には、意味がある。
だが殺す事となると、難しくなる。
俺はアーヴァリティに勝っていたら、彼女を殺していただろうか。
正体不明の怪物を、この手で。
それは正義であっても、善ではない気がした。

一枚、一枚。書類を書き終える。
復元する力。それを目の当たりにすることは。
この世界にまだ、取り返しのつくことがあると信じさせてくれる気がした。

角鹿建悟 > 「――親父は…そうだな、良い父親だと思うよ。」

一瞬、修復する男の手がぴたり、と止まるが…何事も無かったかのように同意する。
会話をしながら修復作業は一切手抜きはしない。まぁ、集中は多少殺がれるのは事実。
だが、語るべき言葉を語り、聞くべき事を聞くのは当たり前の事だろう。
それを捨て去るほどにバカではないつもりだし、同時に修復も全力だ。

「――とはいえ、怪我の身なんだから無理は禁物…と、まぁ俺が言ってもアンタは無茶しそうだが。」

何となくそんな気がする。それに、彼には彼なりの譲れない思いや矜持というものがあるだろうから。
そして、男にとって殺す・殺されるなんてご大層で血生臭い事は答えようが無い。
誰だって――自分だって。死ぬ時は必ず死ぬのだから。

「―――これで10…あと3つか。…山本、書類の方は大丈夫か?もし、何か穴があったら言ってくれ。
流石に手抜きをして後で文句を言われる、なんて事にはなりたくないからな」

と、肩を一度竦めて魅せる。その顔は汗が滴り落ちており、能力で疲弊しているのが分かるだろうか。

山本 英治 >  
「そうか……」

どうして俺は今、会ったばかりの男が親と良い関係を築けていることが嬉しいのだろう。
わからない。ただ、そうあってほしいと願っているのかも知れない。
分かり合えることは素晴らしいが、分かり合っていることはより良い。

「頑丈なんだ……先祖に岩がいてな。それも巨岩なんだよ」

腹部を貫いた触手の傷。打ち身。擦過傷。
魔術的処置が適切に行なわれなければ、今も入院中だったろう。
それでも。体を動かしていないと不安でどうにかなりそうだ。

「今のところ、問題はない……一つを除いてな」

歩み寄って、個包装の塩分タブレットを幾つか差し出す。
グレープフルーツ味だ。

「あんたは疲労している、休憩とミネラルを取れ」
「もう暑いからな……」

夏の風がアフロを揺らした。
仕事は順調で、気持ちの良い男と話しているのに。
どうしてだろう、息がしづらい……と感じた。

角鹿建悟 > 「――先祖に岩、とはまた豪快なもんだな。…うちはただの宮大工ってだけで、そういうのは無いからな」

異能を持って生まれたのも、近親者では自分だけだ。父も母も、祖父母も親類も能力は持っていない。
だから、昔から疑問に思っていた――何で”俺だけ仲間外れ”なのかと。
――つまらない事を思い出してしまった。いまや実家とは縁を切っているのだ。

「――そうか。だが、そのたった一つの問題がデカい…そう言っている様にも聞こえるが?」

彼の悩みは彼にしか解決できない。聞く事も助言する事も出来なくはないが。
きっと、自分よりもっと的確に、彼を導ける存在が居る事だろう。
――もう一度改めて言おう。俺には直す事しか出来ないのだ。

「――ああ、悪い。…そうだな、適度な休憩は大事だ」

素直に彼が差し出してくれた個包装のタブレットを受け取り、早速破いて口に放り込みつつ。
何気なくその銀色の瞳が山本を見据える。…緩く首を傾げながら。

「――勘違いなら悪いが…アンタ、どこか”息苦しそう”だぞ。」

根拠も何も無い。ただ、そんな気がしたからふと問い掛けただけの他愛も無いもの。

山本 英治 >  
「宮大工か……大事な仕事だ」

常世にも神がいる。神社だ。
その仕事もまた、彼らの堅実な作業の積み重ねなのだろう。

「あんたに倒れられたら、俺が背負って帰らないといけなくなるからな…シリアスプロブレムさ」
「俺の背中はレディー専用だ」

息苦しそう、と言われると。
バツが悪そうに視線を下げて。

「この建物を壊したのは、怪物だ」
「俺はその怪物と交戦している」
「負けて、怪我して、取り逃がしたが……」

「勝っていれば……ここで惨劇が起きることもなかったのにな、って…」

首を左右に振って。

「俺も休憩が必要らしい。休暇かな……」

角鹿建悟 > 「――そうかもしれないな」

大事な仕事だ。それでも――自分はそれを捨ててここに一人来た。
だからこそ、決めたのだ――この力を使って直すと。絶対に直すんだと。
タブレットをガリッと、噛み砕いてしまったのは、無意識に力が入ってしまったせいか。

