2020/07/04 のログ
ご案内:「常世公園」に日ノ岡 あかねさんが現れました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に風紀委員会の腕章。>
日ノ岡 あかね > 昼過ぎ。人の溢れる常世公園のベンチに座って……常世学園制服に身を包んだ、セミロングのウェーブの女、日ノ岡あかねは微笑んでいた。
手に持っているのはスマートフォン。
画面に映っているのは……先週の『話し合い』の後に設置した簡易受付サイト。
それを眺めて小さく笑いながら、あかねは目を細めた。

「集まった数は……まぁ、思った通りってところね」

くすくすと……あかねは笑う。

日ノ岡 あかね > あの『話し合い』から一週間が過ぎた。
オンライン上に設置した簡易受付に……名のある異能者からの応募はない。
風紀委員会の方の受付にはそれなりの数は来ているらしいが、それだって想定範囲内程度。
計画は順調に進んでいる。
落第街でも、少なくともこの計画が遠因となって騒動が起きたりはしていない。
つまりは、いつも通り。

「この島は広くて助かるわ」

公園内の売店で買ったクレープを食べながら、あかねは笑う。
十全とは言えないが、手駒は揃った。
盤面に並べて勝負できる程度の数はいる。

「まぁ、ちょっと足りないけど……それも含めて想定通りってところね」

別にこれから集めればいい。
集まらなくても、その時はその時。
どうにでもなる。

日ノ岡 あかね > 「結成式でもしましょうかね」

今回の『功績』で、あかねは風紀委員会元違反部活生威力運用試験部隊の中の一部隊を任せられる事が決定した。
晴れて肩書付き。手勢は奇しくも余十人。
決して数が多いとはいえない。
だが……その数は、『過去』を想起するには十分な数だった。
それでいて、大きな事を起こすには少なすぎる数。
つまりは、丁度いい数。
風紀委員会からしても、日ノ岡あかねからしても……好都合な数。
風紀委員会からすれば、いつでも黙らせることが出来る程度の数。
日ノ岡あかねからすれば、『質』を維持できる数。
互いにとって、全く好都合。
全て世は事も無し。

「増えてくれたらもっと嬉しいけどね」

とはいえ、それは贅沢な願い。
あかねも期待はしていない。
せいぜい、夢に見る程度だ。

ご案内:「常世公園」に山本 英治さんが現れました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス>
山本 英治 >  
「おっと、美人さんがこんなところで黄昏れてるなぁ」

軽口を叩きながら手を上げて近づき。
片手には甘めのコーヒーの缶。

「君の瞳を逮捕したいもんだ……日ノ岡あかねさん?」
「クレープなんて食べちゃってー、女子力ぅ」

彼女の前に立ってコーヒーを開封する。
嚥下すれば甘く、ほろ苦い味が広がった。

「どうだい、威力運用試験部隊のほうは」
「書類仕事は溜まってないか? 手伝えることがあれば言ってくれ」
「まぁ俺は書類が得意なわけじゃないが……一緒に困ることくらいならできるさ」

