2020/07/13 のログ
ご案内:「落第街大通り」に羽月 柊さんが現れました。<補足:後入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。黒のスーツに竜を模した仮面をつけている。小さな白い竜を2匹連れている。>
羽月 柊 >
薄暗い落第街。
昼間のギラつく太陽も、ここではどこかその全てを照らしきれない。
夏の暑さに煽られるのか、喧嘩やらなんやらも増えているような気がする。
そんな中を、涼しい顔で黒スーツに竜の仮面の男が進む。
傍らに、小さな竜を2匹従えて。
羽月 柊 >
ちょっかいを出してきた二級学生を凍らせて以来というもの、
若干諍い事から自分が遠のいた気がしなくもない。
いや多分気のせいだろう。
使い魔を連れている怪しい男が歩いているというだけだ。
この裏の街では何が起きても不思議ではない。
油断をすることなど、出来はしないのだ。今も昔も。
羽月 柊 >
一つ道を脇に入り、埃っぽい壁にもたれ掛かる。
雑踏の音が遠のくと、胸元のポケットから煙草と思わしき箱を出してくる。
目を伏せてそれを口にし、指をパチンと鳴らせば火がついて、
煙をふぅと吐き出した。
それを小竜たちは嫌がるそぶりはない。
片手で煙草を支えながら、
もう片方の手で壁を軽く小突く。
煙は偽物。
近くに寄ればそれは分かるだろう、だが、
雑踏は彼に興味を持つこともなく過ぎていく。
じっとりと湿気を含む影の中、小竜達の眼が煌めく。
羽月 柊 >
男のもたれ掛かる道の奥から、一人、歩いてくる。
それが柊とすれ違う時、煙草を吸い込み、
ふぅっと煙を吐き出すと…。
煙が路地の一画を這い、その場所を隠し、
柊が壁を小突いて確かめれば、音が内側に籠るように響いた。
『マダそんなオモチャみたいなモノを持ち歩いてンのカ、羽月。』
すれ違おうとしたそれは帽子を目深にかぶり、
閉じた場所に響く声はしわがれて、男とも女とも知れない。
「ほんの一般人の目を逸らすには十分だ。」
そう言って柊は唇から煙草を離す。
勘が良ければ気付いてしまう。
魔法を看破出来るなら分かってしまう。
本当に些細な人避けの魔法。
羽月 柊 >
『マァイイ。渡すモノがアルだけだからナ。』
そう言ってそれは、ぐぱりと口を開ける。
ヒトが開けられるはずのない所まで。
そうして喉奥から、ミミズのような細い触手がズルルルと這い出てきて、
それと共に、小さな小さな宝石のようなモノが一つ。
ポーンと柊の方へ吐き出されれば、それは空中でふわりと浮き、
柊の煙草を持っていない方の手の平の上におさまる。
「………、…毎度思うんだが、もう少し良い収納の仕方は無いのか?」
手の平の上でくるりと回転させ、濡れを払い、
改めてそれをキャッチする。
『大事ナモノを隠すなら、ナカより安全なコトは無いダロウ?
本を隠すなラ、本棚の……。』
「生き物の中、ねぇ……。」
手の平の上で、それを転がす。
羽月 柊 >
『《大変容》の時、七つ目の喇叭(ラッパ)ガ吹かれ、
天での戦いニ加担した天使の輪の欠片ダト言われてイル』
口を閉じれば、目深にかぶった帽子で口があった場所は分からなくなってしまった。
それの言葉を聞きながら、手に持っていた宝石をしまう。
「……君にしては随分と曖昧だな。」
柊は既知のようにそれに対して振舞う。
ヨキに言っていた古い知り合い。
きっと、目の前のこれがそうなのだろう。
『真偽なんテ言うのは、さして重要じゃナイ。
口伝ト謂れが、それにチカラを与えるンだからナ。
ダカラそれには魔力がアル。』
話を聞きながら時折煙草を吸い、煙を補充する。
「……まぁ、そうだな。今の世界は思うよりも曖昧だ。
これは報酬だ。しばらくは持つんじゃないか。」
代わりに柊は、鞄から試験管に入った赤黒い液体をそれに渡す。
『あァ、ありがとウ。
オマエのおかげで、"ヒトを喰わずに済む"。』
物騒な会話は、雑踏へは届かない。
羽月 柊 >
「こちらこそ。いつも魔石の類を卸してくれて助かるとも。」
もたれ掛かっていた壁から離れ、煙草を最後の一吸いし、吐き出す。
吸い終わるとそれは星屑のように空へと消えゆき、
柊は再び大通りへと戻ろうとする。
「アーカムの彼女にもよろしく言っておいてくれ。」
去り際にそう呟き、パチンと指を鳴らした。
ガシャン
ガラスが割れるような音が内側に響き、
柊の後ろには、もう誰も居なかった。
――大人の全てが綺麗なままではいられない。
そうして男は再び、雑踏の中へと消えていくのだ。
ご案内:「落第街大通り」から羽月 柊さんが去りました。<補足:後入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。黒のスーツに竜を模した仮面をつけている。小さな白い竜を2匹連れている。>