2020/07/11 のログ
ご案内:「違反部活『ヴレーデゥ・ワンデレン』部室」に山本 英治さんが現れました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(乱入歓迎)>
山本 英治 >  
ヴレーデゥ・ワンデレン。
最近、頭角を現してきた……というにも、物騒な。剣呑な。危険な。
違反部活だ。
その本質はテロリストに近い。
奪い、殺し、破壊活動を行う。

今はその摘発の真っ最中。
俺はその違反部活の部長、ヨゼフ・アンスバッハを探していた。
ヤツの異能は水の操作。危険な異能者だ。

だからこそ、俺の手で捕らえたい。

山本 英治 >  
最近は裏切りの黒という組織も動いている。
ヨゼフを殺させるわけには、いかない。

罪は償える。償えなくても……己の罪業を考える時間はあっていいはずなんだ。

人の気配を感じて、拳銃のセーフティを外す。
不慣れだが、人を威圧するツールとしては優秀だ。
無論、こんなもの撃ちたくはない。

「動くな、風紀委員だ!!」

拳銃を構える。
そこにいたのは……ひと目で分かる外国人、だった。

ヨゼフ >  
「なんだ貴様は」

この国の言語で問う。
異能持ちの風紀委員にしても、単独突入とは。
バカなやつだ。

「いや、名乗らなくてもいい…死ね」

ペットボトルから水が出てきて、水圧カッターとして飛ばした。

山本 英治 >  
「!!」

横っ飛びに水を回避する。
持っていたツールの銃身がバターのように斬れて落ちた。

「待て、話し合おうヨゼフ!!」
「あんたの要求を聞きたい!! なぜ、あんなに大勢人を殺す!?」
「今のままじゃあんたはテロリストだ!!」

「どうして悪を成す!!」

叫びながら上半身から力を抜き、いつでも回避できる姿勢を取った。

ヨゼフ >  
何を言い出すかと思えば。
くだらない。平和ボケしたこの国の人間、そのものだ。

「そうか、お前は我々をテロリストと呼ぶのか」
「私の国は貧しい……怪異災害に襲われても、誰も助けてはくれない」
「私の妹は…カリン・アンスバッハは………」
「病に臥せった時、ビリヤニが食べたいと言ったよ」

「私は困った。ビリヤニなんて見たことがない」
「銃を握っても、一日に汚れた薄いスープを二回口にできればいいほうだった」

「強盗しようと思ったが……ビリヤニなんて作ってる店がなかったよ」
「妹はそのまま死んだ。何もかも茶番に思えたよ」

「要求? 言うだけ無駄だ」
「お前たちは私たちに銃と地雷しか売ってはくれない」

掌に水を乗せると、すくい上げるように水の散弾を撃つ。

山本 英治 >  
両手で重要な部位をガードし、体中に水の散弾を受ける。
全身から血が流れた。

「何が……お前はイデオロギーそのものじゃないだろ!?」
「まだ間に合う! 大人しく捕まってくれ、ヨゼフ!!」

額を伝う血を拭って、説得を続けた。
悲劇は起きた。でも、悲劇を繰り返してはいけない。
俺は信じた未来に後悔しないッ!!

「お前の妹さんがこんなこと望むかよォ!!」

ああ、薄い。薄っぺらい。
こんな言葉が……こんな言葉しか、口にできない。

ヨゼフ >  
「黙れ公権力の走狗が!!」

綺麗事をよくも。
よくも。
この私に向かって。

「お前たちが異邦人と呼んで保護しているのは、この世界の人間ですらない!!」
「何故、私達を無視した!!」
「何故、私達を居ないものとして扱っている!!」

「これは私の聖戦だ………」

「何度捕まっても、何度でも脱走してやる…」
「この命尽きるまで、破壊してやる!!」
「私の要求を言おう……お前達の死だ!!」

周囲に撒いた水が、トゲとなって風紀に襲いかかる。
死ね。死ね。死んでしまえ、この世界の命、全て。

山本 英治 >  
分かり合えないのか。
分かり合うことは、できないのか。

この男の思想に。
俺の心は。入り込む余地がないのか。

異能を発動した。体を赤いオーラが覆う。
オーバータイラント・セカンドヘヴン。

「馬鹿野郎ォォォォォォォォォォォォ!!!」

馬鹿なのは。愚かなのは。俺だ。
水の槍を突っ切って。体にあいつの敵意を受けながら。
ヨゼフの胸に拳を振るった。

命を奪うための、暴力を。

ヨゼフ >  
相手の姿を視認することすらできなかった。
胴体に陥没を作り、後方の壁を突き破って。
建物の遥か真下に落ちていった。

山本 英治 >  
殺した。
殺した。
俺が。あいつを。殺した。

血に濡れた手を見る。

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

未来。すまない。俺は………どうしようもない男だ…

山本 英治 >  
俺は。帰って。報告書を書いた。
作戦は成功したと。
書類を作って提出した。

違反部活、ヴレーデゥ・ワンデレンは壊滅した。

後になって聞いたが、ヴレーデゥ・ワンデレンとは。
平和を横切る者……という意味の言葉だったらしい。
ウォーカー。つまりは余所者。その言葉に、俺はただ打ちのめされた。

ご案内:「違反部活『ヴレーデゥ・ワンデレン』部室」から山本 英治さんが去りました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(乱入歓迎)>
ご案内:「違反部活『ヴレーデゥ・ワンデレン』部室」にエルヴェーラさんが現れました。<補足:黒の服に身を包んだエルフの長耳少女。人形の如きその身と心に、果たして血は通っているのか。>
エルヴェーラ > 物陰から、その一部始終を見ている者が居た。
漆黒の狐面で顔を覆った、白髪の少女。
裏切りの黒の備品、拷悶の霧姫《ミストメイデン》。
エルヴェーラ・ネーヴェである。

ターゲットである『ヴレーデゥ・ワンデレン』のヨゼフを
求めて此処までやって来た。
行うべきは、断罪。

捕縛、後に無力化。
それでも抵抗するのであれば――断罪の時だ。

彼女であったが、先客が居たのは予想外だった。
彼女が来た時には既に、風紀委員の拳がヨゼフを貫いていたのだ。


「貴方たちがその手を、血に濡らすことなんて、ないのに」

裾から出した鎖をその手に握ったまま。
仮面の下にある素顔は、微塵も揺るぐことがなく。
それでも何処か、その声には僅かな悲しみの色が、
滲んでいる気もした。
それは、これまでの彼女にはなかった色《ゆがみ》で。

「それは――」

静かに、紡ぐ。
闇に、鈴の音が響く。

「その罪は――」

一人、語を継ぐ。
血溜まりに、雪の音が響く。

「――『我々が背負うべき罪』なのですよ、風紀委員……」

静かに、コートを翻して白髪の少女はその場を去っていった。

ご案内:「違反部活『ヴレーデゥ・ワンデレン』部室」からエルヴェーラさんが去りました。<補足:黒の服に身を包んだエルフの長耳少女。人形の如きその身と心に、果たして血は通っているのか。>