2020/07/12 のログ
ご案内:「宗教施設群-修道院」にマルレーネさんが現れました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服/待ち合わせ>
ご案内:「宗教施設群-修道院」に山本 英治さんが現れました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(待ち合わせ済)>
マルレーネ > 「ふんふんふふん、ふふんふん……」

鼻歌交じりに洗濯物を干すシスターが修道院に一人だけ。
異邦人街にある小さな修道院は、「懺悔・文句・愚痴・相談 なんでも受け付けます」と記載された看板を立てかけただけの、古い建物。

現在は、学生と呼ぶにはちょっと年を重ねたシスターが一人、管理をしているのだけれども。

「ふーふんふふふふーーん。」

上機嫌にシーツをぱん、っと振ってから、竿に干す。
最近初めてテレビを見て、深夜まで見てしまいました。

山本 英治 >  
異邦人街を歩く。
ポケットに手を入れて。背中を丸めて。倦んだ気持ちを抱えて。
ただ、歩く。宛もなく、寄る辺ない。

修道院を見かけて、懺悔の文字を見て顔を顰める。
しかし、師父が……神父だった拳法の師がそうしてくれたように。
神に罪を告白することは、まるきりの無意味ではない。

「やぁ、シスター」

シーツを干す彼女に声をかけて。

「相談、聞いてくれるんだって?」

目を細めて微笑んだ。髪が揺れた。

マルレーネ > ………おや。

「はい、お話、なんでも伺いますよ?
 お時間、今は大丈夫ですか?」

一瞬、日の光を遮る大きな影を見上げて。
見上げたところに髪の毛しかなかったので視線をちょっと下げて。
てへ、と笑う。

「大丈夫であれば、中にどうぞ。 お部屋がありますからね。
 防音も一応されていますので、大声をあげなければ外には聞こえないでしょう。

 お茶と、コーヒーと、紅茶と。 何かご希望あります?」

ひょい、とシーツを竿にひっかけて、くるりと振り向いてご注文を聞きましょう。
注文聞きも、ウェイトレスをやったので安全安心の経験済みです。

山本 英治 >  
「そちらこそ時間は大丈夫かい? 長くなるかも知れないぜ、話」

首肯して髪をいじって、修道院に向かう。
正直、あまり期待はしていない。
年若いシスターに、自分の負の想念を向けることに申し訳無さは感じるが。

「コーヒーで、ミルクと砂糖はいらない」
「唐突に押しかけてドリンクサービスまでされるなんてな…」

長椅子に座る。大嫌いな青空に、背を向けて。

マルレーネ > 「それがお仕事ですからね。」

なんて、ぱちん、とウィンクを一つ。
しばらくすれば、二人分のコーヒーを持ってきて、お互いの前に置いて。
自分の分にはミルクと砂糖は置きます。

「………では。」

そのまま扉を閉め直せば、一つだけ吐息をついて、目を閉じて。

神よ。 遠い神よ。
彼の悩みが少しでも和らぎますように。

無言のまま、僅かに祈りを捧げてくるりと向き直り。

「お伺いしましょうか。」

向かいにちょこん、と座る。

山本 英治 >  
「仕事熱心なんだな…」

コーヒーを見る。黒い。黒い。液体。
自分の眼が映り込むのが、恐ろしくてたまらなかった。

「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな?」

宗派が違うかもしれないな、とか思いながら懺悔の前に口にして。

「……人を殺しました」

目を瞑る。神は、裁いてくれるのだろうか。

「風紀の仕事中に。違反部活の部長を。この手で。異能を使って。殴り殺しました」
「人を殺すのは二人目です」
「今回は風紀という立場があったので、作戦成功を褒められこそすれ……罪にはなりませんでした」