アフロが風にそよいだ。

日ノ岡 あかね > 「あら、エイジ君じゃない。ふふ、クレープ美味しいわよ? そこの売店で売ってるからあとでどうかしら」

呑気にクレープを勧めつつ、隣の席軽く手で叩く。
嬉しそうな笑みを浮かべながら。

「書類の方は大丈夫よ。だいたい全部カオルちゃんに押し付けてるから」

楽しそうに目を細めながら、受付の赤坂薫子の事を思い出してクスクス笑う。
指先についたクリームを舐めとって、あかねは英治の顔を見る。

「それとも、エイジ君も私の部隊入る? まぁ、入るなら此処で面接するけど」

じっと、英治の顔をみて……あかねは尋ねる。
まるで、学校帰りにカラオケにでも誘うかのように。

山本 英治 >  
「この後、警邏の時間だからな……小腹を満たすのも悪くないな」
「隣の席、失礼しまーす」

遠慮なく隣に座らせてもらった。
今もワンコインの冷たさが掌に収まっている。

「ありゃあ、赤坂先輩も大変だぁ……労うのはあっちだったか」

肩を竦めて缶を軽く揺らした。

「遠慮しとくよ、俺ぁどっちかというと穏健派だしな」
「威力運用ってのも性に合わねぇや」

空を見る。蒼い空。蝉の空。夏雲の空。
どこまでも憂鬱な、青空。

「そんで、栄転めされたあかね様の次の一手や如何に?」
「風紀でも話題沸騰って感じだな。一挙手一投足が注目されるのは、どんな気分だ」

日ノ岡 あかね > 「まるで『次の悪戯はなぁに?』って尋ねるみたいな言い方じゃない。私、別に過激派とか穏健派とかどっちでもないんだけどなぁ」

英治の顔を見て、あかねはとても楽しそうに笑う。
黒い夜の目が、じっと英治の顔を見ている。
誰にでもそうするように、あかねは目を逸らさない。
どこまでも続く蒼穹の元、あかねは英治に笑いかける。

「別に私は私を続けるだけなんだから、何とも思ってないわよ? それに、腫物として扱われるのは慣れっ子だしね」

へらへらと笑う。
いつも通りに。
そして。

「エイジ君、何か私に聞きたいことでもあるの?」

目を細めながら、小首を傾げる。
猫のように。

「言いたいことあるなら……ハッキリ言ってくれていいのよ? ふふ」

山本 英治 >  
「そうかい? 俺はてっきり過激ガールだとばかり」
「従来の枠組みを壊すのは、イタズラじゃ済まないぜ」
「快刀乱麻を断つのは、敵も多いだろ?」

彼女の瞳に射竦められるような気持ちになるのは、どうしてだろう。
自分にやましいことがあるからではないか。
それを見透かされたようで、落ち着かないんだ。

「私は私を続けるだけ、か………強ぇんだな」
「異能や格闘が強いだけじゃ得られない強さだ」

相手に合わせてへらへらと笑ってみる。
ちっとも自分に見合った笑顔じゃない。そう思った。

「そうかい? それじゃ遠慮なく」
「俺はあんたが気に入らなかった……そして、それに対してごめんなさい、だ」

幌川先輩の笑顔が浮かんだ。
彼から教わった大切なこと。

「印象で決めつけてたんだよ、日ノ岡あかねはとんでもないことを企んでる、て」
「でも、それは周囲の噂だったり、空気だったりで」
「そこに俺の意思がなかった」

「だから、ごめんなさい……だ」

猫みたいな女の子、か。確かにそうなのかも知れない。

「俺一人が暴走して誰か救えるわけじゃないが。あんたは大勢のためにプランを実行してみせた」
「それにリスペクトを感じてんだよ……あとは」
「カワイ子ちゃんだしな?」

ニカッと歯を見せて笑った。

日ノ岡 あかね > 「ふふ、御上手なのね。ありがと、エイジ君。可愛いって言われるのは嬉しいわ。これでも一応身綺麗にしてるつもりだし。その一言で、気に入らないって言われた事もチャラになるわ。私、結構チョロいから」

そういって、風に軽く流された横髪を抑えながら……あかねは笑う。
軽く八重歯をの覗かせながら、嬉しそうに。

「別に枠組みを壊してなんかいないわ。増やしただけ。それも私がやったことじゃなくて、実際にやったのは風紀委員会だし……一番頑張ってくれてるのは事務方の子達よ。私は軽く煽っただけ。ま、敵が多いのはいつもの事だから別にいいけどね」

小さく肩を竦めて見せる。
せいぜい、「同じ部活の子と軽く揉めました」程度の感じで。
それくらいに、あかねの口振りは軽かった。

「強いとか弱いとかも……別にどうでもいい事よ。異能とか身体能力とか、大したことじゃないでしょ。異能があってもなくても、抗う事はできるし、挑む事もできるわ。簡単な話よ」

異能を封じられている女は苦笑を漏らす。
実際、あかねは戦いは好まないと公言している。
非効率的だと言い切り、だからこそ、盤面を『最初から争うも何もないように』と調整しただけのこと。
あかねからすれば、たった『それだけ』のことだった。
日ノ岡あかねは嘘など吐かない。
常に聞かれた事には答えている。
だからこそ。