「―――確かに、野郎を背負っても面白くないだろうな」

意外と冗談は解するのか、肩を竦めて淡く苦笑を浮かべる。
とはいえ、また何時もの仏頂面に戻ってしまうのだけれども。
しかし、彼の”息苦しさ”の原因を吐露されれば、少しの沈黙を挟んで…彼へと歩み寄る。

「――アホかオマエは。勝ち負けとか関係ない。
負けた?なら次に勝てるように頑張れ。オマエはまだ生きている。
取り逃がした?なら、次は必ず捕まえられるように努力しろ。出来る事を自分なりにやれ。
――壊してしまったなら俺たちに…俺に言え。どんな物だって俺が必ず直す。
それにな―――」

そこで、肩を竦めてからこう告げようか。

「俺は”落第街を直す男”になるんだ…このくらい大した事はない。
壊すなら上等、むしろやるならやれ。後始末なんて俺たちがきっちりやってやる。
その為に俺たちが居て…その為に俺が居る。角鹿建悟の底力を見せてやるよ」

山本 英治 >  
「だろ? 建悟、あんたも良い体躯をしている、そういうロマンは追求したほうがいい」

冗談を交えて笑って。
歩み寄られると、眉根を顰めた。
が。

「次………?」

アーヴァリティも口にしていた。
次。次なんてあるのか……そう思っていた、破損した心を。
今、直された気がした。

「……あんたモテるだろ?」

鼻の頭を擦って。

「いや、悪い。茶化す気はなかった……」
「次は勝つよ、研鑽を積む……心も鍛える」
「落第街を直す男か……それは、きっと良い未来に繋がるんだろうな…」

「応援させてくれ、建悟。お前の夢を……」

それから作業が再開し、終わるまで色んなことを話した。
建悟は愚直に、真っ直ぐな……俺に響く言葉をぶつけてきて。
それがどれだけ救いになったか。俺はその日、彼と別れるまで語ることはしなかった。

また太陽は昇る。だから、俺は。

角鹿建悟 > 「……いや、俺はそういうのに縁が無いんだが。あと、仕事もあるし」

真顔。否、この男も一人の男子だから、そっち方面に関心がゼロではない。
…ないのだが、優先順位が修復なのでそういうのとはどうしても縁遠い。
…あと、無表情ワイルド顔なので、むしろ不良とかと同類と思われ易い。

「次だ。次が無い…と、アンタが思うなら俺にはどうしようもないが。
まだ、次が目指せるなら目指すべきだ。自分のペースでいい。無理しても良くないからな」

と、そこは一応注意をしておくが…モテる、という言葉に目をやや半眼にして。

「あのな、俺はそういうのとは縁遠いんだよ。こんな仕事一筋みたいなバカを好いてくれる女がいるもんか」

それに、モテたとしてもそれはそれ。自分がやるべき事も目指すべき道も揺るがないのだから。
…いや、何でこんな話になったんだ。まだ3棟修復作業が残っているのに。
どのみち、モテるモテないとかそういうのより、まずは仕事をきっちりこなそう。
親方やチームの名前に傷を付けるわけにもいかないし、何より自分が納得できない。

「――未来なんて大層なもんじゃない。ちょっとした”依頼”でな。
いざ、そういう時が来たら落第街を直してくれと…そう言われた。
だから、俺はその依頼を必ず達成してみせる。それだけだ…ただのつまらない意地だよ」

そう、依頼であり約束だ。破る事は許されないし破るつもりも無い。
独善的、狂人、破綻者…そう言われた事もあるが。ああ、構わないと。
その程度で揺らいで折れる覚悟なら最初から俺はこうしてここに立っていない。

「まぁ、そういう訳で夢は大袈裟だ。ただの俺の矜持と覚悟だよ、山本」

苦笑を淡く浮かべながら、さて…そろそろ再開しよう。あまり長引かせてもまずい。
その後も、ぽつりぽつりと会話をしながら修復作業をきっちり終えて。
帰りも安全圏までは取り合えず護衛して貰いつつ、また何処かで、と告げて別れるだろう。

「―――未来、夢…か。そういうのじゃなくて…ほんと、ただの小僧のなけなしの意地なんだけどな」

そういう言葉は眩しすぎる。そう、思いながら男も報告を終えてから直帰しよう。

ご案内:「崩落した家屋群」から角鹿建悟さんが去りました。<補足:180cm/茶髪銀瞳/作業着(ストレッチドビー長袖シャツ&カーゴパンツ)/作業安全靴/【第九修繕部隊】の腕章>
ご案内:「崩落した家屋群」から山本 英治さんが去りました。<補足:風紀委員の腕章。あちこちに包帯を巻いた夏服姿のアフロ。>