「それでも俺は人殺しです」

目を開いて、溜息をつく。足元に憂鬱の欠片が転がった。

マルレーネ > 「あ、ここは異邦人用の場所ですから、形式はこだわらずとも大丈夫ですよ。
 ですから、何でも聞けるんです。」

言いながら、相手の言葉にすう、と目を細める。
ああ、なるほど。
穏やかな空気のまま、目を少しだけそのまま閉じて、見開いた。

「はい。」

静かに一つ頷いて。

「上手く話す必要はありません。 どれだけ途切れ途切れでも、意味が伝わらなくても構いません。」

前置きを挟んだまま、変わらぬ口調で。

「まだ胸の内にあるのではないですか。
 どのような感情が胸の内にあるのか、どんな疑問を抱いたままなのか。
 全部ここに置いても構いません。 ここはそういう場所ですからね。」

山本 英治 >  
「そうですか……」

このお悩み相談、間口を広く取ってあるのか。

相手に促されると、言葉を続ける。
吐き出さないと、破裂しそうな感情を。
不思議と、拒絶の感情はなかった。
相手の声が優しかったからかも知れない。

「殺したくなんかなかった」
「なのに……殺されそうになって、相手がまだ人を殺すって言ってて」
「俺は…………」

ふと、雨見さんの顔が過る。違う、俺は…
次に脳裏にフィスティアの顔が思い浮かぶ。
彼女を傷つけたことが苦しい。

「…同僚にどうして殺したと言われて」
「俺は彼女を怒鳴りました」
「心にもない言葉で傷つけました。どうしていいのかわかりません」

断続的に、紡がれるのは。
ハサミで切ったパズルみたいにバラバラの言葉。
無性に喉が乾く。

「七年前にも同じことがありました」
「親友をジャンキーに殺され、俺はそのジャンキーを殺しました」
「それから七年間、服役しています」

「前回と、今回で……何が違うのでしょう」

「どちらも同じです。俺は人殺しで、大罪人で……薄汚れた手の…」
「親友の顔が思い出せなくなりました」
「それが苦しくて……仕方がない…許されたくて、苦しい」

表情を歪めて、罪を告白した。
もう相手の表情は見れない。

マルレーネ > 「罪を感じたのですね。」
「人を殺めてしまった事実がある。
 それは例え神であっても、無かったことにはできません。

 それに、貴方は、"何もかも忘れてなかったことにするような解決を求めてはいない"でしょう。」

あえて断定的な言葉を用いて、問いかける。

「まず。 解決ではなく、道筋を。」

今度は静かに語り掛ける。

山本 英治 >  
「道筋………?」

苦しい。苦しい。苦しい!!
生まれた時から持っていた異能さえなければ、俺はまともだったのか!?
それとも狂っていたからこんな異能を持って生まれてしまったのか!?