「まぁでも、何も企んでないわけじゃないわね」

それにも……ただ、当たり前のように答えた。
それこそ。

「私は『私のやりたいこと』があるからね」

何でもないように。

山本 英治 >  
「身綺麗って言葉には、やましいことのないって意味も含まれるのは知っているかい」
「確かにあかねさんは身綺麗だよ」

ムヒヒと楽しそうに笑ってコーヒーを飲む。
大嫌いだった青空も、今は清々しい風を送り込んでくれる。

「なるほど……枠組みを増やしただけ、か…」
「俺、大概目立ちたがり屋だからさ……打たれる杭の側なんだ」
「どうだい? 今度、一緒に食事でもしながらその辺りの話でも」

自分も口が軽くなる。
相手の調子に合わせるとかでなく、自分のリズムで話す。

「……挑めるのは強さだ………」
「人間は現状維持と現状打破、二つの二律背反した命題に追われる生き物だ」
「どっちかを力強く選択できることを俺は強さと呼ぶのさ」

日ノ岡あかねは嘘を吐かないし、彼女の言葉には嘘がない。
だからこそ。
聞き返さなければならない。

「やりたいこと?」

と。

日ノ岡 あかね > 「『真理』に挑む」

あかねは笑う。
英治の目を見て、英治の顔を見て。
満面の笑みを浮かべて。

「それが、私のやりたいこと」

それこそ、将来の夢でも語るように。
それこそ、好きな食べ物の話でもするように。
あかねは語る。
あかねは笑う。
ただ、いつも通りに。

「今度私、一部隊任されるんだけど……それが出来る人だけ集めるつもり。それが出来る人しか集めないつもり。だって、それが私のやりたいことだから」

公然とそれを語る。
当然のようにそれを語る。
その人員確保のため。
その頭数確保のため。
今までやったことはあくまで手段。
きっと、それだけ。

「真理に噛み付きにいくの。どう? この話……興味ある? 食事でもしながらゆっくり聞いてみる?」

日ノ岡あかねは……緩やかに笑う。

「やるなら引けないけどね」

ただ、いつも通りに。

山本 英治 >  
「真理に……?」

相手の言葉が上手く飲み込めない。
真理……真実と似ているようで、実態が異なるもの。
正しい法則であること。その言葉。

「今までの行動も真理に挑むための手段に過ぎない、と」

アフロを指先でいじりながら聞いた。
とっくに冷たさを失った手の中の空き缶。

「デートの時に話すには、少し色気のない話かもな」
「だが興味がある。あかねさんが噛み付くからには、落第街の悪党より難儀な相手だろうしな」

携帯デバイスで時間を確認して。
掌のスチール缶を音もなく握りつぶして親指で中空に弾く。

「今度ゆっくり話を聞かせてくれ、美味いベトナム料理の店を知ってるんだ」

立ち上がって破顔一笑。

「今日は話せて良かった。ではホンカンはこれで」

昔の刑事ドラマの警官みたいにわざとらしく敬礼をして。
背を向けて去っていく。

からん、と音を立てて。弾いた鉄の球体が自販機横のゴミ箱に収まった。

ご案内:「常世公園」から山本 英治さんが去りました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス>
日ノ岡 あかね > 「私も話せて良かったわ。またね、エイジ君。ベトナム料理……楽しみにしてるわ」

にっこりと笑って、手を振って見送る。
そして、その背が見えなくなってから……あかねはぽつりと呟く。

「私はあかね……日ノ岡あかね。だから、私は……」

深い深い……笑みを浮かべながら。

「『私』が『私』だから『私』を行う話をする」

真理に挑む、真実に挑む。
あかねは変わらない。
日ノ岡あかねは変わらない。
いつも通りに、ただ、いつも通りに小さく笑って。

「あの子達はどうするのかしらね……? 全然話聞かないけど」

日ノ岡 あかね >  
 
「いつまで悠長にやってるつもりなのかしら? 私……もう先にいっちゃうわよ?」
 
 

日ノ岡 あかね >  
 
日ノ岡あかねは……楽しそうに、目を細めた。
 
 

ご案内:「常世公園」から日ノ岡 あかねさんが去りました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に風紀委員会の腕章。>