「わからない………俺には、わからない…」
「毎夜、夢に見る……あいつを殴り殺す夢だ」
「拳に残った感触が消えない」

手を開くと、血の匂いがした。
いつもの幻覚だ。

「どうしようもないんだ」
「俺はもう」

「疲れたよ、シスター」

マルレーネ > 「苦しみからは逃れられません。
 そして、私が何を言ったところで、………やはり、貴方は苦しむでしょう。」


「遠い遠い、神の言葉では………あなたの耳に、心に届けるには、私の力が足りません。
 代弁者ですから、ちょっとくらい私が思ったことを言っても許されますかね?」

なんて、いつの間にか隣にひょい、と座るシスター。
にひ、と少しだけ笑顔を向けて。 厳かな雰囲気がふわりと緩む。


「貴方は自分の心と体が上手く一致していない。」

優しい言葉で、その掌に自分の掌を重ねる。


「貴方はきっと強いのでしょう。私などより、何倍も。
 戦うことが出来て、人を守ることもできる。 ………そう、みられているのでしょう?」

手を重ねながら、横から覗き込むように。

山本 英治 >  
俺の掌に彼女の掌が重なる。
優しい匂いが、ふわりと香った。

顔を見上げる。何故か、自然に彼女の顔が見れた。

「……俺には、わからない………」
「戦える異能があって、拳法を覚えていて、頑丈で、体力がある」
「そうみられているかも知れないが…」

視線を慌てて外した。

「心と体が上手く一致していない……」

さっきの言葉を反復した。
どうしてだろう。全然違うのに。俺は拳法の師父を思い出していた。

マルレーネ > 視線が合えば、ぱちり、とウィンク一つ。
神の代弁者ではない、己の言葉。

「この島にはそんな人が多いように見受けられるのです。
 貴方だけではありません。

 私の地方の言葉で言うならば……、貴方は強い、とてつもなく強い素材で作られた槌を持っています。
 貴方の槌は、鋼を折り曲げ、魔法の障壁を打ち破り、竜の鱗の形を変えるでしょう。
 それこそ、誰もが欲しがり、誰もが頼るような。」

ゆるゆると言葉を重ねながら。

「では。」

首を少し傾げて、じっと見つめて。

「貴方の"金床"は何でできているんです?」

それが心であることは、言わずとも伝わろう。
手を握ったまま、囁くような声で。

山本 英治 >  
「金床……?」

手を握られたまま、囁かれる。
自分の心、それは。

悪と戦う覚悟をして。未来を信じると決めて。
建悟と一緒に笑って。持流さんに心配されて。
ニーナを助けようと。あの雷覇相手に戦って。

「……わかりません、多分…随分とボロい金床だ…」

相手の手は壊れ物のように優しい。

マルレーネ > 「当然です。貴方の槌に、貴方の持っている力に追いつけ追いつけと、ずいぶんと自分の心を急かしてきたのではないですか。」

その力を扱えるようになろうと、正しく使おうと。そう誓ったであろうことはすぐに分かる。
そしてそれが上手くいかなかったことも。


「誰も言わないのなら私が言いましょう。

 貴方は人間です。 とても小さくて、若くて、まだまだ未熟で。周囲の色で、己の色もすぐに変わってしまうような人間です。

 人間は鋼ではない。
 鋼の肉体という言葉はあれど、人間は鋼ではないのです。

 疲れて当然です。何が悪いのですか。

 『ボロい』にしろ何にしろ。 貴方は「その力に見合う心の持ち主」であろうとしているのではありませんか?」

手を振り払わない、強く握らない。
それを感じれば、投げるように言葉を重ねる。

山本 英治 >  
「俺は……人間…………?」

そんなことを。誰からも言われたことはない。
当たり前の事実でもあり。
獣同然に扱われた塀の中では確かめる機会もなかった。

楽園を追われた黒い羊。山本英治は……人間…?

「……そうなのかも………知れない…」
「力には責任が伴うって……思ってて………」

ただ、混乱している。自分の金床は、揺らいでいる。

マルレーネ > 「貴方はその力に見合った心を求めました。
 それは、本来人が幾星霜をかけて積み重ね、培うもの。

 私の世界でも、兵は様々な鍛錬を重ね、立場に見合った心を持てるように己を変えていきました。変えざるを得なかった。
 何故なら疲れ切ってしまうから。 壊れてしまうから。」


「力には責任はあります。
 貴方の行いは正しかった、とは絶対に言いません。
 苦しむでしょう。 悲しむでしょう。 何年も傷になるかもわかりません。
 私とて、立場が逆になれば苦しむかもしれません。
 ですが。」

ぐ、っとその手を掴んで引き寄せ。ある意味、襟首をつかむような状況。
目と目がまっすぐに向き合う状況にしてから。

「貴方はもっと我儘になっていい。」
「貴方は誰を救いたいのです。」

山本 英治 >  
手を引き寄せられ、彼女と目が合う。
何故だろう。俺は……涙が溢れた。

ボロボロと。みっともなく泣きながら。

「俺が本当に救いたかった人はもういない……」

未来。遠山未来。会いたい。親友に、もう一度。

「それでも、彼女が信じたことを実践するのが…」
「人間らしいって………思って…………」

間に合わなかった。届かなかった。
悲しい。悲しいよ、未来。

「どこかの誰かを守るために、初対面の人間を殴るんじゃなくて」
「ずっと彼女を守っていたかったのに……」

彼女を見たまま泣いた。泣き続けた。

「俺は未来に…大丈夫だって……言いたかったんだ…」

 

『エイジ』

今は亡き親友が俺を呼んだ。
いつの間にか、俺は彼女の顔を思い出していた。

マルレーネ > 「………貴方は重いものを抱えたまま、人よりも速く走ろうとした。
 それは、疲れてしまいます。」

「貴方は人間です。
 人間です。人間なんです。
 だからいつだって泣いてもいい。
 泣きづらかったら、ここに来たらそれでいい。」

自然にぽふんと肩を抱いていた。自分の肩を貸して涙を受け止める。

向かい合って、泣くのを見るのが彼女は嫌いだった。
軽はずみに。
分かってくれているとか、伝わっているとか。 そういう言葉は言いたくなかった。
司祭様はそう言えと言っていたが、彼女は一度もそれは実践しなかった。
分かんないものは分かんないんだ。 分かってるのは目の前の子供が泣いていることだけなんだ。


「………信じたことを。」

ああ、そうだな。
彼は私なんだな。 話を聞きながら理解する。 失われた何かに縋りながら、それをバカみたいに命を削りながら守り続ける。

「実践し続けましょう。 ……貴方はきっと、それを忘れられないでしょう。」

山本 英治 >  
「ああああぁぁ………!!」

俺は泣いた。彼女に肩を抱かれながら。
ただ、声を上げて泣き続けた。

罪も、信じたものも。忘れて生きるなんてできない。
未来……俺、やっぱり悩むよ。悩み続ける。
それでも……寂しいよ…未来。

泣き終わる頃。すっかり冷めたコーヒーを口にして。

「……ありがとう」

そう言って。俺は。貼り付けたようなものじゃない。
俺自身の笑顔を。彼女に見せた。

マルレーネ > 「私は神の言葉の代弁者ですし。」

ぺろ、と舌を出して視線を横に彷徨わせる女。
手を引いて襟首掴んで睨むような状況にまで持って行って泣かせたとあれば、下手したら怒られる。
責任は神が取ってくれるはず。あ、あ、ごめんなさいバチは勘弁して。


「………私はマルレーネ。マリーとでもお呼びください。
 なーに、こう見えて手先は器用と身体が頑丈が売りです。
 土弄りに陶芸、売り子に設営、困ったことがあれば何でもどうぞ?」

そして彼女は最初と同じように、えへ、と照れたように笑って見せる。


「………無理はなさらぬよう。 貴方もまた子供なのですから。」

ご案内:「宗教施設群-修道院」から山本 英治さんが去りました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(待ち合わせ済)>
マルレーネ > 帰っていく彼を見送りながら。
罪悪感が僅かに滲む表情を見せて、視線を宙に彷徨わせる。

「………。」

神よ、私は嘘をつきました。

許されるでしょうか。

マルレーネ > 『私とて、立場が逆になれば苦しむかもしれません。』


勢いで。
そして、理解してあげたい、理解しようとしていることを感じてもらいたい。
その一心で、あんなことを言ってしまった。

私はもうそんなことで苦しまなくなってしまったのに。

マルレーネ > 目を閉じて、僅かに目を開けば。
その掌は艶やかな赤で彩られ。床にも、壁にも、天井にも。
赤い、赤い、赤い。

それを見る私の瞳は、いつもと変わらないまま。
もう一度目を閉じて見開けば、とても明るい、普通の毎日がまた戻ってくる。


争いの絶えぬ世界で生きてきた彼女は、たくさん、たくさん戦ったから。

報いは己で受けに行かずとも、いつか必ず受けましょう。
それまではどうか、神に仕える者らしくいさせてください。

マルレーネ > どうか。
ご案内:「宗教施設群-修道院」からマルレーネさんが去りました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服/待ち合わせ>